BloodyHeart

真代 衣織

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ブラック労働者vsタコ部屋労働者

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 通信を入れる数分前に羽月は、リリアと二階に下りていた。
 羽月を前に非常用階段を下ると、敵は見当たらない。
 余裕溢れる羽月は、エレベーターホールからフロアを見回す。
 正反対に、リリアは緊張しながら神経を張り巡らせている。頭の子羽から外を隈なく見ている。
「羽月さんっ! ゲートです‼︎ 噴水の前です!」
 やっと、本命のお出ましか……。
 こっちに消耗はない。
 声には出さずに余裕を言い、下を向いて羽月は煙草の煙を吐いた。
「了解——。行って来い」
「はいっ!」
 羽月を振り返り、リリアは強く返事をする。
 急ぎ、エレベーター側のガラスを交差した腕で破り、リリアは羽を出して飛び去った。
 直後……。
「いったぁっ、痛い、いたっぁーい」
 小刻みな衝撃音と共に、リリアの苦痛な声がする。どうやら、組まれている足場にぶつかっているらしい。
 余裕が溢れていた羽月の顏が僅かに歪む。
「羽って、痛点あんのかぁ……」
 冷たいメンソールの煙を吐き、羽月は呟いた。
 ふと、天井を見上げた羽月は、ニッと口端を吊り上げた。
 天井が軋み、崩れ落ちる。
「よくもやってくれたな」
「ふざけやがってっ」
「てめぇ、生きて帰れると思うなよっ」
 銃や鉄パイプで天井を破壊し、五階に閉じ込められていた構成員とヒューマロイドが、泡まみれで降ってきた。
「まだやんのかぁ? ブラック社畜の鏡だな。タコ部屋労働者っ」
 敵に挟まれた羽月は、紫煙と一緒に吐き付けた。壁に寄り掛かり腕を組み、余裕を見せている。
「ブラックはてめぇらだろっ⁉︎ 安い命の軍人がっ! 調子に乗んな‼︎」
「こっちは完全自由だ! ブラック奴隷っ‼︎」
「くたばれっ!」
 次々に構成員とヒューマロイドは発し、一斉に襲い掛かる。
「——今時、バイトでも働きゃ死ぬんだよっ」
 声と共に黒い刃が降り注ぐ。
 構成員とヒューマロイドが何人も倒れる。
 天井から旭が現れた。
 ブレイヴァンスピアーを構え、羽月の隣に着地する。
 残る構成員とヒューマロイドを、片側のみ刃を出したブレイヴァンスピアーで旭は斬り倒す。
 直ぐに離れたチャイニーズマフィアが、銃で二人に狙いを定める。
 羽月が、その男を目掛け、構成員を蹴り飛ばす。そばにいたヒューマロイド二人が巻き添えになり、吹っ飛んだ。
 男に二人がぶつかったと同時に、羽月はマシンピストルを連射した。
 もはや敵は、旭の近くにいる二人だけだ。
 だが、一人のチャイニーズマフィアが、その場から逃げ去る。
「マッドドライブなら……破滅へのアクセルは、俺が踏み切ってやる」
 宣言した羽月の眼光は物騒に鋭利だ。
 逃げ去った男を、羽月は意気揚々と追って行く——。
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