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疑惑の留学
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——十三時、五反田。
「面倒くせえ事になったな。リリアに自覚はないが、あれはスパイだ。早速、調べ始めて俺を怪しんだか……」
言いながら、羽月はスマートフォンの画面を見て、ガラスの先に視線を移す。向かいのビル一階にある、風俗店の入口を見下ろした。
画面は、風俗店のホームページだ。
ピンクサロン『ミルキィアイドル』本日、六時まで会員様限定大サービス営業——。と書かれている。
「大丈夫ですよ。証拠は有りません。それに、秘密を共用している上に大きな借りを作っています。余程の事がない限り、処分は受けないでしょう」
羽月の向かいに座る那智が、飲んでいたアイス抹茶ラテを置き、意見した。
視線を戻し、店の観察を続ける。
既に、羽月と那智は、サファイア・テレジア女王の意向を察していた。
「つーかっ……リリア王女なら、話せば聞き入れそうッスけど……」
那智の隣に座る旭が、唐揚げをコーラで流し込み口を挟んだ。
「そうそう、話せば分かるよ。疑問一切持たずに、俺と志保の飯も作ってくれたし……。五倍の手当貰えるし……」
向かいに座る旭と二人で頼んだプレートのサンドイッチとポテトを次々に口に運び、伊吹はもこもこと口を動かす。
頼んだプレートには、サンドイッチと唐揚げ、ポテトが並べてあった。残りはもうポテトだけだ。
四人は、風俗店の様子を窺う為に、向かいのビル二階にあるカフェバーに入店していた。
「俺は、家事代を渡したが……」
アイスミルクティーを口にし、羽月は冷たい口調と冷たい視線を伊吹に向けた。
「伊吹さん……。アンタの世話する為に来てる訳じゃねぇからな⁉︎」
旭も冷たい視線で忠告する。
ポテトを食べながら更に続ける。
「……そもそも大人として、世話させる事自体、みっともねぇ。ホームアウェイ父以下だ」
正論に思い、オレンジサイダーを飲みながら、伊吹は苦笑いで受け答えた。
「——‼︎」
那智が店から出て来た男をスマートフォンで撮影した。
男は三十歳前後だ。顔色は蒼白で痩せ細っている。
撮影した男の左腕を拡大し、三人に見せた。痣になった採血の跡が幾つもある。
「確定ですね」
那智の言葉に三人は頷いた。
「よしっ! 行くぞっ⁉︎」
号令を掛け、ミルクティーを飲み干し、羽月は立ち上がった。
「了解!」
三人で一斉に発する。
残っていた抹茶ラテを那智は飲み干した。
旭はコーラを片手に、残っているポテトにディップをかけ、食べ切ろうとしたが……。透かさず、伊吹がプレートを両手で持ち、残りの全部を口に流し込んでしまった。
「っあー‼︎」
思わず旭は叫ぶ。
「てっめぇ! 汚ねーぞっ!」
「残念! 俺のが、手も口も速いっ」
文句を言う旭にお構い無しで、伊吹は勝ったと言わんばかりの顏を向け、胸を張り親指を立てた。
「お二人、行きますよっ」
レジ横から那智が声を掛けてくる。
レジでは、羽月が腕時計型のウェアラブル端末をかざし、支払いをしている。
公用のウェアラブル端末から払っても問題はない。捜査上での飲食は経費で落とせる。
先に店を出た羽月と那智に続き、遠慮無しに言い合いを続ける伊吹と旭も、コーラとオレンジサイダーを飲み干し退店して行った。
「面倒くせえ事になったな。リリアに自覚はないが、あれはスパイだ。早速、調べ始めて俺を怪しんだか……」
言いながら、羽月はスマートフォンの画面を見て、ガラスの先に視線を移す。向かいのビル一階にある、風俗店の入口を見下ろした。
画面は、風俗店のホームページだ。
ピンクサロン『ミルキィアイドル』本日、六時まで会員様限定大サービス営業——。と書かれている。
「大丈夫ですよ。証拠は有りません。それに、秘密を共用している上に大きな借りを作っています。余程の事がない限り、処分は受けないでしょう」
羽月の向かいに座る那智が、飲んでいたアイス抹茶ラテを置き、意見した。
視線を戻し、店の観察を続ける。
既に、羽月と那智は、サファイア・テレジア女王の意向を察していた。
「つーかっ……リリア王女なら、話せば聞き入れそうッスけど……」
那智の隣に座る旭が、唐揚げをコーラで流し込み口を挟んだ。
「そうそう、話せば分かるよ。疑問一切持たずに、俺と志保の飯も作ってくれたし……。五倍の手当貰えるし……」
向かいに座る旭と二人で頼んだプレートのサンドイッチとポテトを次々に口に運び、伊吹はもこもこと口を動かす。
頼んだプレートには、サンドイッチと唐揚げ、ポテトが並べてあった。残りはもうポテトだけだ。
四人は、風俗店の様子を窺う為に、向かいのビル二階にあるカフェバーに入店していた。
「俺は、家事代を渡したが……」
アイスミルクティーを口にし、羽月は冷たい口調と冷たい視線を伊吹に向けた。
「伊吹さん……。アンタの世話する為に来てる訳じゃねぇからな⁉︎」
旭も冷たい視線で忠告する。
ポテトを食べながら更に続ける。
「……そもそも大人として、世話させる事自体、みっともねぇ。ホームアウェイ父以下だ」
正論に思い、オレンジサイダーを飲みながら、伊吹は苦笑いで受け答えた。
「——‼︎」
那智が店から出て来た男をスマートフォンで撮影した。
男は三十歳前後だ。顔色は蒼白で痩せ細っている。
撮影した男の左腕を拡大し、三人に見せた。痣になった採血の跡が幾つもある。
「確定ですね」
那智の言葉に三人は頷いた。
「よしっ! 行くぞっ⁉︎」
号令を掛け、ミルクティーを飲み干し、羽月は立ち上がった。
「了解!」
三人で一斉に発する。
残っていた抹茶ラテを那智は飲み干した。
旭はコーラを片手に、残っているポテトにディップをかけ、食べ切ろうとしたが……。透かさず、伊吹がプレートを両手で持ち、残りの全部を口に流し込んでしまった。
「っあー‼︎」
思わず旭は叫ぶ。
「てっめぇ! 汚ねーぞっ!」
「残念! 俺のが、手も口も速いっ」
文句を言う旭にお構い無しで、伊吹は勝ったと言わんばかりの顏を向け、胸を張り親指を立てた。
「お二人、行きますよっ」
レジ横から那智が声を掛けてくる。
レジでは、羽月が腕時計型のウェアラブル端末をかざし、支払いをしている。
公用のウェアラブル端末から払っても問題はない。捜査上での飲食は経費で落とせる。
先に店を出た羽月と那智に続き、遠慮無しに言い合いを続ける伊吹と旭も、コーラとオレンジサイダーを飲み干し退店して行った。
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