28 / 133
微笑みの裏
しおりを挟む
一方、呼び止められた那智は総司令官に応急処置を施していた。
「後で病院に行って下さいね」
包帯を巻き終えた那智は親切そうに声を掛けた。
「結城君、君は相良なんかと一緒にいたら駄目だ」
下座に座った那智に総司令官は忠告する。
「君はとても優秀なんだ。学生の時からずっと首席で、努力し続けたんだろ? 相良といたら、せっかくの優秀さが台無しになる。自分の優秀さをちゃんと活かしなさい!」
那智の為ではない。那智さえ抱き込めば形成逆転出来ると気付いたからだ。
その考えに那智は気付いている。愛想良く聞いている様だが……。
だから羽月君とおるんよ。他やったら想定内の事しか出来ひん。
内心では反論していた。聞き入れる気は丸で無い。
那智の出身地は京都市内の洛外だ。
「優秀さに相応しい、特殊遊撃部隊に専念しなさい!」
上座に座る総司令官は真摯な眼差しを向け諭し続ける。
エリート部隊と称される、特殊遊撃部隊の中で、警察部隊に所属しているのは過去を含めて那智だけだ。特殊遊撃部隊の方が地位と給料は上になる。
「君が希望するなら、特殊遊撃部隊の隊長に任命しよう」
二十七で最年少のエリート部隊隊長——。那智は知っているが、任命出来る権限など警察部隊の総司令官にはない。出来るのは推進ぐらいだが、これなら誰でも飛び付くと思い、総司令官は大きく出た。
「すみませんが、ご遠慮致します」
何もかもお見通しの那智は穏やかな笑顔を崩さずに断った。
「そ、そんなっ⁉︎ 」
「ですが検討してみます。検討次第で、お願いしても構いませんか?」
「勿論いいよっ! 何時でも言ってね」
満面の笑みで総司令官は了承した。
——叶わん夢、見続けとき。
心の中で毒を吐く。
穏和な表情のまま「失礼します」と言って敬礼し、那智は退室して行った。
「後で病院に行って下さいね」
包帯を巻き終えた那智は親切そうに声を掛けた。
「結城君、君は相良なんかと一緒にいたら駄目だ」
下座に座った那智に総司令官は忠告する。
「君はとても優秀なんだ。学生の時からずっと首席で、努力し続けたんだろ? 相良といたら、せっかくの優秀さが台無しになる。自分の優秀さをちゃんと活かしなさい!」
那智の為ではない。那智さえ抱き込めば形成逆転出来ると気付いたからだ。
その考えに那智は気付いている。愛想良く聞いている様だが……。
だから羽月君とおるんよ。他やったら想定内の事しか出来ひん。
内心では反論していた。聞き入れる気は丸で無い。
那智の出身地は京都市内の洛外だ。
「優秀さに相応しい、特殊遊撃部隊に専念しなさい!」
上座に座る総司令官は真摯な眼差しを向け諭し続ける。
エリート部隊と称される、特殊遊撃部隊の中で、警察部隊に所属しているのは過去を含めて那智だけだ。特殊遊撃部隊の方が地位と給料は上になる。
「君が希望するなら、特殊遊撃部隊の隊長に任命しよう」
二十七で最年少のエリート部隊隊長——。那智は知っているが、任命出来る権限など警察部隊の総司令官にはない。出来るのは推進ぐらいだが、これなら誰でも飛び付くと思い、総司令官は大きく出た。
「すみませんが、ご遠慮致します」
何もかもお見通しの那智は穏やかな笑顔を崩さずに断った。
「そ、そんなっ⁉︎ 」
「ですが検討してみます。検討次第で、お願いしても構いませんか?」
「勿論いいよっ! 何時でも言ってね」
満面の笑みで総司令官は了承した。
——叶わん夢、見続けとき。
心の中で毒を吐く。
穏和な表情のまま「失礼します」と言って敬礼し、那智は退室して行った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
大絶滅 2億年後 -原付でエルフの村にやって来た勇者たち-
半道海豚
SF
200万年後の姉妹編です。2億年後への移住は、誰もが思いもよらない結果になってしまいました。推定2億人の移住者は、1年2カ月の間に2億年後へと旅立ちました。移住者2億人は11万6666年という長い期間にばらまかれてしまいます。結果、移住者個々が独自に生き残りを目指さなくてはならなくなります。本稿は、移住最終期に2億年後へと旅だった5人の少年少女の奮闘を描きます。彼らはなんと、2億年後の移動手段に原付を選びます。
あやかし神社へようお参りです。
三坂しほ
キャラ文芸
「もしかしたら、何か力になれるかも知れません」。
遠縁の松野三門からそう書かれた手紙が届き、とある理由でふさぎ込んでいた中学三年生の中堂麻は冬休みを彼の元で過ごすことに決める。
三門は「結守さん」と慕われている結守神社の神主で、麻は巫女として神社を手伝うことに。
しかしそこは、月が昇る時刻からは「裏のお社」と呼ばれ、妖たちが参拝に来る神社で……?
妖と人が繰り広げる、心温まる和風ファンタジー。
《他サイトにも掲載しております》
⌘悟り令嬢の嫁入り奇譚⌘
麻麻(あさあさ)
恋愛
悟りの能力が生まれつきある燈子(とうこ)は商いをしている子がいない高柳(たかやなぎ)家に養子として育てられたが妹が生まれてからは経営や交渉を「視る」半ば道具みたいな扱いを受けていた。虐げられる中、父から急に嫁ぎ先を言われ赴いた先はハイカラな洋館。
そこには栗色の髪にヘーゼル色を目をした輪島(わじま)カイがいた。驚く燈子に彼は更に「縁談話なんてした覚えがない」と言われ動揺する。
しかも彼は金を借した友人に逃げられ財産をほとんど無くした状態だった。
燈子の熱意や乳母のエミリーの説得でなんとか輪島家に居候する事になった燈子は自身の悟りの能力を密かに使いカイの店の立てなおしに貢献するが。
あやかし警察おとり捜査課
紫音
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。
しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。
反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。
私が征夷大将軍⁉~JK上様と九人の色男たち~
阿弥陀乃トンマージ
キャラ文芸
平凡な女子高生、若下野 葵がある日突然征夷大将軍に!?
無理難題に葵は元気に健気に立ち向かう!
そして葵に導かれるかのように集まった色男たち!
私立大江戸城学園を舞台に繰り広げられる、愛と欲望が渦巻くドタバタストーリー!?
将軍と愉快な仲間たち、個性たっぷりなライバルたちが学園生活を大いに盛り上げる!
先生とお嬢さま
halsan
キャラ文芸
お嬢さまからの全方位にわたる疑問と行動と無茶と欲望を、すべて受け流し、希望を育てる先生のお話。
他のサイトで「みんなで学ぼうシリーズ」として短編を公開していたのを、お嬢さまと先生の関係を盛り込んで、組みなおしました。
八百万の学校 其の弐
浅井 ことは
キャラ文芸
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
神様にお仕えする家系の第十七代目当主となった佐野翔平。
引退した祖父に、勘のいい祖母。
鈍感な兄をも巻き込み、家族みんなで神様のお悩み相談!?
そして家事を極めんとする火之迦具土神。
そんなほのぼのファンタジー其の弐!開幕!!!
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆*:..
※イラストの無断使用は禁止です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる