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最終章 幸せ
絆 13
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「〈不可侵空間〉!」
地面に横たわり、動けないふりをしたまま【時空間】の才能を使った防御を僕達の真上に展開する。
『ガキンッ!ドドンッ!!』
『『『グギャギャギャーーー!!!』』』
先行してきたヒュドラが突如眼前に現れた透明な壁に衝突し、少し遅れた2体も止まることが出来ず、先のヒュドラに衝突して鳴き声を上げていた。
「・・・はっ?」
「なっ!?こ、これは一体?」
「何だ?何が起こっているんだ?」
広場から離れていた住民達が衝突音を聞いて顔を上げていた。何が起こったのだと様子を見たようだが、どうやら目の前で起こっている光景に驚愕しているようで、口々に驚愕の声が上がっていた。
(剣で殺して毒袋を傷付けると厄介だな。外傷を与えず討伐しないと被害が出そうだ・・・なら!)
ヒュドラの最も厄介な点は毒だ。それは直接触れるだけでなく、毒が気化したものを吸い込むだけで致命傷になってしまうのだ。なのでヒュドラの討伐は、迅速に裂傷を与えずに討伐することが推奨されている。
「〈空間転移〉!天叢雲!」
横たわった状態からヒュドラの上空に転移し、即座に作り出した天叢雲で3体のヒュドラを撫でるように斬り伏せる。と言っても実際には斬るというよりも、電撃を体内に流しているので、身体が切断されるということはない。
『『『ギャオォォ・・・』』』
断末魔のような雄叫びを上げたかと思うと、黒焦げになった3体のヒュドラは口から白煙を吐き出し、そのまま力なく目を閉じた。〈不可侵空間〉は展開しているままなので、空中に浮かんだまま死んでいるという異様な光景だった。
さすがにそのまま真下に落としてしまうとみんなにぶつかってしまうので、住民が離れたことで出来た空間に自分ごと〈空間転移〉した。そして、多少離れた位置ではあるが、ここからでも十分みんなの治療とアシュリーちゃんを連れ戻すことは出来る。
「〈完全回復〉×6、〈空間転移〉」
「っ!!身体が・・・」
「みんな大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫」
「ん、問題ない」
「私も大丈夫だ」
「っ!?あれ?お兄ちゃん、私・・・どうなったの?」
みんな身体の自由が戻り、手足の感触を確かめている。アシュリーちゃんは突然僕の隣に転移して驚いているようで、口枷を外すと周りを見ながら状況を確認するように聞いてきた。
「大丈夫だよ。すぐ終わるからね」
そう言うと、みんなを庇うような位置取りで唖然としている住民達に視線を向ける。彼らがドラゴンとどんな関係性にあるのかは分からないが、僕達を麻痺させて生け贄のようにしたことは間違いないだろう。事情を知っているであろう、この都市の代表であるエリックさんに厳しい視線を向けながら問いただした。
「で、どういう事か説明してくれるのかな?」
「・・・何ということだ。ドラゴンを倒してしまうなんて・・・」
「あぁ・・・もう終わりだ・・・」
多少なりとも殺気を乗せた言葉にエリックさんは反応を示さず、ヒュドラの死骸を見ながら絶望した表情でそんな事を呟いた。それは他の住民達も同様で、頭を抱えながら絶望したような声を漏らしていた。
「どういう事だ?一体この都市で、この大陸で何が起きているんだ?」
彼らに詰め寄りながら、ここで起きている事について聞き出そうとした。しかし、彼らの反応は予想外だった。
「何てことしてくれたんだっ!」
「そうだ!そうだ!」
「ドラゴン様を倒してしまうなんて!これでこの地区も終わりだ!!」
「責任とれ!!」
住民達からは僕に向けて、怒りの声が一斉に叫ばれた。そこには僕達に一服盛ったという罪悪感のようなものは皆無で、まるで自分達こそ被害者という形相だった。
(・・・何だこれ?僕の所為だっていうのか?)
僕としては、彼らは大切な人達に害を為したことで怒り心頭の気持ちを、何か事情があるのだろうという配慮で友好的に話を聞こうとしているのだが、彼らからは敵意しか感じられなかった。そもそも、ヒュドラを鎧袖一触で討伐した僕の力をみんなその目で見ているはずなのに、こうまで敵意を剥き出して糾弾する心理が分からなかった。
(ヒュドラに向けた力が自分達には向かないと思っているのかな・・・)
現状把握が出来ていないような住民達に呆れの視線を向け、ため息を吐くと、さらに喧騒が拡大していった。
「何だその態度は!!」
「どういう状況か分かってるのか!?」
言いたいことだけ言って、説明しようとしない彼らに嫌気がさし、みんなに振り返って目を瞑るように伝える。
「〈発光〉!」
第三位階の光魔法の目潰しだが、圧縮・解放して威力を十二分に高めたため、その効果は絶大だった。
「め、目が~!!」
「ぐぁ!み、見えない!何も見えない!!」
「た、助けてくれ!何も見えなくなっちまった!」
至近距離で〈発光〉を見た者は、光に目が焼かれ失明してしまったようだ。治療は可能だが、今はこちらの声を聞かせることが必要だ。
「説明して欲しいと言ったでしょ?僕の話を聞いてくれませんか?その気になればドラゴンに向けた力は、あなた達に向くんですよ?」
「「「・・・・・・」」」
目が潰れたことでようやく声が届いたのか、僕の言葉に住民達は口を噤んで黙り込んだ。
「エリックさん。僕達に一服盛った事と、ドラゴンについての事を聞かせてくれますね?」
有無を言わせぬ殺気を放ちながら、エリックさんに鋭い視線を飛ばした。
「・・・も、も、申し訳ありませんでしたーーー!!!」
彼は飛び上がって土下座をしながら、この大陸で起きている事の次第を話し始めてくれた。
1000年前に滅びたこの大陸では、住民の人口を分散させるために大陸中に散らばるようにこの都市と同様な、外壁に囲まれた場所が点在するようになっていった。500年も経つ頃には人口はある程度回復の兆しを見せ始め、更に都市は増えていったという。そしていつしかこの大陸の住人達を一つに纏めあげた国を樹立しようという動きになり、100年前、その為の前段として、各都市の代表における意思疏通を飛行型の従魔を通して調整することになった。
ただ、既に当時1万を越える勢いで都市が乱立し始めていた為、意思疎通は難航を極め、新国家樹立には相当な時間がかかる見通しのはずだった。しかし、そんな状況を一変させる出来事が起きた。それは、ドラゴンが人の味を覚えてしまったことだ。下級種であるドレイクやワイバーン、中級種のヒュドラが定期的に都市を襲うようになっていったのだ。
当然人々は抵抗を試みたのだが、各都市の人口を低く押さえてしまっていたことが裏目に出て、なす術無く蹂躙されていったらしい。そんな状況が続けばあっという間に各都市の人々はドラゴンに狩り尽くされていってしまう。1万を越えていた都市の数も、ここ数年で120程度まで減ってしまったのだ。
そうしてここ数年、月に一度新月の夜になると決って現れ、まるで餌のように人間を貪っていくのだという。
「・・・と言うことです。以前は年老いた者も関係なく襲ってきたのですが、いつしか食への拘りが出来たのか、年若い女性しか食べなくなりました」
エリックさんは失明した状態のまま、項垂れるように今起きている事を語ってくれた。
「僕達が治療した女性達は何か関係があるの?」
治療院で見た怪我人は全員女性だったので、気になって聞いてみた。
「・・・我々はドラゴンに対抗する術もなく、抵抗を諦めたのです。その為、月に一度数人の女性をあの石畳の舞台に集め、ドラゴンに捧げていたのです」
「・・・彼女達は納得していたのか?」
「納得していた者も少ないですが居ました・・・しかし、大半は泣き叫び拒絶を・・・」
「その人達はどうしたんだ?」
「・・・逃げられぬように足を潰しました・・・しかし、ドラゴンは怪我をした女には見向きもせず、健康な女性を襲ってきたのです。理由は分かりません」
なんとも吐き気がする話だが、ドラゴンの驚異から逃れるために若い女性を犠牲にしていたということのようだ。強大な力に抗う術がなく、そうするより生きる方法が無かったと言えばそれまでだが、とても僕には理解出来なかった。
「じゃあ、怪我をしていた人達はそうすればドラゴンに襲われることがないからと?」
「・・・はい。彼女達は自ら外壁の階段に昇り、飛び降りたのです・・・」
(なるほど、治療しても絶望したような表情をしていたのはその為か・・・)
エリックさんの説明に、治療院で見た女性達の表情が思い浮かんで納得がいった。
「それで、今回は住人を犠牲にしなくてもいいということで、僕達を歓迎した訳か・・・」
「・・・はい」
「じゃあ、ヒュドラを討伐して怒っていたのは?」
「ドラゴンに手を出せば、後日多数のドラゴンや魔獣達を率いて地区を壊滅させに来るのです。まるで、反抗したことが許せないように・・・。今までにいくつもそんな末路を迎えた地区があったと連絡が来ていました。ですので、先程のダリア殿への暴言はそんな未来を悲観しての事だったのです。どうか、ご容赦を・・・」
エリックさんは頭を地面に擦り付けながら土下座してきた。その様子はもはや頭を下げ過ぎて逆立ちしようとしているような体勢になっていた。
(なるほど、この大陸の魔獣が種族を越えて行動していたのは、ドラゴンが原因か・・・)
人間への制裁の度にスタンピードを起こして襲っていたとすれば、いつしかその状態が魔獣にとっての普通になっていたのかもしれない。
「まぁ、理由を聞いたから僕やみんなにした事を許せるか、と言ったら『否』だけど・・・」
「っ!!ひぃぃ・・・」
僕の言葉にあからさまに恐怖にひきつった表情を浮かべる。それはこの広場に集まっていた多くの住民達も同様に悲鳴が漏れていた。
「ただ、この大陸や都市についての事情を知らず、君達にとっては勝手な行動をとったとも見えるのかな・・・」
大きく息を吐き出し、肩を窄めると、僕の言葉に住民達は顔を上げてこちらを見てきた。
「ダリア・・・では?」
離れたところで事の推移を見守っていたみんなが僕の側へ歩み寄ってきていた。そして、僕の言葉の真意を読み取ったであろうジャンヌが、僕の肩に手を置きながら話しかけてきた。
「この大陸で生活する上でドラゴン達は邪魔だし、増え過ぎた魔獣達もどうにかする必要があるからね。申し訳ないけど排除させてもらおうか!」
僕はみんなに振り返りながら、笑顔でそう宣言した。
地面に横たわり、動けないふりをしたまま【時空間】の才能を使った防御を僕達の真上に展開する。
『ガキンッ!ドドンッ!!』
『『『グギャギャギャーーー!!!』』』
先行してきたヒュドラが突如眼前に現れた透明な壁に衝突し、少し遅れた2体も止まることが出来ず、先のヒュドラに衝突して鳴き声を上げていた。
「・・・はっ?」
「なっ!?こ、これは一体?」
「何だ?何が起こっているんだ?」
広場から離れていた住民達が衝突音を聞いて顔を上げていた。何が起こったのだと様子を見たようだが、どうやら目の前で起こっている光景に驚愕しているようで、口々に驚愕の声が上がっていた。
(剣で殺して毒袋を傷付けると厄介だな。外傷を与えず討伐しないと被害が出そうだ・・・なら!)
ヒュドラの最も厄介な点は毒だ。それは直接触れるだけでなく、毒が気化したものを吸い込むだけで致命傷になってしまうのだ。なのでヒュドラの討伐は、迅速に裂傷を与えずに討伐することが推奨されている。
「〈空間転移〉!天叢雲!」
横たわった状態からヒュドラの上空に転移し、即座に作り出した天叢雲で3体のヒュドラを撫でるように斬り伏せる。と言っても実際には斬るというよりも、電撃を体内に流しているので、身体が切断されるということはない。
『『『ギャオォォ・・・』』』
断末魔のような雄叫びを上げたかと思うと、黒焦げになった3体のヒュドラは口から白煙を吐き出し、そのまま力なく目を閉じた。〈不可侵空間〉は展開しているままなので、空中に浮かんだまま死んでいるという異様な光景だった。
さすがにそのまま真下に落としてしまうとみんなにぶつかってしまうので、住民が離れたことで出来た空間に自分ごと〈空間転移〉した。そして、多少離れた位置ではあるが、ここからでも十分みんなの治療とアシュリーちゃんを連れ戻すことは出来る。
「〈完全回復〉×6、〈空間転移〉」
「っ!!身体が・・・」
「みんな大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫」
「ん、問題ない」
「私も大丈夫だ」
「っ!?あれ?お兄ちゃん、私・・・どうなったの?」
みんな身体の自由が戻り、手足の感触を確かめている。アシュリーちゃんは突然僕の隣に転移して驚いているようで、口枷を外すと周りを見ながら状況を確認するように聞いてきた。
「大丈夫だよ。すぐ終わるからね」
そう言うと、みんなを庇うような位置取りで唖然としている住民達に視線を向ける。彼らがドラゴンとどんな関係性にあるのかは分からないが、僕達を麻痺させて生け贄のようにしたことは間違いないだろう。事情を知っているであろう、この都市の代表であるエリックさんに厳しい視線を向けながら問いただした。
「で、どういう事か説明してくれるのかな?」
「・・・何ということだ。ドラゴンを倒してしまうなんて・・・」
「あぁ・・・もう終わりだ・・・」
多少なりとも殺気を乗せた言葉にエリックさんは反応を示さず、ヒュドラの死骸を見ながら絶望した表情でそんな事を呟いた。それは他の住民達も同様で、頭を抱えながら絶望したような声を漏らしていた。
「どういう事だ?一体この都市で、この大陸で何が起きているんだ?」
彼らに詰め寄りながら、ここで起きている事について聞き出そうとした。しかし、彼らの反応は予想外だった。
「何てことしてくれたんだっ!」
「そうだ!そうだ!」
「ドラゴン様を倒してしまうなんて!これでこの地区も終わりだ!!」
「責任とれ!!」
住民達からは僕に向けて、怒りの声が一斉に叫ばれた。そこには僕達に一服盛ったという罪悪感のようなものは皆無で、まるで自分達こそ被害者という形相だった。
(・・・何だこれ?僕の所為だっていうのか?)
僕としては、彼らは大切な人達に害を為したことで怒り心頭の気持ちを、何か事情があるのだろうという配慮で友好的に話を聞こうとしているのだが、彼らからは敵意しか感じられなかった。そもそも、ヒュドラを鎧袖一触で討伐した僕の力をみんなその目で見ているはずなのに、こうまで敵意を剥き出して糾弾する心理が分からなかった。
(ヒュドラに向けた力が自分達には向かないと思っているのかな・・・)
現状把握が出来ていないような住民達に呆れの視線を向け、ため息を吐くと、さらに喧騒が拡大していった。
「何だその態度は!!」
「どういう状況か分かってるのか!?」
言いたいことだけ言って、説明しようとしない彼らに嫌気がさし、みんなに振り返って目を瞑るように伝える。
「〈発光〉!」
第三位階の光魔法の目潰しだが、圧縮・解放して威力を十二分に高めたため、その効果は絶大だった。
「め、目が~!!」
「ぐぁ!み、見えない!何も見えない!!」
「た、助けてくれ!何も見えなくなっちまった!」
至近距離で〈発光〉を見た者は、光に目が焼かれ失明してしまったようだ。治療は可能だが、今はこちらの声を聞かせることが必要だ。
「説明して欲しいと言ったでしょ?僕の話を聞いてくれませんか?その気になればドラゴンに向けた力は、あなた達に向くんですよ?」
「「「・・・・・・」」」
目が潰れたことでようやく声が届いたのか、僕の言葉に住民達は口を噤んで黙り込んだ。
「エリックさん。僕達に一服盛った事と、ドラゴンについての事を聞かせてくれますね?」
有無を言わせぬ殺気を放ちながら、エリックさんに鋭い視線を飛ばした。
「・・・も、も、申し訳ありませんでしたーーー!!!」
彼は飛び上がって土下座をしながら、この大陸で起きている事の次第を話し始めてくれた。
1000年前に滅びたこの大陸では、住民の人口を分散させるために大陸中に散らばるようにこの都市と同様な、外壁に囲まれた場所が点在するようになっていった。500年も経つ頃には人口はある程度回復の兆しを見せ始め、更に都市は増えていったという。そしていつしかこの大陸の住人達を一つに纏めあげた国を樹立しようという動きになり、100年前、その為の前段として、各都市の代表における意思疏通を飛行型の従魔を通して調整することになった。
ただ、既に当時1万を越える勢いで都市が乱立し始めていた為、意思疎通は難航を極め、新国家樹立には相当な時間がかかる見通しのはずだった。しかし、そんな状況を一変させる出来事が起きた。それは、ドラゴンが人の味を覚えてしまったことだ。下級種であるドレイクやワイバーン、中級種のヒュドラが定期的に都市を襲うようになっていったのだ。
当然人々は抵抗を試みたのだが、各都市の人口を低く押さえてしまっていたことが裏目に出て、なす術無く蹂躙されていったらしい。そんな状況が続けばあっという間に各都市の人々はドラゴンに狩り尽くされていってしまう。1万を越えていた都市の数も、ここ数年で120程度まで減ってしまったのだ。
そうしてここ数年、月に一度新月の夜になると決って現れ、まるで餌のように人間を貪っていくのだという。
「・・・と言うことです。以前は年老いた者も関係なく襲ってきたのですが、いつしか食への拘りが出来たのか、年若い女性しか食べなくなりました」
エリックさんは失明した状態のまま、項垂れるように今起きている事を語ってくれた。
「僕達が治療した女性達は何か関係があるの?」
治療院で見た怪我人は全員女性だったので、気になって聞いてみた。
「・・・我々はドラゴンに対抗する術もなく、抵抗を諦めたのです。その為、月に一度数人の女性をあの石畳の舞台に集め、ドラゴンに捧げていたのです」
「・・・彼女達は納得していたのか?」
「納得していた者も少ないですが居ました・・・しかし、大半は泣き叫び拒絶を・・・」
「その人達はどうしたんだ?」
「・・・逃げられぬように足を潰しました・・・しかし、ドラゴンは怪我をした女には見向きもせず、健康な女性を襲ってきたのです。理由は分かりません」
なんとも吐き気がする話だが、ドラゴンの驚異から逃れるために若い女性を犠牲にしていたということのようだ。強大な力に抗う術がなく、そうするより生きる方法が無かったと言えばそれまでだが、とても僕には理解出来なかった。
「じゃあ、怪我をしていた人達はそうすればドラゴンに襲われることがないからと?」
「・・・はい。彼女達は自ら外壁の階段に昇り、飛び降りたのです・・・」
(なるほど、治療しても絶望したような表情をしていたのはその為か・・・)
エリックさんの説明に、治療院で見た女性達の表情が思い浮かんで納得がいった。
「それで、今回は住人を犠牲にしなくてもいいということで、僕達を歓迎した訳か・・・」
「・・・はい」
「じゃあ、ヒュドラを討伐して怒っていたのは?」
「ドラゴンに手を出せば、後日多数のドラゴンや魔獣達を率いて地区を壊滅させに来るのです。まるで、反抗したことが許せないように・・・。今までにいくつもそんな末路を迎えた地区があったと連絡が来ていました。ですので、先程のダリア殿への暴言はそんな未来を悲観しての事だったのです。どうか、ご容赦を・・・」
エリックさんは頭を地面に擦り付けながら土下座してきた。その様子はもはや頭を下げ過ぎて逆立ちしようとしているような体勢になっていた。
(なるほど、この大陸の魔獣が種族を越えて行動していたのは、ドラゴンが原因か・・・)
人間への制裁の度にスタンピードを起こして襲っていたとすれば、いつしかその状態が魔獣にとっての普通になっていたのかもしれない。
「まぁ、理由を聞いたから僕やみんなにした事を許せるか、と言ったら『否』だけど・・・」
「っ!!ひぃぃ・・・」
僕の言葉にあからさまに恐怖にひきつった表情を浮かべる。それはこの広場に集まっていた多くの住民達も同様に悲鳴が漏れていた。
「ただ、この大陸や都市についての事情を知らず、君達にとっては勝手な行動をとったとも見えるのかな・・・」
大きく息を吐き出し、肩を窄めると、僕の言葉に住民達は顔を上げてこちらを見てきた。
「ダリア・・・では?」
離れたところで事の推移を見守っていたみんなが僕の側へ歩み寄ってきていた。そして、僕の言葉の真意を読み取ったであろうジャンヌが、僕の肩に手を置きながら話しかけてきた。
「この大陸で生活する上でドラゴン達は邪魔だし、増え過ぎた魔獣達もどうにかする必要があるからね。申し訳ないけど排除させてもらおうか!」
僕はみんなに振り返りながら、笑顔でそう宣言した。
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