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第九章 災厄 編
ヨルムンガンド討伐 21
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アマンダさんの助言の元、本来人の目には見えない魔力に頭の中で色を付けてみる。
(火は赤色だろうな。水は青色で、風は緑色。土は橙色、光は黄色、闇は紫色で、空間は・・・う~ん、透明?いや、もっとこう・・・空間・・・藍色かな)
自分の考える各魔法の色を考え終わると、大きく息を吐き出して目を閉じ、集中する。自分の魔力を呼び水に、自然の魔力を集めるのはいつもしていることなのだが、いざ全ての属性を魔力の段階で一つに合わせるということは初めてだ。
「よしっ!」
自分の掛け声を合図に、両手の手のひらをボールを抱えるように胸の前に出して、そこで魔力を混ぜ合わせるような感覚で7種類の自然の魔力を集める。
(・・・くっ!これは・・・)
想像以上の難しさに、眉を顰めてしまう。今までは既に発動した魔法を合わせていたのだが、魔力の段階で合わせようと思うと、全ての属性の魔力を全く同じだけの割合で合わせないと破綻してしまうのだ。
僕は比較的火と風の魔法が得意だし、空間魔法も好んでよく使っていたので、それ以外の魔法の魔力の集まりが若干劣ってしまっているようだ。
(集中・・・集中・・・全て均等な量で混ぜ合わせるように・・・)
得意な魔力を少な目に、苦手な魔力を多めに集めるように感覚を研ぎ澄ます。やがて、手の中で一つに混ぜ合わせることが出来た魔力を発動させる。するとーーー
「「「わぁ・・・」」」
周りからみんなの感嘆の声が聞こえてきた。目を閉じている僕は何がどうなっているのか分からないので、ゆっくりと目を開く。
「こ、これって・・・」
目の前には7色の光輝やく、球体が浮かんでいる。僕はその綺麗な光景に少しの間、見とれてしまっていた。そして、おそるおそるその球体を手のひらに乗せる感覚で引き寄せると、迸っていた虹色の光は薄れ、7色が球体の中で不定形に色めく状態に落ち着いた。
その様子を見ながら何となく理解する。これは自然のエネルギーを凝縮したようなものなのではないかと。近い表現で言えば、7つの魔力を贄として召喚したような感覚だった。
「なんて綺麗なんだ・・・」
その7色の球体に見とれているジャンヌさんがため息を吐きながら感想を口にした。
「凄い力を感じますね・・・どうですか、ダリア様?」
「ちょっと待ってね、試してみるよ」
シャーロットの言葉に、この球体の威力がどれ程のものかと期待するが、さすがに先ほどの爆発を体験した後では、この中庭で試すのは憚られる。
(この球体の状態は、エネルギーを収束しているような感じがする・・・上空に投げて解放してみるか。空なら被害もないだろう。この首都を包囲しているドラゴンも、遠巻きに旋回しているだけだし)
そう考えて、この球体の威力を確認するため、上空高くへと放つ。
「よっ!」
球体を視認できなくなるほど上空へ昇ったことを確認して、解放してみる。するとーーー
『ドゴーーーーーン!!!!!』
「・・・えっ?」
遥か上空で7色の光が弾けると、空一面をその光が覆い尽くした直後に瞬時に光が引くと、まるで太陽のような紅炎がもう一度輝き、直後に耳を劈くような轟音が辺りを包んだ。
「「「キャーーー!!!」」」
よほど驚かしてしまったのだろう、その状況に事の推移を見守っていたみんなが、耳を塞ぎながら叫び声を上げた。更に上空からは、あまりの威力からなのか、視認できるような衝撃波がこちらに迫ってきていた。
(ヤバイ!!)
認識して即座に空間魔法の〈空間断絶〉を最高強度でこの首都全体を守るように展開する。その直後、衝撃波が接触し、空間魔法を呆気なく破壊してしまった。
(マズイマズイマズイ!!!)
即座にそのすぐ後方に、幾重にも〈空間断絶〉を同時展開していく。パリンパリンと、まるで鏡が割れるような小気味良い音が鳴り響くが、僕は正直焦っていた。
(このままだと、首都に被害が・・・)
僕の焦りをよそに、未だ威力の衰え見えない衝撃波は眼前へと迫ってきている。
(頼む!止まれーーー!!)
必死の願いが届いたのか、50枚程の空間魔法を破られたところで勢いは減衰し、首都に被害を出すこと無く収まった。
「「「・・・・・・」」」
そのあまりの光景から、みんな上を向きながら言葉を失っていた。そんなみんなに僕は一応の成功から、少し明るく声を掛けた。
「ゴメンゴメン。何とかこれでヨルムンガンドへの対抗手段が見えてきたよ」
「そ、それは良かったです!・・・で、では、少し休憩しましょうか!その、色々ありましたから・・・」
驚きを隠せない表情で言うフリージアに、少し考えて返答した。
「・・・そうだね、ちょっと近くにいる騎士さんに何があったのかの状況を伝えてから行くから、先に戻っていてくれる?」
「ではフリージア様、私と先に参りましょう。ダリア様の為に紅茶でもご用意いたしましょう」
「そうですね。ではダリア君、先に行っていますね」
彼女達の後ろ姿を見送っていると、ジャンヌさんが声を掛けてきた。
「それで、どうするのだ?」
「どうするって、報告するんだよ?」
「惚けるな。あの力でヨルムンガンドに対抗出来るのかということだ!」
誤魔化すなと言わんばかりに、僕を真剣に見つめながらジャンヌさんは声を上げた。僕は空を仰ぎながら言葉を続ける。
「元が魔法だけあって不安は残るよ。でも、この威力だと街を包囲しているドラゴンに使用できないね・・・」
「やはり、か・・・。そうなるとかなり厳しいな。使い勝手は『祈願の剣』の方が上ということになってしまうか・・・」
「あれを使う気はないよ。みんなを悲しませる結果になりそうだし、僕自身も怖いんだ・・・」
「そうか・・・すまないな、【剣聖】と【天才】の才能を持っているにもかかわらず、君の隣に立てないとは・・・ダリア、私は本当に君と並び立って戦うことは出来ないだろうか?」
ジャンヌさんの懇願に僕は静かに首を振った。
「僕の力でジャンヌさんの認識速度と、移動速度を上げれば戦えるかもしれない・・・」
「だったら!」
「でも、ヨルムンガンドと戦う時には、とても自分以外の誰かに意識を向ける余裕がないんだ・・・」
「そうか・・・。すまないな、無理を言ってしまった」
「僕を気遣ってくれての事でしょ?ありがとう、ジャンヌさん」
彼女と話した後、近くの騎士に先ほどの騒動の原因を教え、安心するように女王に報告して欲しいと伝えた。そして、みんなの居る部屋へと戻った。
そこでは幾分落ち着いたメグが、まだ少しぎこちなさの残る笑顔で僕を迎えてくれた。他のみんなも彼女を気遣ってか、戦いの話ではなく、世間話に終始していた。あそこの店のお菓子は美味しいとか、あっちのお店は紅茶の種類が豊富だったとか、とにかく気を紛らわすようにという気遣いが感じ取れる雰囲気だった。そんな気遣いにメグも徐々にではあるが、普通の笑顔を取り戻していったように見えた。
用意してくれた紅茶を2杯飲み干したところで、僕は明日の事を確認する。
「明日はジャンヌさんを帝国に送っていくけど、それで良かったかな?」
「ああ、それで良い。一緒に居たいのは山々だが、民達の希望の旗印として軍を率いらねばならないからな。昼過ぎくらいには戻っておきたい」
「分かったよ。じゃあ、昼食を一緒にしてから帝国に送っていくね」
「すまないな、ありがとう」
話と話の間、不意に訪れた静寂に少しの居心地の悪さを感じていると、今まで笑顔で話していたメグが、真剣な表情をして僕を見つめて口を開いた。
「ダリア、先程は取り乱してしまってゴメンなさい」
「いや、僕もメグと同じ思いだよ。まさかこんな代償が有るなんてね・・・でも、もう使うことはないから大丈夫だよ!それに、メグとの想い出は他にもいっぱいあるんだから!」
明るくそう言う僕に、メグも柔らかな微笑みを返してくれる。しかし、すぐに真剣な表情になり自分の思いを伝えてくる。
「ダリア、私はもしもの時にはあなたの命を優先して欲しいの。もしあの力でなければヨルムンガンドに対抗し得ないとしたら、躊躇せずに使って欲しい」
「そ、それは・・・」
彼女の言葉に戸惑いを隠せない僕は、なんと返答していいのか言葉が出ない。
「ダリアの私を・・・私達を思ってくれる気持ちは本当に嬉しい。だけど、あなたが居なくなってしまっては・・・私は耐えられない!あなたとの想い出を胸に、あなたの居ない世界で生きていくのは、あなたとの想い出が消えることよりも辛いの!」
その瞳に涙を浮かべながら、彼女は僕に訴えかける。彼女の言葉はよく理解できる。僕だってそうだろう。でも、生きていてさえくれればと思ってしまう僕の考えは、間違っているのだろうか。
「ダリア君、あなたが私たちの事を大切にしてくれている事は本当に幸せです。ですが、私達もあなたの事が大切で、生きていて欲しいということを忘れないでください」
フリージアもメグと一緒の想いなのだろう、その瞳には揺るぎない想いの強さが浮かんでいるようだった。
「ん、私はダリアが居ないとダメと言ったはず!私達を残して居なくなってしまうのは許さない!」
口を尖らせるように、ティアが若干怒っているように僕に訴えかけてくる。
「そうですダリア様!私も妹も、あなたと共に生きていくことが望みであり、幸せなんですよ!?」
シャーロットもまた、真摯な眼差しで言い募ってくる。
「ダリアよ、みんな同じ想いなのだ。自分が犠牲になれば良いなどと考えるなよ」
ジャンヌさんは年上としてまるで諭すように僕の目を鋭く見つめてくるが、その瞳には優しさや思い遣りが感じられる。
「ダリア君、もし私があなたとの想い出を全て失ってしまったとしても、あなたがまた私の前に現れてくれたなら、私はまた必ずダリア君を好きになるよ。だから、大丈夫」
シルヴィアは自信に満ちた表情でそう言った。また好きになると。
「ちょっと待ってください!それは私も同じですよ!記憶が無くても、またダリアを好きになります!」
「私もそうですよ!どんなことがあろうと、ダリア君を思う気持ちは変わりません」
「ん、当然!」
「みなさんの仰る通りですね!」
「私だってそうだ!想い出が無くなったところで、ダリアを想う気持ちに揺らぎなど無い!」
みんなの言葉に、心の中が温かくなるのを感じた。
「みんな、ありがとう。絶対に僕は死なないよ!それに、何があろうと僕もきっとみんなの事をまた好きになるよ!」
「「「っ!!」」」
自分の想いを精一杯言葉に乗せて、みんなへ伝えた。そんな僕の言葉にみんな笑顔を見せてくれた。
(火は赤色だろうな。水は青色で、風は緑色。土は橙色、光は黄色、闇は紫色で、空間は・・・う~ん、透明?いや、もっとこう・・・空間・・・藍色かな)
自分の考える各魔法の色を考え終わると、大きく息を吐き出して目を閉じ、集中する。自分の魔力を呼び水に、自然の魔力を集めるのはいつもしていることなのだが、いざ全ての属性を魔力の段階で一つに合わせるということは初めてだ。
「よしっ!」
自分の掛け声を合図に、両手の手のひらをボールを抱えるように胸の前に出して、そこで魔力を混ぜ合わせるような感覚で7種類の自然の魔力を集める。
(・・・くっ!これは・・・)
想像以上の難しさに、眉を顰めてしまう。今までは既に発動した魔法を合わせていたのだが、魔力の段階で合わせようと思うと、全ての属性の魔力を全く同じだけの割合で合わせないと破綻してしまうのだ。
僕は比較的火と風の魔法が得意だし、空間魔法も好んでよく使っていたので、それ以外の魔法の魔力の集まりが若干劣ってしまっているようだ。
(集中・・・集中・・・全て均等な量で混ぜ合わせるように・・・)
得意な魔力を少な目に、苦手な魔力を多めに集めるように感覚を研ぎ澄ます。やがて、手の中で一つに混ぜ合わせることが出来た魔力を発動させる。するとーーー
「「「わぁ・・・」」」
周りからみんなの感嘆の声が聞こえてきた。目を閉じている僕は何がどうなっているのか分からないので、ゆっくりと目を開く。
「こ、これって・・・」
目の前には7色の光輝やく、球体が浮かんでいる。僕はその綺麗な光景に少しの間、見とれてしまっていた。そして、おそるおそるその球体を手のひらに乗せる感覚で引き寄せると、迸っていた虹色の光は薄れ、7色が球体の中で不定形に色めく状態に落ち着いた。
その様子を見ながら何となく理解する。これは自然のエネルギーを凝縮したようなものなのではないかと。近い表現で言えば、7つの魔力を贄として召喚したような感覚だった。
「なんて綺麗なんだ・・・」
その7色の球体に見とれているジャンヌさんがため息を吐きながら感想を口にした。
「凄い力を感じますね・・・どうですか、ダリア様?」
「ちょっと待ってね、試してみるよ」
シャーロットの言葉に、この球体の威力がどれ程のものかと期待するが、さすがに先ほどの爆発を体験した後では、この中庭で試すのは憚られる。
(この球体の状態は、エネルギーを収束しているような感じがする・・・上空に投げて解放してみるか。空なら被害もないだろう。この首都を包囲しているドラゴンも、遠巻きに旋回しているだけだし)
そう考えて、この球体の威力を確認するため、上空高くへと放つ。
「よっ!」
球体を視認できなくなるほど上空へ昇ったことを確認して、解放してみる。するとーーー
『ドゴーーーーーン!!!!!』
「・・・えっ?」
遥か上空で7色の光が弾けると、空一面をその光が覆い尽くした直後に瞬時に光が引くと、まるで太陽のような紅炎がもう一度輝き、直後に耳を劈くような轟音が辺りを包んだ。
「「「キャーーー!!!」」」
よほど驚かしてしまったのだろう、その状況に事の推移を見守っていたみんなが、耳を塞ぎながら叫び声を上げた。更に上空からは、あまりの威力からなのか、視認できるような衝撃波がこちらに迫ってきていた。
(ヤバイ!!)
認識して即座に空間魔法の〈空間断絶〉を最高強度でこの首都全体を守るように展開する。その直後、衝撃波が接触し、空間魔法を呆気なく破壊してしまった。
(マズイマズイマズイ!!!)
即座にそのすぐ後方に、幾重にも〈空間断絶〉を同時展開していく。パリンパリンと、まるで鏡が割れるような小気味良い音が鳴り響くが、僕は正直焦っていた。
(このままだと、首都に被害が・・・)
僕の焦りをよそに、未だ威力の衰え見えない衝撃波は眼前へと迫ってきている。
(頼む!止まれーーー!!)
必死の願いが届いたのか、50枚程の空間魔法を破られたところで勢いは減衰し、首都に被害を出すこと無く収まった。
「「「・・・・・・」」」
そのあまりの光景から、みんな上を向きながら言葉を失っていた。そんなみんなに僕は一応の成功から、少し明るく声を掛けた。
「ゴメンゴメン。何とかこれでヨルムンガンドへの対抗手段が見えてきたよ」
「そ、それは良かったです!・・・で、では、少し休憩しましょうか!その、色々ありましたから・・・」
驚きを隠せない表情で言うフリージアに、少し考えて返答した。
「・・・そうだね、ちょっと近くにいる騎士さんに何があったのかの状況を伝えてから行くから、先に戻っていてくれる?」
「ではフリージア様、私と先に参りましょう。ダリア様の為に紅茶でもご用意いたしましょう」
「そうですね。ではダリア君、先に行っていますね」
彼女達の後ろ姿を見送っていると、ジャンヌさんが声を掛けてきた。
「それで、どうするのだ?」
「どうするって、報告するんだよ?」
「惚けるな。あの力でヨルムンガンドに対抗出来るのかということだ!」
誤魔化すなと言わんばかりに、僕を真剣に見つめながらジャンヌさんは声を上げた。僕は空を仰ぎながら言葉を続ける。
「元が魔法だけあって不安は残るよ。でも、この威力だと街を包囲しているドラゴンに使用できないね・・・」
「やはり、か・・・。そうなるとかなり厳しいな。使い勝手は『祈願の剣』の方が上ということになってしまうか・・・」
「あれを使う気はないよ。みんなを悲しませる結果になりそうだし、僕自身も怖いんだ・・・」
「そうか・・・すまないな、【剣聖】と【天才】の才能を持っているにもかかわらず、君の隣に立てないとは・・・ダリア、私は本当に君と並び立って戦うことは出来ないだろうか?」
ジャンヌさんの懇願に僕は静かに首を振った。
「僕の力でジャンヌさんの認識速度と、移動速度を上げれば戦えるかもしれない・・・」
「だったら!」
「でも、ヨルムンガンドと戦う時には、とても自分以外の誰かに意識を向ける余裕がないんだ・・・」
「そうか・・・。すまないな、無理を言ってしまった」
「僕を気遣ってくれての事でしょ?ありがとう、ジャンヌさん」
彼女と話した後、近くの騎士に先ほどの騒動の原因を教え、安心するように女王に報告して欲しいと伝えた。そして、みんなの居る部屋へと戻った。
そこでは幾分落ち着いたメグが、まだ少しぎこちなさの残る笑顔で僕を迎えてくれた。他のみんなも彼女を気遣ってか、戦いの話ではなく、世間話に終始していた。あそこの店のお菓子は美味しいとか、あっちのお店は紅茶の種類が豊富だったとか、とにかく気を紛らわすようにという気遣いが感じ取れる雰囲気だった。そんな気遣いにメグも徐々にではあるが、普通の笑顔を取り戻していったように見えた。
用意してくれた紅茶を2杯飲み干したところで、僕は明日の事を確認する。
「明日はジャンヌさんを帝国に送っていくけど、それで良かったかな?」
「ああ、それで良い。一緒に居たいのは山々だが、民達の希望の旗印として軍を率いらねばならないからな。昼過ぎくらいには戻っておきたい」
「分かったよ。じゃあ、昼食を一緒にしてから帝国に送っていくね」
「すまないな、ありがとう」
話と話の間、不意に訪れた静寂に少しの居心地の悪さを感じていると、今まで笑顔で話していたメグが、真剣な表情をして僕を見つめて口を開いた。
「ダリア、先程は取り乱してしまってゴメンなさい」
「いや、僕もメグと同じ思いだよ。まさかこんな代償が有るなんてね・・・でも、もう使うことはないから大丈夫だよ!それに、メグとの想い出は他にもいっぱいあるんだから!」
明るくそう言う僕に、メグも柔らかな微笑みを返してくれる。しかし、すぐに真剣な表情になり自分の思いを伝えてくる。
「ダリア、私はもしもの時にはあなたの命を優先して欲しいの。もしあの力でなければヨルムンガンドに対抗し得ないとしたら、躊躇せずに使って欲しい」
「そ、それは・・・」
彼女の言葉に戸惑いを隠せない僕は、なんと返答していいのか言葉が出ない。
「ダリアの私を・・・私達を思ってくれる気持ちは本当に嬉しい。だけど、あなたが居なくなってしまっては・・・私は耐えられない!あなたとの想い出を胸に、あなたの居ない世界で生きていくのは、あなたとの想い出が消えることよりも辛いの!」
その瞳に涙を浮かべながら、彼女は僕に訴えかける。彼女の言葉はよく理解できる。僕だってそうだろう。でも、生きていてさえくれればと思ってしまう僕の考えは、間違っているのだろうか。
「ダリア君、あなたが私たちの事を大切にしてくれている事は本当に幸せです。ですが、私達もあなたの事が大切で、生きていて欲しいということを忘れないでください」
フリージアもメグと一緒の想いなのだろう、その瞳には揺るぎない想いの強さが浮かんでいるようだった。
「ん、私はダリアが居ないとダメと言ったはず!私達を残して居なくなってしまうのは許さない!」
口を尖らせるように、ティアが若干怒っているように僕に訴えかけてくる。
「そうですダリア様!私も妹も、あなたと共に生きていくことが望みであり、幸せなんですよ!?」
シャーロットもまた、真摯な眼差しで言い募ってくる。
「ダリアよ、みんな同じ想いなのだ。自分が犠牲になれば良いなどと考えるなよ」
ジャンヌさんは年上としてまるで諭すように僕の目を鋭く見つめてくるが、その瞳には優しさや思い遣りが感じられる。
「ダリア君、もし私があなたとの想い出を全て失ってしまったとしても、あなたがまた私の前に現れてくれたなら、私はまた必ずダリア君を好きになるよ。だから、大丈夫」
シルヴィアは自信に満ちた表情でそう言った。また好きになると。
「ちょっと待ってください!それは私も同じですよ!記憶が無くても、またダリアを好きになります!」
「私もそうですよ!どんなことがあろうと、ダリア君を思う気持ちは変わりません」
「ん、当然!」
「みなさんの仰る通りですね!」
「私だってそうだ!想い出が無くなったところで、ダリアを想う気持ちに揺らぎなど無い!」
みんなの言葉に、心の中が温かくなるのを感じた。
「みんな、ありがとう。絶対に僕は死なないよ!それに、何があろうと僕もきっとみんなの事をまた好きになるよ!」
「「「っ!!」」」
自分の想いを精一杯言葉に乗せて、みんなへ伝えた。そんな僕の言葉にみんな笑顔を見せてくれた。
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