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第八章 戦争 編
戦争介入 39
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「「「ティアさん!!!」」」
「ん、みんな久しぶり」
ティアを連れて屋敷へ戻ると、リビングに揃っていたみんなが驚きの声を上げた。そんなみんなに、ティアは何喰わぬ顔で片手を上げながらいつものように冷静に応えていた。
「王国で色々あって、ティアも連れてきたんだ。驚かしちゃったかな?」
「驚いたって・・・何がどうなれば王国との会談で、ティアさんを連れて帰れるのですか?」
メグが理解できないといった表情で聞いて来たので、とりあえず事の顛末をみんなに伝えるため、テーブルに座ってゆっくり話すことになった。
僕は王国の会談での話し合いについての内容を要点を絞って伝えていく。王国は僕の提案を受諾したということ、魔獣の討伐については月に一度の頻度で場所を特定して行うということ、そしてティアのお父さんである前宰相の処分について僕に判断を委ねられたことを。
「・・・なるほど、つまりダリア君はティアさんのお父様である前宰相をどうこうするつもりはなかった。しかし、処罰を下さなければ今後に差し障ると考えて、ティアさんを連れていくということになったのですね?」
フリージアがティアについての話を要約するように確認してきた。
「処罰だからって言っても、ちゃんとティアの意思は確認して、だけどね」
「それは、ティアさんの表情を見れば分かります。というかティアさん、ちょっと近過ぎませんか?」
メグが僕の隣に腰かけているティアに対してそう指摘する。確かに彼女はわざわざ椅子を近づけて、肩が触れるかどうかというくらいまで近い距離に座っている。
「ん、これが普通。それにダリアは言った。私を幸せにしてくれると。だからこれは当然の事」
「え?ティアさん、今なんて言いました?」
シルヴィアが笑っていない笑顔で身を乗り出してティアの言葉を確認してくる。
「ん、ダリアは私の事を幸せにしてくれると言った!」
『えっへん』と擬音が付きそうな態度でティアが返答すると、メグ、フリージア、シルヴィアの3人がジロリと僕に視線を投げ掛けてきた。
「ダリア、ちょっと私達に説明してもらえるかしら?」
「ええ、それはもう分かりやすくお願いしますね?」
「ダリア君、理解できないところは聞き直すから、きちんと答えてね?」
3人の迫力にたじろぎながらも、ティアの部屋での事のあらましを説明する。僕としては彼女の願望を聞き出したいという思いと、その願いを叶えてあげたいと考えて伝えた言葉なのだが、説明が進むたびに彼女達の不満の表情が見て取れた。ただ、その様子は怒っているというよりも、もっと別な感情のような気がしていた。
「・・・なるほど、状況は分かりました」
「はぁ、そんなことを言われれば、ティアさんがそうなるのも納得ですね」
「・・・羨ましいです」
「ん、つまり私が正妻!」
「「「それはまだ決まってません!!!」」」
みんなは表面的には言い争いをしているような雰囲気なのだが、その実、楽しそうだった。それは彼女達の表情からも感じとれ、久しぶりの友人との再開でもあるし、以前会った時のような家のしがらみや責務からティアが考え方を変えて、前向きになったからかもしれない。
「って、ダリア君?何で自分は関係ないような顔して見ているんですか?」
僕がぼんやりとみんなのやり取りを見ていると、シルヴィアが目敏くそんな態度の僕を指摘した。
「もぅ、ダリアのせいでこうなっているんですからね!」
「もう少しダリア君には自覚をもって欲しいですね!」
「ん、でもそれがダリアなのは分かってる」
「むむ、一人だけ理解ある立場にならないでください!」
ティアは僕を見つめながら、にっこり微笑んできたが、その様子をジト目で見ながらシルヴィアが声を荒げた。
「ん、これが正妻の余裕」
「「「まだ決まってません!!!」」」
そんないつもより少しだけ騒々しい会話は、夕食の時間がくるまで続いたのだった。
夕食後、メグから公国の女王との会談の日時が決まったと言われた。
「明後日の10時からとなります。リバーバベルへは既に連絡を入れて了承も得ていますので、問題ないです」
「分かったよ。色々尽力してくれてありがとう」
「いいえ、これも公国の為でもあります」
メグは微笑みながら僕の感謝にそう返した。
「じゃあ、当日は先にリバーバベルに寄って、3人で会談へ臨むって事で言いかな?」
「はい。それで問題ありません」
当日の動きを彼女に確認すると、少し気は重いが、明日にはある場所に行って話をしてこなければならない事に少し緊張してしまった。そんな中、フリージアがしみじみと話し出した。
「いよいよこれで公国との会談も丸く収まれば、一先ず各国の戦争は回避され、平和に向けて動き出すということになりますね・・・本当にダリア君は素晴らしいです」
「私もダリア君がいなければどうなっていたか分かりません。それどころか、様々な国と渡り合って戦争を止めちゃうんですから、英雄として語り継がれるんじゃないですか?」
シルヴィアは突然、僕の事を英雄なんて言い出した。
「ん、神人だと印象が悪いかもしれないから、いっそ英雄とか勇者に名乗りを変えるべき」
「まぁ、それは良い考えかもしれませんね!」
ティアの提案にメグが賛同を示すが、僕はその意見には遠慮したかった。
「いや、さすがに自分の事を英雄だ、勇者だなんて言うのはおこがましくない?」
恥ずかしさもあったので、そういった建前でティアの提案を封殺しようと考えた。
「ん~、確かに自分で名乗るのはどうかもですね・・・やはり周りの人達からそう言われないといけませんね」
フリージアが顎に指を当てながら、情景を思い浮かべるように語った。
「あっ、それなら良い考えがあります!」
両手を合わせて良い考えを思い付いたと、メグが声を上げた。
「えっと・・・聞いていい?」
「ふふふ、楽しみにしていてください」
そこはかとなく嫌な予感がしないでもないが、絶対止めて欲しいと声高に主張するほどの事でもない。そう考え、僕は苦笑いを浮かべるだけだった。
明日の戦略を考え終えた後に、みんなにあることを伝えていなかった事を思い出し、恐る恐るといった感じで伝える。
「と、ところで少しみんなに報告することがあるんだけど、いいかな?」
「改まってどうしたんですか?」
僕の微妙な態度に、シルヴィアが首を傾げながら疑問を呈する。
「う、うん。実は帝国に行った時にちょっとお願いをされたことがあって・・・」
「お願いですか?」
フリージアが訝しげに聞き返してくる。
「そ、そう。皇帝に言われて・・・」
「帝国の皇帝にですか?」
メグが眉間にシワを寄せて僕を見つめてくる。
「実は、帝国の【剣聖】は皇帝の姪らしくて、その、修行の相手をしてやって欲しいと言われて、共に行動させてやって欲しいと・・・」
「ん、姪と言うからには女性。ダリアはどれだけ女の子を捕まえてくる気?」
口を尖らせながらティアが厳しい視線を投げ掛けてくる。
「いやいや、それを断ると帝国と友好関係を築く気がないようにとられる雰囲気だったから、仕方なかったんだよ」
「ん~、帝国の皇帝ならやりかねないですね・・・」
「そうですね。何より彼女自身も外堀を埋めてくる前例がありますから、油断できませんね」
メグとフリージアは、皇帝の考えや以前ジャンヌさんが僕に短剣を渡したことなどを思い出し、警戒感を露にしているようだった。
「ん、みんな帝国の【剣聖】について知ってるの?」
2人がジャンヌさんについて議論していると、彼女との間にあった事を知らないティアがシルヴィアに聞いていた。
「えぇ、実はですね・・・」
シルヴィアはジャンヌさんとの経緯についてティアに伝えた。戦場で求婚されたことや、短剣を渡されたこと、そしてその意味について若干怒気を滲ませながら語っていた。
「ん、それはダリアが言いくるめられてしまわないか心配」
「そうですよね。しかも相手は皇帝の姪という立場を上手く使ってきていますし、侮れないです!」
「ん、向こうがその気なら、こっちも受けて立つ」
「はい。私も負ける気は毛頭ありません!」
僕を置いてけぼりに、みんなジャンヌさんとの対決姿勢を鮮明にしているようだった。約一週間後から始まってしまうジャンヌさんを含めた生活に一抹の不安を感じながら、その日は終わった。
「ん、みんな久しぶり」
ティアを連れて屋敷へ戻ると、リビングに揃っていたみんなが驚きの声を上げた。そんなみんなに、ティアは何喰わぬ顔で片手を上げながらいつものように冷静に応えていた。
「王国で色々あって、ティアも連れてきたんだ。驚かしちゃったかな?」
「驚いたって・・・何がどうなれば王国との会談で、ティアさんを連れて帰れるのですか?」
メグが理解できないといった表情で聞いて来たので、とりあえず事の顛末をみんなに伝えるため、テーブルに座ってゆっくり話すことになった。
僕は王国の会談での話し合いについての内容を要点を絞って伝えていく。王国は僕の提案を受諾したということ、魔獣の討伐については月に一度の頻度で場所を特定して行うということ、そしてティアのお父さんである前宰相の処分について僕に判断を委ねられたことを。
「・・・なるほど、つまりダリア君はティアさんのお父様である前宰相をどうこうするつもりはなかった。しかし、処罰を下さなければ今後に差し障ると考えて、ティアさんを連れていくということになったのですね?」
フリージアがティアについての話を要約するように確認してきた。
「処罰だからって言っても、ちゃんとティアの意思は確認して、だけどね」
「それは、ティアさんの表情を見れば分かります。というかティアさん、ちょっと近過ぎませんか?」
メグが僕の隣に腰かけているティアに対してそう指摘する。確かに彼女はわざわざ椅子を近づけて、肩が触れるかどうかというくらいまで近い距離に座っている。
「ん、これが普通。それにダリアは言った。私を幸せにしてくれると。だからこれは当然の事」
「え?ティアさん、今なんて言いました?」
シルヴィアが笑っていない笑顔で身を乗り出してティアの言葉を確認してくる。
「ん、ダリアは私の事を幸せにしてくれると言った!」
『えっへん』と擬音が付きそうな態度でティアが返答すると、メグ、フリージア、シルヴィアの3人がジロリと僕に視線を投げ掛けてきた。
「ダリア、ちょっと私達に説明してもらえるかしら?」
「ええ、それはもう分かりやすくお願いしますね?」
「ダリア君、理解できないところは聞き直すから、きちんと答えてね?」
3人の迫力にたじろぎながらも、ティアの部屋での事のあらましを説明する。僕としては彼女の願望を聞き出したいという思いと、その願いを叶えてあげたいと考えて伝えた言葉なのだが、説明が進むたびに彼女達の不満の表情が見て取れた。ただ、その様子は怒っているというよりも、もっと別な感情のような気がしていた。
「・・・なるほど、状況は分かりました」
「はぁ、そんなことを言われれば、ティアさんがそうなるのも納得ですね」
「・・・羨ましいです」
「ん、つまり私が正妻!」
「「「それはまだ決まってません!!!」」」
みんなは表面的には言い争いをしているような雰囲気なのだが、その実、楽しそうだった。それは彼女達の表情からも感じとれ、久しぶりの友人との再開でもあるし、以前会った時のような家のしがらみや責務からティアが考え方を変えて、前向きになったからかもしれない。
「って、ダリア君?何で自分は関係ないような顔して見ているんですか?」
僕がぼんやりとみんなのやり取りを見ていると、シルヴィアが目敏くそんな態度の僕を指摘した。
「もぅ、ダリアのせいでこうなっているんですからね!」
「もう少しダリア君には自覚をもって欲しいですね!」
「ん、でもそれがダリアなのは分かってる」
「むむ、一人だけ理解ある立場にならないでください!」
ティアは僕を見つめながら、にっこり微笑んできたが、その様子をジト目で見ながらシルヴィアが声を荒げた。
「ん、これが正妻の余裕」
「「「まだ決まってません!!!」」」
そんないつもより少しだけ騒々しい会話は、夕食の時間がくるまで続いたのだった。
夕食後、メグから公国の女王との会談の日時が決まったと言われた。
「明後日の10時からとなります。リバーバベルへは既に連絡を入れて了承も得ていますので、問題ないです」
「分かったよ。色々尽力してくれてありがとう」
「いいえ、これも公国の為でもあります」
メグは微笑みながら僕の感謝にそう返した。
「じゃあ、当日は先にリバーバベルに寄って、3人で会談へ臨むって事で言いかな?」
「はい。それで問題ありません」
当日の動きを彼女に確認すると、少し気は重いが、明日にはある場所に行って話をしてこなければならない事に少し緊張してしまった。そんな中、フリージアがしみじみと話し出した。
「いよいよこれで公国との会談も丸く収まれば、一先ず各国の戦争は回避され、平和に向けて動き出すということになりますね・・・本当にダリア君は素晴らしいです」
「私もダリア君がいなければどうなっていたか分かりません。それどころか、様々な国と渡り合って戦争を止めちゃうんですから、英雄として語り継がれるんじゃないですか?」
シルヴィアは突然、僕の事を英雄なんて言い出した。
「ん、神人だと印象が悪いかもしれないから、いっそ英雄とか勇者に名乗りを変えるべき」
「まぁ、それは良い考えかもしれませんね!」
ティアの提案にメグが賛同を示すが、僕はその意見には遠慮したかった。
「いや、さすがに自分の事を英雄だ、勇者だなんて言うのはおこがましくない?」
恥ずかしさもあったので、そういった建前でティアの提案を封殺しようと考えた。
「ん~、確かに自分で名乗るのはどうかもですね・・・やはり周りの人達からそう言われないといけませんね」
フリージアが顎に指を当てながら、情景を思い浮かべるように語った。
「あっ、それなら良い考えがあります!」
両手を合わせて良い考えを思い付いたと、メグが声を上げた。
「えっと・・・聞いていい?」
「ふふふ、楽しみにしていてください」
そこはかとなく嫌な予感がしないでもないが、絶対止めて欲しいと声高に主張するほどの事でもない。そう考え、僕は苦笑いを浮かべるだけだった。
明日の戦略を考え終えた後に、みんなにあることを伝えていなかった事を思い出し、恐る恐るといった感じで伝える。
「と、ところで少しみんなに報告することがあるんだけど、いいかな?」
「改まってどうしたんですか?」
僕の微妙な態度に、シルヴィアが首を傾げながら疑問を呈する。
「う、うん。実は帝国に行った時にちょっとお願いをされたことがあって・・・」
「お願いですか?」
フリージアが訝しげに聞き返してくる。
「そ、そう。皇帝に言われて・・・」
「帝国の皇帝にですか?」
メグが眉間にシワを寄せて僕を見つめてくる。
「実は、帝国の【剣聖】は皇帝の姪らしくて、その、修行の相手をしてやって欲しいと言われて、共に行動させてやって欲しいと・・・」
「ん、姪と言うからには女性。ダリアはどれだけ女の子を捕まえてくる気?」
口を尖らせながらティアが厳しい視線を投げ掛けてくる。
「いやいや、それを断ると帝国と友好関係を築く気がないようにとられる雰囲気だったから、仕方なかったんだよ」
「ん~、帝国の皇帝ならやりかねないですね・・・」
「そうですね。何より彼女自身も外堀を埋めてくる前例がありますから、油断できませんね」
メグとフリージアは、皇帝の考えや以前ジャンヌさんが僕に短剣を渡したことなどを思い出し、警戒感を露にしているようだった。
「ん、みんな帝国の【剣聖】について知ってるの?」
2人がジャンヌさんについて議論していると、彼女との間にあった事を知らないティアがシルヴィアに聞いていた。
「えぇ、実はですね・・・」
シルヴィアはジャンヌさんとの経緯についてティアに伝えた。戦場で求婚されたことや、短剣を渡されたこと、そしてその意味について若干怒気を滲ませながら語っていた。
「ん、それはダリアが言いくるめられてしまわないか心配」
「そうですよね。しかも相手は皇帝の姪という立場を上手く使ってきていますし、侮れないです!」
「ん、向こうがその気なら、こっちも受けて立つ」
「はい。私も負ける気は毛頭ありません!」
僕を置いてけぼりに、みんなジャンヌさんとの対決姿勢を鮮明にしているようだった。約一週間後から始まってしまうジャンヌさんを含めた生活に一抹の不安を感じながら、その日は終わった。
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