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第八章 戦争 編
戦争介入 19
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◆
side シャーロット・マリーゴールド
マリーゴールド公爵家、それは教会派閥でありながら王派閥に所属するスパイという存在だと教会派閥からは見られている。しかし、実際は二重スパイとしてどちらの派閥の情報も収集しているという、特殊な家柄だった。正確な表現をするならば、どちらの派閥にも所属しているし、どちらの派閥にも所属していないというものだ。
そんな家に生まれた私は、幼い頃よりその使命を果たさんと、様々な教育を受けてきた。知識や魔法技術はもちろんの事、人心掌握術や各派閥の権力を持つ人物等の情報を頭に叩き込むことをしていた。
私が成長するごとに、教育はさらに高度になっていった。とりわけ12歳を過ぎたあたりから、女性という性別を武器にした情報収集方法についてお母様からの指導を受けた時には、この家に生まれてきた事を後悔したのを今でもよく覚えている。好きでもない男性に身体を許すなんて、思春期の私には理解できない行動だと思ったが、当時の私はただお母様の指導に頷くことしか出来なかった。
そうして15歳になり、学園に入学するとまずゲンティウス王子に近づいた。既に王国の聖女と言われるフリージア様と婚約していたが、側室の座を狙うように見せて猫を被って近づいた。王子は案の定下卑た笑いをしながらも私を受け入れ、学園ではほとんど行動を共にするまで近づくことに成功した。
王子は面白いように王派閥の内情を話してくれる。一応私は王派閥ということにもなっているので安心しているのかもしれないが、まるで自らの自慢話のように話す様は、私の手のひらの上で転がっているようで、いっそ滑稽だった。
しかし、そんな生活に異変が訪れた。私は家族を人質に取られ、宰相の言いなりにならざるを得なくなってしまったのだった。私に与えられた任務は、ダリア・タンジーの懐に潜り込み、その動向を報告すること。そして、期を見て始末することと、もう一つ・・・。
(私が失敗すれば家族の命はない・・・王国の騎士の中には私の監視役が何人もいる。任務の遂行が不可能になったら自害しろ、か・・・)
私は公国の王城に行ったときに、こちらの行動目的などを『調』の2人に渡して指示を受け取っていた。ダリアが『もう一度ティアに会えるチャンスがこない』と溢していたのは、私が報告で彼女に接触しようとしているとことを宰相に伝えたからだろう。
(彼はきっと、全ての不条理に抗える力を持っている。そのくせ中身はまだ子供で、あの外見・・・)
その頼もしさは、女性として魅力を感じないわけが無いし、その言動は母性本能をくすぐってくる。もう一度でも彼と話せば、きっとティアさんは全てをなげうってでも彼に付いていくことを選ぶだろう。その機会が来れば、だが。
(さぁ、私は私のすべき事を実行するだけよ)
少し過去を思い起こしていた私は、いよいよその時が来たことを感じて自分に言い聞かせる。彼は私の事を信頼してくれているのか、その身体に問題なく触れることはこの戦場に来てからも確認している。あとは、『調』の工作員から受け取った、毒が塗られた小刀で彼に小さな傷だけでも付けられれば、私の任務は終わる。
(彼はどう思うでしょうね、私が裏切ったと分かったら・・・私の事を殺すのかしら・・・それとも・・・)
彼の今までの行動を聞くに、自分の敵に対しては容赦の無い対応をしている。彼を陥れようとした貴族に至っては、屋敷に居た関係者が丸ごと消されているというような徹底ぶりだった。あんな無邪気な顔をして、そんな事を躊躇無く実行できる彼が私は恐ろしかった。しかしその反面、彼が味方であればこれ以上安心なことはないだろうとも思っている。
(ダイヤランクを歯牙にも掛けず、貴族の地位を捨てでも助けてくれる・・・まさに物語の王子様のようね・・・)
そんな人物に刃を向けなければならいのは気が重くなるが、やらなければ私だけでなく家族も処刑されるのだ。私に選択肢など無い。彼に助けを求めたいと考えなかった訳ではないが、私の行動がどこからバレるか分からない現状で、下手な行動を起こして家族を危険に晒すようなリスクは避けたかった。
そして今、私の前で彼はまたしても一人の女性を手込めにしていた。相手はあの帝国の【剣聖】だった。彼女がまさか自分よりも強い男性を結婚相手と決めていたとは知らなかったが、目隠しをしていた闇が晴れてからの彼女の表情を見るに、ただ自分よりも上の実力だから彼に求婚したのではないように見えた。
(ふふふ、またみんな騒ぎになるわね・・・惜しむらくは、その様子を見ることが叶わないことかしら・・・)
そんな事を考えている自分の未練がましい思考を振りほどき、懐にある小刀の感触を確かめながら彼の背後に近づいていく。彼は私が近づいていることに気づいているはずだが、その背中は無防備にも見える。この時、この瞬間まで、彼を神のようにも崇めながら信用させているのだ、警戒されては逆に困ってしまう。
そして、いよいよ手を伸ばせば彼に触れられる位置まで来ると、息を整えて小刀の柄を握り込む。
(お願い!上手く行って!)
心の中で叫びながら、彼の背中に刃を突き刺す。
『ザシュ』
「・・・・・・」
手応えはあったと思った。刃が彼の背中に触れるその瞬間まで、彼は無防備で私の行動に警戒もしていなかったのだから。
「えっ?」
彼はこの状況が理解できないといった声をあげて振り返り、驚きの表情を私に向けてきた。
◇
何が起きたか理解できない。いや、なんでこうなっているのか理解できない。シャーロットは小刀を僕に突き刺していたのだ。驚き、振り返って見た彼女の表情は、氷のように冷たい視線を僕に向けていた。
「何で・・・こんな?」
僕の問い掛けに、彼女は握っていた小刀の柄を離し、そのまま静かに距離を取った。彼女が僕の背中に指した小刀はそのままに。
「何で?分かるでしょ?私は端からあなたの仲間なんかじゃなかったの。潜り込んであなたを殺す機会を窺っていたのよ」
「そんな・・・だって君はあんなにボロボロになって・・・」
「ええ、そうよ。あなたに信頼されるためにね。痛かったわ、本当に。でも、全て上手くいった。間もなくあなたは死ぬ。王国特性の猛毒よ?僅かでも体内に入ればすぐに全身が麻痺し、数分でもがき苦しみ死ぬの」
感情の見えない表情のまま、彼女は僕に毒を使ったのだと言ってくる。
「お、おい!貴様!神人の仲間ではなかったのか!?」
この状況に、ジャンヌさんが困惑した表情でシャーロットを詰問する。ジャンヌさんほどの力量があればシャーロットの行動に気づいたかもしれないが、僕の仲間だと思っていたことと、僕の死角になるように彼女が近づいてきていたので、気づけなかったのだろう。
「はっ?仲間?あなたには私が彼の仲間に見えていたの?だとしたら、私の演技も【剣聖】ほどの実力者を欺けるまでに上達したってことかしら?」
彼女はことさらジャンヌさんを挑発するような視線と言葉遣いだった。
「ふっ。神人よ、人を見る目はまだまだ子供のようだな?」
「あら、いいのかしらそんなに落ち着いていて?あなたの愛しい『神人』は間もなく死んでしまうのよ?」
「ははは、お前は何を言っている!?この私が認めた男が、こんなことで死ぬわけなかろう!そうだろ?」
ジャンヌさんは、胸を反らしながら僕に笑顔を向けてきた。僕はそんな彼女に苦笑いを浮かべながら、背中に刺さっていた小刀を取った。
「ほら、言った通りだろ?」
何故かジャンヌさんが自慢げに、シャーロットへ不敵な笑みを浮かべて挑発している。
「・・・光魔法の〈毒回復〉程度でこの猛毒は治療できないはずですが・・・」
「・・・シャーロットにも僕の才能の事は話していたでしょ?」
「毒が身体に回る速度を遅くしているのですか?」
「違うよ?」
才能について話したことを思い浮かべると、みんなには寿命についての事を主に話していただけだった事を思い出す。さらに、みんなの寿命を遅らせる事が出来ると伝えてあるので、僕自身の時間を巻き戻すことも出来るとは思わなかったのかもしれない。
僕がとった方法は単純に、シャーロットに刺された時点で自分の時間を巻き戻して、刺されたことを無かったことにしたのだ。その時点で、小刀は僕の背中から抜け落ち、服に引っ掛かっていただけだった。
「はぁ、痛みや毒の効果で【才能】や魔法を使う集中力が削がれると思ったのに・・・あなたは呻き声一つ上げない・・・その様子では、本当に毒も効かない・・・手の付けようがないですね・・・」
呆れた声を上げながらもその表情に焦りはない。こうなることも予想して行動に出たと言うことだろう。
(そうなると、次ぎは何をしようとしてくるかな?)
シャーロットの動きを警戒しているのは僕だけでなく、背後のジャンヌさんも警戒しているようだ。ただ、彼女には動いて欲しくなかったので、掌を彼女に向けて動かないで欲しいと意思表示をした。
「っ!!」
すると、ジャンヌさんの殺気が和らぎ、警戒を解いた気配がした。
「あら、さすがダリア様、お優しい事ですね」
僕の行動の意図を察したらしいシャーロットが挑発的な視線で僕に語り掛けてくる。本当に今の彼女こそが本性なのか、それとも何か脅されていて仕方なく行動しているかは分からないが、僕にはどうしても彼女がこんな行動に出る理由が分からない。だからこそ確認しておきたい。
「ひとつ聞いても言い?」
「・・何ですの?」
「君は今・・・僕の助けを必要としてる?」
「っ!!」
彼女にとっては予想外の質問だったのか、僅かに表情が動いた。しかしそれは一瞬の事で、すぐに冷酷な表情になり憎々しげに僕に告げる。
「はっ!!まだ私を仲間だと思っているの?だとしたら、本当に甘ちゃんのただのバカよ!!!」
叫ぶようにそう言うと、彼女は懐から何かを取り出し、地面に投げつけた。『ピュー』という音と共に空に赤い閃光が広がった。学園の実地訓練で見た、これはーーー
「信号弾!?」
「この戦争は止めさせない!この大地が血で赤く染まれば、もう誰にも止められない!!」
side シャーロット・マリーゴールド
マリーゴールド公爵家、それは教会派閥でありながら王派閥に所属するスパイという存在だと教会派閥からは見られている。しかし、実際は二重スパイとしてどちらの派閥の情報も収集しているという、特殊な家柄だった。正確な表現をするならば、どちらの派閥にも所属しているし、どちらの派閥にも所属していないというものだ。
そんな家に生まれた私は、幼い頃よりその使命を果たさんと、様々な教育を受けてきた。知識や魔法技術はもちろんの事、人心掌握術や各派閥の権力を持つ人物等の情報を頭に叩き込むことをしていた。
私が成長するごとに、教育はさらに高度になっていった。とりわけ12歳を過ぎたあたりから、女性という性別を武器にした情報収集方法についてお母様からの指導を受けた時には、この家に生まれてきた事を後悔したのを今でもよく覚えている。好きでもない男性に身体を許すなんて、思春期の私には理解できない行動だと思ったが、当時の私はただお母様の指導に頷くことしか出来なかった。
そうして15歳になり、学園に入学するとまずゲンティウス王子に近づいた。既に王国の聖女と言われるフリージア様と婚約していたが、側室の座を狙うように見せて猫を被って近づいた。王子は案の定下卑た笑いをしながらも私を受け入れ、学園ではほとんど行動を共にするまで近づくことに成功した。
王子は面白いように王派閥の内情を話してくれる。一応私は王派閥ということにもなっているので安心しているのかもしれないが、まるで自らの自慢話のように話す様は、私の手のひらの上で転がっているようで、いっそ滑稽だった。
しかし、そんな生活に異変が訪れた。私は家族を人質に取られ、宰相の言いなりにならざるを得なくなってしまったのだった。私に与えられた任務は、ダリア・タンジーの懐に潜り込み、その動向を報告すること。そして、期を見て始末することと、もう一つ・・・。
(私が失敗すれば家族の命はない・・・王国の騎士の中には私の監視役が何人もいる。任務の遂行が不可能になったら自害しろ、か・・・)
私は公国の王城に行ったときに、こちらの行動目的などを『調』の2人に渡して指示を受け取っていた。ダリアが『もう一度ティアに会えるチャンスがこない』と溢していたのは、私が報告で彼女に接触しようとしているとことを宰相に伝えたからだろう。
(彼はきっと、全ての不条理に抗える力を持っている。そのくせ中身はまだ子供で、あの外見・・・)
その頼もしさは、女性として魅力を感じないわけが無いし、その言動は母性本能をくすぐってくる。もう一度でも彼と話せば、きっとティアさんは全てをなげうってでも彼に付いていくことを選ぶだろう。その機会が来れば、だが。
(さぁ、私は私のすべき事を実行するだけよ)
少し過去を思い起こしていた私は、いよいよその時が来たことを感じて自分に言い聞かせる。彼は私の事を信頼してくれているのか、その身体に問題なく触れることはこの戦場に来てからも確認している。あとは、『調』の工作員から受け取った、毒が塗られた小刀で彼に小さな傷だけでも付けられれば、私の任務は終わる。
(彼はどう思うでしょうね、私が裏切ったと分かったら・・・私の事を殺すのかしら・・・それとも・・・)
彼の今までの行動を聞くに、自分の敵に対しては容赦の無い対応をしている。彼を陥れようとした貴族に至っては、屋敷に居た関係者が丸ごと消されているというような徹底ぶりだった。あんな無邪気な顔をして、そんな事を躊躇無く実行できる彼が私は恐ろしかった。しかしその反面、彼が味方であればこれ以上安心なことはないだろうとも思っている。
(ダイヤランクを歯牙にも掛けず、貴族の地位を捨てでも助けてくれる・・・まさに物語の王子様のようね・・・)
そんな人物に刃を向けなければならいのは気が重くなるが、やらなければ私だけでなく家族も処刑されるのだ。私に選択肢など無い。彼に助けを求めたいと考えなかった訳ではないが、私の行動がどこからバレるか分からない現状で、下手な行動を起こして家族を危険に晒すようなリスクは避けたかった。
そして今、私の前で彼はまたしても一人の女性を手込めにしていた。相手はあの帝国の【剣聖】だった。彼女がまさか自分よりも強い男性を結婚相手と決めていたとは知らなかったが、目隠しをしていた闇が晴れてからの彼女の表情を見るに、ただ自分よりも上の実力だから彼に求婚したのではないように見えた。
(ふふふ、またみんな騒ぎになるわね・・・惜しむらくは、その様子を見ることが叶わないことかしら・・・)
そんな事を考えている自分の未練がましい思考を振りほどき、懐にある小刀の感触を確かめながら彼の背後に近づいていく。彼は私が近づいていることに気づいているはずだが、その背中は無防備にも見える。この時、この瞬間まで、彼を神のようにも崇めながら信用させているのだ、警戒されては逆に困ってしまう。
そして、いよいよ手を伸ばせば彼に触れられる位置まで来ると、息を整えて小刀の柄を握り込む。
(お願い!上手く行って!)
心の中で叫びながら、彼の背中に刃を突き刺す。
『ザシュ』
「・・・・・・」
手応えはあったと思った。刃が彼の背中に触れるその瞬間まで、彼は無防備で私の行動に警戒もしていなかったのだから。
「えっ?」
彼はこの状況が理解できないといった声をあげて振り返り、驚きの表情を私に向けてきた。
◇
何が起きたか理解できない。いや、なんでこうなっているのか理解できない。シャーロットは小刀を僕に突き刺していたのだ。驚き、振り返って見た彼女の表情は、氷のように冷たい視線を僕に向けていた。
「何で・・・こんな?」
僕の問い掛けに、彼女は握っていた小刀の柄を離し、そのまま静かに距離を取った。彼女が僕の背中に指した小刀はそのままに。
「何で?分かるでしょ?私は端からあなたの仲間なんかじゃなかったの。潜り込んであなたを殺す機会を窺っていたのよ」
「そんな・・・だって君はあんなにボロボロになって・・・」
「ええ、そうよ。あなたに信頼されるためにね。痛かったわ、本当に。でも、全て上手くいった。間もなくあなたは死ぬ。王国特性の猛毒よ?僅かでも体内に入ればすぐに全身が麻痺し、数分でもがき苦しみ死ぬの」
感情の見えない表情のまま、彼女は僕に毒を使ったのだと言ってくる。
「お、おい!貴様!神人の仲間ではなかったのか!?」
この状況に、ジャンヌさんが困惑した表情でシャーロットを詰問する。ジャンヌさんほどの力量があればシャーロットの行動に気づいたかもしれないが、僕の仲間だと思っていたことと、僕の死角になるように彼女が近づいてきていたので、気づけなかったのだろう。
「はっ?仲間?あなたには私が彼の仲間に見えていたの?だとしたら、私の演技も【剣聖】ほどの実力者を欺けるまでに上達したってことかしら?」
彼女はことさらジャンヌさんを挑発するような視線と言葉遣いだった。
「ふっ。神人よ、人を見る目はまだまだ子供のようだな?」
「あら、いいのかしらそんなに落ち着いていて?あなたの愛しい『神人』は間もなく死んでしまうのよ?」
「ははは、お前は何を言っている!?この私が認めた男が、こんなことで死ぬわけなかろう!そうだろ?」
ジャンヌさんは、胸を反らしながら僕に笑顔を向けてきた。僕はそんな彼女に苦笑いを浮かべながら、背中に刺さっていた小刀を取った。
「ほら、言った通りだろ?」
何故かジャンヌさんが自慢げに、シャーロットへ不敵な笑みを浮かべて挑発している。
「・・・光魔法の〈毒回復〉程度でこの猛毒は治療できないはずですが・・・」
「・・・シャーロットにも僕の才能の事は話していたでしょ?」
「毒が身体に回る速度を遅くしているのですか?」
「違うよ?」
才能について話したことを思い浮かべると、みんなには寿命についての事を主に話していただけだった事を思い出す。さらに、みんなの寿命を遅らせる事が出来ると伝えてあるので、僕自身の時間を巻き戻すことも出来るとは思わなかったのかもしれない。
僕がとった方法は単純に、シャーロットに刺された時点で自分の時間を巻き戻して、刺されたことを無かったことにしたのだ。その時点で、小刀は僕の背中から抜け落ち、服に引っ掛かっていただけだった。
「はぁ、痛みや毒の効果で【才能】や魔法を使う集中力が削がれると思ったのに・・・あなたは呻き声一つ上げない・・・その様子では、本当に毒も効かない・・・手の付けようがないですね・・・」
呆れた声を上げながらもその表情に焦りはない。こうなることも予想して行動に出たと言うことだろう。
(そうなると、次ぎは何をしようとしてくるかな?)
シャーロットの動きを警戒しているのは僕だけでなく、背後のジャンヌさんも警戒しているようだ。ただ、彼女には動いて欲しくなかったので、掌を彼女に向けて動かないで欲しいと意思表示をした。
「っ!!」
すると、ジャンヌさんの殺気が和らぎ、警戒を解いた気配がした。
「あら、さすがダリア様、お優しい事ですね」
僕の行動の意図を察したらしいシャーロットが挑発的な視線で僕に語り掛けてくる。本当に今の彼女こそが本性なのか、それとも何か脅されていて仕方なく行動しているかは分からないが、僕にはどうしても彼女がこんな行動に出る理由が分からない。だからこそ確認しておきたい。
「ひとつ聞いても言い?」
「・・何ですの?」
「君は今・・・僕の助けを必要としてる?」
「っ!!」
彼女にとっては予想外の質問だったのか、僅かに表情が動いた。しかしそれは一瞬の事で、すぐに冷酷な表情になり憎々しげに僕に告げる。
「はっ!!まだ私を仲間だと思っているの?だとしたら、本当に甘ちゃんのただのバカよ!!!」
叫ぶようにそう言うと、彼女は懐から何かを取り出し、地面に投げつけた。『ピュー』という音と共に空に赤い閃光が広がった。学園の実地訓練で見た、これはーーー
「信号弾!?」
「この戦争は止めさせない!この大地が血で赤く染まれば、もう誰にも止められない!!」
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