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第五章 動乱 編
学園トーナメント 8
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トーナメントの試合も順調に消化され、週の最終日にはそれぞれのコースでの上位5名が決まることとなった。魔法コースでは僕を含め、メグも残っている。他にはSクラスの生徒が1人とAクラスが2人だった。武術コースは見たことの無い顔ぶれで、Sクラス1人とAクラス4人、剣術コースは王子を含むSクラス2人とAクラス3人だった。
(僕以外は見事に貴族ばっかりになったな。決勝は総当たりか・・・上級貴族は厄介だな)
これまでの試合では僕の相手は下級貴族ばかりで、上級貴族はティアとしか当たっていなかった。そのため、上級貴族からの恨みは買っていないだろうと思っている。とはいえ、一応先日の休息日に『風の調』へと出向き、マシューとシルヴィアの監視をお願いしていた。そして決勝なのだが、試合方法は総当たり戦となる。当然相手には決勝に残っている上級貴族がいるので、面倒な事にならないように祈るばかりだ。
「メグは決勝に残っている上級貴族の事は知ってる?」
今日も今日とて、いつものメンバーで決勝トーナメントに出場する上位5名の表を見ている。同じクラスであるメグに、もう一人のSクラスの出場者の為人を聞いてみた。
「シャーロットさんですか?そうですね、王国の貴族らしい方だと思います」
「それって、平民には厳しい態度って事ですかね?」
「う~ん、振舞いが優雅という意味なんですが、平民への態度はあまり見たことがなくて・・・ティアさんはどうですか?」
「ん、私も平民への対応はあまり知らない。ただ、よく王子と一緒に昼食をしているらしいから、そっちの考え方なんだろうと思う」
ティアの言うそっちとは、王子のような貴族偏重的な考え方なのだろう。だとすれば非常に面倒になりかねない相手だ。
「そうなんだ、ありがとう。でも、王子ってフリージア様の婚約者なんだよね?そのシャーロット様って王子の側室を狙っているの?」
「えっ?さ、さぁ、どうなんでしょう?」
「ん、もしかしたら狙っているのかも。でもそこまでは分からない」
師匠に聞いた話では、王族は子孫を残す義務があるとかで、両手で数えきれないほどの女性を囲うものらしい。貴族にしても上級貴族であればあるほどその傾向があるのだと言う。
(でも、実家ではそんな人いなかったと思うけど、僕が隔離されていただけかな?)
「あ、あの、やっぱり貴族の方は側室を持つのって普通の事だと考えているのですか?」
そんな貴族の常識には、上級貴族であるティアや王女であるメグはありえるだろうなというような反応で、平民であるシルヴィアは複雑な感情を覗かせる表情だった。おそらくは平民にとっては受け入れがたい話なのだろう。僕にはまだ女の人を好きになるという感情がよく理解できないが、そんなに複数の人を好きになることなんてあるのだろうか。
「ん、すべての貴族がそうとは言えないと思う」
「そうですね。ただ、王族などの国の中枢を担う者は、やはり血を絶やすわけにはいかないので、複数の側室を持つものらしいですね。とはいえ、公国は女系国家なので、他国の王侯貴族ように一夫多妻制ではありません」
メグの話では、フロストル公国は女性の方が権力を持つ国家なのだそうだ。言われてみれば国のトップは女王で、バハムートの討伐の際に訪れた都市のトップも女性の人だった。
「そうですか、側室をとるのは個人次第ということなんですね・・・」
その事になにか思う事があるのか、シルヴィアは沈痛な面持ちで俯いてしまった。
「ん、ダリアはそんな願望があるの?」
そんな中、ティアがこんなことを言い出し、それに反応してみんなが一斉に僕へと視線を向けてきた。
「えっ、僕?う~ん、正直まだ女の人を好きになるってよく分からなくて・・・」
正直に自分の想いを伝えたのだが、みんな僕のその言葉に驚いた表情をしていた。さっきまで俯いていたシルヴィアも俊敏な動きで顔を上げた。特にメグは美少女にあるまじき様で、口を開けて驚いていた。そして、メグ達は互いに顔を見やり、納得した表情になって頷いていた。
「そ、そうか、そう言われると納得できることがあったな・・・」
「わ、私もあれだけしたのに、ダリア君の接し方が変わらなかったのは、そういう事だったんだ・・・」
「ん、つまり、ダリアが恋心を知った時に一番親しい者が選ばれるということになる」
「「っ!!!」」
ティアの言葉に2人の表情が変わったような気がした。そして、みんなの僕を見る視線が圧を増したような感じがして、なんだかその場を逃げ出したい気持ちで一杯になった。
(エリーさんもそうだったけど、女の人ってなんか急に怖くなる時があるよな・・・)
みんなにも言われたが、僕には女の人の気持ちはよく分からない。それが時に相手を不快にしていることがあるというのは理解しているので、なるべくそうならないように心掛けてはいるのだ。しかし、今のところ完璧とはほど遠い所にいる。師匠から学んだ、とりあえず誉める対応が効かなくなっているのだ。
(仲良くなってくると対応を変えないといけないなんて、知らなかったよ師匠・・・)
女心を教えてくれる先生がいたら、きっと直ぐに教えを乞うのだが、そんな人物に心当たりなど無かった。
この日の帰り、何故かメグとシルヴィアから両腕に抱きつかれ、生け捕りにされた魔獣のような心境で寮に戻る事になってしまった。
休息日の翌日、いよいよ今日から決勝トーナメントが開幕する。今日からは来賓も来るということで、みんな緊張した面持ちで朝食を食べていたのが印象的だった。噂に聞いた程度だが、来賓として教皇や軍務卿も来るのだという。その他にも、名だたる上級貴族が来るらしい。
試合の形式も今までとは若干変わり、何試合も一気に演習場でやっていたのが、1試合毎にやるようになり、より試合が観戦しやすいようになっている。ちなみに、僕はどこかで負けようかと考えながら試合をしていた結果、気づけば決勝まで来てしまっているので、ここまで来れば優勝しちゃっても良いやという今は思いだ。
決勝に残った生徒は、今日と明日で2試合づつ行い、明日には優勝者が決まる。そして、3日目にはエキシヴィジョンと、午後に表彰式が行われる予定だ。
僕は今、今日からの決勝トーナメントの為に準備された、試合を待つ生徒用の天幕で開始時間を待っていた。当然ここにいるのは僕一人ではない。
「今日はお手柔らかにね、ダリア・タンジー君」
そう言って上級貴族である彼女に対して頭を下げていた僕に握手を求めてきたのは、先日話をしていたシャーロット・マリーゴールド様だ。上級貴族の侯爵家の嫡子である彼女は、王子と同じように平民を見下しているのではないかと話していたので、この対応には驚いてしまった。
「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします」
彼女とは今日の最初の試合で当たる。火魔法が得意らしく、第三位階まで使えるとのことだ。
「様々な魔法を高位位階まで使うと聞いています。今回のトーナメント、魔法コースはあなたが優勝候補筆頭ですね。きっとこの試合を見た多くの貴族からお声が掛かると思いますが、将来は考えておいでなの?」
艶やかな声音で僕の将来について聞いてくる彼女は、なるほど、メグの言う通り貴族らしい優雅な立ち居振舞いをしている。
「いえ、今のところはまだ何も」
「そう、ロキシード家には興味ないの?あそこの家に仕官できたら安泰よ?」
「前に本人からいわれましたが、他にやりたいことがありますので・・・」
「ふ~ん。ならマリーゴールド家のことも覚えておいて。うちでも是非あなたを仕官させたいと考えているのよ」
「は、はぁ、ありがとうございます」
「さ、そろそろ試合の時間よ。行きましょうか」
そう言って試合会場に向かう彼女に追従するように僕も続いた。
◆
side ゲンティウス・オーガスト
「そ、それは本当か!?」
ここは王族である王子専用の天幕。そこにはこの天幕の主の王子と、もう一人が話をしていた。
「はい。聞いた話では休息日に教会を訪問してはフリージア様と仲良くしているとの事です。」
「くっ、おのれ平民風情が!あのワイバーンの討伐の時だな!俺のフリージアに近づくゴミめ!」
「殿下、如何しますか?」
「決まっている!処刑だ!!」
あんな男か女か分からない相手と、私の婚約者が仲良くしていると考えるだけでおぞましい。王子である私の婚約者に近づこうとしているなら処刑するのは当然だ。
「殿下、確かに仲良くしているようですが、それだけでただの友人ということも考えられますが?」
「そんなことは問題ではない!平民が貴族であり、私の婚約者であるフリージアと口を効くこと、そのものが問題なのだ!」
「あまり狭量と思われる行動を民衆や大臣達に見せると、王位を継承した際に統治に問題が出ないとも限りませんが?」
「ちっ、民衆などどうでもよいが、今日からは大臣連中も来るからな・・・なにか良い策はないのか?」
私は苛立ちを隠すこと無く、目の前で臣下の礼をとっている者に質問する。自分で考え付かないことはしゃくだが、王族とは人を使うことが仕事だ。つまり、配下の者が考えたことは自分が考えたということも同然。配下の行った行動の功績も自分が功績を挙げたと同じことなのだ。使えるものは使うべきだ。
「では僭越ながら、王子がエキシヴィジョンにて彼の者と試合をするという名目で処罰を下すのは如何でしょう?」
「エキシヴィジョンだと?」
「はい。各種の報告から彼の者は相当な実力を有しておりますが、試合において殿下が相手となれば思いきった攻めは出来ないでしょう。そこをついてしまえば・・・」
「ふっ、なるほどな。試合で王子の私相手に本気というわけにはいくまい。そこを利用するか・・・いいだろう、その場で処刑を兼ねた試合をしようではないか!」
「かしこまりました。では、殺してしまっても事故ということで処理しておきましょう」
よく考えられた策だと思った。相手が実力を出しきれない場に誘いだし、こちらは全力をもって相手を殺す。しかも、殺してしまっても試合中の事故ということで処理できる。そのことで民衆や大臣共、フリージアも私をどう思うこともないだろう。
「よし、私が提案したときに教師陣が納得するように根回しはしておけよエヴァ・マイヤーズ」
「かしこまりました殿下」
エヴァは恭しく頭を下げ、天幕を出ていった。
(僕以外は見事に貴族ばっかりになったな。決勝は総当たりか・・・上級貴族は厄介だな)
これまでの試合では僕の相手は下級貴族ばかりで、上級貴族はティアとしか当たっていなかった。そのため、上級貴族からの恨みは買っていないだろうと思っている。とはいえ、一応先日の休息日に『風の調』へと出向き、マシューとシルヴィアの監視をお願いしていた。そして決勝なのだが、試合方法は総当たり戦となる。当然相手には決勝に残っている上級貴族がいるので、面倒な事にならないように祈るばかりだ。
「メグは決勝に残っている上級貴族の事は知ってる?」
今日も今日とて、いつものメンバーで決勝トーナメントに出場する上位5名の表を見ている。同じクラスであるメグに、もう一人のSクラスの出場者の為人を聞いてみた。
「シャーロットさんですか?そうですね、王国の貴族らしい方だと思います」
「それって、平民には厳しい態度って事ですかね?」
「う~ん、振舞いが優雅という意味なんですが、平民への態度はあまり見たことがなくて・・・ティアさんはどうですか?」
「ん、私も平民への対応はあまり知らない。ただ、よく王子と一緒に昼食をしているらしいから、そっちの考え方なんだろうと思う」
ティアの言うそっちとは、王子のような貴族偏重的な考え方なのだろう。だとすれば非常に面倒になりかねない相手だ。
「そうなんだ、ありがとう。でも、王子ってフリージア様の婚約者なんだよね?そのシャーロット様って王子の側室を狙っているの?」
「えっ?さ、さぁ、どうなんでしょう?」
「ん、もしかしたら狙っているのかも。でもそこまでは分からない」
師匠に聞いた話では、王族は子孫を残す義務があるとかで、両手で数えきれないほどの女性を囲うものらしい。貴族にしても上級貴族であればあるほどその傾向があるのだと言う。
(でも、実家ではそんな人いなかったと思うけど、僕が隔離されていただけかな?)
「あ、あの、やっぱり貴族の方は側室を持つのって普通の事だと考えているのですか?」
そんな貴族の常識には、上級貴族であるティアや王女であるメグはありえるだろうなというような反応で、平民であるシルヴィアは複雑な感情を覗かせる表情だった。おそらくは平民にとっては受け入れがたい話なのだろう。僕にはまだ女の人を好きになるという感情がよく理解できないが、そんなに複数の人を好きになることなんてあるのだろうか。
「ん、すべての貴族がそうとは言えないと思う」
「そうですね。ただ、王族などの国の中枢を担う者は、やはり血を絶やすわけにはいかないので、複数の側室を持つものらしいですね。とはいえ、公国は女系国家なので、他国の王侯貴族ように一夫多妻制ではありません」
メグの話では、フロストル公国は女性の方が権力を持つ国家なのだそうだ。言われてみれば国のトップは女王で、バハムートの討伐の際に訪れた都市のトップも女性の人だった。
「そうですか、側室をとるのは個人次第ということなんですね・・・」
その事になにか思う事があるのか、シルヴィアは沈痛な面持ちで俯いてしまった。
「ん、ダリアはそんな願望があるの?」
そんな中、ティアがこんなことを言い出し、それに反応してみんなが一斉に僕へと視線を向けてきた。
「えっ、僕?う~ん、正直まだ女の人を好きになるってよく分からなくて・・・」
正直に自分の想いを伝えたのだが、みんな僕のその言葉に驚いた表情をしていた。さっきまで俯いていたシルヴィアも俊敏な動きで顔を上げた。特にメグは美少女にあるまじき様で、口を開けて驚いていた。そして、メグ達は互いに顔を見やり、納得した表情になって頷いていた。
「そ、そうか、そう言われると納得できることがあったな・・・」
「わ、私もあれだけしたのに、ダリア君の接し方が変わらなかったのは、そういう事だったんだ・・・」
「ん、つまり、ダリアが恋心を知った時に一番親しい者が選ばれるということになる」
「「っ!!!」」
ティアの言葉に2人の表情が変わったような気がした。そして、みんなの僕を見る視線が圧を増したような感じがして、なんだかその場を逃げ出したい気持ちで一杯になった。
(エリーさんもそうだったけど、女の人ってなんか急に怖くなる時があるよな・・・)
みんなにも言われたが、僕には女の人の気持ちはよく分からない。それが時に相手を不快にしていることがあるというのは理解しているので、なるべくそうならないように心掛けてはいるのだ。しかし、今のところ完璧とはほど遠い所にいる。師匠から学んだ、とりあえず誉める対応が効かなくなっているのだ。
(仲良くなってくると対応を変えないといけないなんて、知らなかったよ師匠・・・)
女心を教えてくれる先生がいたら、きっと直ぐに教えを乞うのだが、そんな人物に心当たりなど無かった。
この日の帰り、何故かメグとシルヴィアから両腕に抱きつかれ、生け捕りにされた魔獣のような心境で寮に戻る事になってしまった。
休息日の翌日、いよいよ今日から決勝トーナメントが開幕する。今日からは来賓も来るということで、みんな緊張した面持ちで朝食を食べていたのが印象的だった。噂に聞いた程度だが、来賓として教皇や軍務卿も来るのだという。その他にも、名だたる上級貴族が来るらしい。
試合の形式も今までとは若干変わり、何試合も一気に演習場でやっていたのが、1試合毎にやるようになり、より試合が観戦しやすいようになっている。ちなみに、僕はどこかで負けようかと考えながら試合をしていた結果、気づけば決勝まで来てしまっているので、ここまで来れば優勝しちゃっても良いやという今は思いだ。
決勝に残った生徒は、今日と明日で2試合づつ行い、明日には優勝者が決まる。そして、3日目にはエキシヴィジョンと、午後に表彰式が行われる予定だ。
僕は今、今日からの決勝トーナメントの為に準備された、試合を待つ生徒用の天幕で開始時間を待っていた。当然ここにいるのは僕一人ではない。
「今日はお手柔らかにね、ダリア・タンジー君」
そう言って上級貴族である彼女に対して頭を下げていた僕に握手を求めてきたのは、先日話をしていたシャーロット・マリーゴールド様だ。上級貴族の侯爵家の嫡子である彼女は、王子と同じように平民を見下しているのではないかと話していたので、この対応には驚いてしまった。
「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします」
彼女とは今日の最初の試合で当たる。火魔法が得意らしく、第三位階まで使えるとのことだ。
「様々な魔法を高位位階まで使うと聞いています。今回のトーナメント、魔法コースはあなたが優勝候補筆頭ですね。きっとこの試合を見た多くの貴族からお声が掛かると思いますが、将来は考えておいでなの?」
艶やかな声音で僕の将来について聞いてくる彼女は、なるほど、メグの言う通り貴族らしい優雅な立ち居振舞いをしている。
「いえ、今のところはまだ何も」
「そう、ロキシード家には興味ないの?あそこの家に仕官できたら安泰よ?」
「前に本人からいわれましたが、他にやりたいことがありますので・・・」
「ふ~ん。ならマリーゴールド家のことも覚えておいて。うちでも是非あなたを仕官させたいと考えているのよ」
「は、はぁ、ありがとうございます」
「さ、そろそろ試合の時間よ。行きましょうか」
そう言って試合会場に向かう彼女に追従するように僕も続いた。
◆
side ゲンティウス・オーガスト
「そ、それは本当か!?」
ここは王族である王子専用の天幕。そこにはこの天幕の主の王子と、もう一人が話をしていた。
「はい。聞いた話では休息日に教会を訪問してはフリージア様と仲良くしているとの事です。」
「くっ、おのれ平民風情が!あのワイバーンの討伐の時だな!俺のフリージアに近づくゴミめ!」
「殿下、如何しますか?」
「決まっている!処刑だ!!」
あんな男か女か分からない相手と、私の婚約者が仲良くしていると考えるだけでおぞましい。王子である私の婚約者に近づこうとしているなら処刑するのは当然だ。
「殿下、確かに仲良くしているようですが、それだけでただの友人ということも考えられますが?」
「そんなことは問題ではない!平民が貴族であり、私の婚約者であるフリージアと口を効くこと、そのものが問題なのだ!」
「あまり狭量と思われる行動を民衆や大臣達に見せると、王位を継承した際に統治に問題が出ないとも限りませんが?」
「ちっ、民衆などどうでもよいが、今日からは大臣連中も来るからな・・・なにか良い策はないのか?」
私は苛立ちを隠すこと無く、目の前で臣下の礼をとっている者に質問する。自分で考え付かないことはしゃくだが、王族とは人を使うことが仕事だ。つまり、配下の者が考えたことは自分が考えたということも同然。配下の行った行動の功績も自分が功績を挙げたと同じことなのだ。使えるものは使うべきだ。
「では僭越ながら、王子がエキシヴィジョンにて彼の者と試合をするという名目で処罰を下すのは如何でしょう?」
「エキシヴィジョンだと?」
「はい。各種の報告から彼の者は相当な実力を有しておりますが、試合において殿下が相手となれば思いきった攻めは出来ないでしょう。そこをついてしまえば・・・」
「ふっ、なるほどな。試合で王子の私相手に本気というわけにはいくまい。そこを利用するか・・・いいだろう、その場で処刑を兼ねた試合をしようではないか!」
「かしこまりました。では、殺してしまっても事故ということで処理しておきましょう」
よく考えられた策だと思った。相手が実力を出しきれない場に誘いだし、こちらは全力をもって相手を殺す。しかも、殺してしまっても試合中の事故ということで処理できる。そのことで民衆や大臣共、フリージアも私をどう思うこともないだろう。
「よし、私が提案したときに教師陣が納得するように根回しはしておけよエヴァ・マイヤーズ」
「かしこまりました殿下」
エヴァは恭しく頭を下げ、天幕を出ていった。
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