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目が覚めると、温かな体温と目の前には輝く銀の髪。眉からすっきりとラインを描く鼻梁。閉ざされた瞼に長い睫毛。少し薄めの形のよい唇。
滑らかな皮膚にしなやかについた筋肉が美しい。その胸元にシャーロットは顔を押し付けて息を吸い込んだ。エドワードの匂いにほっとする。
「おはよう。どうしたの?くっついて」
くすっとエドワードが笑いながら目をあけて、シャーロットを抱き寄せた。
「あたたかくて心地いいの」
「体調はどう?」
エドワードは心配そうに尋ねた
「ゆっくり眠れたから大丈夫よ」
「良かった。しかしもう役目は辞そう、体調を考えればその方が良い」
エドワードはゆっくりとシャーロットの頬を撫でた。
「…ジョージアナと話してみるわ」
シャーロットはためらいつつも、その方が良いかも知れないと思った。大切なエドワードの子供がお腹にいる今はそちらの方がシャーロットにとって何よりも大切だった。
エドワードはシャーロットにキスをするとベッドから降りて、ベルをならした。
少ししてマリエルとヘンリエッタがやって来る。
エドワードは身支度をしに隣室に行った。
「ご気分はいかがでございますか?シャーロット様」
「ありがとう、今朝は大丈夫よ」
心配そうな二人にシャーロットは微笑みかけた。
「ジョージアナに会いたいのだけれど、取り次ぎをお願いできるかしら?」
「承知致しました」
ヘンリエッタが心得て、部屋から出ていった。
マリエルは手早くシャーロットのコルセットを程よく締めて、ドレスを着せてくれる。
シャーロットの体を思って、コルセットも少し緩めで締めてくれる。
朝食を共にとジョージアナから返答があり、身支度を終えたシャーロットとエドワードは、客用ダイニングにむかう。
白を基調とした美しい調度類と、大きな窓からは計算されたガーデンが見える。
「おはようシャーリー」
ジョージアナはシャーロットをぎゅっと抱き締めた
「体調は大丈夫になったの?」
「ええアナ。ありがとうもう大丈夫よ」
抱き合った拍子にお腹の膨らみがジョージアナに伝わったようで、腹部にジョージアナの目線が向かう。
シャーロットはドレスをそっと押さえて
「触ってみる?」
「いいのかしら?」
ジョージアナはそっとシャーロットのお腹に手を当ててみる。
「なんだか不思議ね、楽しみね。元気に生まれてきてほしいわね」
にっこりとジョージアナは笑った。
エドワードが引いてくれた椅子に座り、ジョージアナもフェリクスに引いてもらった椅子に座る。
「いつだ?生まれるの」
フェリクスがエドワードに聞いた
「4月には生まれるそうだよ」
「そうか、あっという間にエドワードも父親になるのか」
フェリクスが呟いた。
「フェリクスもそろそろ考えたらどうだ?」
「いや、まだまだ先でいい。ジョージアナが結婚してから考えるよ」
フェリクスは笑った
「あら、わたくしはお兄様が結婚してからと思ってますのに」
ジョージアナもくすくすと笑った。
『昨日はどう思った?ジョージアナは』
エドワードはエリュシア語で話かけた。
『わたくしには不思議なのですけれど、どうしてセルジュ王子はあんなに熱心にソフィア王女を口説こうとするのかしら?』
『確かに、セルジュ王子とソフィア王女の縁組みはそれほど両方にとって必要とも思えない』
フェリクスも眉を寄せた
『…未確認だし、あくまで私の予想だが、セルジュ王子は王位を狙っている』
エドワードは声をひそめて言った
『なんだって?それで後ろ楯がほしいと?』
フェリクスがエドワードを見た
『それならセルジュ王子がソフィア王女と結婚を望むのもおかしくはないわね…』
ジョージアナは表情に出さず淡々と言った。
『シルキア語…』
シャーロットはぽつりとエドワードに向かって言った
『王子はシルキア語を話したわ』
『シルキアと密約がある可能性もある』
エドワードはうなずいた
「失礼致します。ギルバード卿が同席してもよろしいですかとのことでございますが」
侍女が声をかけてきた。
「ああ、もちろんだ構わない」
フェリクスがエドワードとうなずきながら応えた。
ギルバードが来るので、侍従たちが席をつくる。
「アナ、セルリナ語はどうかしら?エドワードとも話したのだけれど、わたくしは体調を考えればお役目を辞そうかと思っているの」
ジョージアナにシャーロットは申し訳なく思いつつ、聞いてみた。
「そう、わたくしなら大丈夫と思うわ。お兄様かエドワードかギルバードにもなるべく側にいていただくようにお願いすれば大体のことは…」
それに…と
『ソフィア王女は無視だから』
くすっとジョージアナは笑った。
「シャーリーは大切なお役目があるのだからそちらを優先してちょうだい」
そっとジョージアナは手を握ってきた。
「ありがとうアナ」
シャーロットは微笑んだ
「おはよう」
ギルバードが優雅に登場してきた。
淡い銀の髪に、紫の瞳は。理知的な端正な顔立ちがシエラと似かよっている。
「少し話したいと思っていてね、邪魔をしてしまい申し訳ない」
「ちょうど良かったです。来てくださって」
フェリクスが隣に座るギルバードに笑顔を向けた。
エドワードとフェリクスが、先程の話をギルバードに話した。
『うん、エドワードの判断は間違っていないと思う』
『ギルバード卿もなにか情報が?』
エドワードが聞いた
『いや、証拠はなにもない。だがそう考えると辻褄はあう。彼は軽薄そうに見えて合理的で理知的だ、無駄なことはしないだろう』
『問題は…』
とエドワードは言葉をきって、シャーロットにも分からない言葉でギルバードに話かけた。
そしてギルバードもそれに答えている。ジョージアナとフェリクスも分からないようだった。
「シャーリー、今日のお茶会には一緒に来てくれるでしょう?」
ジョージアナが聞いてきた。
フェリクスはギルバードに耳打ちをされて、どうやら説明を受けている。
女性たちには聞かせなくないらしいので、シャーロットはジョージアナと邪魔をしない程度の会話をする。
「ええ、もちろんよ」
ジョージアナは微笑んで
「正直本当にありがたいわ。全く…」
と言葉をとめた。
言いたいことは分かる。とにかく二人は、平行線で疲れるのだ!
滑らかな皮膚にしなやかについた筋肉が美しい。その胸元にシャーロットは顔を押し付けて息を吸い込んだ。エドワードの匂いにほっとする。
「おはよう。どうしたの?くっついて」
くすっとエドワードが笑いながら目をあけて、シャーロットを抱き寄せた。
「あたたかくて心地いいの」
「体調はどう?」
エドワードは心配そうに尋ねた
「ゆっくり眠れたから大丈夫よ」
「良かった。しかしもう役目は辞そう、体調を考えればその方が良い」
エドワードはゆっくりとシャーロットの頬を撫でた。
「…ジョージアナと話してみるわ」
シャーロットはためらいつつも、その方が良いかも知れないと思った。大切なエドワードの子供がお腹にいる今はそちらの方がシャーロットにとって何よりも大切だった。
エドワードはシャーロットにキスをするとベッドから降りて、ベルをならした。
少ししてマリエルとヘンリエッタがやって来る。
エドワードは身支度をしに隣室に行った。
「ご気分はいかがでございますか?シャーロット様」
「ありがとう、今朝は大丈夫よ」
心配そうな二人にシャーロットは微笑みかけた。
「ジョージアナに会いたいのだけれど、取り次ぎをお願いできるかしら?」
「承知致しました」
ヘンリエッタが心得て、部屋から出ていった。
マリエルは手早くシャーロットのコルセットを程よく締めて、ドレスを着せてくれる。
シャーロットの体を思って、コルセットも少し緩めで締めてくれる。
朝食を共にとジョージアナから返答があり、身支度を終えたシャーロットとエドワードは、客用ダイニングにむかう。
白を基調とした美しい調度類と、大きな窓からは計算されたガーデンが見える。
「おはようシャーリー」
ジョージアナはシャーロットをぎゅっと抱き締めた
「体調は大丈夫になったの?」
「ええアナ。ありがとうもう大丈夫よ」
抱き合った拍子にお腹の膨らみがジョージアナに伝わったようで、腹部にジョージアナの目線が向かう。
シャーロットはドレスをそっと押さえて
「触ってみる?」
「いいのかしら?」
ジョージアナはそっとシャーロットのお腹に手を当ててみる。
「なんだか不思議ね、楽しみね。元気に生まれてきてほしいわね」
にっこりとジョージアナは笑った。
エドワードが引いてくれた椅子に座り、ジョージアナもフェリクスに引いてもらった椅子に座る。
「いつだ?生まれるの」
フェリクスがエドワードに聞いた
「4月には生まれるそうだよ」
「そうか、あっという間にエドワードも父親になるのか」
フェリクスが呟いた。
「フェリクスもそろそろ考えたらどうだ?」
「いや、まだまだ先でいい。ジョージアナが結婚してから考えるよ」
フェリクスは笑った
「あら、わたくしはお兄様が結婚してからと思ってますのに」
ジョージアナもくすくすと笑った。
『昨日はどう思った?ジョージアナは』
エドワードはエリュシア語で話かけた。
『わたくしには不思議なのですけれど、どうしてセルジュ王子はあんなに熱心にソフィア王女を口説こうとするのかしら?』
『確かに、セルジュ王子とソフィア王女の縁組みはそれほど両方にとって必要とも思えない』
フェリクスも眉を寄せた
『…未確認だし、あくまで私の予想だが、セルジュ王子は王位を狙っている』
エドワードは声をひそめて言った
『なんだって?それで後ろ楯がほしいと?』
フェリクスがエドワードを見た
『それならセルジュ王子がソフィア王女と結婚を望むのもおかしくはないわね…』
ジョージアナは表情に出さず淡々と言った。
『シルキア語…』
シャーロットはぽつりとエドワードに向かって言った
『王子はシルキア語を話したわ』
『シルキアと密約がある可能性もある』
エドワードはうなずいた
「失礼致します。ギルバード卿が同席してもよろしいですかとのことでございますが」
侍女が声をかけてきた。
「ああ、もちろんだ構わない」
フェリクスがエドワードとうなずきながら応えた。
ギルバードが来るので、侍従たちが席をつくる。
「アナ、セルリナ語はどうかしら?エドワードとも話したのだけれど、わたくしは体調を考えればお役目を辞そうかと思っているの」
ジョージアナにシャーロットは申し訳なく思いつつ、聞いてみた。
「そう、わたくしなら大丈夫と思うわ。お兄様かエドワードかギルバードにもなるべく側にいていただくようにお願いすれば大体のことは…」
それに…と
『ソフィア王女は無視だから』
くすっとジョージアナは笑った。
「シャーリーは大切なお役目があるのだからそちらを優先してちょうだい」
そっとジョージアナは手を握ってきた。
「ありがとうアナ」
シャーロットは微笑んだ
「おはよう」
ギルバードが優雅に登場してきた。
淡い銀の髪に、紫の瞳は。理知的な端正な顔立ちがシエラと似かよっている。
「少し話したいと思っていてね、邪魔をしてしまい申し訳ない」
「ちょうど良かったです。来てくださって」
フェリクスが隣に座るギルバードに笑顔を向けた。
エドワードとフェリクスが、先程の話をギルバードに話した。
『うん、エドワードの判断は間違っていないと思う』
『ギルバード卿もなにか情報が?』
エドワードが聞いた
『いや、証拠はなにもない。だがそう考えると辻褄はあう。彼は軽薄そうに見えて合理的で理知的だ、無駄なことはしないだろう』
『問題は…』
とエドワードは言葉をきって、シャーロットにも分からない言葉でギルバードに話かけた。
そしてギルバードもそれに答えている。ジョージアナとフェリクスも分からないようだった。
「シャーリー、今日のお茶会には一緒に来てくれるでしょう?」
ジョージアナが聞いてきた。
フェリクスはギルバードに耳打ちをされて、どうやら説明を受けている。
女性たちには聞かせなくないらしいので、シャーロットはジョージアナと邪魔をしない程度の会話をする。
「ええ、もちろんよ」
ジョージアナは微笑んで
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