ダンスとキスとマリオネット

桜 詩

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クリスタの願いもあり、シャーロットは結婚式を王都でもすることになりますます忙しくなってしまった。しかも、大聖堂だ。

「お嬢様次は腕をあげてくださいませ」
新たなドレスを作るとあって、王都で一番の仕立て屋がキラキラと目を光らせて採寸していた。

ドレスの生地見本が広がり、オーガスタとマーガレットが楽しそうに選んでいる。
「あちらで作ってるのと、また違う雰囲気がいいわ」
「そうね!」

招待状の宛名を書き、型通りの文面をひたすら書き続ける。
それでも社交シーズンも始まっているので、大事な所はエドワードと出掛けなければならない。

ああ、結婚ってたいへん。
それでもシャーロットの場合、親類が少ないのが幸いだ。エドワードとは従兄弟どうしだから。
これに挨拶回りなどが加わるとなると、花嫁は本当に大変だ。

予定の王都での式は春真っ盛りに行われる事になり、夏の終わりに領地でお披露目を兼ねたパーティを行う予定だ。
伯爵家の跡取りの結婚式だけあって、やらなければならないことは多かった。

タウンハウスに、エドワードをはじめ、ジョージアナとフェリクス、キースそれからフレデリックが訪問をしてきた。
少し滞在の予定なので、シャーロットは気が紛れる

「シャーリー、頑張ってる?」
ジョージアナがくすくすと笑いながら聞いてきた。
「もう、目が回りそう!」

社交界シーズンに入り、ユリアナも度々レイノルズ邸を訪れてアデリンとエーリアルの教師役を引き受けてくれていた。

レイノルズ邸の談話室で彼らと同席すると
「シャーロット。アビゲイル・モレリー夫人だが、どうも軍が動いている」
フェリクスが真面目な顔で行った。
「どういうつもりかわからないが、シャーロットに近づいたのももしかしたら意味があるのかも知れない。充分気を付けた方がいい」
「軍が?」
この間の一件でフェリクスは調べてくれたようだ。
エドワードもうなずく。
「なるべく私たちから離れないように」
シャーロットは、わからないながらもうなずいた。 

裕福な未亡人。いったい何をしているのだろう?
フェリクスもエドワードもキースも、何か分かっているのに隠している気もする。
アルバート、ユリアナがいないこの場面で告げられた事を考えてみる。どうやら、アビゲイルは王国軍に目をつけられるような事をしているくらい危険人物という事で、シャーロットにはそれを詳しくは告げられないという事。

王宮舞踏会ほどの規模ならともかく、まっとうな舞踏会やお茶会などに行った限りではアビゲイルにその後会う事もなくきていたので、大丈夫だろう。とシャーロットは思った。

「ね、エドワードまだ公園の湖は凍ってるわよね?」
シャーロットは早速楽しみをおもいだした。婚約した今なら、エドワードと王都でもスケートをしてもいいんじゃない?
「だろうね、行ってみる?」
シャーロットはひさしぶりにうきうきと着替えに向かった。
スケート未経験のジョージアナたちも来ると言った。


王都の公園はまだ寒いため、人通りはまばらでスケートを楽しむ人はもっと少ない。
シャーロットはジョージアナに靴を履くのを手伝った。
恐る恐るシャーロットの手をもち、氷上にたつと、よたよたと滑り出した。
フレデリックはなかなか滑れるらしく、
「シャーロット代わろう!」
と元気よくジョージアナの腰を持って支えて、滑り出した
「ちょっと!フレデリックスピードをゆるめて!」
めずらしくジョージアナが慌てていて、シャーロットは笑った。
フェリクスとキースはかろうじて滑れる程度で、慎重に足を進めている。
「さて、行こうか?」
エドワードがシャーロットを誘いにきて、二人はスピードをぐんぐんあげて滑った。
爽快でシャーロットは声をあげて笑った。
フェリクスとキースを何度か追い越して、中央にたつと、恒例のダンスをはじめた。
華麗にターンを決めたりステップを踏む二人に注目があつまる。
「驚いたわ!氷の上でそんな事が出来るなんて!」
「小さい頃から滑ってたから」
シャーロットはジョージアナにこたえた。
シャーロットたちはスケートを充分楽しんだあと、レストランに行き、お茶とお菓子を食べた。

「またお前に会うとはな、シャーロット・レイノルズ」
苦々しげに告げたのはアーヴィンとミリセントだった。

こっちだって会いたくないんだけど…
「こんにちは、こんなとことでまでお会いするなんで偶然ですわねアーヴィン卿ミリセント様」
「相変わらず男たちを侍らせていい気なものだ。汚らわしい女だな」
シャーロットは思わず目を見開いた。
「ここにはわたくしもおりましてよ?アーヴィン。ここでお茶をしているからといって貴方がシャーロットを侮辱するなんて赦せなくてよ?」
ジョージアナは立ち上がりアーヴィンを冷たい視線で見た。
エドワードも静かに怒りを秘めた目でアーヴィンをみている。
「アーヴィン、口を慎め」
フェリクスが冷静に言い放った。
ちっと舌打ちをして、アーヴィンは一番良い席をと命じて向かって行った。
「ありがとう」
シャーロットはほっと息をついてジョージアナとフェリクスに言った。 
「でも、なぜアーヴィンにわたくしは目をつけられてるのかしらね?」
シャーロットは目の前のお茶を飲みながら呟いた。
エドワードはちらりとシャーロットをみて、キースに目を向けた。
「エドワード、私に言わせるつもりか?」
エドワードはため息をつくと、
「多分だが、奴はシャーロットに一目惚れしてる」
「はい?」
シャーロットは思わずカップを鳴らしてしまった。
「去年のデビューの時、シャーロットは他の男性たちとは楽しげに話していたけど、アーヴィンとは目を合わせてなかったし、手紙の返事も多分あたりさわりないもので出したんじゃないかな?」
確かにそうで、シャーロットはうなずいた。
「奴のけちな自尊心はそれで傷ついたのだ、と思う」
「でも愛しのミリセントが今はいるんじゃないの?」
「それとは別なんだろうな」
「なんてめんどうくさ…」
とシャーロットは手でふさぎ、咳払いをした。
目の前のチョコレート菓子に手をのばし、パクリと食べた。

シャーロットは数日間、彼らと過ごししばらくは愉しく過ごせたのだった。
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