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エセルの章
夢の世界で
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イングレス王国はその日、結婚した王太子とクリスタ嬢のパレードを見るために集まった人々と、警護をする、騎士団、衛士、兵士たちと、ひしめき合っていた。
エセルもその様子を、遠く王宮の中から見ていた。
「すごい!すごい!!」
遠く離れたそこにも、みんなが叫ぶ祝福の声が聞こえてくる。
その熱気はまるでひとつの巨大な生き物のようにうごめいて見えた。
パレード専用の屋根のない白い馬車は、ゆっくりと一巡して王宮に帰って来た。到着を王宮の大門の中で待っていたエセルは、シュヴァルドを出迎える。シュヴァルドと、クリスタが馬車から、降りると、使用人一同が恭しくお辞儀した。
ジェイクをはじめとした近衛騎士のキラキラした正装をした騎士隊は白馬から、降りると、厩務員たちがかけより、馬車と馬を連れていく。
シュヴァルドとクリスタはこれから結婚披露の舞踏会の衣装に着替えるため、シュヴァルドの私室にエセルも付き従う。
ジェイクがエセルを振り返り、
「エセルも準備があるだろ?ここは大丈夫だから、もう準備しにいくといい」
とにこっと笑う。
「そうです、女性は支度に時間がかかりますからね。殿下の準備なんて、すぐにできますから」
アンソニーも続けていう。
「そうですか?では、そうさせて頂きます」
二人にそう言われると、ペコリと頭を下げて、エセルは部屋に帰る。
エミリアと、セラフィーナはそれぞれアルベルト王子と、王妃に言われていたようで、、エセルの帰りを待っていた。
「さっ!いくわよーエセル!」
エセルの服を脱がせると、エミリアとセラフィーナは肌を磨くべくマッサージする。
「うっ…ぎぇっ…ひゃっ…!」
慣れていないエセルは、いちいち声をあげる。
こんこん、とノックがあり、ステラかなと思って開いてると返事をすると
「どうかしら?準備は進んでる?」
と入ってきたのはマリーとステラだった。
マリーは籠に化粧品をいれてきたようで、ステラも同じような籠を持っていた。
「ジェイクとクリスに聞いてお手伝いに来たのよ」
「ふゎっ!マリー様に手伝って頂けるなんて!」
とエセルは、感激する。
マリーが持ってきた高級化粧品を使って、髪をといたり、指先まできっちりクリームを、塗り込んだ。
四人がかりで、しかもみんな本物の侍女!!に磨かれて、肌を柔らかく、つやつやになった。
マリーはクリスから譲り受けたコルセットを手際よく紐をシュっと締めると
「エセルは細いけど、これくらいは絞めないと、」
と
「はい、息を止めてね!」
ぐぐっと紐をしめてきた。エセルはまたううっと声を出す。
普段のコルセットのなんて、かわいいものだ。
四人で髪を巻いたり、化粧を施してくれて、変身完了だった。
「ん、いいわ!素敵よエセル」
除きこんでみるマリーの美貌に、
「マリー様が素敵すぎて、自分を見たくありません~!」
「ぷっ!なにいってるの~」
「すっごく可愛いわよ!鏡をみてごらんなさいな」
淡いピンクのドレスをきたエセル。
腰は細く、顔は小振りで紫の瞳はぱっちりと輝き、唇は桜色でつやつやしてる。
髪は複雑に編まれて、何筋か、垂らした髪はくるくるとまいてあり、そこには可憐な美少女がいた。
「わぁーどういう技ですか!すごい別人!お姫様みたいになりました~!」
エセルが興奮していうと、四人は満足そうに、自分達の作品をみた。
マリーはそのあと、自分も支度すると、帰っていき、友人たちは、今日はそのまま、エセルについてくれる。
エミリアがアルベルトの所まで連れていってくれる事になっているようで、エセルは言われるがままに、従った。
「エセル!すごい可愛い!」
とにこにこと言って、エセルの左手をとり、手の甲にキスをする。
「うれしいよ!エセル。こんな素敵な君をエスコートできるなんて光栄だよ」
気取ってアルベルトはエセルに言った。
アルベルトも今日は王子様らしく、キラキラな豪華な服装で、エセルも自分が磨きあげられてお姫様気分になっていたし、、まるで魔法にかけられたように、うっとりとアルベルトを見つめた。
アルベルトのエスコートで、大広間に向かうと、国王夫妻と、シュヴァルドとクリスタの白い正装姿があった。
クリスタは、アレクシス白に銀色の刺繍の豪奢なドレスで、後ろは長く裾をひいていた。
美しい花嫁を間近で見れてエセルは美しすぎて、見つめすぎてしまった。
コツっと靴音がして、ミランダ王妃がエセルに微笑みかけた。
「エセルね、はじめましてね、アルベルトの母です。いつも息子の我が儘に付合ってくれてありがとう」
王妃としてではなく、母として言葉をかけてもらえ、エセルは感動した。
「もったいない、お言葉でございます。王妃様。アルベルト殿下にはいつもお心遣いを頂き、光栄です。」
王妃のとなりにたったジェラルド国王も、威厳のある顔に、柔らかな笑みをたたえて
「アルベルトは随分、周りを困らせていたが、最近は君の名前をだすと、真面目にしてくれるのだよ。これからも仲良くしてやってくれ」
国王に声をかけられ
「はい、ありがとうございます」
とだけ、緊張して答えた。
ソフィア王女のエスコート役には、女性の近衛騎士である、レオノーラ・ブロンテ伯爵令嬢がついていた。金髪と切れ長な緑の瞳で、すらりとした肢体と、美しい騎士姿の彼女はものすごく王宮内で人気があり、通りかかると侍女たちもうっとりと見つめるのだ。
妖精のようなソフィア王女と並ぶと、物語の絵画のような一対だった。
扉が開けられ、主役のシュヴァルドとクリスタから、入り、国王夫妻、ソフィア王女とレオノーラ、アルベルトとエセルがはいる。
人でできた通路を通るのはものすごく緊張して、アルベルトの腕がないと、進めそうになかった。
壇上にあがると、ますます緊張して、頭は真っ白だった。
シュヴァルドが挨拶をのべてクリスタを伴い、広間におりる。
曲がスタートし、舞踏会のはじまりだった。
着飾った男女が、くるくると踊る様は、とても華やかで夢のように輝いていた。
「エセル、踊りにいこう」
アルベルトが、エセルをつれて、導いた。
とりあえず踊れる程度のエセルだけどアルベルトはさすがに王子様らしく、とても上手にエセルをサポートしてくれた。
エセルは、軽やかにステップを踏んで回るとドレスがふわりと動き、そして、エセルより少し上にある、アルベルトは優しい笑みを浮かべていた。
なんだか、夢の舞踏会のせいか、アルベルトがとても格好いい。気がつくと、エセルはうっとりとアルベルトを見つめていた。目が離せなくなっていた。
いつものいたずらっ子が成りをひそめると、立ち居振舞いには気品があり、少年らしく、伸びやかな体もしなやかなで、流れるよあに優雅だった。
二人は、二曲ほど踊ると、踊りの輪から離れた。
二人を見ていたらしい貴族たちが、周囲に集まってくる。
アルベルトはにっこりと笑うと、そのうちの立派な風采の壮年の男性が声をかけてくる。
「アルベルト殿下、今日はとても可憐なご令嬢とご一緒なのですね。」
「先代の、メイスフィールド伯爵のご令嬢でエセルです」
声をかけられると、アルベルトはにこやかにこたえた。
エセルは笑みを浮かべおじきをする。
アルベルトはにこやかに談笑した。
エセルは少しアルベルトから離れて飲み物を取りに向かうと、
「エセル」
と声をかけてきたのはクリスとジェイクの夫妻だった。
「とても、素敵!そのドレスもとても、似合ってるわ。殿下ともとってもお似合い!みんな可愛らしい二人だって話してるわ!」
ふふふっとクリスがいった。
クリスは大人びた印象のすっきりとしたミントグリーンのドレスをきていた。
「クリスティン様もとてもおきれいです。ドレスとても、助かりました!ありがとうございます!」
来て、とクリスに腕を引かれて、エセルは次は憧れのシエラとアンブローズ侯爵に紹介してもらう。
「こんばんは、素敵なダンスでしたね。」
アンブローズ侯爵が、柔らかな声音で話しかけてくれた。
「なにかあれば、私たちも力になるから、ジェイクを通して遠慮なく言ってほしい」
と優しく語りかけてくれた。
「エセル、本当の兄や姉と思って、私たちを頼ってちょうだいね」
シエラはそういうと、エセルの手をキュッと握ってくれた。
親身になってくれているのがわかり、エセルはうれしかった。
素敵な侯爵夫妻に、エセルは緊張した。侯爵は優雅な貴公子でシエラはものすごく美麗な女性で、そして、尚且つ優雅でこの国で一番のレディと言っていいと思う!
アルベルトがエセルを、迎えにきて、もう一度踊ると、まだ未成年なアルベルトなので、退出の時間となった。
短い時間だったが、憧れのデビューが出来て、エセルは本当に大満足だった。
アルベルトはエセルをそのまま、送ってくれる。気を利かせたのか、友人たちも、アルベルトの侍従も離れてついてきてくれているようだ。
「あの…ありがとう。アル…!」
夜の庭園をあるきながら、話しかけた。
「私、こんな風に社交界デビュー出来るなんて、本当にいま、興奮してるし、とっても幸せな気分なの」
エセルは、少したどたどしく、気持ちを伝えた
「俺は、まだ子供扱いだから、ほんとはエセルにドレスもアクセサリーも送りたかったのに、きちんとしたデビューにさせてあげられなかったのに、
そんな風に言ってもらえてうれしいよ!エセル」
アルベルトの笑顔にエセルも笑顔で返す。
目と目がカチリと合わさり、アルベルトの前髪が、サラリとエセルの顔に触れたと思うと、ふわっと柔らかな感触が唇に触れ、そして離れる。
アルベルトの真摯な光を宿した青い瞳にドキリとする。
「俺は…自分がまだ15なのが悔しいよ、エセル」
アルベルトの悔しさのにじんだ言葉にエセルはドキリとした。
「俺がもう大人の男だったら、いますぐさらっていくのに」
そっとアルベルトに抱きよせられ
「俺が大人になるまで、待っていてエセル…!」
アルベルトの言葉はいつもと違いものすごく真剣な響きで、エセルはこくりとうなずいた。
「アルが、そう望むなら、待ってる」
恐る恐る、エセルも、そっと手を回してアルベルトの背に触れた。
「うん、俺、頑張るからね!絶対待ってて!」
アルベルトはエセルの手を握る。手を繋いでしばらく歩き、使用人棟の入り口で、エセルが見えなくなるまで見送ってくれた。
友人たちはまだ帰ってきておらず、
エセルは一人でさっきの出来事を反芻して、ボンっ!と赤くなる。
なになになに!私、まるで恋人とするみたいな事とか、言葉とか交わした。ような気がする!!
「あっ!いたいたエセル。お疲れ様ね!」
エミリアが入ってきて、エセルに話しかける。
「やだ、エセルったら。顔が真っ赤!!」
にやにやと、笑うと
「さては何かあったわねー??ついに、殿下、男に昇格したのかな?うん?」
「エミリアったら!今はちょっと、舞踏会で興奮して、うん。雰囲気に酔ったのよ!」
なんだかポヤポヤしてるエセルの髪をほどいてドレスをてきぱきと脱がしてくれ、夜用のワンピースをすぽっと着せてくれるエミリア。
「ほら、お風呂でも行ってきなさい~!のぼせないようにね!」
と送り出してくれた。
エセルもその様子を、遠く王宮の中から見ていた。
「すごい!すごい!!」
遠く離れたそこにも、みんなが叫ぶ祝福の声が聞こえてくる。
その熱気はまるでひとつの巨大な生き物のようにうごめいて見えた。
パレード専用の屋根のない白い馬車は、ゆっくりと一巡して王宮に帰って来た。到着を王宮の大門の中で待っていたエセルは、シュヴァルドを出迎える。シュヴァルドと、クリスタが馬車から、降りると、使用人一同が恭しくお辞儀した。
ジェイクをはじめとした近衛騎士のキラキラした正装をした騎士隊は白馬から、降りると、厩務員たちがかけより、馬車と馬を連れていく。
シュヴァルドとクリスタはこれから結婚披露の舞踏会の衣装に着替えるため、シュヴァルドの私室にエセルも付き従う。
ジェイクがエセルを振り返り、
「エセルも準備があるだろ?ここは大丈夫だから、もう準備しにいくといい」
とにこっと笑う。
「そうです、女性は支度に時間がかかりますからね。殿下の準備なんて、すぐにできますから」
アンソニーも続けていう。
「そうですか?では、そうさせて頂きます」
二人にそう言われると、ペコリと頭を下げて、エセルは部屋に帰る。
エミリアと、セラフィーナはそれぞれアルベルト王子と、王妃に言われていたようで、、エセルの帰りを待っていた。
「さっ!いくわよーエセル!」
エセルの服を脱がせると、エミリアとセラフィーナは肌を磨くべくマッサージする。
「うっ…ぎぇっ…ひゃっ…!」
慣れていないエセルは、いちいち声をあげる。
こんこん、とノックがあり、ステラかなと思って開いてると返事をすると
「どうかしら?準備は進んでる?」
と入ってきたのはマリーとステラだった。
マリーは籠に化粧品をいれてきたようで、ステラも同じような籠を持っていた。
「ジェイクとクリスに聞いてお手伝いに来たのよ」
「ふゎっ!マリー様に手伝って頂けるなんて!」
とエセルは、感激する。
マリーが持ってきた高級化粧品を使って、髪をといたり、指先まできっちりクリームを、塗り込んだ。
四人がかりで、しかもみんな本物の侍女!!に磨かれて、肌を柔らかく、つやつやになった。
マリーはクリスから譲り受けたコルセットを手際よく紐をシュっと締めると
「エセルは細いけど、これくらいは絞めないと、」
と
「はい、息を止めてね!」
ぐぐっと紐をしめてきた。エセルはまたううっと声を出す。
普段のコルセットのなんて、かわいいものだ。
四人で髪を巻いたり、化粧を施してくれて、変身完了だった。
「ん、いいわ!素敵よエセル」
除きこんでみるマリーの美貌に、
「マリー様が素敵すぎて、自分を見たくありません~!」
「ぷっ!なにいってるの~」
「すっごく可愛いわよ!鏡をみてごらんなさいな」
淡いピンクのドレスをきたエセル。
腰は細く、顔は小振りで紫の瞳はぱっちりと輝き、唇は桜色でつやつやしてる。
髪は複雑に編まれて、何筋か、垂らした髪はくるくるとまいてあり、そこには可憐な美少女がいた。
「わぁーどういう技ですか!すごい別人!お姫様みたいになりました~!」
エセルが興奮していうと、四人は満足そうに、自分達の作品をみた。
マリーはそのあと、自分も支度すると、帰っていき、友人たちは、今日はそのまま、エセルについてくれる。
エミリアがアルベルトの所まで連れていってくれる事になっているようで、エセルは言われるがままに、従った。
「エセル!すごい可愛い!」
とにこにこと言って、エセルの左手をとり、手の甲にキスをする。
「うれしいよ!エセル。こんな素敵な君をエスコートできるなんて光栄だよ」
気取ってアルベルトはエセルに言った。
アルベルトも今日は王子様らしく、キラキラな豪華な服装で、エセルも自分が磨きあげられてお姫様気分になっていたし、、まるで魔法にかけられたように、うっとりとアルベルトを見つめた。
アルベルトのエスコートで、大広間に向かうと、国王夫妻と、シュヴァルドとクリスタの白い正装姿があった。
クリスタは、アレクシス白に銀色の刺繍の豪奢なドレスで、後ろは長く裾をひいていた。
美しい花嫁を間近で見れてエセルは美しすぎて、見つめすぎてしまった。
コツっと靴音がして、ミランダ王妃がエセルに微笑みかけた。
「エセルね、はじめましてね、アルベルトの母です。いつも息子の我が儘に付合ってくれてありがとう」
王妃としてではなく、母として言葉をかけてもらえ、エセルは感動した。
「もったいない、お言葉でございます。王妃様。アルベルト殿下にはいつもお心遣いを頂き、光栄です。」
王妃のとなりにたったジェラルド国王も、威厳のある顔に、柔らかな笑みをたたえて
「アルベルトは随分、周りを困らせていたが、最近は君の名前をだすと、真面目にしてくれるのだよ。これからも仲良くしてやってくれ」
国王に声をかけられ
「はい、ありがとうございます」
とだけ、緊張して答えた。
ソフィア王女のエスコート役には、女性の近衛騎士である、レオノーラ・ブロンテ伯爵令嬢がついていた。金髪と切れ長な緑の瞳で、すらりとした肢体と、美しい騎士姿の彼女はものすごく王宮内で人気があり、通りかかると侍女たちもうっとりと見つめるのだ。
妖精のようなソフィア王女と並ぶと、物語の絵画のような一対だった。
扉が開けられ、主役のシュヴァルドとクリスタから、入り、国王夫妻、ソフィア王女とレオノーラ、アルベルトとエセルがはいる。
人でできた通路を通るのはものすごく緊張して、アルベルトの腕がないと、進めそうになかった。
壇上にあがると、ますます緊張して、頭は真っ白だった。
シュヴァルドが挨拶をのべてクリスタを伴い、広間におりる。
曲がスタートし、舞踏会のはじまりだった。
着飾った男女が、くるくると踊る様は、とても華やかで夢のように輝いていた。
「エセル、踊りにいこう」
アルベルトが、エセルをつれて、導いた。
とりあえず踊れる程度のエセルだけどアルベルトはさすがに王子様らしく、とても上手にエセルをサポートしてくれた。
エセルは、軽やかにステップを踏んで回るとドレスがふわりと動き、そして、エセルより少し上にある、アルベルトは優しい笑みを浮かべていた。
なんだか、夢の舞踏会のせいか、アルベルトがとても格好いい。気がつくと、エセルはうっとりとアルベルトを見つめていた。目が離せなくなっていた。
いつものいたずらっ子が成りをひそめると、立ち居振舞いには気品があり、少年らしく、伸びやかな体もしなやかなで、流れるよあに優雅だった。
二人は、二曲ほど踊ると、踊りの輪から離れた。
二人を見ていたらしい貴族たちが、周囲に集まってくる。
アルベルトはにっこりと笑うと、そのうちの立派な風采の壮年の男性が声をかけてくる。
「アルベルト殿下、今日はとても可憐なご令嬢とご一緒なのですね。」
「先代の、メイスフィールド伯爵のご令嬢でエセルです」
声をかけられると、アルベルトはにこやかにこたえた。
エセルは笑みを浮かべおじきをする。
アルベルトはにこやかに談笑した。
エセルは少しアルベルトから離れて飲み物を取りに向かうと、
「エセル」
と声をかけてきたのはクリスとジェイクの夫妻だった。
「とても、素敵!そのドレスもとても、似合ってるわ。殿下ともとってもお似合い!みんな可愛らしい二人だって話してるわ!」
ふふふっとクリスがいった。
クリスは大人びた印象のすっきりとしたミントグリーンのドレスをきていた。
「クリスティン様もとてもおきれいです。ドレスとても、助かりました!ありがとうございます!」
来て、とクリスに腕を引かれて、エセルは次は憧れのシエラとアンブローズ侯爵に紹介してもらう。
「こんばんは、素敵なダンスでしたね。」
アンブローズ侯爵が、柔らかな声音で話しかけてくれた。
「なにかあれば、私たちも力になるから、ジェイクを通して遠慮なく言ってほしい」
と優しく語りかけてくれた。
「エセル、本当の兄や姉と思って、私たちを頼ってちょうだいね」
シエラはそういうと、エセルの手をキュッと握ってくれた。
親身になってくれているのがわかり、エセルはうれしかった。
素敵な侯爵夫妻に、エセルは緊張した。侯爵は優雅な貴公子でシエラはものすごく美麗な女性で、そして、尚且つ優雅でこの国で一番のレディと言っていいと思う!
アルベルトがエセルを、迎えにきて、もう一度踊ると、まだ未成年なアルベルトなので、退出の時間となった。
短い時間だったが、憧れのデビューが出来て、エセルは本当に大満足だった。
アルベルトはエセルをそのまま、送ってくれる。気を利かせたのか、友人たちも、アルベルトの侍従も離れてついてきてくれているようだ。
「あの…ありがとう。アル…!」
夜の庭園をあるきながら、話しかけた。
「私、こんな風に社交界デビュー出来るなんて、本当にいま、興奮してるし、とっても幸せな気分なの」
エセルは、少したどたどしく、気持ちを伝えた
「俺は、まだ子供扱いだから、ほんとはエセルにドレスもアクセサリーも送りたかったのに、きちんとしたデビューにさせてあげられなかったのに、
そんな風に言ってもらえてうれしいよ!エセル」
アルベルトの笑顔にエセルも笑顔で返す。
目と目がカチリと合わさり、アルベルトの前髪が、サラリとエセルの顔に触れたと思うと、ふわっと柔らかな感触が唇に触れ、そして離れる。
アルベルトの真摯な光を宿した青い瞳にドキリとする。
「俺は…自分がまだ15なのが悔しいよ、エセル」
アルベルトの悔しさのにじんだ言葉にエセルはドキリとした。
「俺がもう大人の男だったら、いますぐさらっていくのに」
そっとアルベルトに抱きよせられ
「俺が大人になるまで、待っていてエセル…!」
アルベルトの言葉はいつもと違いものすごく真剣な響きで、エセルはこくりとうなずいた。
「アルが、そう望むなら、待ってる」
恐る恐る、エセルも、そっと手を回してアルベルトの背に触れた。
「うん、俺、頑張るからね!絶対待ってて!」
アルベルトはエセルの手を握る。手を繋いでしばらく歩き、使用人棟の入り口で、エセルが見えなくなるまで見送ってくれた。
友人たちはまだ帰ってきておらず、
エセルは一人でさっきの出来事を反芻して、ボンっ!と赤くなる。
なになになに!私、まるで恋人とするみたいな事とか、言葉とか交わした。ような気がする!!
「あっ!いたいたエセル。お疲れ様ね!」
エミリアが入ってきて、エセルに話しかける。
「やだ、エセルったら。顔が真っ赤!!」
にやにやと、笑うと
「さては何かあったわねー??ついに、殿下、男に昇格したのかな?うん?」
「エミリアったら!今はちょっと、舞踏会で興奮して、うん。雰囲気に酔ったのよ!」
なんだかポヤポヤしてるエセルの髪をほどいてドレスをてきぱきと脱がしてくれ、夜用のワンピースをすぽっと着せてくれるエミリア。
「ほら、お風呂でも行ってきなさい~!のぼせないようにね!」
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