侍女の恋日記

桜 詩

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クリスの章

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 春がやってきて、クリスの体調も少し落ち着き、少しずつ食べれるものも増えてきた

「クリスちゃん、加減はいかがかしら?」
侯爵夫人がにこやかに訪問する。医師を連れてきたようだ。
「はい、少しずつ食べれるものも増えてきました」
「そう、良かったわねぇ」
ジェイクに似たキラキラ笑顔だ。
「じゃ、先生診てくださいます?」

「少しお痩せになったようですが、お腹のお子様は健やかにお育ちのようですよ。あともう少したつと、動くのを感じるかも知れませんね」
と柔らかな笑みで告げた
「まぁほんとに良かったわ。うちのみんな心配してたのよ。もともとクリスちゃんは細いのだから大丈夫かって」

「そういえばね、クリスちゃん。お姉様のシエラさん、まだお嫁入りされてないのよね?」
「ええ、姉はいま王立学院で教師をしてまして…」
姉のシエラは19才の才色兼備な女性で、学院で礼法の教師を勤めていた。

「あのね、王太子殿下のお妃候補に紹介させていたただきたいの。」
「殿下のっ!!」
「まぁそんなに驚かないで」
ほほほっと侯爵夫人は笑う。 
「式の時にお見かけしただけですけれど、美しさといい、知性といい、殿下にピッタリではないかしら」
「私にはなんとも…でも殿下とでしたら、身分差が気になりますわ」
「あくまでも候補としてご紹介するだけよ、心配いらないわ」
ほほほっと笑う侯爵夫人をみて、この方が言い出したら、確実に姉は候補に差し出されるに違いないとクリスは姉にそっと手を合わせた。

話題に、あがったシエラはクリスにはあまり印象的には似ていない。髪の色と瞳の色はクリスと同じ金と紫。小柄なクリスよりすらりと背は高く、スタイルももちろん完璧な淑女のラインを描き、何より立ち居振舞いが、流れるように美しく指先までレディのお手本そのもの。

学院ではダンスやお茶の入れ方一般教養、あと、専属侍女の試験官もしている。

この完璧な姉に、クリスは落ち着きや、記憶力や、勤勉をすべてとられて残っていなかったに違いないとおもっている。
尊敬する自慢の姉。
お妃に、と考えてみると、確かにその地位には充分ふさわしい女性のように思えた

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