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黎明の章
螺旋の愛 ★
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グレイシアの寝室は、女性らしく花やレースに彩られて、今はそのドレッサーの前で、夫となったジョルダンとキスを交わしている。その感触はすでに慣れ親しんでいるというのに、もっと与えられたいと思う気持ちは、少しも色褪せない。
離れた唇はキスの跡が色濃く息づき、そして言葉を伝えてくる。
「愛してる」
耳元で囁かれたその声は、背がぞくりとしてしまうほど艶っぽくて、グレイシアは熱い息を吐いた。
「私も………愛してるの」
そう言って、目で『知ってるでしょ?』と問いかける。
首に腕を回して、そして抱き上げられて沈み込むベッドへと静かに雪崩れ込む。
再会してから、結婚するまで……。
ジョルダンは、グレイシアとベッドを共にしなかった。それはきっと右肩の怪我以上に、彼なりのけじめなのだと感じている。
ジョルダンの右の肩には、滑らかな皮膚に出来た傷跡がまだピンク色で残っている。その形は、まるで光の紋章にも似ていてなぞるようにそっとそこを指先で辿れば、少しだけピクリと反射的に肩が動く。
「………この傷は………疎ましくもあるが、これがきっかけでこうして今居れるのだとしたら、むしろ感謝すべきかな」
彼のその傷を作ったのは、たしかグレイシアもその名を聞いた。
「ナサニエル……カートライト侯爵閣下?」
「そう。会っても……不用意に近づいては駄目だよ。嫌な奴だから」
カートライト侯爵………
(K侯爵………)
お茶会での女性たちの噂の事をふと思い出す。
「わかったわ」
傷をつけられる理由があったと、そう聞いた。
ならばジョルダンと敵対しているのだとすれば、グレイシアは近づかない方が賢明だろう。まして、王都の社交界に疎いのだから。
「あんなヤツの事は、口にするのはやめよう。今は、妻となった君に愛を囁く時だから」
確かに、こんな風に愛を交わそうとしている時には相応しくない話題だ。
「そうね」
クスクスとグレイシアは笑い声をたてた。
まだ結っていない淡い金の髪は、シーツに流れて流線を描いていて、ジョルダンの指がすくいとったその毛先は彼のキスを受ける。
「熱心に櫛梳っていたから……待ちくたびれた」
「熱心にって………」
確かに……。
修道院にいた頃には、こんなに時間をかけて手入れなんてしていなかったけれど、今は……そう。
「それは……貴方の為でしょ」
小さな囁きは、彼のニヤリとした笑みの返事を誘った。
再びの熱いキスが落ちて、音をたててしだいに濃厚になっていくのにつれて、息は沸騰したかのように熱くそして苦しいほどの物へと変わって行く。
その熱で、くらくらとする意識はあっさりと思考を奪ってしまう。
何度もキスの合間に囁かれる愛の言葉は心にさえその熱さを伝えて、絶え間なく焔を灯していき、その熱に浮かされてその渦に巻き込まれていくようだった。
肩から衿先は乱れて、ネグリジェから柔らかな乳房を露にして、唇が触れるとすでに高まっていたその心に準じて身体も一瞬にして反応したしまう。その快をつたえてくる感覚に少しだけ反らされた背がその分だけ揺れて高く主張する。
ピンク色に色づいたそこを甘く歯で加えられるその刺激に、グレイシアは小さく声を上げた。
甘い痛みは悦楽の鍵を開けて、次なるまた悦楽を呼び起こしていく。ジョルダンの唇とそして指は、グレイシアの身体を知り尽くしていて、唇は首や胸を、そして指は弱く強く足先から触れていけば、美しい眉はひそめられ、そして唇からは喘ぎが零れでて足先は指先に至るまで、張りつめている。
ゆっくりと焦らすかのように愛撫されて、知らず膝を開いて露にしていた秘めた箇所は、触れられずとも濡れて滴るようになっているのが、ヒップの下が湿って覚らせる。
「ジョルダン……お願い……」
何が、お願いなのかグレイシアにも分かってはいない、ただ、そう。もっと、刺激がほしいと……。
「君の方が……先に待たせたのに」
「意地悪を、言わないで……」
「そんな顔で見られてしまうと、もう………陥落するしかない」
ジョルダンはそう呟くと、額にキスをして、そのまま片足を腕にかけて、すでに昂っていた屹立を一息で深く貫いた。
「………っ!!」
まだ、充分にほぐされていなくて、突然の刺激にグレイシアの視界がチカチカとする。
「平気?」
答える声はでなくて、首だけを動かすとそのまま浅くと深くをリズムを刻むように責め立てられて、その官能がよりグレイシアの身体を燃え上がらせて、彼の証を絡めとるように締め付けていき、肌の当たる音とはしたないほどの水音が響き、グレイシアは啜り泣くような声を上げて、
「……っ……ん……も、だめ………!」
「……だ、め?」
答えないままに、グレイシアの絶頂はやって来てそのまま、震える体に構わずジョルダンは、くるりとうつ伏せにしてヒップから捕まえるようにまた蠢く中を突き立てる。
「………このまま……っ…て……いい?」
ジョルダンの言葉は聞こえていた。それに、グレイシアは
「………き…て………」
と喘ぎの中で答えた。
その言葉に、さらに動きを大胆にしたジョルダンの物は、グレイシアの中で大きく弾けて、最奥で放たれたのと同時に、また絶頂はやって来ると、ひときわ高く声をあげてシーツをきつく掴んだ。
「………っ……は…ぁ…」
グレイシアの耳には、ジョルダンの吐息が聞こえて、またゾクゾクが押し寄せてくる。
終わりのないような、その悦楽の炎は、まるで螺旋を描いて立ち上るかのようで、崩れと落ちるように重なって、そして汗ばんだまままたキスを繰り返した。
「………出来てしまうかも、知れないよ?」
そっとお腹を触れてくる。
「………私たち、結婚したのよね?あなたは欲しくないの?」
「君が、良いのならね」
「私は……いつか、貴方の子供を腕に抱きたい」
「………まだまだ、夜は長いから」
「長いから……?」
「もっと、君を愛したい」
グレイシアは、ジョルダンの上下する胸に手をおいて、その早い鼓動を感じる。その鼓動が愛しくてならない。
「たくさん………感じさせて………」
「グレイシアの………その名前にふさわしい、このきれいなアイスブルーの瞳が好きだ……それから、髪よりもすこしだけ濃い眉も、それから、小さく鼻と、それからキスをしたらベリーみたいに赤くなる唇………」
一つずつ、触れながら言うジョルダンに、グレイシアは笑った。
「私も……貴方のすべてが好きよ。この素敵な銀の髪も、深い青の瞳も……キスをしてくれるこの唇も」
そんなグレイシアの言葉を、キスで塞いで
「愛してる……誰 よりも」
幾度も交わした愛の言葉は、心に刻むかのようで
「私も……」
そう。
秘める必要は、ないのだから。
言葉を尽くしてそして、愛の夜を過ごす………。当たり前のようでいて、とても貴重な……そんな時間は
幸せ過ぎて、怖いくらいでグレイシアは彼の背に腕を回した。
そうすれば失わない……そんな保証はないのに。
それでも……今この時を。心から………
離れた唇はキスの跡が色濃く息づき、そして言葉を伝えてくる。
「愛してる」
耳元で囁かれたその声は、背がぞくりとしてしまうほど艶っぽくて、グレイシアは熱い息を吐いた。
「私も………愛してるの」
そう言って、目で『知ってるでしょ?』と問いかける。
首に腕を回して、そして抱き上げられて沈み込むベッドへと静かに雪崩れ込む。
再会してから、結婚するまで……。
ジョルダンは、グレイシアとベッドを共にしなかった。それはきっと右肩の怪我以上に、彼なりのけじめなのだと感じている。
ジョルダンの右の肩には、滑らかな皮膚に出来た傷跡がまだピンク色で残っている。その形は、まるで光の紋章にも似ていてなぞるようにそっとそこを指先で辿れば、少しだけピクリと反射的に肩が動く。
「………この傷は………疎ましくもあるが、これがきっかけでこうして今居れるのだとしたら、むしろ感謝すべきかな」
彼のその傷を作ったのは、たしかグレイシアもその名を聞いた。
「ナサニエル……カートライト侯爵閣下?」
「そう。会っても……不用意に近づいては駄目だよ。嫌な奴だから」
カートライト侯爵………
(K侯爵………)
お茶会での女性たちの噂の事をふと思い出す。
「わかったわ」
傷をつけられる理由があったと、そう聞いた。
ならばジョルダンと敵対しているのだとすれば、グレイシアは近づかない方が賢明だろう。まして、王都の社交界に疎いのだから。
「あんなヤツの事は、口にするのはやめよう。今は、妻となった君に愛を囁く時だから」
確かに、こんな風に愛を交わそうとしている時には相応しくない話題だ。
「そうね」
クスクスとグレイシアは笑い声をたてた。
まだ結っていない淡い金の髪は、シーツに流れて流線を描いていて、ジョルダンの指がすくいとったその毛先は彼のキスを受ける。
「熱心に櫛梳っていたから……待ちくたびれた」
「熱心にって………」
確かに……。
修道院にいた頃には、こんなに時間をかけて手入れなんてしていなかったけれど、今は……そう。
「それは……貴方の為でしょ」
小さな囁きは、彼のニヤリとした笑みの返事を誘った。
再びの熱いキスが落ちて、音をたててしだいに濃厚になっていくのにつれて、息は沸騰したかのように熱くそして苦しいほどの物へと変わって行く。
その熱で、くらくらとする意識はあっさりと思考を奪ってしまう。
何度もキスの合間に囁かれる愛の言葉は心にさえその熱さを伝えて、絶え間なく焔を灯していき、その熱に浮かされてその渦に巻き込まれていくようだった。
肩から衿先は乱れて、ネグリジェから柔らかな乳房を露にして、唇が触れるとすでに高まっていたその心に準じて身体も一瞬にして反応したしまう。その快をつたえてくる感覚に少しだけ反らされた背がその分だけ揺れて高く主張する。
ピンク色に色づいたそこを甘く歯で加えられるその刺激に、グレイシアは小さく声を上げた。
甘い痛みは悦楽の鍵を開けて、次なるまた悦楽を呼び起こしていく。ジョルダンの唇とそして指は、グレイシアの身体を知り尽くしていて、唇は首や胸を、そして指は弱く強く足先から触れていけば、美しい眉はひそめられ、そして唇からは喘ぎが零れでて足先は指先に至るまで、張りつめている。
ゆっくりと焦らすかのように愛撫されて、知らず膝を開いて露にしていた秘めた箇所は、触れられずとも濡れて滴るようになっているのが、ヒップの下が湿って覚らせる。
「ジョルダン……お願い……」
何が、お願いなのかグレイシアにも分かってはいない、ただ、そう。もっと、刺激がほしいと……。
「君の方が……先に待たせたのに」
「意地悪を、言わないで……」
「そんな顔で見られてしまうと、もう………陥落するしかない」
ジョルダンはそう呟くと、額にキスをして、そのまま片足を腕にかけて、すでに昂っていた屹立を一息で深く貫いた。
「………っ!!」
まだ、充分にほぐされていなくて、突然の刺激にグレイシアの視界がチカチカとする。
「平気?」
答える声はでなくて、首だけを動かすとそのまま浅くと深くをリズムを刻むように責め立てられて、その官能がよりグレイシアの身体を燃え上がらせて、彼の証を絡めとるように締め付けていき、肌の当たる音とはしたないほどの水音が響き、グレイシアは啜り泣くような声を上げて、
「……っ……ん……も、だめ………!」
「……だ、め?」
答えないままに、グレイシアの絶頂はやって来てそのまま、震える体に構わずジョルダンは、くるりとうつ伏せにしてヒップから捕まえるようにまた蠢く中を突き立てる。
「………このまま……っ…て……いい?」
ジョルダンの言葉は聞こえていた。それに、グレイシアは
「………き…て………」
と喘ぎの中で答えた。
その言葉に、さらに動きを大胆にしたジョルダンの物は、グレイシアの中で大きく弾けて、最奥で放たれたのと同時に、また絶頂はやって来ると、ひときわ高く声をあげてシーツをきつく掴んだ。
「………っ……は…ぁ…」
グレイシアの耳には、ジョルダンの吐息が聞こえて、またゾクゾクが押し寄せてくる。
終わりのないような、その悦楽の炎は、まるで螺旋を描いて立ち上るかのようで、崩れと落ちるように重なって、そして汗ばんだまままたキスを繰り返した。
「………出来てしまうかも、知れないよ?」
そっとお腹を触れてくる。
「………私たち、結婚したのよね?あなたは欲しくないの?」
「君が、良いのならね」
「私は……いつか、貴方の子供を腕に抱きたい」
「………まだまだ、夜は長いから」
「長いから……?」
「もっと、君を愛したい」
グレイシアは、ジョルダンの上下する胸に手をおいて、その早い鼓動を感じる。その鼓動が愛しくてならない。
「たくさん………感じさせて………」
「グレイシアの………その名前にふさわしい、このきれいなアイスブルーの瞳が好きだ……それから、髪よりもすこしだけ濃い眉も、それから、小さく鼻と、それからキスをしたらベリーみたいに赤くなる唇………」
一つずつ、触れながら言うジョルダンに、グレイシアは笑った。
「私も……貴方のすべてが好きよ。この素敵な銀の髪も、深い青の瞳も……キスをしてくれるこの唇も」
そんなグレイシアの言葉を、キスで塞いで
「愛してる……誰 よりも」
幾度も交わした愛の言葉は、心に刻むかのようで
「私も……」
そう。
秘める必要は、ないのだから。
言葉を尽くしてそして、愛の夜を過ごす………。当たり前のようでいて、とても貴重な……そんな時間は
幸せ過ぎて、怖いくらいでグレイシアは彼の背に腕を回した。
そうすれば失わない……そんな保証はないのに。
それでも……今この時を。心から………
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