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第3章:幸福の象徴
47.セレネ(2)
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セレネはフロアを歩き回り、施設を確認している瑠那たちを見つけると、足早に近づいて行った。
それに気付いた瑠那が、いち早く警戒するような表情で迎えた。
「……なに? 何か用事?」
セレネは真顔で告げる。
「悠人さんと話をしてきました」
「……それで?」
「恋人にして欲しいとお願いしましたが、『いきなりは無理だから友達からにして欲しい』と言われてしまいました。
ですので、みなさんとも友人から始められないかと思いまして」
瑠那が怪訝な表情でセレネを見つめた。
「恋人って、あんた本気なの?」
「ええ、とても素敵な方なので、もっと近づきたいと思ったのですが、『恋人以外を近づけられない』と拒否されてしまいました。
ですが私は悠人さんに近付きたいのです。
そのために必要なら、恋人になるしかないと思いました。
私は何かおかしなことを言ってるでしょうか」
ガラティアが無邪気な声で告げる。
「セレネも悠人を好きになったってことだよね?
いいんじゃない? 恋人にしてもらえば!」
瑠那が慌ててガラティアに振り向いて告げる。
「ティア! 変なこと言わないで!
私のクローンが悠人の恋人になるとか、どんな気持ちで居ればいいっていうのよ?!」
ガラティアはきょとんとした顔で瑠那に応える。
「どんな気持ちって……友達の一人、じゃいけないの?
セレネは瑠那のクローンかもしれないけど、女子の一人でもあるんだよ?
悠人を愛する女子が、仲間に加わるだけでしょ?」
瑠那は複雑な顔でガラティアを見つめていた。
由香里は緊張した顔でセレネに告げる。
「悠人さんの、どこを好きになったんですか」
セレネは真顔のまま応える。
「好き、という気持ちはわかりませんが、そばに居ると胸がドキドキします。
心地良くて、安心できて、でもなぜか胸が苦しくて落ち着かない。不思議な体験でした。
近づけば近づくほど、その気持ちが強くなります。
――そして悠人さんは、『私は一人の人間だ』と、当たり前のように言ってくれたんです。
私は悠人さんのそばで、あの言葉を言われ続けたい」
由香里は、セレネの想いに共感できてしまった。
会議室から先に退出した悠人は、デュカリオンからの『願い』を聞いていない。それでも彼なら、そう言ってのけるだろう。
ありのままの自分の価値を認めてくれる、悠人という男性に心惹かれたのが、ここに居る仲間たちだ。
瑠那のクローンで、人工有機生命体でもあるセレネにとって、その言葉は自分たちが思うよりずっと重たいのだろうと想像がついた。
自己の根拠を持たないセレネに、『一人の人間』であることを無条件に全肯定してくれる悠人は、きっと目を開けて居られないほど眩しく映るのだろう。
「……私は、セレネと仲間になれるような気がします。
私たちと同じ気持ちで悠人さんを愛せる女子なら、きっと友達になれるんじゃないでしょうか」
優衣が静かな表情で告げる。
「ほとんど『悠人さんと出会った頃の私たち』ね。いえ、もう少し重症かしら。
嘘は言ってないし、これなら私も仲間にできる気がするわ。
――瑠那はどう?」
瑠那はしばらく眉をひそめてセレネを睨み付けたあと、大きく息をついた。
「これで私が拒絶したら、私が悪者じゃない。
いいわ、気持ちの整理は追々つけるとして、仲間に加えることは拒否しない。それでいい?」
女子たちが頷き、セレネを見つめた。
セレネは戸惑いながら告げる。
「……それは、友人として迎え入れてくれる、ということでしょうか」
ガラティアが無邪気な声で応える。
「違うよ! 悠人の愛を共有する仲間になろうって話!
あとは悠人と話をして、セレネを恋人にしてもらうだけだね!」
由香里が両手を大きく打ち鳴らした。
「ああー! そうか、悠人さんはまだ部屋に居るんですね!
どこに居るのかと思ってました!」
美雪が困ったように微笑んだ。
「デュカリオンの指示に従ったままだったのか。
それじゃあ迎えに行かないとだね――でも、悠人さんの部屋はどこだろう?」
セレネが真顔で告げる。
「それならご案内できます。こちらです」
歩きだしたセレネのあとを、女子たちが追っていった。
****
ドアを開けると、女子たち全員がセレネを連れて、俺の前に立っていた。
笑顔のガラティアが俺に事情を説明している。
「――というわけで、私たちはセレネを仲間にしようと思うんだ!
だから、悠人はセレネを六人目の恋人にしてあげてよ! ――できる?」
俺は頭痛を覚えて頭を押さえていた。
「……六股男になれと、そういうことか?」
優衣がフッと笑った。
「ふふ、五股も六股も変わらないわよ。
ともかく、私たちはセレネを『共有する愛』の仲間に加えるつもりよ。
あとは悠人さんが、セレネを受け入れればいいだけ」
セレネが切ない表情で告げる。
「どうでしょうか、私を恋人にしては頂けませんか」
俺は大きく息をついてから応える。
「だから、俺はまだセレネをよく知らないんだって。
六人目として、人生を背負えるかって言われたら、まだ決心はつかないよ」
ティアが無邪気な声で告げる。
「セレネは好きになれない? 女子として魅力ない?」
「そうは言ってねーよ。
お前たちとは違った魅力を持つ女子だ。
でもこのグループの女子は、俺が幸せにすると約束した女子だ。
そのメンバーをほいほいと増やしてたら、不誠実だろ」
優衣が微笑みながら告げる。
「五人と六人、何も変わらないわよ。
悠人さんなら、セレネを含めた私たちを幸せにできると思うけど。
私たち『悠人さんを想う女子』のグループに居るセレネを、一人だけのけ者にするの?
あなたを想う女子を、一人だけ友達のままにしてしまうの?
私たちが愛されてるのを指をくわえてセレネに見てろと、そんなひどい事を言うのかしら」
俺はジト目で優衣を見つめた。
「そういう人聞きの悪いことを言うなよ。
お前たちが仲間に入れたいって言うなら、それを否定はしないよ。
お前たちの笑顔が俺の幸せだからな。
――どうだ瑠那、お前は仲間としてセレネを認められるのか」
瑠那が不機嫌そうに目をそらした。
「だから、この空気で拒絶できる訳、ないでしょ!
でも自分のクローンがこの輪に入るとか、私の気持ち少しは考えてくれない?」
「ちょっと待て瑠那、セレネをクローンとして扱うの、やめようぜ。
お前そっくりかもしれないけど、こいつはお前とは違う別の人間、一人の女子だろ?
そういう風にお前だって考えられるはずだ。
性格もだいぶ違う。外見だって、見ればわかる程度の違いはある」
由香里が驚いて俺を見ていた。
「見て違いがわかるんですか?
私たちはまだ、シャッフルされたらどっちがどっちかなんて、わかりませんけど」
「わかるよ。むしろ、なんでわからないと思ったんだ?」
こういうの、女子の方が敏感だと思ったけど。
三か月一緒に居る瑠那と、ここで初めて会ったセレネの区別もつかないなんて、恋人失格だろう。
優衣が楽しそうに告げる。
「デュカリオンから何も言われなくても、きちんとセレネを一人の人間として扱えるのね。
さすが悠人さん、といったところかしら」
なんだ、やっぱりデュカリオンも同じことを言ってたのか。
なんでセレネは『初めて言われた』なんて言ったんだろう?
俺は改めて瑠那を見て告げる。
「俺は瑠那が笑顔で迎えられないと言うなら、まだ仲間に加えるべきじゃないと思う。
それに、セレネの事を受け入れるのが難しいっていう瑠那の気持ちだってわかる。
俺だって、自分の遺伝子を持った存在が目の前に現れたら戸惑うだろうし。
――なぁみんな、瑠那のためにも、今日はまだ友人としてセレネを扱うってことで手を打たないか?」
俺はみんなを見回した。
がっかりしてるセレナ以外、みんな納得したように頷いた――ティア一人を除いて。
俺は微笑むティアに告げる。
「なんだよ、お前はそれじゃあ不満だって言うのか?」
「悠人なら大丈夫だし、瑠那だって大丈夫だよ!
もっと瑠那のこと、信じてあげられない?
私たちは悠人が大好きな女子の集まりだもん。
仲良くできないわけが無いんだよ」
こいつの言うことはいっつもシンプルだよなぁ。
瑠那もこのぐらいシンプルに考えられればいいんだろうけど。
――俺の腹が、昼飯を求めて悲鳴を上げた。
「昼時か。続きは飯を食いながら話そうぜ。
――セレネ、食堂の場所はわかるか?」
セレネが頬を染め、微笑んで頷いた。
「こちらです。ご案内します」
俺たちはセレネの後に続いて、廊下を歩きだした。
それに気付いた瑠那が、いち早く警戒するような表情で迎えた。
「……なに? 何か用事?」
セレネは真顔で告げる。
「悠人さんと話をしてきました」
「……それで?」
「恋人にして欲しいとお願いしましたが、『いきなりは無理だから友達からにして欲しい』と言われてしまいました。
ですので、みなさんとも友人から始められないかと思いまして」
瑠那が怪訝な表情でセレネを見つめた。
「恋人って、あんた本気なの?」
「ええ、とても素敵な方なので、もっと近づきたいと思ったのですが、『恋人以外を近づけられない』と拒否されてしまいました。
ですが私は悠人さんに近付きたいのです。
そのために必要なら、恋人になるしかないと思いました。
私は何かおかしなことを言ってるでしょうか」
ガラティアが無邪気な声で告げる。
「セレネも悠人を好きになったってことだよね?
いいんじゃない? 恋人にしてもらえば!」
瑠那が慌ててガラティアに振り向いて告げる。
「ティア! 変なこと言わないで!
私のクローンが悠人の恋人になるとか、どんな気持ちで居ればいいっていうのよ?!」
ガラティアはきょとんとした顔で瑠那に応える。
「どんな気持ちって……友達の一人、じゃいけないの?
セレネは瑠那のクローンかもしれないけど、女子の一人でもあるんだよ?
悠人を愛する女子が、仲間に加わるだけでしょ?」
瑠那は複雑な顔でガラティアを見つめていた。
由香里は緊張した顔でセレネに告げる。
「悠人さんの、どこを好きになったんですか」
セレネは真顔のまま応える。
「好き、という気持ちはわかりませんが、そばに居ると胸がドキドキします。
心地良くて、安心できて、でもなぜか胸が苦しくて落ち着かない。不思議な体験でした。
近づけば近づくほど、その気持ちが強くなります。
――そして悠人さんは、『私は一人の人間だ』と、当たり前のように言ってくれたんです。
私は悠人さんのそばで、あの言葉を言われ続けたい」
由香里は、セレネの想いに共感できてしまった。
会議室から先に退出した悠人は、デュカリオンからの『願い』を聞いていない。それでも彼なら、そう言ってのけるだろう。
ありのままの自分の価値を認めてくれる、悠人という男性に心惹かれたのが、ここに居る仲間たちだ。
瑠那のクローンで、人工有機生命体でもあるセレネにとって、その言葉は自分たちが思うよりずっと重たいのだろうと想像がついた。
自己の根拠を持たないセレネに、『一人の人間』であることを無条件に全肯定してくれる悠人は、きっと目を開けて居られないほど眩しく映るのだろう。
「……私は、セレネと仲間になれるような気がします。
私たちと同じ気持ちで悠人さんを愛せる女子なら、きっと友達になれるんじゃないでしょうか」
優衣が静かな表情で告げる。
「ほとんど『悠人さんと出会った頃の私たち』ね。いえ、もう少し重症かしら。
嘘は言ってないし、これなら私も仲間にできる気がするわ。
――瑠那はどう?」
瑠那はしばらく眉をひそめてセレネを睨み付けたあと、大きく息をついた。
「これで私が拒絶したら、私が悪者じゃない。
いいわ、気持ちの整理は追々つけるとして、仲間に加えることは拒否しない。それでいい?」
女子たちが頷き、セレネを見つめた。
セレネは戸惑いながら告げる。
「……それは、友人として迎え入れてくれる、ということでしょうか」
ガラティアが無邪気な声で応える。
「違うよ! 悠人の愛を共有する仲間になろうって話!
あとは悠人と話をして、セレネを恋人にしてもらうだけだね!」
由香里が両手を大きく打ち鳴らした。
「ああー! そうか、悠人さんはまだ部屋に居るんですね!
どこに居るのかと思ってました!」
美雪が困ったように微笑んだ。
「デュカリオンの指示に従ったままだったのか。
それじゃあ迎えに行かないとだね――でも、悠人さんの部屋はどこだろう?」
セレネが真顔で告げる。
「それならご案内できます。こちらです」
歩きだしたセレネのあとを、女子たちが追っていった。
****
ドアを開けると、女子たち全員がセレネを連れて、俺の前に立っていた。
笑顔のガラティアが俺に事情を説明している。
「――というわけで、私たちはセレネを仲間にしようと思うんだ!
だから、悠人はセレネを六人目の恋人にしてあげてよ! ――できる?」
俺は頭痛を覚えて頭を押さえていた。
「……六股男になれと、そういうことか?」
優衣がフッと笑った。
「ふふ、五股も六股も変わらないわよ。
ともかく、私たちはセレネを『共有する愛』の仲間に加えるつもりよ。
あとは悠人さんが、セレネを受け入れればいいだけ」
セレネが切ない表情で告げる。
「どうでしょうか、私を恋人にしては頂けませんか」
俺は大きく息をついてから応える。
「だから、俺はまだセレネをよく知らないんだって。
六人目として、人生を背負えるかって言われたら、まだ決心はつかないよ」
ティアが無邪気な声で告げる。
「セレネは好きになれない? 女子として魅力ない?」
「そうは言ってねーよ。
お前たちとは違った魅力を持つ女子だ。
でもこのグループの女子は、俺が幸せにすると約束した女子だ。
そのメンバーをほいほいと増やしてたら、不誠実だろ」
優衣が微笑みながら告げる。
「五人と六人、何も変わらないわよ。
悠人さんなら、セレネを含めた私たちを幸せにできると思うけど。
私たち『悠人さんを想う女子』のグループに居るセレネを、一人だけのけ者にするの?
あなたを想う女子を、一人だけ友達のままにしてしまうの?
私たちが愛されてるのを指をくわえてセレネに見てろと、そんなひどい事を言うのかしら」
俺はジト目で優衣を見つめた。
「そういう人聞きの悪いことを言うなよ。
お前たちが仲間に入れたいって言うなら、それを否定はしないよ。
お前たちの笑顔が俺の幸せだからな。
――どうだ瑠那、お前は仲間としてセレネを認められるのか」
瑠那が不機嫌そうに目をそらした。
「だから、この空気で拒絶できる訳、ないでしょ!
でも自分のクローンがこの輪に入るとか、私の気持ち少しは考えてくれない?」
「ちょっと待て瑠那、セレネをクローンとして扱うの、やめようぜ。
お前そっくりかもしれないけど、こいつはお前とは違う別の人間、一人の女子だろ?
そういう風にお前だって考えられるはずだ。
性格もだいぶ違う。外見だって、見ればわかる程度の違いはある」
由香里が驚いて俺を見ていた。
「見て違いがわかるんですか?
私たちはまだ、シャッフルされたらどっちがどっちかなんて、わかりませんけど」
「わかるよ。むしろ、なんでわからないと思ったんだ?」
こういうの、女子の方が敏感だと思ったけど。
三か月一緒に居る瑠那と、ここで初めて会ったセレネの区別もつかないなんて、恋人失格だろう。
優衣が楽しそうに告げる。
「デュカリオンから何も言われなくても、きちんとセレネを一人の人間として扱えるのね。
さすが悠人さん、といったところかしら」
なんだ、やっぱりデュカリオンも同じことを言ってたのか。
なんでセレネは『初めて言われた』なんて言ったんだろう?
俺は改めて瑠那を見て告げる。
「俺は瑠那が笑顔で迎えられないと言うなら、まだ仲間に加えるべきじゃないと思う。
それに、セレネの事を受け入れるのが難しいっていう瑠那の気持ちだってわかる。
俺だって、自分の遺伝子を持った存在が目の前に現れたら戸惑うだろうし。
――なぁみんな、瑠那のためにも、今日はまだ友人としてセレネを扱うってことで手を打たないか?」
俺はみんなを見回した。
がっかりしてるセレナ以外、みんな納得したように頷いた――ティア一人を除いて。
俺は微笑むティアに告げる。
「なんだよ、お前はそれじゃあ不満だって言うのか?」
「悠人なら大丈夫だし、瑠那だって大丈夫だよ!
もっと瑠那のこと、信じてあげられない?
私たちは悠人が大好きな女子の集まりだもん。
仲良くできないわけが無いんだよ」
こいつの言うことはいっつもシンプルだよなぁ。
瑠那もこのぐらいシンプルに考えられればいいんだろうけど。
――俺の腹が、昼飯を求めて悲鳴を上げた。
「昼時か。続きは飯を食いながら話そうぜ。
――セレネ、食堂の場所はわかるか?」
セレネが頬を染め、微笑んで頷いた。
「こちらです。ご案内します」
俺たちはセレネの後に続いて、廊下を歩きだした。
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