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第2章:やっぱりむかつくのでもう一度ぶん殴りますね
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そろそろ朝食の時間となり、リオはサロンから引き上げ、ダイニングに向かった。
リオがダイニングに入ると、既にミルスが先に席に着いていた。
それを確認したリオが先に声をかける。
「おはよう、ミルス。
まだ痛い所はある?」
「おはよう、リオ。
すっかり治ったよ。
だが、起きたときに既に居なくなっていたから、かなり寂しい思いはしたな」
苦笑をしながらリオが席に着く。
「あれほど動けないとアピールしていたのに、ちゃっかり両腕で抱き着いてくるんだもの。
そんな人から、早く逃げたかっただけよ」
ミルスがぺろりと舌を出した。
「やはりバレていたか。
あそこまで腕を動かすのも、相当きつかったんだがなぁ」
朝食を口に運びながら、明るい会話が食堂に響いていた。
その空気が新鮮で、自然とリオとミルスの顔が綻んでいく。
「ミルス殿下、僭越ながら申し上げます。
そろそろ出立しませんと、学院に間に合わなくなります」
控えていた侍従の言葉で、ミルスが時計に目を向ける。
「おっと、うっかり時間を忘れてしまったな。
――さぁリオ、行こうか」
リオが明るい笑顔でうなずき、立ち上がる。
そのまま会話を交えながら馬車に乗り込み、車内でも会話が続いていた。
「――なんだか不思議ね。
昨日までとすっかり世界が変わってしまったかのよう」
ぽつりと漏らしたリオの言葉に、ミルスが笑顔を向ける。
「俺もそう感じるよ。
少なくとも今、俺の目の前に居るのが『リオ・ウェラウルム』だという実感がある。
だからかもしれないな」
リオが目を見張ってミルスを見つめた。
「……私はそう名乗っても構わないのかしら」
少し寂しそうな笑みで、ミルスが応える。
「……お前が『まだマーベリックでありたい』というなら、俺にそれを止める権利はない」
リオは静かに首を横に振った。
「ありたいと思っている訳じゃないの。
まだウェラウルム王家を名乗る自信がないだけよ」
「では、何の問題もない。
お前はリオ・ウェラウルム第三王子妃。
正真正銘、俺の妻だ。
自信がないだなんて、リオらしくない。
いつものお前のまま、ウェラウルムを名乗れば良い」
「……私らしく、か。
そうね、確かにこんな態度、私らしくなかったわね。
あなたの妻として、今日から胸を張って王家を名乗ることにするわ」
ミルスに再び、輝かんばかりの笑顔が戻る。
「――どうだ? お前には、目の前の男が夫である実感はあるか?」
リオが赤い瞳を瞬かせ、ミルスの瞳を見つめた。
そして微笑みを乗せて応える。
「私はリオ・ウェラウルム。あなたの妻よ?
ならばあなたは我が夫。
そこに一抹の不安も在りはしないわ」
リオがダイニングに入ると、既にミルスが先に席に着いていた。
それを確認したリオが先に声をかける。
「おはよう、ミルス。
まだ痛い所はある?」
「おはよう、リオ。
すっかり治ったよ。
だが、起きたときに既に居なくなっていたから、かなり寂しい思いはしたな」
苦笑をしながらリオが席に着く。
「あれほど動けないとアピールしていたのに、ちゃっかり両腕で抱き着いてくるんだもの。
そんな人から、早く逃げたかっただけよ」
ミルスがぺろりと舌を出した。
「やはりバレていたか。
あそこまで腕を動かすのも、相当きつかったんだがなぁ」
朝食を口に運びながら、明るい会話が食堂に響いていた。
その空気が新鮮で、自然とリオとミルスの顔が綻んでいく。
「ミルス殿下、僭越ながら申し上げます。
そろそろ出立しませんと、学院に間に合わなくなります」
控えていた侍従の言葉で、ミルスが時計に目を向ける。
「おっと、うっかり時間を忘れてしまったな。
――さぁリオ、行こうか」
リオが明るい笑顔でうなずき、立ち上がる。
そのまま会話を交えながら馬車に乗り込み、車内でも会話が続いていた。
「――なんだか不思議ね。
昨日までとすっかり世界が変わってしまったかのよう」
ぽつりと漏らしたリオの言葉に、ミルスが笑顔を向ける。
「俺もそう感じるよ。
少なくとも今、俺の目の前に居るのが『リオ・ウェラウルム』だという実感がある。
だからかもしれないな」
リオが目を見張ってミルスを見つめた。
「……私はそう名乗っても構わないのかしら」
少し寂しそうな笑みで、ミルスが応える。
「……お前が『まだマーベリックでありたい』というなら、俺にそれを止める権利はない」
リオは静かに首を横に振った。
「ありたいと思っている訳じゃないの。
まだウェラウルム王家を名乗る自信がないだけよ」
「では、何の問題もない。
お前はリオ・ウェラウルム第三王子妃。
正真正銘、俺の妻だ。
自信がないだなんて、リオらしくない。
いつものお前のまま、ウェラウルムを名乗れば良い」
「……私らしく、か。
そうね、確かにこんな態度、私らしくなかったわね。
あなたの妻として、今日から胸を張って王家を名乗ることにするわ」
ミルスに再び、輝かんばかりの笑顔が戻る。
「――どうだ? お前には、目の前の男が夫である実感はあるか?」
リオが赤い瞳を瞬かせ、ミルスの瞳を見つめた。
そして微笑みを乗せて応える。
「私はリオ・ウェラウルム。あなたの妻よ?
ならばあなたは我が夫。
そこに一抹の不安も在りはしないわ」
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