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第2章:綺羅星
43.シュテルン選考会(4)
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控室に戻ってきたフランツ殿下は、満面の笑みだった。
戻ってきた瞬間のサムズアップ!
「ハハハ! ヴォルフガングからほめられたぞ!
掛け値なしの褒め言葉を受け取ったのは初めてだ!」
殿下、いつも叱られてばかりだったからなぁ。
ベルト様も、どこかゆったりとした空気で告げる。
「最後は私か。
殿下が突破出来て、私が不合格になど、ならぬようにせねばな」
フランツ殿下が合格したことで、緊張がほぐれたみたい。
ふと降らぬ殿下が、思い出したように告げる。
「俺たちは八人だよな。
ノルベルトがまだだから、合格者は七人のはずだ」
私はうなずいて応える。
「その通りですわね。
私たち以外の生徒に合格者はいなさそうですし」
「ヴォルフガングが言ってたんだ。
『この分なら合格者は十人以上だ』ってな」
クラウがうつむき気味に考えこんでいた。
「ノルベルト様を合格予定とみなしても、既に二名の合格者がいるのね」
合格したまま、控室に戻ってこない生徒が居た、ということだ。
でもクラウでも、百人近く居た生徒全員の力量を把握するのは難しいらしい。
それ以上は推測しても無駄だろう、ということで話は打ち切りになった。
「次! ノルベルト・フォン・キルステン!」
音がなるほど頬を両手で叩き、ベルト様が気合を入れていた。
「では、合格してきます」
****
ベルト様も帰ってきてサムズアップ!
私たちは八人全員が合格、ということになった。
殿下が指揮を執り、全員で円陣を組んでハイタッチを交わす。
実に青春の絵面だ。
ジュリアスも恥ずかしそうに加わっていた。
「そういえば、みなさまはどのような魔術で合格なさったの?」
それを打ち明けたのは私だけだ。
ジュリアスが苦笑いをして応える。
「俺は魔法を使え、と言われました。
魔法はその家の『秘儀』です。
たとえ友人でも、その内容を教える訳にはいきません」
どうしても知りたければ、筆頭宮廷魔導士になるしかないらしい。
筆頭宮廷魔導士は、国家が保有する魔法の知識を管理している。
その知識をもとに、国王陛下へ助言を出すらしい。
誰かが知っていなければならない情報。
だけどむやみに教えることはできない。
だからこういった制度になってるらしかった。
魔法を持たない家も珍しくない。
特に騎士の家系のベルト様や、王族のフランツ殿下は家に魔法がない。
そういったケースは、『魔法銀の形を変えろ』と言われたらしい。
フランツ王子が告げる。
「あの金属、本当にデリケートだったな。
なんとか形にはしたが、特訓前なら絶対に無理だったぞ」
だけど、みんなが無事に通過したのだ。
そろそろお昼だし、食堂でお祝いの続きをしよう!
****
普段より人の少ない食堂。
ヒルデガルトたちは、いつものように八人でテーブルを囲んでいた。
歓談しながら食事を食べ進めるヒルデガルトの背後から、一人の青年が歩み寄る。
「――失礼、ヒルデガルト嬢、でよろしいかな?」
「ほぇ?」
ヒルデガルトは不意を突かれ、間抜けな声を漏らした。
サンドイッチに食いつきながら、背後に振り返る。
彼女の前には、麗人と呼んで差し支えのない青年が立っていた。
艶やかなゴールドブロンドをまとった長身。
一見すると女性のようにも見えるが、骨格が男性であることを主張している。
ターコイズブルーの瞳は、ヒルデガルトの瞳を真っ直ぐ見つめていた。
険のこもった声でクラウディアが告げる。
「あなた、どなたかしら? 何かご用?」
青年はひるまずに応える。
「失敬、フィル・ブランデンブルクと申します。
シュテルン合格者の一人ですよ。
これを機にご挨拶を、と思いまして」
フィルの手が、サンドイッチに食いついているヒルデガルトの手を取った。
そのままひざまずき、彼女の左手の甲に唇を落していく。
――何事?!
ヒルデガルトは頭が真っ白になっていた。
フィルはヒルデガルトを見上げて告げる。
「私はあなたとお近づきになりたい。
どうか私に、あなたの横に居ることを許してほしい」
ヒルデガルトは混乱しながらも、フィルに告げる。
「あ、あの! わたくし婚約者が居ますので!」
フィルがジュリアスを一瞥し、口の端を軽く持ち上げた。
「シュルマン伯爵令息のことですか?
彼のことなど、私が忘れさせてあげますよ。
あのように男らしさを持ち合わせないのでは、あなたも不満があるでしょう」
ヒルデガルトの表情が凍り付いた。
静かな怒りを湛えた瞳で、フィルを見下ろす。
「……今、なんとおっしゃったのかしら」
フィルが微笑んで応える。
「背も低く、体も鍛えず、まるで子供同然の身なりだ。
あれでは男性として、女性を満足させることなどできはしない。
彼に失望する前に、私に乗り換えてはいかがかな?」
ヒルデガルトの目が、次第に険しくなっていた。
だが精霊眼しか見ていないフィルは、彼女の変化に気が付いていない。
フィルがさらに言葉を続ける。
「あなたこそ美の化身だ。
その可憐な美貌の前では、他の令嬢などかすんでしまう。
私をあなたの心に住まわせてはもらえないだろうか」
その言葉を、ヒルデガルトは怒りを湛えた目で受け止めた。
――かすむ? 他の令嬢が、クラウが『かすむ』と言ったのか。彼女たちの目の前で!
それに気付いた瞬間、ヒルデガルトの意識から思考が途切れた。
フィルは軽薄な言葉を彼女に浴びせ続けていた。
彼に向かって、ヒルデガルトが空いている右手をゆっくりと振り上げ、拳を作った。
その体は、怒りで細かく震えている。
ヒルデガルトの異変に気付いたフィルが声をかける。
「レディ? どうしましたか?」
――次の瞬間、ヒルデガルトの右拳がフィルの顔面中央にさく裂していた。
疾風迅雷。電光石火の早業だった。
一切の手加減がない全力。
特等級の魔力を惜しみなく注ぎ込んだ≪身体強化≫での右ストレート。
あまりの衝撃に、ヒルデガルトの右腕は筋線維と骨格が悲鳴を上げていた。
彼女に殴り飛ばされたフィルは食堂の宙を舞い、激しく壁に叩き付けられていた。
周囲にわずかに居た生徒たちが、なにごとかと視線を寄越す。
ヒルデガルトは幽鬼のようにゆらりと立ち上がり、フィルに向かって歩み始めた。
「言うに事欠いて、他の令嬢が、クラウが『かすむ』?
よくも私の友達を侮辱してくれたわね。
その顔面、その性根に相応しい形に叩き直してあげるわ」
彼女がフィルに近寄ろうとする姿で我に返った仲間たちが、彼女を止めに走った。
ノルベルトは彼女を背後から羽交い絞めにして引き留めた。
「ヒルダ嬢! やりすぎです!」
ジュリアスは前に回り、彼女の両肩を抑えつけた。
「冷静になってください、ヒルダ嬢!
≪身体強化≫をしてまで殴るなど、淑女のやることではありませんよ?!」
両者とも、≪身体強化≫でヒルデガルトの前進を妨げている。
それでも彼女は前進を諦めなかった。
男子二人を引きずりながら、徐々にフィルに近づいて行く。
ヒルデガルトが激しく吼える。
「ジュリアスが『男らしくない』など、良くも言えたな?!
お前にジュリアスを語る資格などない!
その汚い口で、彼の名を呼ぶな!」
フィルは鼻血で顔面を染めながら、呆然と彼女を見上げていた。
ヒルデガルトの一撃は、まともに食らっていたら致命傷だ。
それをとっさに、魔術で致命傷を避けていた。
フィルでなければ命はなかったかもしれない。
ヒルデガルトの裂帛の気迫に、ただ圧倒されていた。
彼女の右手を、近づいたクラウディアの両手が包み込んだ。
「ねぇヒルダ。
お願いだから、こちらを向いて?」
その優しい声に、ヒルデガルトの目線が動き、声の主を捉えた。
彼女の視界に入ってきたのはクラウディアの、心からの優しい微笑みだった。
「あなたの気持ちはとても嬉しい。
でも、もうこれで充分よ。
これ以上は必要ないわ。
だから、落ち着いて?」
彼女の様子を見ていて、ようやくヒルデガルトの思考が戻ってくる。
その表情から険しさが薄れていった。
「――クラウ」
「ほら、手が傷ついてしまっているわ。
一緒に医務室に行きましょう? ね?」
ヒルデガルトは静かにうなずき、ジュリアスとノルベルトに告げる。
「ごめんなさい、もう大丈夫です」
ノルベルトは恐る恐る、ヒルデガルトから手を離した。
ジュリアスがヒルデガルトに告げる。
「やっと冷静になりましたか?
俺も医務室に一緒に行きます。
歩けますか?」
ヒルデガルトは恥ずかしそうにうなずいた。
「ごめんなさい、ジュリアス。
あなたにも迷惑をかけてしまって」
「構いませんよ。
気にしないでください」
クラウディアに肩を抱かれ、ヒルデガルトたちは外に向かって歩きだす。
――だが思い出したように足を止め、フィルに振り返り睥睨した。
「フィル・ブランデンブルク。二度と私に近づくな」
その声は、恐ろしく冷たい響きを持っていた。
戻ってきた瞬間のサムズアップ!
「ハハハ! ヴォルフガングからほめられたぞ!
掛け値なしの褒め言葉を受け取ったのは初めてだ!」
殿下、いつも叱られてばかりだったからなぁ。
ベルト様も、どこかゆったりとした空気で告げる。
「最後は私か。
殿下が突破出来て、私が不合格になど、ならぬようにせねばな」
フランツ殿下が合格したことで、緊張がほぐれたみたい。
ふと降らぬ殿下が、思い出したように告げる。
「俺たちは八人だよな。
ノルベルトがまだだから、合格者は七人のはずだ」
私はうなずいて応える。
「その通りですわね。
私たち以外の生徒に合格者はいなさそうですし」
「ヴォルフガングが言ってたんだ。
『この分なら合格者は十人以上だ』ってな」
クラウがうつむき気味に考えこんでいた。
「ノルベルト様を合格予定とみなしても、既に二名の合格者がいるのね」
合格したまま、控室に戻ってこない生徒が居た、ということだ。
でもクラウでも、百人近く居た生徒全員の力量を把握するのは難しいらしい。
それ以上は推測しても無駄だろう、ということで話は打ち切りになった。
「次! ノルベルト・フォン・キルステン!」
音がなるほど頬を両手で叩き、ベルト様が気合を入れていた。
「では、合格してきます」
****
ベルト様も帰ってきてサムズアップ!
私たちは八人全員が合格、ということになった。
殿下が指揮を執り、全員で円陣を組んでハイタッチを交わす。
実に青春の絵面だ。
ジュリアスも恥ずかしそうに加わっていた。
「そういえば、みなさまはどのような魔術で合格なさったの?」
それを打ち明けたのは私だけだ。
ジュリアスが苦笑いをして応える。
「俺は魔法を使え、と言われました。
魔法はその家の『秘儀』です。
たとえ友人でも、その内容を教える訳にはいきません」
どうしても知りたければ、筆頭宮廷魔導士になるしかないらしい。
筆頭宮廷魔導士は、国家が保有する魔法の知識を管理している。
その知識をもとに、国王陛下へ助言を出すらしい。
誰かが知っていなければならない情報。
だけどむやみに教えることはできない。
だからこういった制度になってるらしかった。
魔法を持たない家も珍しくない。
特に騎士の家系のベルト様や、王族のフランツ殿下は家に魔法がない。
そういったケースは、『魔法銀の形を変えろ』と言われたらしい。
フランツ王子が告げる。
「あの金属、本当にデリケートだったな。
なんとか形にはしたが、特訓前なら絶対に無理だったぞ」
だけど、みんなが無事に通過したのだ。
そろそろお昼だし、食堂でお祝いの続きをしよう!
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普段より人の少ない食堂。
ヒルデガルトたちは、いつものように八人でテーブルを囲んでいた。
歓談しながら食事を食べ進めるヒルデガルトの背後から、一人の青年が歩み寄る。
「――失礼、ヒルデガルト嬢、でよろしいかな?」
「ほぇ?」
ヒルデガルトは不意を突かれ、間抜けな声を漏らした。
サンドイッチに食いつきながら、背後に振り返る。
彼女の前には、麗人と呼んで差し支えのない青年が立っていた。
艶やかなゴールドブロンドをまとった長身。
一見すると女性のようにも見えるが、骨格が男性であることを主張している。
ターコイズブルーの瞳は、ヒルデガルトの瞳を真っ直ぐ見つめていた。
険のこもった声でクラウディアが告げる。
「あなた、どなたかしら? 何かご用?」
青年はひるまずに応える。
「失敬、フィル・ブランデンブルクと申します。
シュテルン合格者の一人ですよ。
これを機にご挨拶を、と思いまして」
フィルの手が、サンドイッチに食いついているヒルデガルトの手を取った。
そのままひざまずき、彼女の左手の甲に唇を落していく。
――何事?!
ヒルデガルトは頭が真っ白になっていた。
フィルはヒルデガルトを見上げて告げる。
「私はあなたとお近づきになりたい。
どうか私に、あなたの横に居ることを許してほしい」
ヒルデガルトは混乱しながらも、フィルに告げる。
「あ、あの! わたくし婚約者が居ますので!」
フィルがジュリアスを一瞥し、口の端を軽く持ち上げた。
「シュルマン伯爵令息のことですか?
彼のことなど、私が忘れさせてあげますよ。
あのように男らしさを持ち合わせないのでは、あなたも不満があるでしょう」
ヒルデガルトの表情が凍り付いた。
静かな怒りを湛えた瞳で、フィルを見下ろす。
「……今、なんとおっしゃったのかしら」
フィルが微笑んで応える。
「背も低く、体も鍛えず、まるで子供同然の身なりだ。
あれでは男性として、女性を満足させることなどできはしない。
彼に失望する前に、私に乗り換えてはいかがかな?」
ヒルデガルトの目が、次第に険しくなっていた。
だが精霊眼しか見ていないフィルは、彼女の変化に気が付いていない。
フィルがさらに言葉を続ける。
「あなたこそ美の化身だ。
その可憐な美貌の前では、他の令嬢などかすんでしまう。
私をあなたの心に住まわせてはもらえないだろうか」
その言葉を、ヒルデガルトは怒りを湛えた目で受け止めた。
――かすむ? 他の令嬢が、クラウが『かすむ』と言ったのか。彼女たちの目の前で!
それに気付いた瞬間、ヒルデガルトの意識から思考が途切れた。
フィルは軽薄な言葉を彼女に浴びせ続けていた。
彼に向かって、ヒルデガルトが空いている右手をゆっくりと振り上げ、拳を作った。
その体は、怒りで細かく震えている。
ヒルデガルトの異変に気付いたフィルが声をかける。
「レディ? どうしましたか?」
――次の瞬間、ヒルデガルトの右拳がフィルの顔面中央にさく裂していた。
疾風迅雷。電光石火の早業だった。
一切の手加減がない全力。
特等級の魔力を惜しみなく注ぎ込んだ≪身体強化≫での右ストレート。
あまりの衝撃に、ヒルデガルトの右腕は筋線維と骨格が悲鳴を上げていた。
彼女に殴り飛ばされたフィルは食堂の宙を舞い、激しく壁に叩き付けられていた。
周囲にわずかに居た生徒たちが、なにごとかと視線を寄越す。
ヒルデガルトは幽鬼のようにゆらりと立ち上がり、フィルに向かって歩み始めた。
「言うに事欠いて、他の令嬢が、クラウが『かすむ』?
よくも私の友達を侮辱してくれたわね。
その顔面、その性根に相応しい形に叩き直してあげるわ」
彼女がフィルに近寄ろうとする姿で我に返った仲間たちが、彼女を止めに走った。
ノルベルトは彼女を背後から羽交い絞めにして引き留めた。
「ヒルダ嬢! やりすぎです!」
ジュリアスは前に回り、彼女の両肩を抑えつけた。
「冷静になってください、ヒルダ嬢!
≪身体強化≫をしてまで殴るなど、淑女のやることではありませんよ?!」
両者とも、≪身体強化≫でヒルデガルトの前進を妨げている。
それでも彼女は前進を諦めなかった。
男子二人を引きずりながら、徐々にフィルに近づいて行く。
ヒルデガルトが激しく吼える。
「ジュリアスが『男らしくない』など、良くも言えたな?!
お前にジュリアスを語る資格などない!
その汚い口で、彼の名を呼ぶな!」
フィルは鼻血で顔面を染めながら、呆然と彼女を見上げていた。
ヒルデガルトの一撃は、まともに食らっていたら致命傷だ。
それをとっさに、魔術で致命傷を避けていた。
フィルでなければ命はなかったかもしれない。
ヒルデガルトの裂帛の気迫に、ただ圧倒されていた。
彼女の右手を、近づいたクラウディアの両手が包み込んだ。
「ねぇヒルダ。
お願いだから、こちらを向いて?」
その優しい声に、ヒルデガルトの目線が動き、声の主を捉えた。
彼女の視界に入ってきたのはクラウディアの、心からの優しい微笑みだった。
「あなたの気持ちはとても嬉しい。
でも、もうこれで充分よ。
これ以上は必要ないわ。
だから、落ち着いて?」
彼女の様子を見ていて、ようやくヒルデガルトの思考が戻ってくる。
その表情から険しさが薄れていった。
「――クラウ」
「ほら、手が傷ついてしまっているわ。
一緒に医務室に行きましょう? ね?」
ヒルデガルトは静かにうなずき、ジュリアスとノルベルトに告げる。
「ごめんなさい、もう大丈夫です」
ノルベルトは恐る恐る、ヒルデガルトから手を離した。
ジュリアスがヒルデガルトに告げる。
「やっと冷静になりましたか?
俺も医務室に一緒に行きます。
歩けますか?」
ヒルデガルトは恥ずかしそうにうなずいた。
「ごめんなさい、ジュリアス。
あなたにも迷惑をかけてしまって」
「構いませんよ。
気にしないでください」
クラウディアに肩を抱かれ、ヒルデガルトたちは外に向かって歩きだす。
――だが思い出したように足を止め、フィルに振り返り睥睨した。
「フィル・ブランデンブルク。二度と私に近づくな」
その声は、恐ろしく冷たい響きを持っていた。
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