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第2章:提示された選択肢
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歓迎会が終わり、参加者が香澄に挨拶を告げてから店を出ていく。
静かになった店内で、香澄は花連や氷雨と水を飲んでいた。
「賑やかでしたね……」
氷雨がクスリと笑った。
「ここのみんなは陽気なのよー。
人生を楽しみながら生きてるのー。
肉体労働者も多いから、それもあるかもねー?」
「そうなんですか?」
「そうよー?
ほとんどは引越センターの人ねー。
あとは烏頭目さんとこの人ー。
親善旅行には、引越センターの人たちは参加できないかなー。
私一人くらいなら、抜けられるかもだけど-」
香澄があわてて応える。
「そんな! 無理に仕事に穴を空けてまで参加しなくても!」
花連が横で楽しげに告げる。
「大丈夫だよ、無理に参加する人なんかいないからさ!
メインは香澄がのんびりすること!
親睦なんて、ついでなんだから!」
香澄がおずおずと花連に尋ねる。
「ねぇ、『あやかし』って人には気づかれないんでしょ?
旅行なんて参加できるの?」
「ここの純粋な『あやかし』って、晴臣と私だけなんだよねー。
それくらいなら、いつもなんとかしてきてるし。
気にしなくていいよ?」
晴臣がカウンターで食器を拭きながら告げる。
「だがこの季節、箱根や鎌倉は混雑してるはずだよ。
オーナーはどこに行くつもりかなぁ」
十月の紅葉シーズン、大人数で予約を取るのは難しいだろう。
そこは参加人数次第だろうか。
香澄がぼんやりと考えていると、花連が立ち上がって腕を引っ張った。
「ほら香澄! 部屋に戻ろうよ!
ドラマの続きを見よう!」
香澄がクスリと微笑んだ。
「はいはい、お風呂に入ってから見ましょうね」
香澄は花連に手を引かれながら、氷雨と晴臣に挨拶を告げて喫茶店をあとにした。
****
氷雨はひとり、喫茶店に残ってコーヒーを飲んでいた。
「ねぇマスター、水無瀬さんはどうだと思うのー?」
晴臣が後片付けをしながら応える。
「どうって、どういう意味かな?」
「ここでやっていける人かなー?
それとも、外に帰っていっちゃう人かなー?」
晴臣は少し考えてから応える。
「僕としては、前者であって欲しいと願ってるけどね。
こればっかりは、『あやかし』の世界に慣れるかどうかだから」
「そっかー。
飲み友達が増えるかなーって、私も期待してるんだけどねー」
晴臣がカウンタークロスを手に氷雨に尋ねる。
「秋山さんは旅行、どうするの?」
「日程次第かなー。
オーナーのことだから、今週中には連絡網が回ってくるでしょー?」
「そっか。水無瀬さんは秋山さんと打ち解けてるみたいだ。
一緒に行ってあげられるといいね」
氷雨がクスリと笑みをこぼした。
「私が居なくても、マスターが居るよー」
「僕は受け入れられてるのかな?
そこはちょっと、自信がないかな」
「わーどんかーん。
だからマスターもモテないんじゃなーい?」
晴臣がクスリと笑って、カウンターの中に戻った。
「秋山さんに言われたら、僕も立つ瀬がないね。
――そろそろ戻ったら?
明日も仕事なんでしょ?」
「はーい」
氷雨はゆっくりと立ち上がると、軽やかな足取りで店を出ていった。
ドアベルが余韻を残す店内で、晴臣は黙って残ったカップを片づけた。
****
バスルームから出た香澄が花連に尋ねる。
「ここって夜に洗濯機を使っても大丈夫なのかな」
花連はパジャマ姿でベッドに飛び乗って応える。
「文句を言われたことないし、聞こえてきたこともないよ。
不安ならオーナーに聞いてあげようか?」
「じゃあ、ちょっと聞いてみてくれる?」
花連はスマホを手に取り、メッセージをタップしていった。
香澄は洗濯機に汚れ物を入れていく。
濡れた髪をタオルで拭きながら、ローテーブルのそばに腰を下ろした。
部屋で見つけたドライヤーで乾かしていく。
「わ、これすごい静かだね。
私のもそれなりの値段したのに全然違う」
「新しい製品だからじゃない?
――あ、返事来たよ。
『大丈夫』だってさ!」
「わかった、ありがとう花連ちゃん」
花連はにっこり笑って「どういたしまして!」と応えた。
花連がリモコンを操作してコメディドラマの続きを流していく。
香澄は自分の髪を乾かし終わると、花連の髪にドライヤーをかけ始めた。
「ほーら、ちゃんと乾かさないと駄目でしょ」
「だってー! ドラマの声が聞こえないよー!」
「風邪ひいちゃうでしょ!」
花連は渋々、ドラマを一停止して髪を乾かされていった。
ショートヘアの花連は、すぐに髪を乾かし終わる。
「香澄! もう終わりでいいよね!」
香澄はドライヤーをしまいながら応える。
「うん、もうちゃんと乾いたよ」
花連は笑顔でドラマを再生し、楽しげに眺めていく。
香澄はキッチンで水をコップ一杯飲んでから、ぽつりとつぶやく。
「デジタルコンテンツ制作かぁ。私にできるのかな」
花連はテレビを見つめながら告げる。
「やってみて、駄目なら他を試したら?
失敗したからって怒られるような場所じゃないよ? ここは」
「そっか……」
香澄は濡れたタオルを集め、洗濯機に入れてからスイッチを入れた。
****
翌朝、花連を抱えて眠っている香澄の耳にインターホンの音が届いた。
「……誰? こんな朝から」
時計に目を走らせる――午前八時。
すっかりだらけてしまっている自分を自覚しながら、香澄はベッドから降りた。
インターホンの前で受話器を取り、映像を確認する。
昨晩の歓迎会で出会った烏頭目だ。
胸には何か、本のようなものを抱えている。
「はい、水無瀬です」
『あ、起きてましたですか?
ちょっとお届け物なのです!』
香澄は受話器を置くと、玄関に向かった。
ドアを開けると、小柄な烏頭目が笑顔で立っていた。
「おはようなのです!
水無瀬さん、まだ暇してる時間ですよね?」
「ええ、まぁ……それで、何の御用でしょう?」
「ノートPCと参考書を持ってきましたのです!
興味があったら読んで欲しいのです!
わからないことがあれば、何でも聞いて欲しいのです!」
烏頭目の勢いに押されつつ、香澄はノートPCと数冊の書籍を押し付けられた。
「ノートPCって……高いんじゃないんですか?」
「会社の備品ですから、失くされると困ってしまいますです!
でも壊れただけなら問題ないですよ?
なので遠慮なく使い倒してほしいのです!」
香澄がおずおずと応える。
「私、なにも分からないんですけど……」
烏頭目がニッコリと笑顔で告げる。
「水無瀬さんの準備ができたら、いつでも呼んで欲しいのです!
私が直接、教えてあげるのです!
興味が出なかったら、そのまま返却してくれていいですよ?」
「はぁ……でも連絡先が――」
「花連が知ってますです!
では、吉報を待ってますです!」
ひらひらと手を振って、烏頭目がエレベーターの方向に消えていった。
ドアを閉めた香澄は、戸惑いながら受け取った物をローテーブルに置く。
書籍が三冊と、少し厚みのあるノートPC。
興味本位でノートPCを広げると、画面に付箋紙でアカウントとパスワードが書いてあった。
それを剥ぎ取り、ノートPCを立ち上げる。
ログイン画面で付箋紙に書いてあるアカウントを入力しログインすると、シンプルなデスクトップが広がった。
デスクトップには『サンプル』というフォルダだけがある。
「……とりあえず、いつも使ってたブラウザをインストールするかな」
香澄は淡々と環境のセットアップを始めていった。
静かになった店内で、香澄は花連や氷雨と水を飲んでいた。
「賑やかでしたね……」
氷雨がクスリと笑った。
「ここのみんなは陽気なのよー。
人生を楽しみながら生きてるのー。
肉体労働者も多いから、それもあるかもねー?」
「そうなんですか?」
「そうよー?
ほとんどは引越センターの人ねー。
あとは烏頭目さんとこの人ー。
親善旅行には、引越センターの人たちは参加できないかなー。
私一人くらいなら、抜けられるかもだけど-」
香澄があわてて応える。
「そんな! 無理に仕事に穴を空けてまで参加しなくても!」
花連が横で楽しげに告げる。
「大丈夫だよ、無理に参加する人なんかいないからさ!
メインは香澄がのんびりすること!
親睦なんて、ついでなんだから!」
香澄がおずおずと花連に尋ねる。
「ねぇ、『あやかし』って人には気づかれないんでしょ?
旅行なんて参加できるの?」
「ここの純粋な『あやかし』って、晴臣と私だけなんだよねー。
それくらいなら、いつもなんとかしてきてるし。
気にしなくていいよ?」
晴臣がカウンターで食器を拭きながら告げる。
「だがこの季節、箱根や鎌倉は混雑してるはずだよ。
オーナーはどこに行くつもりかなぁ」
十月の紅葉シーズン、大人数で予約を取るのは難しいだろう。
そこは参加人数次第だろうか。
香澄がぼんやりと考えていると、花連が立ち上がって腕を引っ張った。
「ほら香澄! 部屋に戻ろうよ!
ドラマの続きを見よう!」
香澄がクスリと微笑んだ。
「はいはい、お風呂に入ってから見ましょうね」
香澄は花連に手を引かれながら、氷雨と晴臣に挨拶を告げて喫茶店をあとにした。
****
氷雨はひとり、喫茶店に残ってコーヒーを飲んでいた。
「ねぇマスター、水無瀬さんはどうだと思うのー?」
晴臣が後片付けをしながら応える。
「どうって、どういう意味かな?」
「ここでやっていける人かなー?
それとも、外に帰っていっちゃう人かなー?」
晴臣は少し考えてから応える。
「僕としては、前者であって欲しいと願ってるけどね。
こればっかりは、『あやかし』の世界に慣れるかどうかだから」
「そっかー。
飲み友達が増えるかなーって、私も期待してるんだけどねー」
晴臣がカウンタークロスを手に氷雨に尋ねる。
「秋山さんは旅行、どうするの?」
「日程次第かなー。
オーナーのことだから、今週中には連絡網が回ってくるでしょー?」
「そっか。水無瀬さんは秋山さんと打ち解けてるみたいだ。
一緒に行ってあげられるといいね」
氷雨がクスリと笑みをこぼした。
「私が居なくても、マスターが居るよー」
「僕は受け入れられてるのかな?
そこはちょっと、自信がないかな」
「わーどんかーん。
だからマスターもモテないんじゃなーい?」
晴臣がクスリと笑って、カウンターの中に戻った。
「秋山さんに言われたら、僕も立つ瀬がないね。
――そろそろ戻ったら?
明日も仕事なんでしょ?」
「はーい」
氷雨はゆっくりと立ち上がると、軽やかな足取りで店を出ていった。
ドアベルが余韻を残す店内で、晴臣は黙って残ったカップを片づけた。
****
バスルームから出た香澄が花連に尋ねる。
「ここって夜に洗濯機を使っても大丈夫なのかな」
花連はパジャマ姿でベッドに飛び乗って応える。
「文句を言われたことないし、聞こえてきたこともないよ。
不安ならオーナーに聞いてあげようか?」
「じゃあ、ちょっと聞いてみてくれる?」
花連はスマホを手に取り、メッセージをタップしていった。
香澄は洗濯機に汚れ物を入れていく。
濡れた髪をタオルで拭きながら、ローテーブルのそばに腰を下ろした。
部屋で見つけたドライヤーで乾かしていく。
「わ、これすごい静かだね。
私のもそれなりの値段したのに全然違う」
「新しい製品だからじゃない?
――あ、返事来たよ。
『大丈夫』だってさ!」
「わかった、ありがとう花連ちゃん」
花連はにっこり笑って「どういたしまして!」と応えた。
花連がリモコンを操作してコメディドラマの続きを流していく。
香澄は自分の髪を乾かし終わると、花連の髪にドライヤーをかけ始めた。
「ほーら、ちゃんと乾かさないと駄目でしょ」
「だってー! ドラマの声が聞こえないよー!」
「風邪ひいちゃうでしょ!」
花連は渋々、ドラマを一停止して髪を乾かされていった。
ショートヘアの花連は、すぐに髪を乾かし終わる。
「香澄! もう終わりでいいよね!」
香澄はドライヤーをしまいながら応える。
「うん、もうちゃんと乾いたよ」
花連は笑顔でドラマを再生し、楽しげに眺めていく。
香澄はキッチンで水をコップ一杯飲んでから、ぽつりとつぶやく。
「デジタルコンテンツ制作かぁ。私にできるのかな」
花連はテレビを見つめながら告げる。
「やってみて、駄目なら他を試したら?
失敗したからって怒られるような場所じゃないよ? ここは」
「そっか……」
香澄は濡れたタオルを集め、洗濯機に入れてからスイッチを入れた。
****
翌朝、花連を抱えて眠っている香澄の耳にインターホンの音が届いた。
「……誰? こんな朝から」
時計に目を走らせる――午前八時。
すっかりだらけてしまっている自分を自覚しながら、香澄はベッドから降りた。
インターホンの前で受話器を取り、映像を確認する。
昨晩の歓迎会で出会った烏頭目だ。
胸には何か、本のようなものを抱えている。
「はい、水無瀬です」
『あ、起きてましたですか?
ちょっとお届け物なのです!』
香澄は受話器を置くと、玄関に向かった。
ドアを開けると、小柄な烏頭目が笑顔で立っていた。
「おはようなのです!
水無瀬さん、まだ暇してる時間ですよね?」
「ええ、まぁ……それで、何の御用でしょう?」
「ノートPCと参考書を持ってきましたのです!
興味があったら読んで欲しいのです!
わからないことがあれば、何でも聞いて欲しいのです!」
烏頭目の勢いに押されつつ、香澄はノートPCと数冊の書籍を押し付けられた。
「ノートPCって……高いんじゃないんですか?」
「会社の備品ですから、失くされると困ってしまいますです!
でも壊れただけなら問題ないですよ?
なので遠慮なく使い倒してほしいのです!」
香澄がおずおずと応える。
「私、なにも分からないんですけど……」
烏頭目がニッコリと笑顔で告げる。
「水無瀬さんの準備ができたら、いつでも呼んで欲しいのです!
私が直接、教えてあげるのです!
興味が出なかったら、そのまま返却してくれていいですよ?」
「はぁ……でも連絡先が――」
「花連が知ってますです!
では、吉報を待ってますです!」
ひらひらと手を振って、烏頭目がエレベーターの方向に消えていった。
ドアを閉めた香澄は、戸惑いながら受け取った物をローテーブルに置く。
書籍が三冊と、少し厚みのあるノートPC。
興味本位でノートPCを広げると、画面に付箋紙でアカウントとパスワードが書いてあった。
それを剥ぎ取り、ノートPCを立ち上げる。
ログイン画面で付箋紙に書いてあるアカウントを入力しログインすると、シンプルなデスクトップが広がった。
デスクトップには『サンプル』というフォルダだけがある。
「……とりあえず、いつも使ってたブラウザをインストールするかな」
香澄は淡々と環境のセットアップを始めていった。
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