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146.入学式(4)
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トビアスを連れたザフィーア年少組は、年長組と合流した。
そのまま一塊になって、学院のホールへと移動していく。
うーん、やっぱりここでも、精霊眼は目立つなぁ。
全校生徒の視線が、私たちに向けられてる気がする。
……居心地悪い。
九時になり、壇上にお父様が姿を見せる。
新入生に対して、いくつかの注意事項や訓示を与えていた。
二年生、三年生に対しては、『受給性である自覚を持つように』と訓戒を示した。
それが終わると「各自、教室に戻りなさい」と言われた。
お父様が壇上から去ると同時に、生徒たちがホールから教室へ戻っていく。
私は拍子抜けしてつぶやく。
「……これで終わりなんですか?
なんだか、教室で済ませられそうな内容でしたわね」
サイ兄様がうなずいて応える。
「入学式は、学年を越えた生徒間のお披露目なんだ。
新入生の誰が、上級生の度の派閥に属するのか。
それを示す意味合いが強い。
グランツは貴族社会の縮図――派閥社会なんだよ」
つまり私たち年少組とトビアスは、『オリヴァー殿下の派閥だ』と認識されたことになる。
「それで合ってますか?」
オリヴァー殿下がうなずいた。
「そうなりますね。私は上級生とはつるみませんし、同級生もザフィーアの四人とだけです。
同様に、私がザフィーアしか派閥に入れていないことが、周囲に知られたでしょう。
――トビアスはまぁ、『ついで』ですね。
私の保護下にある、という意味に取られるでしょう」
レナが突っ込みを入れる。
「第一王子の派閥が同級生四人しかいないというのは、少し問題があるのではなくて?
まるで人望が無いように見えますわよ?」
ララがそれにフォローを入れる。
「あら、第一王子であるオリヴァー殿下と、王宮騎士団長の息子であるアレックス様。
北方守護指揮官ワグナー伯爵の嫡男アミン様。
そしてなにより、エドラウス侯爵の嫡男であるサイモン様が属した派閥よ?
量は少なくても、質は飛び切り高いわ」
サニーがうなずいて同意する。
「特に、サイモン様の存在が大きいですわね。
レブナント王国の軍事力、その半分を占めるとすら言われるヒルデガルト先生のご長男。
サイモン様が味方しているだけで、他の貴族子女なんて十把一絡げですわ」
オリヴァー殿下がうなずいて補足する。
「その上で年少組は、第二王子増せる、ファルケンシュタイン公爵家嫡男のアラン。
北方守護指揮官ワグナー伯爵令嬢のララ、東方守護指揮官ウォルフ伯爵嫡男素ウェートと令嬢のレナ。
南方守護指揮官クライン伯爵嫡男ヴァルターに魔術騎士団長ブランデンブルク伯爵令嬢のンドラ。
極めつけがエドラウス侯爵令嬢のマリオンだ」
年少組が加わったことで、『質を維持したまま、量が増えた』らしい。
この学院で、これ以上の派閥は居ないそうだ。
サイ兄様が苦笑を浮かべた。
「俺やマリーに、母上のような荒唐無稽な力を求められても、困ってしまうのだがな。
我々は普通の人間だ。
『空を駆け、山を消し飛ばす魔導士』には成れない」
アミン様が加わってくる。
「だがマリオン様はヒルデガルト先生と同じく、堅めの精霊眼だ。
期待は大きいでしょう――これから、大変ですよ?」
私は乾いた笑いを上げていた。
「サイ兄様の言う通り、私たちは普通の人間ですので、大したことはできませんわ。
過大な期待をされても、応えようがありません」
トビアスが興味深そうに尋ねてくる。
「なんですか? その『空を駆け、山を消し飛ばす魔導士』というのは。
ヒルデガルト様には、そのような異名があるのですか?」
北方国家群には、あまりお母様の逸話が広まってないのかな。
アラン様が、春の日差しのような笑顔でトビアスに応える。
「そういう逸話があるんですよ。
実際に見た人間も居るという噂ですが、名乗り出た人間は居ません。
ヒルデガルト先生には、そういった人間離れした逸話が豊富なんです」
マーセル殿下が小さく手を打ち鳴らした。
「――さぁ、そろそろ出入り口も空き始めた。
今日は入学式だけで、学院は終わりだ。
とっとと教室に戻って、帰る準備をしよう」
全員がそれに応じて声を上げ、足をホールの外に向けた。
****
オリヴァー殿下は王宮に戻り、残ったメンバーは寄宿舎へ戻った。
トビアスも「荷物はまだですが、部屋はありますので」と言って、寄宿舎の中へ消えていった。
午後には荷物が到着するらしい。
私はサニーと一緒に部屋に戻る。
部屋の時計を見ると、まだ十時を回っていない。
サニーが椅子に腰かけながら告げる。
「部屋着に着替えるのは、お昼が終わってからの方が良いわよ?」
「そういうものなの? わかった」
私も勉強机の椅子に腰を下ろして休んでいると、レナとララが部屋に遊びにやってきた。
紅茶ポットを手に「やっほー、遊びに来たよー」とローテーブル周りに腰を下ろす。
私たちもクローゼットからカップを取り出し、お茶の時間ということになった。
ローテーブルを囲んで、制服姿で四人が腰を下ろしている。
私はカップを傾けて紅茶の香りを楽しんだあと、小さく息をつく。
「覚悟はしていたつもりだったけど、やっぱり精霊眼は目立つわね。
あんなに視線を集めるものだとは思わなかったわ」
レナとララ、サニーが床にくずおれていた。
勢いよく起き上がったレナが、「それ、本気で言ってるのよね?!」と確認を取ってきた。
私は勢いに押されつつ、うなずいた。
「だって、注目はされていたでしょ?
トビアスだって注目されてたわ」
ゆるゆると起き上がったララが、頭を抱えていた。
「あなたのポンコツ、まだ直ってなかったのね」
私が小首をかしげていると、起き上がってきたサニーが私の両肩に手を置いた。
「視線以外に気付いたことはない?
誰から視線を受けていたとか」
「そう言われると、男子生徒からの視線が多かったと思うけど……。
女子生徒はトビアス以外の男子たちも見てるみたいだったわね」
「同じような視線に覚えはない?
たとえばザフィーアの男子からの視線よ」
私は小首をかしげながら思い出す。
「そうね、確かにどこか似たような視線だった気がするわ」
「ザフィーアの男子は、どんな視線をあなたに送っていたの?」
「……異性としての好意を含んだ視線だ、という話だったわよね?
それは散々言い含められたから、覚えてるわよ?」
「それに似た視線、ということはどういうこと?」
私はしばらく考えてから、口を開く。
「…………まさかぁ」
「ここまで言い含めてまだいうか! このポンコツ!!」
女子三人の声が重なった。
私は必死に抗議の声を上げる。
「だって、全校生徒男子の大半から飛んできたのよ?!
いくらなんでも多すぎない?!
それに、女性としての魅力ならサニーの方がずっと上でしょ?!
レナやララだって、立派に魅力的な女子じゃない!」
サンドラは長身で、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。
肉付きが良くて実に女性の理想的体型だ。
レナやララも、体型こそサニーに一歩譲るけど、標準的な体型で整った顔立ちの美少女。
一方の私は相変わらず低身長で慎ましい体型のまま。
おまけに精霊眼という異物まで持ってる。
女性的魅力という点で、私はこの三人にかなわない。
ララが大きくため息をついたあと、ゆっくりと口を開く。
「入学式で見渡したけど、二年や三年に跳び抜けた美貌の女子は居ないわ。
一年の中ではサニーが頭一つ抜けてるけど、他は大差がない。
私やレナは、上位陣に入るかしらね。
全体を見渡して、マリーを超える女性は居ないわ」
お母様の時は、クラウディア様という女王が居て、人気を二分していたらしい。
そして『お母様そっくり』と言われる私が注目を集めるのは、当然なのだそうだ。
そんなことを言われても、私には納得ができなかった。
「でも私、精霊眼よ?
そりゃあ精霊眼になる前なら『それくらい、当たり前よ!』くらいは言えたかもしれない。
だけど今は、とても言い切れないわ」
レナが疲れたように紅茶を飲みながら告げる。
「この国の人間は、ヒルデガルト先生で精霊眼の存在になれてしまってるのよ。
『ちょっと変わった目だな』くらいにしか思われてないわ。
大したハンデにならないのよ」
そして私の持つ雰囲気は『可憐』らしい。
この雰囲気と私の体型は、とてもよく合うのだそうだ。
「――だから貧相な体型も、大きなハンデにならないのよ」
貧相って断言された……。
一番気にしてることなのにっ!
これでもひとりの乙女だ。
サニーの半分でいいから、女性的な体型になりたかった。
私はひとり、テーブルに潰れてその衝撃を受け止めていた。
そのまま一塊になって、学院のホールへと移動していく。
うーん、やっぱりここでも、精霊眼は目立つなぁ。
全校生徒の視線が、私たちに向けられてる気がする。
……居心地悪い。
九時になり、壇上にお父様が姿を見せる。
新入生に対して、いくつかの注意事項や訓示を与えていた。
二年生、三年生に対しては、『受給性である自覚を持つように』と訓戒を示した。
それが終わると「各自、教室に戻りなさい」と言われた。
お父様が壇上から去ると同時に、生徒たちがホールから教室へ戻っていく。
私は拍子抜けしてつぶやく。
「……これで終わりなんですか?
なんだか、教室で済ませられそうな内容でしたわね」
サイ兄様がうなずいて応える。
「入学式は、学年を越えた生徒間のお披露目なんだ。
新入生の誰が、上級生の度の派閥に属するのか。
それを示す意味合いが強い。
グランツは貴族社会の縮図――派閥社会なんだよ」
つまり私たち年少組とトビアスは、『オリヴァー殿下の派閥だ』と認識されたことになる。
「それで合ってますか?」
オリヴァー殿下がうなずいた。
「そうなりますね。私は上級生とはつるみませんし、同級生もザフィーアの四人とだけです。
同様に、私がザフィーアしか派閥に入れていないことが、周囲に知られたでしょう。
――トビアスはまぁ、『ついで』ですね。
私の保護下にある、という意味に取られるでしょう」
レナが突っ込みを入れる。
「第一王子の派閥が同級生四人しかいないというのは、少し問題があるのではなくて?
まるで人望が無いように見えますわよ?」
ララがそれにフォローを入れる。
「あら、第一王子であるオリヴァー殿下と、王宮騎士団長の息子であるアレックス様。
北方守護指揮官ワグナー伯爵の嫡男アミン様。
そしてなにより、エドラウス侯爵の嫡男であるサイモン様が属した派閥よ?
量は少なくても、質は飛び切り高いわ」
サニーがうなずいて同意する。
「特に、サイモン様の存在が大きいですわね。
レブナント王国の軍事力、その半分を占めるとすら言われるヒルデガルト先生のご長男。
サイモン様が味方しているだけで、他の貴族子女なんて十把一絡げですわ」
オリヴァー殿下がうなずいて補足する。
「その上で年少組は、第二王子増せる、ファルケンシュタイン公爵家嫡男のアラン。
北方守護指揮官ワグナー伯爵令嬢のララ、東方守護指揮官ウォルフ伯爵嫡男素ウェートと令嬢のレナ。
南方守護指揮官クライン伯爵嫡男ヴァルターに魔術騎士団長ブランデンブルク伯爵令嬢のンドラ。
極めつけがエドラウス侯爵令嬢のマリオンだ」
年少組が加わったことで、『質を維持したまま、量が増えた』らしい。
この学院で、これ以上の派閥は居ないそうだ。
サイ兄様が苦笑を浮かべた。
「俺やマリーに、母上のような荒唐無稽な力を求められても、困ってしまうのだがな。
我々は普通の人間だ。
『空を駆け、山を消し飛ばす魔導士』には成れない」
アミン様が加わってくる。
「だがマリオン様はヒルデガルト先生と同じく、堅めの精霊眼だ。
期待は大きいでしょう――これから、大変ですよ?」
私は乾いた笑いを上げていた。
「サイ兄様の言う通り、私たちは普通の人間ですので、大したことはできませんわ。
過大な期待をされても、応えようがありません」
トビアスが興味深そうに尋ねてくる。
「なんですか? その『空を駆け、山を消し飛ばす魔導士』というのは。
ヒルデガルト様には、そのような異名があるのですか?」
北方国家群には、あまりお母様の逸話が広まってないのかな。
アラン様が、春の日差しのような笑顔でトビアスに応える。
「そういう逸話があるんですよ。
実際に見た人間も居るという噂ですが、名乗り出た人間は居ません。
ヒルデガルト先生には、そういった人間離れした逸話が豊富なんです」
マーセル殿下が小さく手を打ち鳴らした。
「――さぁ、そろそろ出入り口も空き始めた。
今日は入学式だけで、学院は終わりだ。
とっとと教室に戻って、帰る準備をしよう」
全員がそれに応じて声を上げ、足をホールの外に向けた。
****
オリヴァー殿下は王宮に戻り、残ったメンバーは寄宿舎へ戻った。
トビアスも「荷物はまだですが、部屋はありますので」と言って、寄宿舎の中へ消えていった。
午後には荷物が到着するらしい。
私はサニーと一緒に部屋に戻る。
部屋の時計を見ると、まだ十時を回っていない。
サニーが椅子に腰かけながら告げる。
「部屋着に着替えるのは、お昼が終わってからの方が良いわよ?」
「そういうものなの? わかった」
私も勉強机の椅子に腰を下ろして休んでいると、レナとララが部屋に遊びにやってきた。
紅茶ポットを手に「やっほー、遊びに来たよー」とローテーブル周りに腰を下ろす。
私たちもクローゼットからカップを取り出し、お茶の時間ということになった。
ローテーブルを囲んで、制服姿で四人が腰を下ろしている。
私はカップを傾けて紅茶の香りを楽しんだあと、小さく息をつく。
「覚悟はしていたつもりだったけど、やっぱり精霊眼は目立つわね。
あんなに視線を集めるものだとは思わなかったわ」
レナとララ、サニーが床にくずおれていた。
勢いよく起き上がったレナが、「それ、本気で言ってるのよね?!」と確認を取ってきた。
私は勢いに押されつつ、うなずいた。
「だって、注目はされていたでしょ?
トビアスだって注目されてたわ」
ゆるゆると起き上がったララが、頭を抱えていた。
「あなたのポンコツ、まだ直ってなかったのね」
私が小首をかしげていると、起き上がってきたサニーが私の両肩に手を置いた。
「視線以外に気付いたことはない?
誰から視線を受けていたとか」
「そう言われると、男子生徒からの視線が多かったと思うけど……。
女子生徒はトビアス以外の男子たちも見てるみたいだったわね」
「同じような視線に覚えはない?
たとえばザフィーアの男子からの視線よ」
私は小首をかしげながら思い出す。
「そうね、確かにどこか似たような視線だった気がするわ」
「ザフィーアの男子は、どんな視線をあなたに送っていたの?」
「……異性としての好意を含んだ視線だ、という話だったわよね?
それは散々言い含められたから、覚えてるわよ?」
「それに似た視線、ということはどういうこと?」
私はしばらく考えてから、口を開く。
「…………まさかぁ」
「ここまで言い含めてまだいうか! このポンコツ!!」
女子三人の声が重なった。
私は必死に抗議の声を上げる。
「だって、全校生徒男子の大半から飛んできたのよ?!
いくらなんでも多すぎない?!
それに、女性としての魅力ならサニーの方がずっと上でしょ?!
レナやララだって、立派に魅力的な女子じゃない!」
サンドラは長身で、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。
肉付きが良くて実に女性の理想的体型だ。
レナやララも、体型こそサニーに一歩譲るけど、標準的な体型で整った顔立ちの美少女。
一方の私は相変わらず低身長で慎ましい体型のまま。
おまけに精霊眼という異物まで持ってる。
女性的魅力という点で、私はこの三人にかなわない。
ララが大きくため息をついたあと、ゆっくりと口を開く。
「入学式で見渡したけど、二年や三年に跳び抜けた美貌の女子は居ないわ。
一年の中ではサニーが頭一つ抜けてるけど、他は大差がない。
私やレナは、上位陣に入るかしらね。
全体を見渡して、マリーを超える女性は居ないわ」
お母様の時は、クラウディア様という女王が居て、人気を二分していたらしい。
そして『お母様そっくり』と言われる私が注目を集めるのは、当然なのだそうだ。
そんなことを言われても、私には納得ができなかった。
「でも私、精霊眼よ?
そりゃあ精霊眼になる前なら『それくらい、当たり前よ!』くらいは言えたかもしれない。
だけど今は、とても言い切れないわ」
レナが疲れたように紅茶を飲みながら告げる。
「この国の人間は、ヒルデガルト先生で精霊眼の存在になれてしまってるのよ。
『ちょっと変わった目だな』くらいにしか思われてないわ。
大したハンデにならないのよ」
そして私の持つ雰囲気は『可憐』らしい。
この雰囲気と私の体型は、とてもよく合うのだそうだ。
「――だから貧相な体型も、大きなハンデにならないのよ」
貧相って断言された……。
一番気にしてることなのにっ!
これでもひとりの乙女だ。
サニーの半分でいいから、女性的な体型になりたかった。
私はひとり、テーブルに潰れてその衝撃を受け止めていた。
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