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141.命の価値(4)
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内庭にテーブルを広げ、子供たちだけで昼食のテーブルを囲む。
大人たちは、別のテーブルでもう食事を始めているようだ。
ララが昼食をつまみながらつぶやいた。
「まさか三年どころか、一年目でリーチをかける人が出るとはね」
サニーがからかうように私に告げる。
「王族に嫁ぐプランは、もう諦めたの?」
私は呆れながら応える。
「諦めたも何も、このゲームの勝者はまだ決まってないわよ?
少なくとも、今はヴァルターから求婚されても、受ける気にはなれないわ」
ララから鋭い突っ込みが入る。
「そのヴァルター様とは来年から三年間の寄宿仲間になるのよ?
タイムリミットはオリヴァー殿下の卒業だけど、他の男子がビハインドを覆すのは難しい気がするわ。
あなた、今の状態で殿下たちとの婚約を受ける気になれるの?」
私は腕を組んで考えた。
「うーん、それを言われると……確かに悩ましい」
私の心証では、ヴァルターを選択したがっているようにも感じた。
だけど彼の愛は重たすぎて、ためらってしまうのだ。
それに『私が本当にヴァルターを求めているのか』も、確信が持てなかった。
うつむいて考えこんでいると、マーセル殿下の王子が聞こえてくる。
「なぁマリオン。お前は他人の犠牲を背負うことを重荷に感じるのか?」
私は顔を上げ、マーセル殿下の目を見た。
「それが普通ではありませんか?
他人の命を背負って生きながらえるだなんて、重い選択はしたくないですよ」
マーセル殿下の目が厳しくなった。
「王族ともなれば、それが当たり前になる。
王は国家国民のために在る存在だ。
王にしかできないことは、たくさんある」
その王様を守る責任を負う者たちは、命をかけて王様を守る。
結果として、彼らの命が失われようとも、それを受け入れなければならない。
王様を守ろうとする人間の命を背負うのが王族なのだ、と熱く説かれた。
王族には国民の人生がその肩に乗ってしまう。
簡単に命を手放すことは、許されていない。
他人の血をすすってでも生き延びなければならない。
「――その覚悟ができない者に、王族になる資格などないぞ」
私はその言葉に怯んだ。
目の前の『王者の雛』に、圧倒されたのだ。
彼はまだ未熟だけれど、確かに『王の器』を持つ少年だった。
「……マーセル殿下は、その覚悟ができているのですか?」
彼は不敵な笑みで応える。
「当然だ。そういう教育を受けて育ってきた。
無論、兄上もな」
私は真っ直ぐマーセル殿下の目を見つめた。
次に、オリヴァー殿下の目も見つめた。
確かに二対の目には、他人の人生を、命を背負う厳しい覚悟が見て取れた。
二人とも、王者の雛だった。
オリヴァー殿下が優しい表情で告げる。
「王族になれば、ヴァルターのような人材が周囲に集う。
王族を守ることが国家国民を、ひいては家族を守ることにつながるからだ。
彼らにためらいはない。惜しみなく命を差し出してくる」
王族はその思いを受け止め、差し出された命に恥じない行動を示さなければならない。
それが彼らの命に報いることだと、オリヴァー殿下は言った。
「――それは王妃とて変わらない。
マリオン、お前にならそうした生き方もできるはずだと、俺は信じている」
私は静かに、その二対の瞳を見ていた。
「……ねぇレナ、さっきの点数はメモしてる?」
「うん、もちろん記録してるよ?」
「ちょっと訂正してくれないかな」
レナが目元ペンを取り出した。
「どこをどう変えるの?」
「マーセル殿下を六十五点に、オリヴァー殿下を五十五点にしておいて」
一気に場が騒然となった。
「とうとう王族が恋愛対象圏内に入ったわよ?!」
「おいおい、王族パワーすごいな!」
「追い上げ方がえげつないぞ!」
「俺一人ドベかよ!」
騒然とした中で、私はレナにもう一言付け加える。
「……レナ、あとはヴァルターを九十点よ」
みんなが驚いて私を見つめてきた。
私は不敵に笑って見せる。
「いいわ。その自己犠牲、背負ってみせようじゃない。
王族を目指す人間が、そんなことに怯んでいたら務まらないんでしょう?
なら受け止めてみせるわ。
今の私がどう報いたらいいのかまでは、わからないけれど」
男子たちの非難の視線が、マーセル殿下とオリヴァー殿下に注がれた。
「完全に一歩手前じゃないか」
「なんでナイスアシストするかな」
「散歩進んで二歩下がってるぞ」
王族に求められる覚悟をしたら、ヴァルターの愛を受け止める覚悟もできちゃったんだもん。
それは仕方がないんじゃない?
殿下たちは、苦笑を浮かべていた。
ヴァルターも珍しく口を出してきた。
「その覚悟ができて、まだ満点じゃないんですか?
あなたは本当にシビアな人だな」
私は微笑んでヴァルターに応える。
「私の気持ちを考えてくれない人に、満点はあげられないわね」
ヴァルターは一方的過ぎるんだよ。
私からの気持ちなんて、まったく考えてくれない。
そこは大きな減点ポイントだ。
サイ兄様がレナに「ちょっと見せてくれ」とメモを受け取った。
男子たちがメモを覗き込む。
私も横から、メモを覗き込んでみた。
ヴァルターが九十点
マーセル殿下が六十五点
オリヴァー殿下が五十五点
サイ兄様が五十点
アラン様が四十五点
アミン様が四十五点
アレックス様が四十点
スウェード様が二十五点
アラン様がのんきに告げる。
「そろそろ僕もポイントを稼いで恋愛対象圏内に入らないと、苦しいですね」
アミン様はアラン様と同点だ。
同意するようにうなずいていた。
アレックス様は点数を気にしている様子がない。
サイ兄様は、どこか哀愁を漂わせながらメモを見つめていた。
スウェード様がサイ兄様に告げる。
「おいサイモン、これはお前が基準なんだろう?
お前がマリーにめちゃくちゃいいところを見せたら、上位陣の点数を落とせるんじゃないか?」
レナが鋭くつっこむ。
「それをやると、お兄様の評価が地に埋もれますわよ?」
私は男子たちの様子を見て、大きなため息をついた。
……そろそろ、誰かひとりくらい諦めてくれないかな。
大人たちは、別のテーブルでもう食事を始めているようだ。
ララが昼食をつまみながらつぶやいた。
「まさか三年どころか、一年目でリーチをかける人が出るとはね」
サニーがからかうように私に告げる。
「王族に嫁ぐプランは、もう諦めたの?」
私は呆れながら応える。
「諦めたも何も、このゲームの勝者はまだ決まってないわよ?
少なくとも、今はヴァルターから求婚されても、受ける気にはなれないわ」
ララから鋭い突っ込みが入る。
「そのヴァルター様とは来年から三年間の寄宿仲間になるのよ?
タイムリミットはオリヴァー殿下の卒業だけど、他の男子がビハインドを覆すのは難しい気がするわ。
あなた、今の状態で殿下たちとの婚約を受ける気になれるの?」
私は腕を組んで考えた。
「うーん、それを言われると……確かに悩ましい」
私の心証では、ヴァルターを選択したがっているようにも感じた。
だけど彼の愛は重たすぎて、ためらってしまうのだ。
それに『私が本当にヴァルターを求めているのか』も、確信が持てなかった。
うつむいて考えこんでいると、マーセル殿下の王子が聞こえてくる。
「なぁマリオン。お前は他人の犠牲を背負うことを重荷に感じるのか?」
私は顔を上げ、マーセル殿下の目を見た。
「それが普通ではありませんか?
他人の命を背負って生きながらえるだなんて、重い選択はしたくないですよ」
マーセル殿下の目が厳しくなった。
「王族ともなれば、それが当たり前になる。
王は国家国民のために在る存在だ。
王にしかできないことは、たくさんある」
その王様を守る責任を負う者たちは、命をかけて王様を守る。
結果として、彼らの命が失われようとも、それを受け入れなければならない。
王様を守ろうとする人間の命を背負うのが王族なのだ、と熱く説かれた。
王族には国民の人生がその肩に乗ってしまう。
簡単に命を手放すことは、許されていない。
他人の血をすすってでも生き延びなければならない。
「――その覚悟ができない者に、王族になる資格などないぞ」
私はその言葉に怯んだ。
目の前の『王者の雛』に、圧倒されたのだ。
彼はまだ未熟だけれど、確かに『王の器』を持つ少年だった。
「……マーセル殿下は、その覚悟ができているのですか?」
彼は不敵な笑みで応える。
「当然だ。そういう教育を受けて育ってきた。
無論、兄上もな」
私は真っ直ぐマーセル殿下の目を見つめた。
次に、オリヴァー殿下の目も見つめた。
確かに二対の目には、他人の人生を、命を背負う厳しい覚悟が見て取れた。
二人とも、王者の雛だった。
オリヴァー殿下が優しい表情で告げる。
「王族になれば、ヴァルターのような人材が周囲に集う。
王族を守ることが国家国民を、ひいては家族を守ることにつながるからだ。
彼らにためらいはない。惜しみなく命を差し出してくる」
王族はその思いを受け止め、差し出された命に恥じない行動を示さなければならない。
それが彼らの命に報いることだと、オリヴァー殿下は言った。
「――それは王妃とて変わらない。
マリオン、お前にならそうした生き方もできるはずだと、俺は信じている」
私は静かに、その二対の瞳を見ていた。
「……ねぇレナ、さっきの点数はメモしてる?」
「うん、もちろん記録してるよ?」
「ちょっと訂正してくれないかな」
レナが目元ペンを取り出した。
「どこをどう変えるの?」
「マーセル殿下を六十五点に、オリヴァー殿下を五十五点にしておいて」
一気に場が騒然となった。
「とうとう王族が恋愛対象圏内に入ったわよ?!」
「おいおい、王族パワーすごいな!」
「追い上げ方がえげつないぞ!」
「俺一人ドベかよ!」
騒然とした中で、私はレナにもう一言付け加える。
「……レナ、あとはヴァルターを九十点よ」
みんなが驚いて私を見つめてきた。
私は不敵に笑って見せる。
「いいわ。その自己犠牲、背負ってみせようじゃない。
王族を目指す人間が、そんなことに怯んでいたら務まらないんでしょう?
なら受け止めてみせるわ。
今の私がどう報いたらいいのかまでは、わからないけれど」
男子たちの非難の視線が、マーセル殿下とオリヴァー殿下に注がれた。
「完全に一歩手前じゃないか」
「なんでナイスアシストするかな」
「散歩進んで二歩下がってるぞ」
王族に求められる覚悟をしたら、ヴァルターの愛を受け止める覚悟もできちゃったんだもん。
それは仕方がないんじゃない?
殿下たちは、苦笑を浮かべていた。
ヴァルターも珍しく口を出してきた。
「その覚悟ができて、まだ満点じゃないんですか?
あなたは本当にシビアな人だな」
私は微笑んでヴァルターに応える。
「私の気持ちを考えてくれない人に、満点はあげられないわね」
ヴァルターは一方的過ぎるんだよ。
私からの気持ちなんて、まったく考えてくれない。
そこは大きな減点ポイントだ。
サイ兄様がレナに「ちょっと見せてくれ」とメモを受け取った。
男子たちがメモを覗き込む。
私も横から、メモを覗き込んでみた。
ヴァルターが九十点
マーセル殿下が六十五点
オリヴァー殿下が五十五点
サイ兄様が五十点
アラン様が四十五点
アミン様が四十五点
アレックス様が四十点
スウェード様が二十五点
アラン様がのんきに告げる。
「そろそろ僕もポイントを稼いで恋愛対象圏内に入らないと、苦しいですね」
アミン様はアラン様と同点だ。
同意するようにうなずいていた。
アレックス様は点数を気にしている様子がない。
サイ兄様は、どこか哀愁を漂わせながらメモを見つめていた。
スウェード様がサイ兄様に告げる。
「おいサイモン、これはお前が基準なんだろう?
お前がマリーにめちゃくちゃいいところを見せたら、上位陣の点数を落とせるんじゃないか?」
レナが鋭くつっこむ。
「それをやると、お兄様の評価が地に埋もれますわよ?」
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