Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐

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9巻

9-2

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【運命略奪】により、無事に飯勇を引きずり込めた。
 これでより美味うまい飯が楽しめそうだ。
 とりあえず反乱防止の為に分体を飲ませた後、〝ブラックフォモール〟の肉を使った料理を作ってもらう事にした。
 そんな事をしている間に同盟軍と対峙していた【巨鬼魔像】はというと、【魔帝】が黒いあなから【召喚サモン】した無数の太く長大な触手しょくしゅによって拘束され、全身から黄金の闘気をみなぎらせる【獣王】の拳によって胸部を粉砕されてしまった。
 結構な自信作がアッサリと倒されてくやしくもあるが、仕方ないとあきらめる。
 ともあれ、両陣営共に条件をクリアした事で、再び橋がせり上がる。
 今回の橋の演出は、前回のものに加え、溶岩壁の脇にある巨像が動いて左右に並んだ。その巨像達が持つ武器が橋の上空で交差し、ある種のパレードのようになっている。
 連合軍と同盟軍の本隊はそれを潜り抜けた後、俺達が待つ螺旋火山のふもとにて、進撃を一旦止めるようだ。
 まあ、何だかんだとここまで到達したのは既に夜である。
 起伏の激しい過酷な地形が続く中でそれなりの距離を進んできただけでなく、道中襲い掛かってくるダンジョンモンスターとの戦闘があった。となれば、どうしたって心身共に疲労するし、人数からしていくら行軍速度が速いといっても限界がある。 
 明日の本番に備え、体力をたくわえる事を選択したらしい。
 そのまま突っ込んでくれば疲労がある分楽だったのだが、これはこれで面白い。
 とりあえず、団員達の戦いがどうなったのか確認すると――


[保有迷宮内にて【仮面の勇者】が死亡しました]
[死亡した事により流出する【神力イデア】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
[夜天童子は【仮面之魂封面ペルディオス・マスクレイド】を手に入れた!]

[保有迷宮内にて【円環の勇者】が死亡しました]
[死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
[夜天童子は【円環之魂蛇剣ロボロス・ス・ゼリナス】を手に入れた!]

[保有迷宮内にて【魔鳥英雄】が死亡しました]
[死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
[夜天童子は【魔鳥之魂律笛ガルディーナ・フルト】を手に入れた!]

[保有迷宮内にて【砂牛英雄】が死亡しました]
[死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
[夜天童子は【砂牛之魂角斧ヌストゥフ・ラビュス】を手に入れた!]

[保有迷宮内にて【覇狼英雄】が死亡しました]
[死亡した事により流出する【神力】の一部が迷宮に吸収され、【神器】として再変換されます]
[夜天童子は【狼之魂牙剣ウルファロス】を手に入れた!]

[保有迷宮内にて【骸蟲英雄】が死亡しました]
[【運命掌握】下にある【陽光の勇者】が倒した為、【神力】は【神器】として既に変換されています]

 ――こうなっていた。
 正直、驚きを隠せない。
 直接でなくても、支配した迷宮内で倒せば【神器】は獲得できる。
 それを現時点で把握する事ができたのは、非常にありがたかった。

[世界詩篇〔黒蝕鬼物語〕第六章【神災暴食のススメ】の第八節【愚者の刃ウルニード・ザルダ】の隠し条件《愚かなる者》《求めし刃》がクリアされました]


《三百四十二日目》

 聖戦二日目。
 昨日の戦いは紆余曲折うよきょくせつあったものの、無事終局している。 
 最終的なこちらの被害は、約三〇〇〇の団員の内、死亡したのが約八〇〇名、重軽傷者多数、という結果になった。
【英勇】という《主要人物》六名、その仲間である《副要人物》、他多数を討ち取る大戦果からすれば損害は軽微とも言えるだろうが、しかし実質的には全滅している。
 こちらには治療能力に優れたセイくんが居るので、重傷者の多くは治療が間に合って死者がこれだけで抑えられたが、そうでなければ全滅ではなく壊滅していた可能性が高い。
 めていた訳ではないが、【英勇】やそれに準じる存在を複数同時に相手に回すのは、団員達にはまだ早かったのかもしれない。
 だが今更そう言っても意味は無い。
 そもそも【聖戦】への参加は、自主的に決めさせた。ここに居るからには、命を落とす危険性を理解し、それでも参加を決めた者なのである。
 ならうだうだと悩まず、居なくなった者達の分まで、進んで行くしかない。
 南無阿弥陀仏なむあみだぶつ、と冥福めいふくいのりつつ、後日とむらう為に団員達の遺体いたいは全て回収した。
 それと並行して回収された【英勇】達の遺体は、俺の【異空間収納能力アイテムボックス】に放り込んで保存しておく。まだ【聖戦】は始まったばかり、終わってからまとめて喰う予定である。
 とはいえ腹は空くので、牛英が率いていた魔牛の肉を食材として、飯勇に朝食を作らせる事にした。
 メニューはシンプルにステーキだ。こうばしい肉の匂いが食欲を刺激して、思わず感謝しながら口に運ぶ。
 そして肉に歯が入った瞬間、言葉を失った。
 上質な魔牛の肉はほどよい柔らかさがあり、口内で肉汁が溢れ出る。
 それだけならば単に上質なステーキだ。
 しかし、飯勇の料理には様々な技術と工夫が施されているのだろう。その美味さに、ただただ腕が動く。ひたすらあごが上下して咀嚼そしゃくを続ける。舌が次から次へと胃にステーキを運搬する。
【神器】と比べれば劣るものの、それに迫らんばかりの美食であった。
 そんな至福の朝食を終えて、心地よい余韻よいん満喫まんきつしていると、どうやら連合軍と同盟軍の本陣が行動を開始したようだ。
 螺旋火山では、両陣営が衝突しないように、坂道が二重螺旋を描くように調節してある。
 頂上に登るまで交わらなくした結果、連合軍と同盟軍は大体同じ頃に登頂し終えた。
 山頂は、以前なら上空に重苦しい黒雲が君臨し、飛び金属塊を渡っていった先には火口に浮かぶ決闘場が存在した。
 しかし現在はそれとは少し異なる。
 上空の黒雲は変わらないが、飛び金属塊は無くなり、火口全てにふたをしたような円形の決戦場と化している。
 決戦場の直径は約三キロ。大人数による戦闘でも支障が無いように、遮蔽物しゃへいぶつの類は一切存在していない。
 そんな決戦場の中心にて、俺は大昔の魔術師ベルベットが最後に座っていたあの豪奢ごうしゃな椅子に腰かけている。
 周囲にはミノきちくんなど【八陣ノ鬼将はちじんのきしょう】全員も座し、今か今かと戦意をみなぎらせていた。
 登って来たと同時に奇襲してもよかったのだが、せっかくの【聖戦】だ。
 相手がある程度陣形を構築するまでこちらも動かないと事前に決めていたのだが、待っている間に連合軍の方から『神意である。皆命をして、【飽く無き暴食ザ・グラトニー】を成敗するのです』などと色々言われた。
 恐らく、開戦前の宣言みたいなものだろう。
 わざわざ付き合う必要性は感じないのだが、とりあえず耳を傾け、準備が進んだ頃合を見計らって椅子から立ち上がる。
 ――本格的な【聖戦】がいつ始まったのかと言えば、この時こそがそうだった。
 ただ戦い、強い方が喰い、弱い方が喰われる。
 とてもシンプルな、弱肉強食の戦いだ。
 相手の準備が整ったのを確認して、俺は開戦を告げるひと声を解き放つ。
 それは破壊をともなった、咆哮ほうこうという名の攻撃である。


[夜天童子の【異教天罰】が多数に対して発動しました]
[これにより夜天童子は敵対行動/侵攻開始を行った《異教徒/詩篇覚醒者》率いる軍勢に対して【終末論・征服戦争】の開戦を宣言しました]
[両軍の戦いが決着するまで、夜天童子の全能力は【三〇〇%】上昇します]
[共闘補正【参神級さんしんきゅう】により、雷炎牛皇ケラウノスの全能力は【二一〇%】上昇します]
[共闘補正【弐神級にしんきゅう】により、月蝕神醒へカテリーナの全能力は【二一〇%】上昇します]
[共闘補正【壱神級いちしんきゅう】により、大地母鬼テッラの全能力は【二〇〇%】上昇します]
[共闘補正【弐神級】により、流星魔涙エトワールの全能力は【二〇五%】上昇します]
[共闘補正【弐神級】により、灼血闘剣エルペンストの全能力は【二〇五%】上昇します]
[共闘補正【壱神級】により、慈善救命クルーティオの全能力は【一〇〇%】上昇します]
[共闘補正【壱神級】により、魂魄腐界コロージョンの全能力は【二〇〇%】上昇します]
[共闘補正【壱神級】により、運命導眼オイユの全能力は【一〇〇%】上昇します]
[特殊能力【異教天罰】は決着がつき次第解除されます]

 何気にスペせいさん達の〝真名マナ〟が初めて出たりしたが、それについて考えるのは後でという事にしておこう。
 明確な殺意と殺傷力を秘めた俺の咆哮が敵陣営を直撃するも、防がれてしまったのだから。


==================


 真なる【聖戦】の始まりを告げたのは、空間を破壊するような鋭い鬼声きせいだった。

「オオオオオオオッ!」

 そこは、かつて【フレムス炎竜山】だった頃よりも高く、大きくなった【鬼哭神火山】の中央に存在する螺旋火山の頂上。対策無しでは数分と持たず焼死を免れない、獄炎ごくえんが支配する迷宮の最奥。
 頭上には重圧感漂う分厚い黒雲が鎮座ちんざする、まるで死者が最後に行き着く場所かと見間違うそこには、広大な決戦場が用意されている。
 その中央にて待ち構えていた九鬼の内の一体――【世界の宿敵・飽く無き暴食】として選ばれたオバ朗が、座していた椅子から立ち上がり、明確な殺意をもって発した咆哮だ。
 無論、それがただの咆哮である訳が無い。
 元々、【金剛夜叉鬼神ヴァジュラヤクシャ・オーバーロード現神種ヴァイシュラシーズ】にまで【存在進化ランクアップ】しているオバ朗が意図して放つ咆哮には、聞いた者の心身から力を奪い、あるいは即死すらさせる恐るべき効果がある。
 ある一定以上の存在ならば同じような事ができるが、それらと比べても一段と強力だ。
 本来の咆哮ですら、軍隊を壊滅させかねない威力がある。にもかかわらず、今回はたとえ強靭な【知恵ある蛇/竜・龍】であっても聞いただけで高確率で死亡させる【告死鬼の奪命声デスペラード】と、膨大な魔力を用いて聞いた者に強力な状態異常と物理的破壊をもたらす【竜帝の爆炸咆哮エンペラードラゴン・ブラストロア】という、二つの強力なアビリティを重複発動させた状態で放たれていた。
 その結果、呆れるほど膨大で、理解できないほど濃密な魔力によって赤黒く可視化された音速の破壊咆吼が、オバ朗を中心に全方向へと広がっていく。
 当然、オバ朗のすぐ傍に居たミノ吉達も瞬時にその破壊咆吼に呑み込まれた。しかし、そもそも個々が強力無比な存在であった事と、予めセイ治が張り巡らせていた積層式【聖力領域シェル・フィールド】や障壁系のマジックアイテムの効果によって、被害は一切無かった。
 しかし、それ以外の万物は例外なく破壊の脅威にさらされる。
 まず最初に決戦場が影響を受けた。
 破壊咆哮の発生源であるオバ朗を起点に、まるでガラスを砕いたかのような大小無数の亀裂きれつが生じ、衝撃で飛散した破片は空中で更に微細に砕かれて砂と化す。
 本来なら小さな傷を残す事すら困難を極める迷宮の一部でなければ、この時点で決戦場は崩壊していただろう。
 それほどの力を秘めた破壊は、広がり続けても尚、一切おとろえる事なく、決戦場へと足を踏み入れた連合軍と同盟軍に襲い掛かる。
 両陣営からすれば、突如として赤黒い壁が眼前に発生し、それが凄まじい速さで膨張しながら迫ってきているようにしか見えなかっただろう。

御心のままにアーフ

 迫る赤黒い壁に触れればどうなるか。生物としての本能から、誰もが『死ぬ』と理解した。
 理解したが、迫り来る速度が速過ぎて、また規模が大き過ぎた為に、連合軍においても同盟軍においても、咄嗟とっさに行動に移る事ができたのはごく限られた存在だけだった。

世界に光在れゼルフ

 破壊咆哮が到達するまでの猶予ゆうよは五秒にも満たない。
 その間に対処しなければ、両陣営の兵士達の身体は瞬時に血煙ちけむりになるまで破壊され、この世に肉片一つ残す事もなかっただろう。
 屈強な【英勇】達ならば残骸くらいは残ったかもしれないが、ほとんど何もできずに全身を蹂躙じゅうりんされ、しかばねを晒した事は想像にかたくない。
 しかしそれは仕方のない事でもあった。
 音を触媒にした攻撃を防ぐ手立てなど、そうあるものではない。反応する事すら困難である。
 だが、約五千名に上る連合軍には、【英勇】を超える【救聖】が居た。


「――〝精錬武救の聖神鎧イスラブ・レス・ラーグ〟」

 まるで全てのわざわいをはらうかのような神秘的で暴力的な白刃を備えた純白の杖――【大神の神器】である【誕叡大神之魂界杖セフィロスティ・ゼクリオス】を構えたアンナリーゼが、【白き誕叡なる救世主セイヴァー・ザ・ホワイトバース】だけに行使可能な【魔法】を圧縮詠唱あっしゅくえいしょうにて発動させた。
 即座に発動できる代わりに威力が落ちる無詠唱や、必要な部分だけを選別して短時間で発動させる短縮詠唱などとは異なり、短いワードに複数の意味を持たせる事で、発動時間を早めつつ順当に詠唱した時よりも更に威力を高めるという高等技術である。
 その【魔法】は光速で連合軍に所属する全ての存在に届き、【劣化神兵アポリステル】【聖神鎧ラーグ】【聖神耐性強化ラードネス】【聖神ラー戦技アーツ】【一度だけの救済きゅうさい】という能力を一時的に付与し、破壊咆哮という絶望的な【】にあらがうだけの力を与えた。
 しかし、それでもまだ足りない。
 決戦場の砕かれた砂という研磨剤けんまざいを取り込んで、更に破壊力を引き上げた破壊咆哮の前では、それすら多少生存確率を上げるだけ。
 軍隊として殲滅せんめつは回避できるにせよ、壊滅かいめつと言える被害が出る。

「イィイイイイヤアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 それを回避する為、【救世主セイヴァー】であるアンナリーゼにつき従う【聖人セイント】の片割れ――【割断の聖人】のウーリアは最前線へ飛び出した。
 助走も無く、たった一度の跳躍で連合軍の中央から数百名以上居た兵達の頭上を雷の如き速度で越え、着地と同時に裂帛れっぱくの気合を伴って横一閃を放つ。

[ウーリア・デュフネス・サーズは戦技【割断剣クリベード大界横断ワードレスト】を繰り出した]

 ひと目見ただけで心を奪われそうになるほど美しい、両手長剣型の【神器】である【割断神之魂剣】に、卓越たくえつした技術と強力無比な戦技アーツが合致した事によって生じた、極大の黒い斬撃。
 軌道上の空間を切断しながら飛翔するウーリアの一閃は、迫る破壊咆哮と正面から衝突する。
 元々ウーリアの斬撃の威力は、【帝王】類の竜種が放つ【息吹ブレス】と互角以上に渡り合えるだけの段階に達していた。
 そこにアンナリーゼの支援や、【救聖詩篇】によって発動した【終末論・征服戦争】の効果で大幅に強化された現在、その数倍の破壊力を持つに至っている。放てば敵を確実にほうむる、まさに必殺の一閃と言えるだろう。
 しかしそれでも、まるで抗いがたい自然災害かと見紛みまがうような破壊咆哮を完全に消す事はできなかった。
 ウーリアが強化されているのと同様に、オバ朗もまた【終末論・征服戦争】の効果で強化されているからだ。
 その為、勢いを削る以上の事はできず、最前線に躍り出た故にそのまま破壊咆吼に呑みこまれ、後方に大きく吹き飛ばされそうになるほどの衝撃に襲われた。

「イーシェル、次は頼みます」

 しかし斬撃によってその威力は大幅に落ちていた。破壊咆哮を浴びても、ウーリアが死ぬ事はなかった。
 全身を保護する光の鎧【聖神鎧】は目に見えて削られ、時折突破されて傷を負い血を流すものの、どれも浅く致命傷にはならない。アンナリーゼによって付与された能力が無ければもう少しダメージを負ったかもしれないが、それでも【英勇】を超越した存在である【聖人】のウーリアならば、数秒で完治する程度だ。
 しかしそれだけ威力が減じた状態の破壊咆哮でも、まともに浴びれば【英勇】達ですら大ダメージを負ってしまいかねず、いわんやその配下である兵士達では戦闘など不可能になる。
 だからウーリアは全身を破壊咆哮で痛めつけられつつも、血を分けた双子の片割れ――【境界の聖人】のイーシェルに守りを託す。

「はい、任されました」 

 ウーリアに僅かに遅れて最前線に立ち、荘厳な装飾を施された金属盾型の【神器】である【境界神之魂盾】を構えたイーシェルは、目前に迫った破壊咆哮に耐える為に腰を落とした。
 女性ながら長身のイーシェルをスッポリと隠せるほど大きな【境界神之魂盾】は、まるで地面に根を生やした大樹のような力強さを宿すイーシェルに支えられ、戦技と共にその真価を発揮する。

[イーシェル・ヴォルフシュ・サーズは戦技【境界盾ボルディ白界鏡壁スノリアス】を繰り出した]

 まるでそこで世界を区切るかのように、【境界神之魂盾】を起点として上下左右に白い光の壁面が構築された。
 直後、赤黒い破壊咆哮と白い光の壁面は衝突し、何処にも逃げ場が無くなったエネルギーを間に挟んで両者はせめぎ合う。
 しばしの間拮抗したが、ウーリアに斬られた事で勢いを失っていた破壊咆哮の方が徐々にほころび、やがて白い光の壁を避けた方向に散って行った。

「――ふぅ、流石は【世界の宿敵】、といったところですね。勢いを衰えさせて尚、この威力とは……」

 物理的な圧力による肉体の疲労からか、あるいは眼前に迫った脅威と対する精神的な重圧からか。額に汗をにじませながら、イーシェルは【境界神之魂盾】から顔を覗かせる。
 その視線の先には、滅茶苦茶めちゃくちゃに荒れ果てた決戦場の姿があった。
 中心部に近いほど深く掘り下げられた地形を見て、『まるで天から隕石いんせきが降って来たみたいね』とイーシェルはひとちる。
 たったひと声で、これほどの影響を及ぼす存在。
 遠くに居るオバ朗の姿を細部に至るまで視認しながら、イーシェルは静かに武者震むしゃぶるいした。

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