161 / 257
9巻
9-1
しおりを挟む本編
《三百四十一日目》
【聖戦】当日、普段と変わらず世界を照らす太陽が昇った。
それに合わせ、俺――オバ朗が持つ生産系アビリティの一つ、【大悪魔精製】を使って精製した〝道化師の悪魔〟を、使者として送り出す。
白い顔面に奇奇怪怪な化粧を施し、大きな赤鼻と過剰なまでの装飾が付いた衣服を纏う小太りの悪魔は、背中に生えた翼で羽ばたき、ここ【鬼哭神火山】と外界を隔てる【境界圏】まで飛んでいく。その近くに、《ルーメン聖王国》を中心として結成された人間の連合軍と、《アタラクア魔帝国》と《エストグラン獣王国》の【帝王】達が率いる魔人と獣人の同盟軍がそれぞれ、陣を構えていた。
最初はどちらの陣営も問答無用で撃ち落としてきた。どうやら敵襲だと思われたらしい。
手が早過ぎるだろ、と思わなくもないが、事情を知らないならば仕方ない、と納得はできた。
なので、二体目には白旗を持たせて送ったら、今度は攻撃されなかった。
もっとも、『【世界の宿敵】に選ばれし我が主様は、最奥にて待ってるニョロー。幾つかの試練を越えれば我が主様の下までイケルニョローンパ。我が主様は寛大な御心で待って居られるのだから、お前等は早く殺されにいくべきニャモン』と、ヒトを小馬鹿にしたような口調での伝言を終えた瞬間に惨殺されたが。
とはいえ、この【聖戦】の目的地を示すマジックアイテム【導きのコンパス】をドロップしているので、役割は果たしている。
ともかく、話を聞いた二つの陣営は、早朝から早速侵攻を開始した。
非戦闘員が全て撤収した事で総数は減っているものの、それでも戦力は豊富だ。最終的に【鬼哭神火山】に足を踏み入れた者達について、名前などをちょっと詳しく説明しておくと――
『連合軍』
《ルーメン聖王国》所属。
【白き誕叡なる救世主】アンナリーゼ・ディナ・エインズ・ルーメン、改め『白主』。十代後半の聖王国王女。【神器】持ち。ちょっと頭がおかしい、今【聖戦】では最も注意すべき存在。
【境界の聖人】イーシェル・ヴォルフシュ・サーズ、改め『界聖』。聖王国貴族出身。女性でありながら、全身を隠せるほど大きな金属盾の【神器】である【境界神之魂盾】を愛用する。
【割断の聖人】ウーリア・デュフネス・サーズ、改め『断聖』。聖王国貴族出身。女性でありながら、身の丈ほどの長さを誇る両手長剣の【神器】である【割断神之魂剣】を愛用する。
【狩猟の勇者】にして【枢機卿】のラン・ベル、改め『狩勇』。三十代前半の美女。弓の【神器】持ち。その仲間五名。
【数式の勇者】にして【枢機卿】のムテージ・ベイドラス・ディノア、改め『数勇』。老爺。【神器】持ち。その仲間四名。
【天声の勇者】ブランドネス・ダイオル・オルケストル、改め『声勇』。今はなき小国の音楽一族出身である妙齢の女性。【神器】持ち。その仲間四名。
【愛の勇者】ラヴァーズ・アモール、改め『愛勇』。褐色の美女。【神器】持ち。その仲間六名。
【料理の勇者】セルバンテス・アルバンテス、改め『飯勇』。平民出身の中年男性。料理の達人で【神器】持ち。コイツだけは是が非でも生け捕りにする予定である。最悪の場合、死体だけでも回収すべし。その仲間五名。
【狂気の勇者】クルトゥク・トィクス・アブトラクフ、改め『狂勇』。聖王国貴族の初老男性。その仲間五名。
【円環の勇者】ウロボレアス・リンデル・バウヘルム、改め『円勇』。聖王国貴族の青年。その仲間六名。
【仮面の勇者】ペルソル・マスクレイド、改め『面勇』。少数民族出身の青年。その仲間四名。
【毒茸の勇者】マシュルム・ポインズ、改め『茸勇』。少数民族出身の少年。その仲間五名。
【共振の勇者】ハウリデス・デュノア、改め『共勇』。平民出身の少年。その仲間四名。
【星読英雄】にして【枢機卿】のアルドラ・オーブス・エスメラルダ、改め『星英』。年齢が化物級老婆。水晶型の【神器】持ち。その配下《星叡部隊》一〇〇名。
【書冊英雄】にして【枢機卿】のイムルスカ・ファレス・トードル、改め『書英』。老爺。書冊型の【神器】持ち。配下は無し。
【探求英雄】ハワーリップス・クィリス・アブトラクフ、改め『探英』。聖王国貴族の初老男性。狂勇の弟。その配下《禁忌改人軍》二〇〇〇体。
【悪銭英雄】アクガーネ・タメール・アクドーク、改め『銭英』。太った中年男性。その配下《金儲け隊》一〇〇〇名。
【炎舞英雄】リズミオ・トッテルネン、改め『舞英』。盲目の青年。その配下《踊り子紅蓮隊》五〇〇名。
【鋼殻英雄】メルディ・ベルナ、改め『鋼英』。少数民族出身の少女。配下は無し。
【魔鳥英雄】ディノバーノ・エインス、改め『鳥英』。平民出身の少女。その配下《魔鳥黒群》一〇〇〇羽。
【豊穣英雄】アシュルテ・ムンディボ、改め『豊英』。恰幅の良い中年女性。その配下《豊穣動樹》一〇〇〇体。
【飛魚英雄】フラフィ・フィフィル、改め『魚英』。島育ちの青年。その配下《飛翔魚群》四〇〇体。
《キーリカ帝国》所属。
【黒雲の勇者】クラウドラス・ベルマウストス・グフスタフ、改め『雲勇』。中年男性。序列第二位。【神器】持ち。その仲間五名。
【雷鳴の勇者】アルトゥネル・ベアーダ・リッケンバー、改め『雷勇』。男装の麗人。序列第三位。【神器】持ち。その仲間五名。
【剛脚の勇者】アンダーソン・ボーキャク、改め『脚勇』。青年。【運命略奪】された組。その仲間六名。
【斬糸の勇者】ディオリマス・アイオドス、改め『糸勇』。女性。【運命略奪】された組。その仲間三名。
【骸蟲英雄】フィリポ・ベルド・ロッカータ、改め『蟲英』。以前俺が戦って逃がした少年。序列第七位。その配下【魔蟲】無数。復讐者――【陽光の勇者】が狙う獲物。
【覇狼英雄】ウォルフ・ヴォルフ、改め『狼英』。平民出身の中年男性。【運命略奪】された組。その配下《狼化闘軍》五〇〇名。熱鬼くん達と少し因縁があるらしい。
【砂牛英雄】ヌー・ウシカ、改め『牛英』。【運命略奪】された組。その配下《砂牛蹄群》六〇〇体。
《シュテルンベルト王国》所属。
【岩鉄の勇者】岩勇。頭部に秘密を抱えた男。その仲間四名。俺と友好関係にあるお転婆姫との取り決めにより、今回は【鬼哭の賭場】にて遊んでいてもらう予定。
その他小国所属。
【爆発の勇者】ボムル・ボボルル、改め『爆勇』。小国の青年。その仲間五名。
【腐浄の勇者】キフス=デナ=エルナ、改め『腐勇』。妙齢の女性。その仲間四名。何処かの誰かと雰囲気が似ている。
【雹雨英雄】アルララ・ラララ、改め『雹英』。無表情な女性。【神器】持ち。配下無し。
『同盟軍』
《アタラクア魔帝国》所属。
【魔帝】ヒュルトン・ガスクラウド・アタラクア。男性。多分【神器】持ち。要注意人物。少し特殊な魔法を使ってくる。
【重黒将】ゼムラス・ス・スラムゼ、改め『黒将』。不定系魔人。性別不明。【六重将】第二席。
【重翠将】ファルニア=ヤルゥ、改め『翠将』。鳥類系魔人。女性。第三席。
【重緋将】バララーク・バラク、改め『緋将』。金属系魔人。男性。第四席。
他、精鋭部隊二〇〇〇名。
《エストグラン獣王国》所属。
【獣王】ライオネル・ガウロ・エストグラン。男性。多分【神器】持ち。要注意人物。肉体面では間違いなくトップクラス。
【雷豹牙将】チチルタ・ラーチラ、改め『豹将』。【獣牙将】二牙。ヒョウ系獣人。男性。自由人。
【黒斑牙将】ハイエルダ・ダーフス、改め『斑将』。四牙。ハイエナ系獣人。女性。苦労人。
【剛猿牙将】ゴリ・ゴリーラ、改め『猿将』。五牙。ゴリラ系獣人。男性。脳筋。
【河馬牙将】ヒポポ・タモス、改め『河将』。六牙。カバ系獣人。男性。楽天家。
【猟兎牙将】ラビ・トトリ、改め『兎将』。九牙。ウサギ系獣人。少年に見える老爺。腹黒い。
【紅猪牙将】ブラーヌ・ブル、改め『猪将』。十牙。イノシシ系獣人。少女。天然。
――となっている。
主力になるだろう人物はより詳しく説明してみたが、そこまで詳しく覚えなくてもいいだろう。その他の者についても、何となくサラッとで十分だ。
それを迎え撃つは、俺率いる傭兵団《戦に備えよ》である。
さて、こちらに対して前後から侵攻してくる両陣営であるが、やはり【鬼哭神火山】ではその暑さが問題になる。
何の対策もしていなかったら、数分と経過せずに肉体が燃えて死ぬ事になるだろう。
専用のアイテムがあればある程度防げる、というのは、俺達自身ここが【フレムス炎竜山】だった頃に攻略した事からも証明されているが、流石にこの数だ。
少数精鋭の同盟軍はともかく、連合軍は全員分を揃えるとなるとそれなりに大変だ。しかも予備などを含め、その数倍は必要になる。
過酷な【鬼哭神火山】の環境では些細な準備不足ですら致命的になる為、決して無視する事はできない。
しかし連合軍は『大量のアイテムを用意する』とは別の方法――保険として一応全員に魔法薬を配布してはいるようだが――で解決していた。
入ってくる前に、【神器】持ちの一人である声勇パーティと、それに追随する共勇パーティ、そして舞英とその配下達が自前の能力を使ったのだ。
声勇は、多数に影響を与える【英雄】と酷似した結果を出す事ができる性質の能力を持つ、珍しいタイプの【勇者】だ。
歌声で仲間を増強、あるいは敵の能力を減退させる【吟遊詩人】系の上位職を複数所持し、更に【天声の神】から与えられた【加護】によって大幅に強化されている声勇の歌声には、聴いた者達に様々な影響を及ぼす力がある。
そんな声勇の心を直接震わすような澄んだ歌声と、仲間達が持つ打楽器や弦楽器など多彩な楽器によって奏でられたのは、『ディエノスの炎天回路』と呼ばれるものだった。
歌の内容は省略するとして、その効果は味方に対して【高温適応】【平常行動】【炎熱耐性】【身体強化】などを一時的に付加するモノである。
煌びやかなマイク型【神器】である【天声神之魂声機】との合わせ技により、持続時間は驚異の丸一日。普通なら数分、長くても数十分程度しか持続しない事を思えば、どれだけ凄まじいか分かるだろう。
ただ、効果範囲は歌声が聞こえる距離まで、という制限がある。
連合軍は不意の奇襲で壊滅しないように、密集せず少し間隔を空けていた事もあり、この人数だと聞き洩らす者も出たかもしれないところだが、そこで活躍するのが共勇だった。
【共振の神】の【加護】を持つ共勇は、声勇の歌声と共振――音なので共鳴という方が適切か――し、増幅させて周辺一帯に響かせる。
ある種のスピーカー、と言えばいいのだろうか。まるでライブのように、熱く激しい歌声と演奏が【鬼哭神火山】外縁部に轟いていた。
そしてその演奏の中、舞英とその配下である《踊り子紅蓮隊》五〇〇名は前方に突出し、曲に合わせて舞い踊った。
すると【鬼哭神火山】のアチコチにあるマグマの噴出や溶岩の流動が、まるで支配されたかの如く、舞英の一挙手一投足に追随して動き、紅蓮が舞い踊る。
徐々に盛り上がる声勇の歌声に合わせるように、舞英の踊りも熱く激しくなる。まるで音と一体化したような踊りには、見る者の心に訴えかける力強さがあった。
そしてそれを見た者達は、【炎舞高揚】【炎舞強身】【炎舞強心】などにより、身体能力や戦意などが大幅に増加する。
効果持続時間こそ声勇の能力に劣るものの、それでも数時間持続する各種の恩恵により、戦力は短時間で倍増した。
そうして高熱をモノともしなくなった連合軍は、全体の行軍速度も大幅に上昇した事により、破竹の勢いで中心部へと向かってくる。
時折ダンジョンモンスター達と遭遇するも、数の暴力で鎧袖一触だった。
直進してくる連合軍は、奇しくも同盟軍とほぼ同じタイミングで、溶岩壁がある区画にまで到達した。
対岸に渡る為の橋は無いし、溶岩壁の上には精製竜が巣を作っている為、飛び越える事もできない。
無事到着したところを見計らい、俺は【鬼哭神火山】の【迷宮主】であった〝灼誕竜女帝〟からラーニングしたアビリティ【迷宮警備員・主任】を使いながら床ドン。両陣営の進行方向の地面に、石版と、外装を溶岩で加工した【鬼哭門】を出現させた。
連合軍の方の石版には『最も容易な試練である。四人の【英勇】とその仲間を戦場に捧げよ。さすれば未来への橋が架かるであろう』と、同盟軍の方の石版には『最も安易な試練である。三名の【将】と千の兵士を戦場に捧げよ。さすれば未来への橋が架かるであろう』と書かれている。
しばらく相談した末、連合軍の方は聖王国の面勇と円勇と鳥英、そして帝国の牛英が選ばれて【鬼哭門】を潜り、同盟軍の方は河将と兎将と猪将、そして魔帝が選んだ千名の兵士達が【鬼哭門】を潜った。
選ばれた者達が全員潜ったところで、ズゴゴゴゴゴッ! という効果音と共にマグマの大河から溶岩製の橋がせり上がる。
それに合わせて、高熱で赤く輝く橋の先にある溶岩壁の一部が、まるで巨人に両断されたかのように道を空けた。
大規模な地形変動はある種の神秘さすら感じさせるのだろう、救聖以外の全員がしばしの間見入っていた。
ここの演出は少し凝って弄ったところなので、両陣営の反応は俺の苦労に見合うモノだった。頑張った甲斐があったというものだ。
などという個人的感想はさて置き、出現した橋を渡った両陣営は、更なる侵攻を開始する。
ちなみに【鬼哭門】を潜った者達は、団員達の為に【鬼哭水の滝壺】の四十六階に用意した狩猟場に転移し、連合軍同盟軍の区別なく攻撃を受けていた。
攻撃の内容は実にシンプルだ。
腰くらいの高さまで水が張ったすり鉢状の地形の中心に居て、まだ状況を把握できていない彼等に、その周囲を取り囲む二〇メートルほどの高台から【骨杭射小銃】や様々な系統の【魔法】を一斉に撃ち込むだけだ。
正面からぶつかっていかず、できるだけ安全に敵を屠る奇襲作戦である。
短時間で雨霰と降り注ぐ攻撃は狙い通りにハマり、数秒ごとに敵陣営の被害は拡大していく。
しかし今回の相手は雑魚ではない。
【ネルメアの獅子面】を取り付けて鋼鉄の獅子獣人のようになった面勇が、円形の特殊な双剣【円月蛇剣】を高速で振るう円勇が、【鳥停の魔笛】による旋律で多種多様な魔鳥を従える鳥英が、【アムルノア牛刀】を持って獰猛な魔牛達の先陣を走る牛英が、その力を発揮する。
あるいはヒト一人を丸呑みできそうなほど大きな口が特徴的な河将が、二本の短剣と長く鋭い刃の付いた尾で首を切り落とす戦法を得意とする兎将が、突破力に飛び抜けて優れた猪将が、魔帝国の精鋭達と共に奮闘していた。
普通なら簡単に圧殺できそうなほどの攻撃量だったのだが、予想以上の立て直しの早さと個々の戦闘能力の高さから、倒せた数は予定よりも若干少ないようだ。
まあ、まだ始まったばかり。
保険として鈍鉄騎士や秋田犬、クマ次郎やクロ三郎など【鬼乱十八戦将】も居るので、何とかしてくれるだろう。
そちらは任せるとして、溶岩壁を越えて進む連合軍と同盟軍の本隊に対し、小手調べとして複数のフィールドボス達をぶつけてみる。
俺の影響で以前よりも強化されていたものの、流石に戦力差が大きく、あっさりと負けてしまった。
だが、それにより俺は十分な情報を確保できている。フィールドボス達はちゃんと役割を全うしたと言えるだろう。
その後も細々とした戦闘を続けながら進んだ両軍は、しばらくして次なる試練に直面した。
といっても、少し巨像などを付け加えた豪華版溶岩壁とマグマ堀がまた立ち塞がっただけである。
ここでは、連合軍の方の石版には『縁ある者との試練である。【骸蟲英雄】【覇狼英雄】【岩鉄の勇者】【料理の勇者】とその仲間を戦場に捧げよ。さすれば未来への橋が架かるであろう』とあり、同盟軍の方の石版には『終焉の前の試練である。耐久力に優れた【巨鬼魔像】を見事粉砕してみせよ。さすれば未来への橋が架かるであろう』とある。
先程と同じように、指定された連合軍の四人の【英勇】は【鬼哭門】を潜って別の迷宮へと転移していく。
蟲英はヤル気満々の復讐者達の所に、狼英は熱鬼くんや風鬼さん達の所に行き、一方で岩勇達は【鬼哭の賭場】にしばらく滞在してもらう予定だ。
飯勇に関しては、本当は蟲英や狼英のように縁ある者など居ないのだが、ここで確保しておけば後々楽だろう、という事で一足先に俺の下までやってこさせた。
【鬼哭門】から出てきた直後、螺旋火山の山頂で待ち受けていた俺が何者なのかは、飯勇にもひと目で分かったようだ。一瞬だけ取り乱した飯勇だったが、即座に精神を持ち直した。伊達に経験を積んでいないらしい。
黒いコックコート型防具を纏う飯勇は、右手に包丁型【神器】である【料理神之魂包丁】を、左手に鍋型【神器】である【料理神之魂鍋】を構えた。まるでヒヨコのような丸々とした体躯と人好きのする顔立ちをしているからか、中年男性ながら飯勇には何処か可愛らしさすら感じられる。
それから、自分のものと似たデザインの白いコックコート型防具を装備した、仲間であり弟子である料理人達に指示を出した。
即座に体勢を整える様には、流石は【神器】持ちのパーティだと感心する。
それに満足しつつ、朱槍――【飢え啜る朱界の極槍】と愛用のハルバードを手に持ち、飯勇を捕らえる為に駆け出すと――
[夜天童子の【異教天罰】が発動しました]
[これにより夜天童子は敵対行動/侵攻開始を行った《異教徒/詩篇覚醒者》に対して【終末論・征服戦争】の開戦を宣言しました]
[両者の戦いが決着するまで、夜天童子の全能力は【三〇〇%】上昇します]
[特殊能力【異教天罰】は決着がつき次第解除されます]
――復讐者や水勇と戦った時と同じように、俺の脳内でアナウンスが流れた。
飛躍的に向上した身体能力を完璧に制御しつつ、飯勇達へと朱槍とハルバードを繰り出す。
そして二分も経たず……
[決着がつきました]
[特殊能力【異教天罰】は解除されます]
[夜天童子は《異教徒/詩篇覚醒者》との【終末論・征服戦争】に勝利した為、報酬が与えられます]
[夜天童子は【料理之調理具】を手に入れた!!]
生体ならば防御力を無視して切断できる【料理神之魂包丁】と、同じく生体なら防御力を無視して炒めたり煮たりできる【料理神之魂鍋】を相手にするのは少々面倒だった。が、それでも朱槍や銀腕で対処できる程度に過ぎない。
個人的にはその二つよりも、飯勇とその仲間達を殺さずに無力化する事の方がまだ苦労したくらいだ。
ともあれ、飯勇達は黄金糸でグルグルに拘束された状態で椅子に座っている。
少々反抗的な態度をとられるが、復讐者のように仲間にする為、説得を試みる。
別にわざわざそんな事をしなくてもいいのだが、気持ちよく仲間になってくれた方が後々の関係が良好になるだろう、と思っての事だ。
そんな訳で、色々と話してみた。聖王国の暗部についてとか、飯勇達の家族が今どうしているかリアルタイムでの中継とか、本当に色々だ。
すると、最初は反抗的だった飯勇達も理解できたのだろう、顔が紅潮したかと思えば蒼褪め、最後には白くなって了承してくれたのだから。
[夜天童子の【運命略奪】が発動しました]
[これにより《詩篇覚醒者/主要人物》であるセルバンテス・アルバンテスの運命が夜天童子の支配下に置かれた為、英勇詩篇〔満腹料理への道標〕は世界詩篇〔黒蝕鬼物語〕に組み込まれます]
[最上位詩篇に組み込まれた為、国家詩篇〔ルーメン〕から英勇詩篇〔満腹料理への道標〕が永久的に削除されました]
[詩篇転載の為、英勇詩篇[満腹料理への道標]の《副要人物》である称号【畜産料理長】【水産料理長】【農産料理長】【甘味料理長】【香辛料理長】保因者の【詩篇能力/特殊能力】は一時凍結されます]
[英勇詩篇〔満腹料理への道標〕の《詩篇覚醒者/主要人物》と《副要人物》の能力解放決定権は、掌握者である夜天童子に一任されました]
[以後、《詩篇覚醒者/主要人物》であるセルバンテス・アルバンテス、ならびに《副要人物》の能力解放は夜天童子の意思によって行われます]
115
お気に入りに追加
15,447
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。