98 / 257
6巻
6-2
しおりを挟む早速、訓練所でイロ腐ちゃんと対峙した。
涎を垂らして欲望に染まるイロ腐ちゃんの表情は、明らかに尋常ではない。狂気を浮かべた双眸がジッと俺を見つめてくる。
それだけならまだいいが、発散する狂気は【腐食の神の加護】の力によって物理的な力でも宿したのか、周囲に降り積もっていた雪を得体の知れない紫色の何かに変換した。
そして右手に持つ紫色の短槍の尖端から腐ったどす黒い液体が滴り、地面の雪だったモノと混じり合って、黒紫色の気体を発生させる。
まるで毒ガスのようなその気体はまるで意思があるかの如く蠢き、イロ腐ちゃんの背後に書物と筆を持つ【腐神】の幻影を発生させた。
彼女がこうなったのは、勝負に勝てば俺ができる範囲で一つだけ願いを叶える、と言った事が原因だった。
ある意味では我侭なイロ腐ちゃん。のらりくらりと俺の説得を回避するイロ腐ちゃんにイラっときて、手っ取り早くやる気にさせようと食いつきそうな餌をぶら下げてみたのだが。
正直軽率だった、と思っている。
この状態のイロ腐ちゃんは初めて見るのだが、かなりヤバそうだ。対峙するだけで身の危険すら感じる。
特に背後霊のような腐神の幻影が、ヤバい。
独自の意思でもあるのかワサワサと腕を動かし、幻影を構成している黒紫色の気体を周囲に散らしているのだが、気体に触れたモノは例外なく腐っていく。雪や地面ですら腐食し、生物が触れれば生きたまま腐っていくのだ。
そんな特殊な能力を含めても、戦闘能力だけなら俺が勝るだろう。だが、精神的なモノで圧倒されている、と言えばいいのか。
できれば戦いたくないと思ってしまうし、勝った場合は何を願う気なのか、怖すぎて聞けそうにない。
結果として、俺は勝利を収めた。
だが辛勝だった。戦闘では圧倒していたが、あの強烈な執念には流石に気圧された。
両腕両足を圧し折ったのに、身体を芋虫のように蠢かせて近づいてくる様にはある種の恐怖すら覚えた。
正確に顎を打ち抜いて脳を揺さぶったというのに、それでも動く事を止めない姿はまさにゾンビのようだった。
終わってみれば、俺は怪我の一つもしていないが、トラウマになりそうな程の心的衝撃を受けた一戦である。
今後二度と、イロ腐ちゃんと賭けはしないと心に誓った一日だった。
とまあ、過程に色々と予想外の出来事はあったが、大きな問題だった二人の説得は無事終了した。
残る細々とした問題をこれから解消し、今から数日後、俺達は王都を出発するだろう。
さて、さっさと準備を進めようか。
《二百三十日目》
今日は朝から吹雪いていた。
氷雪混じりで吹き付ける風は強く、積雪は俺が埋もれてしまう程の高さになっている。
上空が黒雲に覆われているので陽光は差し込まず、今日一日は晴れそうになかった。
天候がかなり荒れている為、外での訓練は止めておく。やろうと思えばできるだろうが、成長著しい《ソルチュード》達にも、たまには休息が必要だ。
なので今日は室内で簡単なトレーニングを終えた後、勉強させる事にした。
個人個人の考える力は大切だ。
知っている情報が多ければ多い程、いざという時の助けになるだろう。子供ながらの柔軟な思考で、俺では思いつかないような発想を提示してくれるかもしれない。
それに読み書き計算だけでなく、応急処置などの医療に関する知識は、戦いの場に身を置く俺達には絶対に必要だ。
教育らしい教育を受けていない《ソルチュード》達にとって、ここで吸収した知識は今後必ず役に立つだろう。
我が傭兵団《戦に備えよ》で働いてもらう事には変わりないが、自分の才能を自覚する切っ掛けになったり、やりたい仕事を見つける事に繋がったりするかもしれない。
それに何より、脳筋ばかりでは組織運営が面倒になっていく。
経理担当とか企画担当とか欲しいし、頭脳労働できる手駒が多い方が、俺の負担は軽くなるのだから。
勉強に励みつつ、合間合間で料理や裁縫などをする、かなりゆったりとした一日だった。
雪の日ぐらい子供達の勉強を見たり、遊んだりしながら過ごすのもイイもんだ。
《二百三十一日目》
今日は昨日から一変、快晴だ。
積もった雪だけが昨日の名残で、降り注ぐ陽光が反射されて白銀の世界が街中に広がっている。
城下街の民家に備わった煙突からは白煙が立ち上り、通りもザワザワという人々の活気に満ちていた。
肌寒いが気持ちのいい早朝、外で訓練をしていると何かの羽音と笑い声が聞こえた。
音と気配がする方を見上げれば、身長一五センチくらいの〝氷雪妖精〟達が、氷で出来た翅で軽やかに舞っていた。
翅が動く度にキラキラと舞い散る氷の鱗粉が陽光を反射し、虹色の輝きを放つ。
幻想的な光景で、思わず見蕩れてしまいそうになる。
スノーフェアリーは、王国ではこの季節にしか現れない、可憐さと凶悪さを併せ持つモンスターの一種である。
サイズさえ考慮しなければ魅力的なドレス姿の絶世の美女・美少女であるが、捕まえて観賞用に売り飛ばそうと手を出したなら、思わぬ反撃を受ける。
具体的に言えば、周囲の環境を最大限に活用する氷結能力によって全身を氷漬けにされるのだ。
身体は小さくても、環境を味方にする能力に優れる為に戦闘能力はそこそこ高いそうだ。
とはいえ手を出さなかったら何もしてこないので、出会った者も大抵は無視するか、空中で踊る姿を見て楽しむに留める。
さて俺の場合は、見ていると段々どんな味がするのか気になり始めた。とりあえず見える範囲にいた一〇匹を、指先から飛ばした糸で捕獲しようと試みる。
指先で糸を操って鳥かごを作ると、アッサリと一〇匹纏めて捕獲できた。だが拘束した糸は一瞬で凍らされ、氷の球体になったかと思った次の瞬間には砕かれた。
パラパラと欠片が落下し、積雪にボスッと埋もれる。
ふむ、どうやら思ったよりも氷結能力が強く、膂力も見た目以上にあるようだ。
なんて考察していると、捕獲しようとした事に怒ったのだろう、一〇匹は柔和な笑顔を一変させ、憤怒の表情で急降下してきた。
手には氷で造った刺突剣を握り、自分よりも大きな氷杭を無数に生成して背後に浮かべ、その尖端を俺に向ける。
殺意を漲らせる一〇匹が編隊飛行で迫るその様は、群れで狩りをする狼型モンスター〝ブラックウルフ〟を思い出させる見事なものだった。
感心しつつ、今度は重く強靭な黄金糸によって編んだ網を射出した。慌てて散開したスノーフェアリー達だが、逃す訳もなく一網打尽にする。
スノーフェアリー達は黄金糸も凍らせようともがいていたが、今度は凍らせられても壊す事まではできない様子だ。
空中に出来た氷球が重力に引かれて落下してくるのをキャッチし、銀腕で氷を砕いて、中身を取り出す。
黄金糸で全身を拘束されたスノーフェアリーが甲高い声で喚くので、ポキリと首を折って殺した後、一匹をバクリとひと口で食べてみた。
人型だが肉質は虫に近い。どことなく、大森林の芋虫を彷彿させる。濃厚でクリーミーな味わいは独特の美味さがあり、季節限定のつまみとして、かなりいいかもしれない。善は急げと集められるだけ集めた。
昼にミノ吉くん達と酒を飲んだが、迷宮酒とスノーフェアリーの相性はかなり良かった。
スノーフェアリーの数が少なかったのが不満ではあるが、しかし昼間に飲む酒は最高なので問題無い。今日はいい一日だった。
それと、王都を発つのは二日後に決まった。
明日からマッサージと岩盤浴が開始されるので、それを見届けた後に出立するのである。
外に出て、今後どんな強敵と遭遇するのか、スノーフェアリーのようにまだ食べた事のない食材に出会えるのか――色々と期待に胸を膨らませつつ、時は過ぎていった。
《二百三十二日目》
またも晴天となった今日は、マッサージ事業が本格的に開始する記念すべき日だ。
以前から本店の店舗で宣伝していたし、実際にサービス内容を体験した先日の招待客からも話が広がっていたのだろう。開店してしばらくすると、送迎用骸骨蜘蛛や自前の馬車に乗って、貴婦人や令嬢達がやって来た。
その数は思っていたよりも多く、待ち時間がだいぶ長くなったりもした。
あまり長く待たせると不満が出てくるので、意識を逸らす為に〝熊蜂〟のハチミツや大森林産果実などで作った甘味を食べられるコーナーに誘導したところ、これが思いのほか好評だった。皆、これまでに無いような甘味に舌鼓を打ち、知り合いと談笑して時間を潰していた。
全体的に満足してもらえたようで、一日の売り上げも想像を遥かに超えた。上々の滑り出しと言えよう。今後も継続できれば、かなりの儲けになるだろう。
やはり特製オイルの効果は絶大で、少なくない数の貴婦人や令嬢達が購入を希望した。だが販売するには生産量が足りないので丁重に断り、継続的に来てもらう事を勧めている。
正規品より効能の劣る量産品ならどうにかなるので、それを売り出す手もありか、と今後の事業展開の一つとして頭の隅に置いておく。
夜にはお転婆姫がお祝いに駆けつけて、また宴会となった。
大量に持ってきてくれた酒は、職人達が丹精込めて作った逸品で、銘柄によって微妙に味が異なっている。一つ一つ樽から試飲していくのにはワクワクしたし、その中から一番好みにあう銘柄を選ぶというのも、ただ飲むのとはまた違った楽しみだった。
祝いの席で、職人達がプライドにかけて仕上げた酒を飲むとあっては、やはりより一層美味く感じる。
《二百三十三日目》
今日、俺達は王都を発つ。
今回の遠征メンバーは俺と【八陣ノ鬼将】の九鬼だけだ。
赤髪ショートも行きたそうだったが、最近ハイハイをするようになった娘オプシーの世話があるし、まだ身体が本調子ではないので寒い中を遠出させる訳にはいかない。
すっかり大きくなったオーロ、アルジェント、鬼若は連れて行きたかったが、挑戦する場所が場所だ。俺達でさえ余裕があるか分からないので、確実に足手纏いになる三鬼を連れて行く事は難しい。
しかも、魔帝国にはまだ拠点が出来ていない。むしろこれから拠点を造りに行くと言っていい。それはつまり一定以上の安全が確保できていないという事で、未熟な三鬼を連れて行って何かあったら大変だ。どうにかなる程度のトラブルで済めばいいが、最悪の場合、人質に取られた挙句殺されてしまうなんて事も十分起こりうる。
だから今回は置いていく。それは他のメンバーに関しても同様だ。
イヤーカフスがあれば連絡はできるので、王都に俺がいなくてもどうにかなる。お転婆姫という協力者もいるので、あまり心配はしていない。
いよいよ出発という段になると、王都の門前には、見送りに来た居残り組に加え、お転婆姫や少年騎士、第一王妃や闇勇などの姿もあった。
悲しそうに手を振る者や、土産を頼んでくる者など、態度は様々だ。
そんな皆に見送られ、俺達は【骸骨百足】に乗って出発した。
そしてある程度進むと、周囲に誰もいない事を確認し、一旦骸骨百足から降りる。
今回はこれまでにない程の長旅になる。普通の馬車なら月単位での移動時間が必要になる距離なのだ。普通の骸骨百足でもそれなりの時間が必要だが、できるだけ時間はかけたくない。
という訳で、俺達は骸骨百足の中でも特別な個体に乗り換えたのだ。
それは最初に作った骸骨百足なのだが、時間をかけて魔改造していった結果、普通の骸骨百足の三倍近い大きさになっている。大型トラックより遥かに大きいくらいだ。普通のと区別する為、今後はこの改造機は【骸骨大百足】と呼ぶ。
骸骨大百足の内部には、快適な旅の為の様々な機能が備わっている。
人数分のベッドは勿論、調理台や冷蔵庫や洗濯機のみならず、トイレや風呂まで。ここで暮らせるどころか、一般的な民家などよりも遥かに上等なレベルの環境である。
つまり骸骨大百足は、巨大なキャンピングカーのような物、と考えてもらえればいい。もしくは変形し自走し自衛する、移動要塞といったところか。
俺達は今日一日、骸骨大百足に乗って移動し続けた。
骸骨大百足の上で調理も洗濯も排泄もできるので、これまでの旅のように定期的に止まる必要は全く無く、日中に勉強やら遊戯やらをして過ごす間、はたまた夜に寝ている間も進み続ける。
できるだけ目的地まで直線的に、障害を退けつつ踏破していく。
進行ルートにはモンスターが跋扈する森林や渓谷があり、もしかしたら道中で襲われるかもと心配していたが、そんな事は一度もなかった。
骸骨大百足の大きさと速度と見た目の異様さに圧倒されているのだろうし、車体を包み込む分体による【隠れ身】などの隠蔽工作も一役買っているのだろう。
ともあれ、これなら予想よりもずっと早く到着しそうである。
《二百三十四日目》
今日も一日走り続ける。
それはいい。
とてもいい事だ。
遠く離れた目的地まで一刻でも早く行きたいのなら、休みなく走り続けるというのは、いい事だ。
ただ、俺達は出発してから一度も止まっていない。
それは日課である訓練がやり難い、という事で、つまりそのままでは身体が鈍ってしまう。
そこで、骸骨大百足の屋根の上には訓練専用スペースが作ってあった。団員同士での組手まではできないが、ある程度の筋トレはできる、そんなスペースだ。
実際にやってみると、そこそこ気持ちが良かった。
長時間の筋トレで火照る身体も、吹き付ける寒風や雪によって丁度いい具合になる。
それに刻一刻と変わり続ける周囲の景色は、旅をしているのだという事を実感させてくれる。
筋トレ中に進んでいたのは、緩やかな高低差がある草原地帯で、骸骨大百足が前方の積雪を豪快にかき分ける様は圧巻だった。大量の雪が爆発染みた勢いで左右に吹き飛び、また跳ね上げられては後方に流れていく。舞い散る雪は、陽光を反射して煌めいた。
氷に覆われた湖の横を通った時は、湖の中心に青銀の衣を纏った美女を見かけた。あれは〝ニンフ〟とか、それ等の一種だろう。
チラッと見ただけだが、非常に絵になる美女だった。不用意に近づけば【魅了】され、最終的には干からびて死ぬ事になるに違いない。アチラもコチラに気づいたようだが、その時には既に遠く離れていた。
それから、雪で出来た〝スノーゴーレム〟に群がる〝スノーイーター〟の姿も見る事ができた。
スノーイーターは、青水晶のような身体を持つ五〇センチ程のミミズ型モンスターだ。雪ダルマにも似た姿のスノーゴーレムが蓄える魔力を主食としており、スノーゴーレム以外には襲いかからないのだが、食い終わると一定時間後に強力な氷結ガスを周囲に撒き散らす為、注意が必要だ。
撒き散らされる氷結ガスは液体窒素の如く、直接浴びるとただでは済まない。運悪く氷結ガスを浴びた犠牲者が生きたまま氷像になるケースもあるらしい。
まあ火があれば簡単に駆除できる程度のモンスターなので、気をつけてさえいれば問題は無い。
この世界にはまだまだ面白い存在がいるのだと実感しつつ、俺達は進み続けた。
《二百三十五日目》
昼頃、俺達は魔帝国の中で最も【フレムス炎竜山】に近い街――迷宮都市《ラダ・ロ・ダラ》を見下ろす丘に到着した。
正直、自分でもドン引きする程の速さである。
山があろうが川があろうが国境があろうが、とにかく何だろうがほぼ無視して一直線に進んできたとはいえ、これは流石に速すぎる。疲れ知らずのアンデッドが本領を発揮するとここまでになるのか、と自分の能力で生成したモノの成果に慄くばかりだ。
ともかく、俺達は【フレムス炎竜山】に挑戦する前の情報収集なども兼ねて、迷宮都市《ラダ・ロ・ダラ》で数日過ごす事にした。
まだ秘匿しておきたい骸骨大百足は一旦【異空間収納能力】で収納し、普通の骸骨百足に乗り換える。都市内に入るには手続きが必要らしく、門前に出来た長い行列の後ろに並ぶ。
ズラリと並んでいるのは、魔帝国の国民の大半を構成する亜人種が多く、人間が多い王国とはまた違った光景だった。
ここなら【鬼】である俺達も目立たない――なんて事は、なかった。
ミノ吉くんはデカくて派手な外見な上、常にキョロキョロと興味深そうに周囲を見ている。ただ見ているだけなのだが、彼に慣れていないと獲物を見繕っている風に見えるだろう。
それに俺達が乗る骸骨百足は、奇妙な形状である事に加え、周囲の乗り物のように飼い慣らされた獣型モンスターに牽引される訳でもなく自走している。
これだけでも目立つのだが、カナ美ちゃんやブラ里さんなど、美女揃いだ。美しさの系統の違いはあれど、皆存在感があって目を引く。
まあ、注目されるのは慣れたものだ。
降り注ぐ視線を無視し続け、自分達の番が来たら事前に入手しておいた魔帝国の通貨で入都料を払い、とうとう俺達は都市内部に足を踏み入れた。
そこに広がる街並みは、パッと見ただけでも王国との違いが目につく。
犬小屋のように小さな家屋がズラリと並んでいる一画があったり、〝巨鬼〟でも問題無く生活できそうな程の大きさを誇る家屋が並んだ一画があったりと、まず大きさからして統一感が全くない。その建材も、木材や煉瓦に始まり、何かの生成物のような見た事のないモノまで多種多様だ。
いくつもある店に王国では見られなかった料理が並び、食欲をそそる匂いがアチラコチラから漂ってくる。
興味深いので色々と見学しつつ、高級宿を見つけてチェックイン。
多少王国とは様式が異なるが、泊まるのに問題は無く、手荷物を置いた後は早速自由行動にした。
ミノ吉くんとアス江ちゃんは早速デートに行くのだろう、腕を組んで仲良く出て行った。どちらも健啖家だから、食事メインになると思われる。
ブラ里さんとスペ星さんも二鬼で出て行った。ここでしか買えない名剣魔剣の類や珍しい魔術書を求めに行ったに違いない。
セイ治くん、クギ芽ちゃん、イロ腐ちゃんは三鬼で一緒に出かけた。
ぶらぶらと歩いて適当に見て回るそうだ。両手に花のセイ治くんには嫉妬に駆られた輩が手を出してきそうだが、まあ、イロ腐ちゃんがいるから大丈夫だろう。イロ腐ちゃん、あの不気味な覚醒状態になっていなくても戦闘能力は高い方だし。むしろ嫉妬に駆られた男衆が、イロ腐ちゃんの腐手に侵されないか心配なぐらいだ。
残るは俺とカナ美ちゃんだが、二人で酒場に行く予定である。
これは、情報収集の為だ。
ご当地の銘酒を求めて、という私欲の為ではない。そう、情報収集の為なのだ。
そこら辺は間違わないように。
そんな訳で七鬼を見送り、さて自分達も出発――といきたいが、まだやる事があった。
まず右手首を切り落とし、それを材料に数体の分体を作って窓から放り投げる。分体は形状を変化させると飛行し始め、それぞれの役割を果たす為に散っていく。
欠損した右手は、迷宮酒を飲んで【補液復元】の能力を使って再生、数度動かして調子を確認しておく。
特に問題は無く、俺とカナ美ちゃんは早速酒場に繰り出した。
そこそこ上等な酒場に入ってメニューを見てみたところ、ここの酒は火酒が多いようだった。モノによっては火を近づけただけで激しく燃え上がるらしく、『火気厳禁』と壁に注意書きがされている。
注文できるモノは全て飲んでみたが、どれもこれも美味かった。
【フレムス炎竜山】では、今飲んだモノと同等かそれ以上の代物がドロップするようなので、自然と気合が入る。
晩飯は皆で集まって食べ、集めてきた情報を交換する。
初めて知る情報も多かった。明日はその情報をもとに、必要そうな道具を揃えるつもりだ。
明日の予定を立てつつ、温かいベッドに寝転んだ。
[英勇詩篇〔輝き導く戦勇の背〕の《副要人物》である称号【妖炎の魔女】【慈悲の聖女】保因者が《詩篇覚醒者/主要人物》である復讐者(シグルド・エイス・スヴェン)と出会いました]
[夜天童子の【運命略奪】が発動しました]
[これにより、【妖炎の魔女】【慈悲の聖女】の運命は夜天童子の支配下に置かれます]
[現時点で【妖炎の魔女】が覚醒状態にある事が確認されました]
[現時点で【慈悲の聖女】が覚醒状態にある事が確認されました]
[両者の凍結された能力を解除する決定権は夜天童子に有ります。
今すぐ解除しますか?
《YES》《NO》]
えー、と?
とりあえず、《NO》を選択して寝た。
49
お気に入りに追加
15,446
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。