Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐

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暗黒大陸編 3巻

暗黒大陸編 3-3

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 そこには、多くの荷馬車が行き交えそうな広場があった。
 その一角に停車し、ひと仕事終えて脱力する肉袋青年をねぎらいつつ、女商会長や店長に感想を聞いてみる。
【ゴーレムトラック】に乗ってかなり興奮気味だった女商会長曰く、馬車に乗ってくるよりも遙かに早く、かつ乗り心地もよかったらしい。
 好印象ポイントを稼げたのに満足しつつ、さっさと彼らの馬車を下ろした俺達は、鉱山夫達が集めた迷宮鉱山産の資源の積み込み作業を行っていった。
 ちなみに迷宮鉱山とは、主に天然のゴーレムなどの鉱物を採取できるダンジョンモンスターが生息する鉱山の事を言うらしい。
 危険性は普通の鉱山よりも遙かに高いが、その代わりに、出現するゴーレムの種類によっては普通に採掘するよりも利益が出しやすいという。
 なにせゴーレムは資源のかたまりである。
 岩の塊であるロックゴーレムでも、構成する岩の種類によっては高値で売れる。レアメタルで構成されたゴーレムなら更に良い値がつくそうだ。
 そして今回運ぶ資源は、重量があるものの価値の高いメタル系だ。
 運びやすいように腕や足、胴体や頭部などに分けて、ある程度ゴーレムを解体した資源入りの木箱。それが何十と積み重なっていたが、次々とリレー形式で運ぶ事で、積み込みは短時間で終わった。
 今後もっと効率良くする為に、【ゴーレムトラック】のリアドアの高さに合わせた資源集積倉庫を作る事も、視野に入れておこう。
 より楽にするなら、フォークリフト的なゴーレムをリースして配置するのも良いかもしれない。そうして荷物を手軽に運べたなら、俺達がいない時でも鉱山夫達は楽に仕事ができるだろう。
 運搬作業を見ていた女商会長に今考えた事を簡単に説明すると、アチラも乗り気になり、今後の継続的な契約を結べた。
 契約書は護衛兼秘書だったあの狼獣人が持っていたので、その場で即決だ。
【ゴーレムフォークリフト】はできるだけ早く、という注文であったので、手持ちの素材を使って三台ほど即座に製造した。
 即席だが、【ゴーレムトラック】などの製造経験もあるし、最低限の機能は確保できているはずだ。
 ただ、リースするので保管状況がどうなるか分からないし、盗難された場合も考え、【ゴーレムフォークリフト】を始動させる【ゴーレムディンプルキー】もセットで作る。
 それぞれに対応する【ゴーレムディンプルキー】を使わなければ動かないので、これを管理するだけで盗難防止になるだろう。一応、拠点から一定範囲内までしか動けなくしてあるが、保険は幾つかあるべきだ。
 三十分もせずに出来上がった【ゴーレムフォークリフト】の扱い方を説明し、実際に使う事になる鉱山夫達に運転させてみる。
 多少ぶつけたりしていたが、もし壊れても、後部の搭載した修復炉にゴーレムコアとか残骸を補充して放置しておくだけで直る。
 ここには修復材料になる素材が、それこそ売るほどあるのだから、多少手荒に扱っても問題ないだろう。
 子供が新しい玩具で遊ぶような光景をよそに、資源を運びやすくする木製パレットも幾つか作り、それを使った運搬法を拠点の責任者と女商会長達に説明した。
 昼過ぎにはここでする事も無くなったので、帰る事にする。
 その際、《リグナドロー宝石店》と《アドーラアドラ鉱物店》の馬車を中央に配置し、【ゴーレムトラック】がその前後を挟むように車列を組んだ。【ゴーレムトラック】の荷台には資源入りの木箱が満載であり、来た時のように馬車を載せられないので、自然とこうなる訳だ。
 ただ、いずれの馬車にも御者しか乗っていない。
 女商会長や店長達四人は、乗り心地のいい先頭車両の【ゴーレムトラック】に乗っている。
 その方が色々と話せるので、こちらとしても悪い話ではない。
 帰り道では、これまで資源の運搬をどうしていたかを知る事ができた。
 女商会長によると、ずっと自社の運搬部隊で運んでいたそうだ。
 ただ、それには相応にコストがかかっていた。重量に耐えられる運搬車の製造費、作業員の確保、外敵の襲撃に備えた護衛の配置などなど。
 大量に収納できて持ち運びが簡単な、収納系マジックアイテムを使った運搬方法もあるにはあるが、それらは比較的貴重な部類だ。大量に収納可能な物になればなるほど高額であり、迷宮鉱山内で鉱山夫達が使用する分も考えると、必要量を揃えるのは非常に大変である。
 となると、迷宮鉱山から都市まで運搬するのは、荷馬車などを使った方が経費を抑えられる。
 それにもし買い揃えようと思ったら、ライバル商会の横槍が入るのはもちろん、他の商会まで敵に回る可能性も出てくる。収納系マジックアイテムは欲しい者が多いから、無理に買い集めれば無用な恨みまで買ってしまうという訳だ。
 削りたいけど削れない。運搬費用は、経営者として長年頭の痛い問題だった。
 そこに登場したのが俺達だ。
 これまでよりも速く、そしてより多く運搬できるようになれば、やり方も変えられる。
 代金はそこそこするが、これまでと比べればまだ安い。
 また、安全性の高さも実演済みだ。
 たまにモンスターが襲い掛かってきても、騎獣に乗った護衛達が排除に動くよりも早く、普段は【ゴーレムトラック】の車体下部に収納されているゴーレムアームが自動的に展開。その指先にある銃口からマシンガンのように石弾を射出する。
 これは突風を生み出す魔法宝石を使った豪華仕様のエアガンであり、一種のマジックアイテムとも言えるだろうか。
 弾はその辺に転がっているし、連射速度も速いので、大抵の相手は蜂の巣になった。
 一定以上の強さを誇るモンスターには通じ難いが、その他にもまだ迎撃機構はあるので大丈夫だろう。
 最悪、【ゴーレムトラック】が正面からぶつかれば轢殺れきさつできる。
 防衛性能の高さも主張しつつ、今日の仕事は無事に終わった。
 今後とも良好な付き合いができそうで、一先ずは最良の結果になったと言えるだろう。


《四十二日目》/《百四■二■目》

 ゴーレムは金になる。
 この世界の知識にはまだまだ抜けがあるので少し不安だったが、【ゴーレムフォークリフト】のリース契約の一件から確信した。
 ゴーレムを製造できる技術者は貴重であり、かつ天然のゴーレムに似た造形で製造される事がほとんどだそうだ。
 だから【ゴーレムトラック】や【ゴーレムフォークリフト】のように、目的に応じた造形のゴーレムが活躍できる余地は大きい。
【ゴーレムフォークリフト】などは、迷宮鉱山を運営する似たような商会に売り込むのもいいだろう。簡易的に荷物を運ぶ【ゴーレムターレ】なら様々な商会が食い付くはずだ。【ゴーレムトラック】などの大型系はこちらで抑えるが、小型系ならリースやレンタル業で稼ぎやすそうである。
 運搬業の他に、太い商売の柱が出来そうな予感がした。
 とりあえず、【商会連合】が運営する巨大な中央事務所に早朝から出かけ、【元祖登録】を行う事にした。
《自由商都セクトリアード》では無数の商品が扱われている。
 その中には新商品も数えきれないほどある訳だが、売れるモノはすぐに模倣される。目ざとい商人なら売れる商品を見過ごす事はない。せっかく新商品を開発しても、成果だけ吸い取られてはどうしようもない。
 そして、中小商会は大手に対して資金など多くの面で不利である。
 商品開発には金も時間もかかるのに、大手が真似して大量生産と低価格で販売したら、開発に投資した資金の回収すら困難を極める。
 そうなると中小商会は倒産してしまうだろう。それが続けば優れた商品は生まれにくくなり、大手との格差が広がり続ける。次第に経済が膠着こうちゃくして、市場全体が衰退する事も大いにあり得る。
 そこで、【元祖登録】という制度が出来たらしい。
 新商品を登録しておけば、一定期間――数十年ほど――は他から類似商品が出ても合法的に叩き潰す事が可能になる。類似品を出したい場合は、手続きして一定の使用料を支払う事で許可される。
 特許、と考えればいいだろうか。
 今回【元祖登録】するのは、【ゴーレムフォークリフト】や【ゴーレムターレ】をはじめとする幾つかの新しいゴーレムだ。
 以前【ゴーレムトラック】を登録済みだったので、手続きにもさほど手間取る事なく、昼前には無事に済んだ。
 その後は店に帰って、【ゴーレムターレ】や【ゴーレムフォークリフト】などの小型ゴーレムを造る【小型ゴーレムプラント】の製造に着手した。
 その際、メンテナンスや作業手順の教育も兼ねて、従業員に手伝わせる。これからは各自に主力として働いてもらうのだから、自分達でできる範囲の事はできるようになってもらう必要があった。
 一応、俺の不在時でも問題がないようにマニュアルも製作する。
 防犯の観点からこのマニュアル自体もゴーレム化し、ついでに従業員を手助けできるようにヒト型にしておこう。
 アビリティをフル活用したので、夜には【小型ゴーレムプラント】が一先ず形になった。
 旅の準備も順調なので、あと数日で出発できそうだ。


《四十三日目》/《百四■三■目》

 再び迷宮鉱山に向かう二台の【ゴーレムトラック】を見送った後、広告を見て興味を惹かれたという幾つかの商会と交渉する。
 最初の相手は《レベリトーテスラ》という、《自由商都セクトリアード》から少し離れた場所にある農村を経営する中堅の食料品系商会だ。
 現在、《自由商都セクトリアード》で消費される食料の多くを供給しているのは、都市の近くにある大農場であり、その大農場の運営は大手が行っている。距離が近い分、新鮮な野菜を大量に搬入でき、価格も抑えられる。
 それに勝つ為に、《レベリトーテスラ》は珍しくて美味しい野菜を栽培しているそうだが、より新鮮なうちに運びたいと思って【ゴーレムトラック】に目をつけたらしい。
 作っている野菜を試食させてもらったが、これが美味しく、迷う事なく冷凍冷蔵機能付きの【ゴーレムトラック】による運搬契約を行った。
 ただ、冷凍冷蔵機能は冷却能力のあるマジックアイテムによるもので、トラックが大きすぎると冷却効率が悪い。
 そこで今回の【ゴーレムトラック】の大きさは四トントラックくらいに抑えたが、こちらの方が大型よりも小回りが利くので、近場での運送なら十分だろう。
 次の相手は、《家屋解体職人・トロロニン》という、家屋解体を専門に行う商会だった。
 建物の代謝も活発な《自由商都セクトリアード》において、解体業は重要な仕事だが、瓦礫がれきの運搬作業は重労働だ。
 その解決に【ゴーレムトラック】が良さそうだ、と考えてやってきたらしい。
 頼みたい仕事というのは、解体現場に赴いて瓦礫を積み、処分場など指定された場所に持っていく、という単純な内容だった。
 特に問題も無さそうなので、平ボディの【ゴーレムトラック】でも十分可能だろう。瓦礫運搬用のカスタムアームでもつければ、更に効率良く運べそうだ。
 その他にもやってきた商会は様々あるが、今はまだ様子見の感もある。頼まれた仕事を一つひとつこなしていけば、そのうち信頼も得られるだろう。客からの口コミも期待できる。
 ともあれ、まずは幾つかの用途に合わせ、従業員に一人一台くらいの【ゴーレムトラック】は用意するべきだ。
 そして毎回の仕事に合わせた機能を【ゴーレムトラック】に追加していけばいい。
 ただそうなると、大きな駐車場と【大型プラントゴーレム】が必要だ。
 今は防犯も兼ねて、【ゴーレムトラック】は《イア・デパルドス》襲撃時に得た大型の収納系マジックアイテムに入れ、大型ゴーレムは俺が直接造っているが、やはりこれは手間だ。
 明日はその辺りを解決しにいこう。


《四十四日目》/《百四■四■目》

 本店の店舗内で【小型ゴーレムプラント】が順調に稼働する。
 既に数台の【ゴーレムターレ】が完成し、隅の方に整列していた。
 それを確認した俺は、早朝から不動産屋に向かった。
 以前店舗と民家を契約したのと同じ不動産屋なので、話もさっさと進み、店舗からやや離れた場所にある道路沿いの空き家を一括払いで確保した。
 ここは以前から目を付けていた空き家の一つで、元々はどこぞの富豪の別邸だったらしい。しかし事業失敗が続いた富豪の失脚により、借金返済の一環として売りに出されていた。
 都市の中心部から少し外れた場所で、高い壁に囲われたそこそこ立派な建物と、それなりに広い庭がある。
 多少は手入れされていても少し古びた感じがいなめないが、悪くない物件だった。
 部屋の数が多いので社宅としても使えそうだし、【ゴーレムトラック】を造る大型のゴーレムプラントを設置するのにも適している。
 それには幾らか改装改築が必要になるので、仕事がない従業員を総動員し、まずは庭を平たくならして駐車場にしていった。
 邪魔な樹木を引っこ抜き、転がっている岩を動かし、水のれた噴水なども撤去する。
 一人ひとりに重機のような馬力があるので、庭はあっという間にだだっ広い駐車場に変貌した。時間にして二時間も経過していないだろう。
 ならついでに、という事で、昼食後には建物内部のリフォームに移行する。
 といっても今回は、一階にある大きなダンスホールに【大型ゴーレムプラント】を追加し、出来上がる製品を搬出しやすくする為に壁を壊したり大扉を造ったりしただけだ。
 素人が下手に大規模リフォームをすると建物の強度とかが心配になるが、床や壁などもゴーレム化する事で、防犯とか強化とか色々と簡略化できた。
 夜には一先ず形にはなった。
 まだまだ細かい改善点は残っているが、その辺りは使っている間に変えていけばいい。従業員達が暮らす部屋だって追々充実させる必要があるんだし。
 今後の事は肉袋青年とか蟻人少年達に頑張ってもらう事にして、今日は夜空の下でバーベキューを大いに楽しんだ。
 新鮮な肉に、新鮮な野菜。多種多様な酒も用意されたバーベキューは非常に楽しく、飲めや歌えやの大騒ぎ。
 うーん、やはり酒と肉は美味いもんだ。
 俺の出発は明日に決めたので、次に蟻人少年達と一緒に喰うのはしばらく先になるだろう。


《四十五日目》/《百四■五■目》

 日が昇る前の早朝。まだ少し肌寒さを感じられる、静謐せいひつなその時間。
 俺は新しい仕事場兼社宅となった屋敷の駐車場で【ゴーレムクラート】に乗り、蟻人少年や肉袋青年達に見送られながら出発した。
 一人旅でも快適なように改造した【ゴーレムクラート】が低いエンジン音を響かせ、軽快に道路を走る。
 そしてそのまま何も問題なく《自由商都セクトリアード》の外に出て、しばらく街道を進み、途中からはショートカットすべく広大な草原を駆けた。
 街道沿いは比較的安全だったが、草原はそうではなかった。
【ゴーレムクラート】の駆動音を聞いてか、モンスターが襲い掛かってくる。
 石を軽く【投擲】するだけで頭蓋に穴が開く狼型モンスターもいれば、【血抜き槍】で貫かれても止まらない象のような大型モンスターもいた。
 そんなモンスター達について新しい知識を蓄積しつつ、返り討ちにした死体は【ゴーレムクラート】の側面に備わるゴーレムアームが回収し、そのまま収納系マジックアイテムに保存する。
 戦利品の回収の為にわざわざ乗り降りしなくてもよくなったので、効率的に移動し続ける事ができた。
 俺が今回目指しているのは、《マドラレン宣教都》である。
 街道沿いなら天気に恵まれて約十日、危険だが最短距離を突っ走れる草原経由なら三、四日で到着できる。
《マドラレン宣教都》は、多種多様な宗教が集まる特殊な都市らしい。
 実際に【神々】が存在するこの世界でも、信奉する【神】によって信仰の仕方や教義などに微妙な差異がある。
 世界を創造したとされ、【神々】の源流とも言える【五大神】を信奉する最大宗教内でも、どの【大神】を頂点に置くかで解釈が異なり、派閥が出来ている。
 その他の細々とした【神々】の存在も合わせて考えれば、宗教の数が限りないくらいあるという事は簡単に想像できる。
 多彩な宗教があるのはいい。だがそれらの差違は、戦争など色々と問題に繋がる。
 また【神々】自体にも敵対関係や協力関係などの背景があるので、些細な問題でも一つ間違えば大きく燃え上がりかねない。
 しかし《マドラレン宣教都》では、最低限のルールさえ守れば、どのような信仰も自由に行えるそうだ。
 その最低限のルールというのも――
 不用意に他の宗教を愚弄ぐろうしない。
 信仰を他者に強要しない。
 暴力で訴えるのならば正規の手順と方法で。
 ――といった分かりやすいもので、信仰の自由を守りつつ、上手く共存するように出来ているそうだ。
 まあ、それでも問題がない訳ではないそうだが、行ってみなければ分からない事もあるだろう。
 それはともかく、今日の晩飯は、《雷雨草原》にいた【ゴーレムトラック】に近い大きさの黒い牛型モンスターだ。
 バチバチと激しい雷をまとい、その辺りに出没する他のモンスターと比べると明らかに大きくて強すぎる個体で、周辺のぬし的な立ち位置だったのかもしれない。
 死角から気配を消して近づき、愛用の朱槍で太い首を斬り落としたのだが、首だけになっても最後に特大の雷撃をき散らすくらいには生命力に溢れた化け物であった。
 それだけ生命力に満ちた存在の血には、ある種の力が宿るに違いない。何かの役に立ちそうだと思った俺は、傷口から溢れる大量の鮮血を【流体抽出】で複数のたるに入れていく。
 また、帯電する皮や角もぎ取り、残った肉や骨は丸ごと喰う事にした。
 熱を持つ鉄板型のマジックアイテムを取り出して、その上で肉を焼く。ジュゥゥゥゥと美味しそうな音と共に、巨大な肉塊の色がまたたく間に変わっていく。
 熱の通りがいいらしく、焼けた肉とあぶらの匂いがまた食欲を刺激した。
 その匂いに誘われて夜行性の肉食モンスターが近づいてくるが、それらは【血抜き槍】の【投擲】で頭蓋を貫いた。
 それらの死体は自動運転の【ゴーレムクラート】が回収していく。調理しているだけで明日の食材の確保も同時にできるとは、なんと効率がいいのだろうか。
 ともあれ、焼き上がった肉を喰ってみる。
 黒雷牛の焼肉をひと言で評価するなら、絶品である。
 赤身はしっかりとした噛み応えがあり、脂身は口に入れただけで溶けていく。
 また、濃厚な魔力を秘めているらしく、心臓や脳などは食べると思わず溜息ためいきが漏れるほど美味かった。
 まるで金属のように硬い骨は歯ごたえタップリで、いい刺激になった。特に頭蓋骨を噛むと感電したかのようにピリピリとするので、それがまたスパイスとなる。帯電する能力が関係していたのかもしれないが、その実力を見る前に仕留めたので詳細は分からないままだ。
 そういった疑問もあるものの、美味さの前には些事さじである。量が量なので少し時間はかかったが、それでも骨まで全て食べ尽くす事ができた。


[能力名【黒雷牛候の雷角ブルドラーク・トゥルカウ】のラーニング完了]
[能力名【黒雷牛侯の雷蹄ブルドラーク・トゥルホフ】のラーニング完了]
[能力名【雷電闘牛】のラーニング完了]


 美味い飯とアビリティのラーニング。それらを同時に得られるとは、最高の晩餐ばんさんではなかろうか。
 明日も美味い飯を喰いたいと願いつつ、半球の小さな城塞のように変形した【ゴーレムクラート】の中でぐっすりと眠る。
 少し外が騒がしかったが、特に問題なく夜は過ぎていった。


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