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第三章 迷宮商売 山海の幸を求めて編

二百二十一日目~二百五十日目のサイドストーリー

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【店長になっちゃった女武者視点:二百二十一日目】
 鶴の一言で、半強制的に店長を任されてしまいました。
 正直、この世界に来るまではそんな責任ある立場になった事はありません。
 似たようなバイトをしていたし、この世界で過ごすうちに自然と鍛えられた観察眼で他人の機微が分かるので何とかなりますが、値切り交渉などは経験不足なので四苦八苦させられました。

 コチラが慣れていない事が分かると、どんどん押してくる本業の人達による容赦ない交渉術には閉口したものです。
 揚げ足をとったり、言葉巧みにコチラを誘導するので、油断できません。反撃しますが、最初は中々上手くいきませんでした。

 『それも経験だ、失敗してもいいから出来る事を試してみろ』とは言われたのですが、交渉に押し負けて大きな損害を出してしまうとそれは私個人の問題だけでなく組織の損害に繋がるので、それが精神的重圧となって両肩にのしかかります。

 商品の品質が他の店と比べて抜きん出ているとか、私の部下に【商人】持ちがいたりとか、元々の財力が潤沢なのである程度の失敗は許容範囲内という事だけは安心材料ですが、そこで油断すればお先真っ暗です。
 
 店長になったからには責任を果たすため、気を引き締めて働かねばなりません。




 と奮起していた最初の頃と比べれば、今は心身共に余裕が出来てきました。

 振り返ってみるとまだたったの一ヶ月くらいしか経過していませんが、余裕ができたのは単なる慣れだけでなく、濃厚な業務内容によって自然と鍛えられたからです。

 なにせ私達が扱う商品が商品だけに、日が経つにつれて新規のお客さんは増えていきました。
 そうなると多くの人達と交渉する機会が増えましたし、その他の業務も色々と多くなります。すると働いている間に私も【商人】を獲得でき、その恩恵で格段に交渉などがしやすくなりました。
 するとより多数の経験を積むことができ、順調に【商人】のレベルも上昇して、さらに効率よく働けるようになる、という好循環が生まれたワケですね。

 それに加え、これまで鍛えられていた肉体の力による恩恵もありました。
 早朝の開店から夕方までの閉店後まで忙しく動き回っても少し疲れた、くらいにしか感じません。
 見かけに反してパワフルなのです、私の肉体は。

 ともあれ、努力の甲斐あって赤字を出さず、どうにかこうにか店舗を運営できています。

 ただ正直に言えば店長なんて地位ではなく、店員くらいが気楽なのですが、まあ、許されませんよね……。
 はぁ……。と溜息を一つ。
 楽しいのは楽しいんですけど、やはり店長という立場が落ち着きません。

 もっと適任の方はいないのでしょうか?
 居たらぜひ交代したいのですが。とりあえず駄目で元々、上司にイヤーカフス経由で聞いてみます。

 ダメでした。即座に却下されてしまいました。
 仕方ありません。私の要望が通るまで、店長として頑張っていきましょう。




 いらっしゃいませー。どのような商品をお探しでしょうか?
 はい、コチラの棚がそうですね。

 お客様、その商品はまだ会計されていませんね。
 駄目ですよ、支払わないと犯罪になっちゃいますからね。
 ニコリ(懐にある小太刀の柄がわずかに見える

 失礼ですがお客様、他のお客様の迷惑になりますので、コチラで詳しくオハナシ(物理)を致しましょう。
 大丈夫です、悪質でなければ明日は迎えられますからね。

 ふう。今日も一日頑張りました。



 ・慣れない管理職に悩むお年頃。
 ・それでも健気に頑張ります。
 ・将来大陸を股にかける大商人となって名を馳せるのは、まだまだ先のことであった、とか。



【とある公爵令嬢視点:二百二十七日目日目】
 今日は待ちに待った総合商会≪戦に備えよパラべラム≫の新事業、マッサージ関連業務が本格的に開始される日です。
 最近は少しマシになったとは言え気温は低く、朝晩はまだ冷え込みます。普段なら暖かい布団の中から中々出る事ができずに専属メイドのウィズに無理矢理起こされるのですが、今日はパチリと目覚めが凄くいいです。
 起こしに来たウィズが意外そうな顔をしていたのを見て、フフフンと不敵に笑ってやります。
 すると『普段からそれくらい目覚めがいいのなら苦労しないのですが』などと小言を並べられてしまいました。
 年も近く、メイドですが年上の姉のような存在であるウィズの小言は身に応えます。
 チマチマと指摘される事がまた的を射ているのも厄介なのです。
 反論したくとも、その通りだと私自身が思ってしまうからです。流石に年の功、口では勝てません。
 なんて思ってしまったのがいけなかったのでしょうか。小言は今はあまり関係ない部分にまで及んでしまいました。
 自業自得な部分もありましたが、せっかくのいい目覚めなのにケチがついた気分になり、不貞寝してしまおうかという甘い誘惑に屈したい気持ちになります。

 ですが今日の予定を思いだし、奮起します。

 一応、反省したフリをしながらベッドから這い出し、ウィズに手伝ってもらいながら着替えます。

 今日は夜会などに出るようなキッチリとしたドレスではなく、先日パラベラムで購入した、タイトな乗馬服を元にして新しく造られた上下です。
 身体に密着しているので動きやすいですし、凹凸がハッキリとしていて女性らしい体型の美しさも強調されるだけでなく、革の上着の首元や袖にはもこもことしたファーがあって可愛いので、最近徐々に流行し始めています。
 素材には特殊なモンスターの素材と技術が多数使用されているらしく、生地の厚さに反してとても暖かいので、私のお気に入りとなっています。
 このまま外に出ても問題ない暖かさにまた眠気がぶり返しましたが、用意された冷水で顔を拭って眠気を飛ばしました。
 そうしている間に寝癖のついた髪はウィズによって整えられます。

 そうして準備を終え、お祖父様と一緒に食事をします。

 お父様とお母様、そしてお祖母様は残念ながら王都の屋敷ではなく領地の屋敷にいるので、普段のように家族一緒の食事、という訳にはいきませんが、これは仕方ありません。
 先の内乱ではルービリア姫様側についた我が公爵家。
 普段は王都から離れた領地を治めていますが、流石にまだ少々乱れのある王国の事を思えば、領地にさっさと引き返す訳にもいきません。
 【勇者】の存在だけでなく、ルービリア姫様が親しくしているあの御方の存在もあるので可能性は限りなく低いのですが、馬鹿な行動に移る輩がいないとも限りません。
 そうでなくとも、やれる事はやらねば王国の貴族として責務を果たした事になりません。

 その為、王都の屋敷には再び安定するまでお祖父様が残る事となり、それにそろそろ結婚を考える年頃の私が便乗したのが現状です。

 なぜこうなったのかというと、普通、貴族ならば政略結婚が当たり前です。
 血の繋がりは決して完全なものではありませんが、あれば利害関係やら色々と有利になりますからね。
 権利を保持するのは、それはそれで大変なのです。平民や貧民が羨む貴族も、なってみないと分からない苦労は多いのです。
 政略結婚もその一つと言えるでしょう。

 ですが我が家は少々変わっていて、なんと恋愛結婚推奨なのです。
 家系を遡れば平民出の者も居ますし、少ないですが亜人の者も居ます。一応政略結婚した前例もありますが、それでも仲はとても良かったと言われています。

 ともあれ、我が家の方針は王国貴族の中では非常に珍しく、貴族以外から娶った場合には公爵家なのに汚れた血を入れている、なんて裏で言う者もいますが、そんなものはただの嫉みだと私は断言します。
 なぜなら、彼・彼女等が言う汚れた血を受け継いでいる我が家からは、優秀なものが多く輩出されているという事実があるからです。
 宰相になった者も居ますし、将軍になった者も血族にはいるのです。それに過去にはエルフの血が混じっているからか容姿はいいですし、秘めた魔力も平均して高く、身体能力も優秀なのです。
 陰口など、実力でひねり潰してきた歴史があるのです。

 まあ、色々あって気疲れする王都から離れて気楽に過ごせる領地で暮らしているのですが、そんな事情などはさて置き。

 結婚の話に戻りましょう。
 現在、残念ながら、私が好いている殿方はおりません。
 元々恋愛感情が薄いのでしょうか。興味はありますが、身も焦がれるような感情を抱いたことはこれまでの人生では一度もありませんでした。

 なので私は私個人よりも家の事を考えて政略結婚の相手を探しているのですが、公爵家ともなると、中々見合った家格の殿方が居りません。
 居たとしても公爵家に相応しい能力を秘めた殿方は少ないですし、野心家で騒乱を引き起こしそうだったり、私と歳が親子ほども離れすぎていたり、またはすでに誰かと結婚している場合ばかりです。
 私に兄や弟でもいればまた話は違うのですが、跡取りは今のところ私一人。お父様とお母様にはまだまだ頑張ってもらいたいのですが、それを待っていては私は行き遅れ確実です。

 なら妥協すればいい、と思うでしょうが、私の性分なのですから仕方ありません。
 妥協は嫌です。一生の大事ですからね。後悔はしたくありません。政略結婚とはいえ、最悪な余生は断固拒否します。
 でも行き遅れも避けたいのです。家族の目とか、領民の視線とか、心にグサッと突き刺さりますからね。

 どちらにしろこのままでは後悔しそうなので、結構焦っていたりします。

 ただ幸いにもルービリア姫様の計らいによって、いい殿方を紹介してくれる運びになりました。

 ありがたい事です。
 まだお若いのに私よりも様々な部分で優れているルービリア姫様が選ぶ相手ならば間違いないでしょう。
 なにせ、あの御方の直系ですからね。怒らせれば恐ろしいですが、味方であればこれほど心強い御方もおりません。

 それに応えるためにも、私自身を万全の状態にしなければなりませんね。

 だから、今日行く予定になっている、このオイルマッサージは必須です。
 あくまでもマッサージは女を磨く為であり、決して、決して、公爵家令嬢として様々な美容法を試している私が魅了されてしまったからではございません。

 ええ、ええ。そうですとも。
 ルービリア姫様が用意してくれる場に、万全の状態で挑む為に、私は今日を待っていたのです。
 私利私欲を満たす為ではないのです。一時の快楽に溺れるのではないのです。

 そう自分に言い聞かせます。
 そうしないと魅了されすぎて、あの快楽から抜け出せなくなりそうで怖いから、何て、露ほども思っていませんよ? ええ、思っていません。

 用意を終えて、フンスと意気込み、予約していた時刻丁度に屋敷にやって来た特徴的な外見の馬車にウィズと共に乗り込みます。
 パラベラムが用意してくれた馬車はほとんど揺れを感じない素晴らしいもので、暖かい馬車内で快適に寛ぎながら待っていると、無事に屋敷に到着しました。
 変わらず、屋敷の店舗は繁盛しているようです。品揃えの品質は極上でありながら価格は良心的として、とても流行っている店舗には特徴的な活気が満ちています。
 それを見ながら横を通り、門を抜けて馬車が敷地内に入ります。
 玄関まで送られ、ドアが開きました。冷たい空気が流れ込んできます。
 馬車内が暖かかっただけにその落差は大きく、思わず身震いしてしまいます。吐く息は白く、小走りで屋敷内に入りました。
 エルフの女性店員さんが扉を開けてくれたので、会釈しながら入ります。屋敷の中はとても暖かく、ホッとしました。
 従業員の態度もどこか気品があり、内装はとてもリラックスできるものでした。

 案内された椅子に腰掛け、サービスとして出されたホットハーブティーを頂きます。
 スーっとするような爽快感の中に混じる甘い味と匂いが合わさり、身体の中から温まるようです。追加注文した迷宮産の果実を使ったお菓子との組み合わせは無敵です。
 たまりません、頬が自然と緩みます。

 そうしている間にウィズが受付をすませてくれたのか、オイルマッサージ用の紙で造られたような特殊な服が入った籠を二つ持った店員さんと一緒にやってきました。
 今回予約していたのはオイルマッサージですからね、今着てる服は脱がなくてはいけません。着替えるのは私達の服がオイルでベタベタになるのを避けるためと、オイルマッサージは肌に直接触れる必要があるからです。
 流石に衣一つ纏わぬ裸体にはるのは色々と問題なので、それを解決するのがこの紙で造られたような服なのです。

 店員さんに案内されるまま男女で区切られた脱衣所に移動し、そこで服を着替えました。マッサージ用の服はダボッとしていますが、隠れるべき部分は隠れています。
 今日はウィズも私と一緒に受けるようにしているので、着替えた後は二人ともお互いの姿を見て、何だか新鮮な気分になりました。
 服は薄ピンク色で可愛らしいのですが、太ももが見えるほど短いズボンに、二の腕の見えるシャツ。私はだらしない普段の姿を見られているので気恥ずかしさはあまりありませんが、ウィズは違うようです。
 いつもしっかりとした佇まいですから、こうしてちょっと隙のある格好は新鮮です。
 照れくさそうに私達の脱いだ衣服を鍵付きロッカーに収納するウィズをニマニマと見やります。
 普段通りにしようとしているようですが、耳が赤くなってますね。

 せっかくの隙です。少し普段の仕返しとばかりに弄りたい気持ちが沸きますが、今回マッサージを担当してくれる方に呼ばれたので断念します。
 数少ないチャンスが、と思いながらマッサージベッドに寝転びます。

 顔の部分には穴が開いているのでそこに嵌め込むように身体を調節します。胸の部分には若干斜めになっているクッションがあるので、特に息苦しさは感じません。
 そうしているとタオルを掛けられ、少し温められたオイルが身体に塗られ始めました。

 あはー。うはー。ひはー。気持ちがいいですねー。
 オイルで塗れた肌に密着した手が滑ると言いますか、何とも表現しがたい夢心地です。



 っは、眠ってしまいました。
 気持ちよすぎて困ります。あの背中に密着する手の動きが危険です。気持ちよすぎて睡魔が襲ってきます。

 一通り終わった後は、品のいいカフェのような空間で、熊蜂の天然蜂蜜を使ったハチミツティーをいただきました。
 とても危険なので熊蜂のハチミツは滅多に手に入らないのですが、ここでは手頃な価格で購入する事が可能です。手頃といっても他と比べればなのですが、それでもその分だけの価値はあります。
 ウィズと一緒にハチミツティーを楽しみ、フルーツケーキも頂きます。

 それにしてもハチミツをこれだけ安価に、それも大量に仕入れているとなると……まさか養蜂しているのでは……いえいえ、まさか。そんな訳……ありそうですね。
 ここの商会長はあの方ですからね、可能性は十分あります。
 
 まあ、そんな事はいいのです。これを楽しめるのであれば。
 ぷはー。糖質が五臓六腑に染み渡りますね。

 ……ん? 視線を感じますが、一体どこから……。
 あ、とても素敵なエルフの殿方と目が合いました。思わず微笑を浮かべます。
 すると、向こうも笑ってくれました。思わずドキリとさせられる、本当に綺麗な笑顔です。
 鼓動の高鳴りに小首を傾げていると、エルフの殿方が近づいてきました。

 何事でしょうか? と身構えると、どうやらマッサージ部門の責任者さんだそうです。
 最初なのでまだまだ手探りな所があり、直接客と会話することで改善点を探しているのだとか。

 話してみるととても話し上手で、勤勉な方なのだという印象を受けました。
 細かいところまで気遣ってくれますし、少し話しただけで親しくなれた気がします。
 
 しばらくすると他の客のところに行ってしまいましたが、何だか達成感があります。
 今日はなんだか、とてもいい一日になりそうです。


≪後日≫
 幸せそうな笑みを浮かべ、紳士的なエルフと寄り添う公爵家令嬢の姿がとある総合商会で見かけられるようになったそうな。



 ・一時の癒し空間、世俗を忘れたい方は是非お越し下さい。
 ・女性だけでなく、男性からも幅広い支持を受け、人気が急上昇中です。
 ・マッサージの予約が既に数ヵ月先まで埋まっていますが、新人達による手頃な価格のお試しコースなら短時間ですが受ける事が可能です。
 ・新人とはいえ一定以上の実力はありますので、よければそちらもお試し下さい。
 ・ちなみに、この度良縁を結ぶ事になりましたのは総合商会≪戦に備えよ≫の後方支援部隊≪プレジャー≫に所属し、マッサージ部門総責任者となった百人長のエルフでございます。



【年経た商会長視点:二百三十三日目】
 祖父の代から続く商会を受け継いでから、早数十年。
 生まれてから百年近く過ごして来たが、思い返せば苦労の連続だった。

 私が生まれ育った迷宮都市≪ラダ・ロ・ダラ≫には様々な思惑が渦巻いている。

 尽きぬ富を齎す【派生ダンジョン】を三つも内包するだけでなく、神々が造りし【神代ダンジョン】にも近いという恵まれた立地条件。
 日々持ち込まれるドロップアイテムに加え、ダンジョンに挑む攻略者相手の商売など数多の商機が転がっているこの都市には、他の都市と比べて数倍から数十倍の金銭が日々流動している。

 一山当てれば貧民が大金持ちになる事もあれば、その逆に大金持ちが貧民に堕ちる事もある。

 その中で商会を維持し続ける事がどれほど困難だったか。

 都市の利益や利権を狙って内部だけでなく外部からも手が伸びてくる為、隙を見せれば即座に喰らいつく毒蛇のような商売敵を蹴落とし、身を守る事は生半可なモノではなかった。
 コネや話術は必須であり、時には逃げる事も、暴力を振るう事も織り交ぜねば、裏路地に転がされる事になる。

 現在は比較的落ち着いているが、苦難が多い事には変わりない。

 しかしだからこそ、今の規模にまで商会を大きく出来た事に誇りを持っている。
 迷宮都市≪ラダ・ロ・ダラ≫の中でも一、二を争うほどの地位を獲得し、日々無数の商戦を繰り広げるこの現状。
 忙しくはあるが、三人の息子と二人の娘だけでなく、多くの孫まで生まれ、血族だけでなく商会員という大家族を築く事が出来た。
 私が子供の頃は祖母も母も殺され、寂しい思いをしていただけに、こうして暖かい家族と共に汗を流せるのはとてもいい事だ。

 しかしそろそろ私も歳だ。
 隠居でもしたいと考えていた。婆さんと共に、ちょっと旅行に行くのも悪くない。

 そう思いながら事務仕事をこなしていると、厄介な商売話になった、助けて欲しい、と息子から連絡が入った。
 どうやら孫の一人が担当したが、言いくるめられ、息子に話が回り、そこでも駄目だったので私のところにきてしまったらしい。
 情けない、教育不足か、と思いつつ向かうと、そこに居たのは老執事を従えた金髪碧眼の青年実業家らしき人物だった。

 その姿を一目見た時から、私の背中に冷や汗が流れた。
 明らかに普通の客ではない。無害そうな外見とは裏腹に、中身は恐るべき何かだ。戦闘訓練などはしていないし、そもそも戦闘向きではないとはいえ、私は“魔人”である。
 鍛えずともオークやオーガなどを容易に捻り潰せるだけの力を備えている。それが魔人だ。種として大半のヒトの上に君臨している。

 しかし目の前の青年がその気になれば、気がつく間もなく私は殺されるだろう。
 まるでゴミのように呆気なく。

 そう直感するとともに、私はこれと似た雰囲気を纏う人物に覚えがあった。

 【魔帝】ヒュルトン様だ。
 あの気高き【魔帝】ヒュルトンにもこれと似た感覚を覚えた。

 ヒュルトン様の時ほど苛烈で鮮烈ではないが、しかしそれは目の前の青年が隠しているからだろう。自然と滲み出る強者の気配を抑え、普通に見えるように擬態しているのだ。

 それが余計に恐ろしい。
 孫や息子が私に助けを求めたのは、それを自覚していなくとも、何処か本能的に感じ取っていたからだろう。
 巨大な猛獣が小動物に擬態して近づいてくるようなものだ。
 恐れてしまうのは仕方あるまい。

 乱れそうになる内心が悟られないよう、表情は相手に不快感を抱かせないように微笑を浮かべる。
 それでも緊張から、普段よりも僅かに固い。
 
 それでも商談を行うと、非常に順序よく進行した。
 相手は店舗につかえる建物を探している。条件に適合したのは荒くれ者達が勝手に住み着いてしまったとある屋敷だった。
 物件としてはいいのだが、荒くれ者は最近外からやってきた攻略者で、【神代ダンジョン】である【フレムス炎竜山】に挑めるほどの実力者も居る。
 力で排除する事は可能だろうが、相応の痛手を受けるのは確実だ。
 お抱えの攻略者達と実力が大きく離れている訳でもなく、あいつ等は対人戦になれた雰囲気もあるので、無傷とはいかないだろう。

 それを踏まえた上で事情を説明すると、そこがいい、と言われた。
 自力で排除するので値下げして欲しい、とも。

 扱いに困っていたので渡りに船だった為、無事に排除できれば内装の修繕はコチラで請け負うなど条件を交わし、契約は完了した。
 今日中に排除するので、明日から工事を開始してくれ、と青年は去り際に言った。
 そんな簡単に、と思うが、可能なのだろう。
 去り際に見せた、まるで飢えた竜のような笑みにはゾッとさせられた。
 私に向けられているのではないのに、喰われる幻影が見えたのだ。

 恐るべき存在はこの広い世界にはまだまだ多いのだな、と思わずには居られない。

 
 そして翌日、修繕に向かわせた部下から報告があった。
 荒くれ者共はいなかったそうだ。常に数名から十数名が居残り続けていたのにである。
 しかも不思議な事に、残飯や衣服など生活していた面影があるのに、武具など金品の類は一切残っていなかったらしい。
 荒らされた形跡もなく、当然だが血痕などは残っていなかった。
 しかし確実に消えている。数十名いた荒くれ者達が。

 報告を受けて、ゾッとした。
 一人一人暗殺するにも限度がある。荒くれ者達の実力を考えれば、襲撃されれば高確率で気づくだろう。
 血の臭いや僅かに争う音。それだけで、アイツ等は感づく。【神代ダンジョン】に挑める者達は、そのくらいできねば瞬殺されるのだから。
 それなのに、気づかれる事なく全員消しただろうあの青年の力は、恐るべきものだ。

 一応信用できる裏専用の部下に監視させていたが、争う音は聞こえなかった、と報告が上がっている。

 ふう、と息を吐きだし、精神を整える。
 確かに恐ろしい相手だが、だからこそ友好的な相手になればいい。
 このくらい飲み込めないようでは、今までここで商売など出来はしない。
 利用しよう、とは考えない。あれは利用しようと下心があれば感づき、コチラは食い殺される。あれはそういう類の存在だ。

 ともあれ、今度最高級の酒を手土産に会いに行ってみよう。
 交わした世間話の中で、酒の話に興味を持っていたので、きっと彼は酒好きだ。

 いい飲み仲間になれればいいのだが、さて、どうなる事やら。



 ・後年、商会長は酒を手土産に私的に飲み合い、気の置けない飲み仲間となった。
 ・商売の住み分けも上手くできたので、互いの発展に協力しあうことも。
 ・商売人として大成するには、努力もそうだが、何より良き出会いが必要だ。晩年、商会長はそう言い残して他界した。



【とある火猿将視点:二百三十五日目】
 縄張りに侵入者だウッキー。
 配下を引き連れて行くと、魔人が四体に獣人が五体、それから人間が二体のパーティだったウッキー。
 ワイの縄張りに入ってくるたーふてー野郎だウッキー。
 ワイを見て慌ててるけど、もう遅いんだぞウッキー。

 溶岩柱の森の中では、ワイから逃げる何て不可能なんだぞウッキー。
 逃げ遅れた人間を棍棒で叩くぞウッキー。潰れて焼けて、いい匂いがするんだぞウッキー。
 怯えた獣人は数体纏めて口から吐いた炎で燃やすぞウッキー。火力が強くて炭になっちまったぞウッキー。
 雄叫びを上げながら突っ込んできた奴は尻尾で捕まえて、四肢を引きちぎってやったぞウッキー。
 水氷系統魔術を放ってきた奴がいたので回避して、ムカついたから胴体に噛み付いて生きたまま内臓を食ってやったぞウッキー。雌だったのか、柔らかくて美味いぞウッキー。
 残りはバラバラに逃げ出したから、配下に逃げた奴らを追いかけさせて足に怪我させたぞウッキー。
 後は冷えた溶岩を投げつければ終わりだウッキー。中々しぶとかったけど、攻撃の届かないところから一方的にぶち殺したぞウッキー。
 無傷での勝利だぞう、ウキーウキー。
 今回も弱い奴らだったぞ、ウキー。
 縄張りに入ってくる奴らは全員ぶち殺すんだぞウッキー。それがワイの役割だぞウッキー。

 ウッキーウッキー。また侵入者がやって来たんだぞ、ウッキー。
 ワイの感覚は遠くまで届いているんだぞウッキー。誤魔化せるなんて思うのは、間抜けな奴らだぞウッキー。
 まだ縄張りに入ってないけど、殆ど入っているようなものだし、今日の調子はいいから張り切っていくんだぞウッキー。

 ウキーウキー。
 今度の奴らは鬼が九体もいるぞウッキー。
 強そうなのが多いぞウッキー。さっきのよりも格段に強いぞウッキー。でも関係ないぞウッキー。
 ウキキキキキキキキキキキーッ!!
 溶岩柱が壊れてしまうほど咆哮を上げて飛びかかったぞウッキー。
 棍棒でぶち潰して、燃やしてやるんだぞウッキー。

 でも、あれだぞウッキー? 身体が空中で止まっちまったぞウッキー。
 なんでだウッキー? どうなってるんだウキー?

 あれ、何だか光っ……


 ・合体攻撃【滅撃・八鬼殲陣】初の被害者。
 ・本来は地形による恩恵もあり、連続で多角的な攻撃を行ってくる強敵。
 ・一般ではまずこいつを倒せるかどうかで評価が大きく変わる、第一の難関フィールドボスとして知られる。
 ・攻略者の大半はここで詰む。群れで襲ってくる事も難易度を大幅に上げる要因である。
 ・それだけに本編では一撃でアッサリと倒され、印象の薄い存在となってしまった可哀想な子でもある。



【???視点:二百四十四・二百四十五日目】
 ごく最近、偉大なる【大神】――【終焉と根源を司る大神】様が加護を与えた、という噂が出回った。
 偉大なる【終焉と根源を司る大神】様が加護を与えるなど、これまでの長き間、数えられる程度しかない。
 そんな珍事にザワめき、情報を得ようと普段は干渉しない者達とも情報を交わすようになった。

 それは単純な興味もあるが、何より強いのは保身の為でもある。

 何せ、【終焉と根源を司る大神】様の加護を持つような存在は同格である【神】や格下の【亜神】と比べるまでもなく強い。
 種族によって強さは異なるものの、脅威となるのは間違いない。

 無論、関わりがないのならばそれでも問題はない。
 だが、もし選んだ【詩篇覚醒者】が、あるいは保有する【神代ダンジョン】に攻め込まれた場合、それは今までとは桁違いの危機が迫る、という事だ。

 不安の中、普段以上に下界の様子を見守っていると、見つけてしまった。
 私の【神代ダンジョン】――【フレムス炎竜山】に向かう、黒い鬼人に率いられた集団を。

 見つけてしまったあの時の思いは、表現し難いものだった。
 ハラハラと見守る事しかできず、固唾を飲んで状況の変動を見続ける。

 そして正直な感想を言えば、もうどうしようもない、そう言うしかなかった。
 これまでの長い年月、私の【フレムス炎竜山】は膨大な【信仰】を集めてくれた。
 それにより私の【神力】は高まり続け、限りなく最上位に近い場所にまで上り詰めている。

 だが、その【フレムス炎竜山】は今、理不尽極まりない黒鬼によって攻略されていた。
 確かに率いる仲間は強いのだろう。見てきた中でも、驚愕すべき水準である。

 しかし、黒鬼の理不尽さには適わない。
 ダンジョンボスとした灼誕竜女帝は世界でも有数の強さを誇っている。
 種族だけでなく血統も非常によく、【フレムス炎竜山】による恩恵でより強化されている。
 その巨躯はまるで小山のようであり、秘めた能力は地形を容易く変えるほど。
 実際、黒鬼も灼誕竜女帝に致命傷を幾度も受けていた。

 だというのに、黒鬼は幾度となく復活する。
 全身をブレスで消失させられたり、竜爪で身体をバラバラにされたりしても、復元し続けた。
 意味が分からない。
 似たような事ができる存在は確かに存在する。だが、それでも限度というものがあるし、何より種族的能力などでは説明できない膨大な能力を使いこなしている。

 灼誕竜女帝は奮闘してくれた。
 初めて自分の下に辿りついた黒鬼に対し、全力を振り絞った。
 しかし、それもやがて終わった。黒鬼を殺し尽くす事ができず、仲間との合流を許してしまったのだ。

 そして私は【神力】を奪われた。
 【詩篇覚醒者】に迷宮を攻略されれば、相応の【神力】が奪われるのは決まりごとである。
 残念ではあるが、それでも総量からすれば十分許容範囲内ではあった。

 そこまではいい。私も納得できる。
 しかし問題はそこから先だ。
 なんと、【フレムス炎竜山】が、私が手塩にかけて育ててきた【神代ダンジョン】が、溜め込んでいた【神力】ごと黒鬼に奪われた。
 慌てて調べた結果、総量の一割程度の【神力】は継続的に得ることは出来るようだ。
 まるで家賃やレンタル料だとでも言うように、完全に奪われた訳ではないのかもしれない。

 取り返す事は、恐らくできないだろう。
 最早、諦めるしかない。一応、一割は流れてくるのだから、よしとしなければならないのかもしれない。
 しかしそれでも、当初と比べれば三分の一近くも削られた【神力】に、ゾッとする。
 もし蓄積していなければ、私は【亜神】に堕ちていた事も考えられるからだ。
 
 間違いない、黒鬼が存在する限り、激動の時代が来る。
 黒鬼に喰われた【詩篇覚醒者】が、【神代ダンジョン】が増えるほど下界の騒乱も大きくなるだろうが、その裏で多くの【亜神】が零落し、【堕神】となるのかもしれない。
 
 そうなればどうなるのだろうか。
 気になるが、現状なら例え【詩篇覚醒者】を殺されても【亜神】にまで零落する心配がない私は、高みの見物とさせてもらうとしよう。
 あの黒鬼にはやられたが、最悪ではない。
 今はせめて、永久の中に生じた一時の娯楽に興じるとしよう。

 新たに生まれた【世界の宿敵・飽く無き暴食】は、どのように世界を食い荒らすのだろうか。
 私の【神力】を奪ったのだ、せいぜい暴れて、楽しませてもらわねば、割にあわぬ。


 ・略奪しても、根幹が造った【神々】由来なので、集まる【神力】の一部が流れます。
 ・色々諦めた結果、???は傍観者となった。
 ・とりあえず、黒鬼に【詩篇覚醒者】を近づけさせないように誓うのだった。



【???視点:???年前】
 ダルい。
 疲れた。
 動きたくない。
 ダルい。
 疲れた。
 動きたくない。

 このままボーッとしていたいのに、羽虫がウロチョロウロチョロと……。

 ああ、ダルい。
 いっそみんな、死ねばいいのに……。
 
 ……【怠惰なる世界】、発動。




 ・【???】が討伐されました、
 ・一定範囲内の生物は死滅しました。
 ・達成報酬として、各種アイテムが贈呈されます。
 ・これは過去の出来事です。
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