宇宙の騎士の物語

荻原早稀

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第二章 騎士団

3. 異動

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 いびらなくてよかった。
 多くの兵士や下士官がそう思ったに違いない。
 クリシュナ・ゴーシュ曹長も、いびった記憶はないがそう思わざるを得ない。
 あんだけなついてくれてたんだし、大丈夫だよね?
「イヴリーヌの死天使」がゲリラ相手に大暴れした件は、特に問題にはなっていない。小隊長が一人で敵中に飛び込むなど尋常ではない話で、普通なら処分の対象だが、「ゲリラが明確に敵対行動を取っており、傷病者の受け入れに対する障害にもなっていた」こと、「ドゥ・プレジール少尉の装備や状態、実力を鑑みて、無謀とはいえない」ことなどが理由として挙げられた。
 無謀とはいえないって、ちょっと待て。
 とクリシュナは思わないでもない。確かに一人でゲリラを壊滅させた上に無傷でピンピンしていたが、それって結果論じゃないのかね。
 などと思いつつ、問題ないという判断ならそれはそれで結構だった。なにしろ、小隊長に単独行を許したクリシュナも処罰の対象になる可能性が高かったのだから。
 エステルが規格外の力の持ち主であることは、もちろん小隊の誰もが知っていたし、この騎士団にその手の異能がわんさかいることも当然ながら誰もが知っている。だが、ここまで本人が全く自身の異能をアピールも誇りもせずに来たから、周囲は実態を把握できていなかった。
 いびって、いびり倒して、ある日突然逆襲を喰らえば、小隊が殲滅されていただろう。
 最近話題の黒髪の副団長、あの強烈極まりない美人幹部は、出自も特別だが異能もぶっちぎっているという話だし、いびってきた複数の異能持ち相手に合法的な報復をして一度に半殺しにしたともいう。異能持ちが多い組織というのは恐ろしい。


「『死天使』とはまた、派手な二つ名が与えられたものだな」
 エステルに奉られた二つ名を聞き、本人の目の前にいる幹部が笑った。
「少尉のうちに二つ名付きというのは名誉なことだ。付けたのが部下や兵士だというなら尚更な」
 ドームに派遣された病院や護衛部隊など、すべてを取りまとめている少佐だ。本人がその二つ名に納得が行っているわけではないらしいことを知っていての言葉だ。
「いささかならず不本意な響きと申しますか」
「二つ名とはそういうものだ。誰も反論してくれない『狂気のオレンジ』だの、無表情ゆえの『鉄仮面』だのよりはマシだろう?」
 まあ、確かに。
 遙か上席の副団長たちに対し失礼ではあるが、その辺りよりはまともな気がしないでもない。少なくとも天使という美しい表現が基になっているわけだし。
 本人の意向が反映されるような二つ名など、名誉でも何でもない。周囲がやむにやまれず付けるようでなくてはならない。エステルは少なくとも自称しようという気は欠片も無いのだから、一応名誉な名だと思って良いのだろう。
「さて、本題だが」
 事務官僚出身という割に、その辺の兵士など平気で殴り飛ばしてのしてしまいそうな、異様な迫力のある男だ。
「ドゥ・プレジール中尉の異動が決まった。病院研修はこれで切り上げだそうだ」
 その男から聞き慣れない階級で呼ばれたエステルが、一瞬ポカンとした。
 とっさに反応できないエステルの顔を見て、わずかに得意げな顔をした少佐に気付き、一緒に出頭していたクリシュナはそのドヤ顔にいらっときたようだ。
「士官教育の課程終了後、各種実地研修を積みつつ一年半から二年で自動的に中尉に昇進するのは当然のことですが、少々病院から離すのが早すぎはしませんか」
 せいぜい姿勢を正しながら、わざとらしくない程度に大きな通る声で尋ねる。
 士官学校出は、大抵どこの軍でも一年から二年で中尉に自動昇進するものだ。フェイレイ・ルース騎士団の場合、実地研修する場所が軍の他にもあり、特に病院研修は全団員の義務だったから、一年では昇進できない。
 それでも、クリシュナのいうとおり、それぞれのタイミングがあるから多少はズレるにしても、一年半から二年で大体は中尉に昇進する。
 病院研修が一月強で終わるというのは異例だったし、それに合わせて中尉昇進というのも、おかしいというほどではないが普通ではない。
「今回の件を面白がっている上級騎士がいらっしゃる。早く本格的な活躍をご覧になりたいそうだよ」
 少佐はわずかな笑顔を収めてしまったが、いっている内容がおかしい。
「おもしろ……そんな理由ですか」
 少佐の前にエステルが気を付けをして立ち、その斜め後ろにクリシュナが気を付けをして立っているのだが、エステル越しの会話が続く。
「重大な理由だ。抜擢なのだから。そのような理由だと伝えるように、という指示は少々いかがなものかとは思うがね」
 クリシュナは面食らっている。時々ふざけた組織だと思うこともあるが、これもなかなかふざけている。
「異能レベルの基力を持つ人間を遊ばせておく余裕は我々には無い。もともと中尉はギアパイロット志望で、その訓練も受けている。少々予定は前倒しになったが、ゴーシュ少尉とともに再訓練の後、任地に再配属されることになるだろう」
 もう一発、少佐が弾丸を飛ばしてきた。
 この連射はクリシュナも受け止めきれなかった。
「……小官が、なんと?」
「少尉も、昇進と配置換えだ。おめでとう」
 少佐が片頬だけで笑う。わざとだろう。そういう顔を作れる場面が来て、うれしいのに違いない。
 まんまと乗っけられたクリシュナは、うかうかと乗ってしまったことに屈辱と怒りを感じていたが、あえてしれっと流す。
「ありがとうございます。小官はさしたる異能も実績も持っておらぬ身、昇進など恐れ多いことでありますが」
「君の狙撃能力が群を抜いていることは周知の事実だ。卑下することはない。ついでに、中尉もよく見知った仲の君が共に再訓練に行くとなれば心強いだろう。たとえ病院勤務が始まってからの一ヶ月の付き合いだとしてもね」
「小官は中尉殿のおまけであると、了解すればよろしいでしょうか」
「皮肉をいうな。君の能力はとっくに上層部の知るところだ、いずれは士官に引き上げようという話は出ていた。今回の件はたまたまタイミングが重なっただけのことだよ」
 フェイレイ・ルース騎士団の階級制度では、兵士の上に立ち「班」や「分隊」を指揮する下級幹部である下士官は「伍長」「軍曹」「曹長」と昇進していく。このあたり、国や軍事組織によって色々差がある。
 騎士団の場合、比較的階級の数は少ない。
 伍長はどちらかというと兵士の中の年長者、的な位置にあるもの。軍曹は一等から三等まである。騎士団のように傭兵として様々な場所に様々な立場で出向く場合、班単位のリーダーを任されることが多くなる軍曹を身分上細分化し、整理しやすくしただけだといわれる。
 曹長は、部隊によって上級曹長や特務曹長という階級もあるが、クリシュナたち一般的な歩兵の場合は細分化されず、下士官のトップは曹長である。
 士官と下士官の間に「准尉」という階級を設ける軍も多いが、騎士団は設けない。なので、曹長のすぐ上が「少尉」だった。
 クリシュナは、突然「下士官」身分から「士官」身分に上がってしまったことになる。
 エステルが少尉から中尉に上がったのとは、わけが違う。
 騎士、と呼ばれる身分の仲間入りを果たしたということなのだから。
 世が世なら、貴族階級に片足を突っ込んだということになる。
「このとおり、辞令はすでに出ている」
 と、少佐が机の上に階級章と身分証カードを出した。これが出てきたということは、書類上では既に「エステル・ドゥ・プレジール中尉」と「クリシュナ・ゴーシュ少尉」が誕生している。
「中尉、少尉、ともに騎士団の誇りを体現する士官になってもらいたい。今後の活躍を期待している。とはいえ」
 少佐が立ち上がる。
「才能あふれる両名のことだ、色々な方面から色々と期待されるだろうが、あまり気負わんことだ。戦場にだけは不自由しない職場なのだから、死に急がず、生き抜け」
 そういうと、踵を鳴らし、握った右手の拳を左肩に当てる騎士団式の敬礼をした。
 エステルとクリシュナも敬礼を行う。
「ありがとうございます。肝に銘じます」
 上官であるエステルが先に挨拶を口にする。クリシュナはエステルがいい切った語尾から一拍置き、
「お世話になりました。少佐もどうぞご自愛ください」
 頭一つエステルより高い背を真っすぐ伸ばし、笑顔とともにいった。いたずらごころのあるこの上司のことは、嫌いではなかったのだ。


 再訓練は、騎士団の本拠地である都市ヴェネティゼータ郊外にある施設で行われる。
 標準星間航法、という航法で、二週間ほどかかる。
 他の帰還スタッフたちとともに騎士団所属の人員輸送艦に乗り込んだ二人は、艦内では特に任務もないから、時間だけはある。その時間を、再訓練担当官からの指示で、学習と体作りに充てていた。
 これがなかなかきつい。
 騎士団にも色々な職種があり、兵種があるから、トレーニングメニューも様々だ。その中でも特に厳しくて有名なのがギアパイロット用のトレーニングで、この辺りは昔の「騎兵」だの「戦闘機パイロット」などと同じだ。花形兵種の訓練は、大概厳しい。
 艦内には各種トレーニングを行うためのトレーニング室が複数あって、そのうちの一つがパイロット系職種専門に調整されていた。
 かなり強い異能の力の持ち主であるエステルも、基礎トレーニングはそれを使わずに行う。彼女ほどではないが異能の持ち主であるクリシュナはというと、彼女の異能は肉体的な強化の方向にはほとんど出ていないため、使っても使わなくても大して変わらない。
 宇宙空間でも、トレーニング設備は有重力に設定するのが基本だ。騎士団は無重力空間での任務をほとんど行わないこともあるからだが、重力は地球重力を一として二割から三割増しに設定する。艦内の慣性重力ブロックを使うので、設定自体は何も難しくない。
 さらに酸素濃度も薄めにする場合が多いから、そもそもその空間にいるだけで相当苦しい。
 騎士団で一三年の経験があるクリシュナも、艦内トレーニングは結構きつい。騎士団標準のメニューは、マシントレーニングなどを行って体をいじめた後に、近接戦闘用の格闘戦技訓練や、剣技訓練、重装備を身に付けての長距離マシンランニングなどを行うのだが、まともに標準プログラムに取り組むと途中で吐くレベルだ。
 男性兵士を基準に作られているのだから、体力的な性差が無くなったわけではない以上、女性の体にはきつくて当然といえる。
「も、む、り」
 マシンランニング後、息も絶え絶えになったクリシュナがぶっ倒れたままあえいでいる。全身汗まみれ、浅黒い肌からはあまりの疲労で血の気が失せている。
 その隣で激しい息をしているのは、アルビノの白い肌に血の色を浮かべ、色素の薄い瞳がダメージを受けないようコンタクトレンズを入れたままにしているエステル。彼女は倒れることも無く、クリシュナには信じがたいことに、腰を上げたり下げたりして重心の位置を変えながら、格闘技の型をじっくりと繰り返していた。
「なん、で、うご、ける……」
 後輩とはいえ上官相手なのだが、クリシュナは敬語表現を使う余裕もない。
「そういう鍛え方をしているからですよ、先輩」
 二人しかいないときには、階級は関係なく、先輩後輩の仲になる。エステルが病院研修で赴任してきて以来だから付き合いは新しいが、人生に深く根付くような体験を何度もした濃密な時間の中で、相性も良かったのだろう、二人はごく自然に友人になっていた。
「メディアの貴族で基力を持って生まれたら、常人離れした研鑽を積むのが当たり前なんです。そうしないと社交界にも立てないから」
「……まあ、聞いた、ことは、ある」
「貴族に生まれたらノブレス・オブリージュ、尊き義務を果たすのは最低限の義務ですし、特にメディアはそういうのが大好きな国民性でして」
 列強諸国の中でも特に大きな国家を超大国というが、メディア帝国はその一つ。歴史は列強の中でも特に古く、国力も最大級、星間条約機構という宇宙最大の政府間組織の共用語のひとつとしてメディア語が採用されているほどだ。
 イヴリーヌ伯爵家はそのメディア帝国帝室とも血の繋がりを持つ、本国の宮廷伯。メディア貴族のど真ん中にいる。よくこんな場末の騎士団に、と呆れたくなるようなご令嬢の中のご令嬢だ。
 そのご令嬢本人がそういうのだから、メディア貴族のノブレス・オブリージュ(高貴な者の義務)好きは相当なのだろう。
「やせ我慢もいいところですけれど、令嬢淑女にも例外はありません。何でも良いので社会に貢献する能力を磨けないような愚物や穀潰しは、貴族として生きるに足りない半端者として侮蔑されるだけなんですよ。そう見られたくなければ、頑張るしかない」
 口調も顔も淡々としていて、特にわだかまりやコンプレックスがあるようにも感じられない。型の動きにも迷いは見られない。彼女は頑張ってきた人間で、成果も出しつつある。卑屈になる要素は無いのだろう。
 その舞踊のように美しい、研ぎ澄まされた動きの型を見ていると、お貴族様ってのは美々しい動きが出来るようにブログラミングされて生まれてくるのかね、と下らないことを考えてしまう。
 酸素が足りてないからだ、と、低酸素環境の中で肺が求めるままに荒い呼吸を繰り返すクリシュナは思った。
 同性に対して特別な思い入れを持ったことは一度も無いクリシュナでも、一瞬見惚れたり、切なさを感じたりすることもある程度には、エステルは美しい。目に見える形だけではない、身分に裏打ちされた内面だけでもない、儚さと強靭さが入り組んだ美しさだ。
 色素異常の体質で体内のメラニン量が少ないエステルは、瞳の色素も少ないためにその中の血の色が透け、虹彩が赤い。
 その瞳が見たい、と不意にクリシュナは思ったが、サングラス代わりのコンタクトレンズが無ければ世界がまぶしすぎるエステルにとって、それを取るタイミングは薄暗くした自室の中くらいのものだ。
 訓練の間は無理だな、と諦める。


 訓練は体を使うものだけではなく、座学もある。
 あらかじめ録画されたもの、AIにより自動作成されたもの、実戦データを編集したもの、様々なものを見ながら、机上演習を行ったり、テストを受けたりする。
 その量が凄まじい。
「完全に寝せない気だな、これ……」
 尉官昇進ともなると、星間条約機構が定める戦時法規のすべてを把握(さすがに記憶ではない)する必要があるし、その運用に間違いが起きないよう、様々な関連の判例などにも目を通す必要がある。
 移動中の二週間やそこらで身に着くものではないが、やらなければ何一つ覚えられない。訓練後にこれを見ると吐き気を催すが。
 そこに加えて、現在配備が進んでいるギアの操縦系についても、最低限学んでおかなければならない。
「中尉は新しいギアをご存知と伺いましたが」
 他に人がいる演習室で、クリシュナが問う。エステルの白い肌の奥から透けて見えるほのかな血の赤みがきれいだな、と思う。
「私が士官課程に入った時点で、ギアの訓練はすべて新型を基準に行われていたから」
 エステルも、人がいるときには上官としての口調になる。その切り替えは、さすがに貴族令嬢だけあって少しも違和感がない。
「少尉は新型機は触れる機会がなかったのか?」
「小官が騎兵から離れたすぐ後に機種切り替えが始まったものですから」
「ということは、少尉は五年前に騎兵から歩兵に?」
「はい。一等軍曹昇格時に儀礼兵に異動になりまして。二年もしたらお役御免になったのですが、そのままなんとなく歩兵を続けていました」
「ああ、儀礼兵出身なのね。わかる気がする」
 エステルが微笑んだ。手にはコーヒーカップがあり、休憩中の柔らかい雰囲気が漂っている。
 儀礼兵は貴族制度が残る国に雇われた時にどうしても必要になる兵種で、騎士団幹部や他国の高官などの護衛と世話を行う事が多い。騎士団には侍女や侍従を雇うという発想が無いため、あまり無骨ではない、見た目がよろしく頭も機敏に働く兵士を見繕って、儀礼を仕込んでそのように仕立てる。
 クリシュナはエステルと違い、どこまで遡っても貴族とは縁のない共和制国家の生まれであり、ついでに金持ちとも縁がなかったから、べつに典礼儀礼のたぐいが得意というわけではない。ただ、品の良い顔立ちと筋肉が付きすぎないスラリとした体、順応性が高く柔らかな物腰の持ち主で、儀礼兵にはもってこいだった。
 お役御免、とクリシュナは表現したが、なにか失態があったというわけではなく、彼女のような優秀な下士官をいつまでも「なんちゃって宮廷」になど置いておくな、という意見があったからだ。
「離れている間はすこしもギアに触れていませんでしたから、少々不安です」
「それほど操縦系に根本的な差があるわけではないと思うけれど。今開発が進んでいる機体は、完全に別設計だからかなり変わると噂されているみたいね」
 騎士団がレイ・ヴァン・ネイエヴェール率いる銀行団によって買収された当時の異様な空気を、クリシュナはよく覚えている。商人風情が騎士団運営の根幹に関わってくるなど正気か、と殺気立った先輩諸氏の言葉も覚えている。
 今となっては、武骨であまり見栄えが良くはないが、機能性と整備性の高さがピカイチで戦場での扱いやすさは極上、と評されるこのギアを悪くいう者はほぼいない。某女性副団長がぶーぶー文句をいっているらしいが。
「パイロットへのサポートはずいぶん進化しているらしいから、前の機体よりずっと扱いやすいと聞くわ。前の機体を触っていないから、私はなんともいえないのだけれど」
「仮想投影の訓練で操縦系の動作は覚えられますが、慣性が効いた状態で体に覚え込ませないと、なかなか反射的な動きは馴染まないんですよね」
 ヴァーチャルな体感によって訓練を行うパイロット用シミュレータはもちろんあるが、体感覚に関する限りは実機の訓練に勝るものではない。
「ヴェネティゼータに戻れば吐くほど乗せられるでしょう」
「その前に少しは勘を取り戻したいんですがね」
 体を使った厳しい訓練後の座学に、クリシュナはひどく体がだるい。言葉が溜息がちになるのも無理はなかった。
 ついでにいえば、体を使い倒したあとに浴びるはずだったシャワーも浴びられず、胃が受け付けなかったおかげで昼食も取れなかったために、自分の汗臭さと肌の不快さと空腹の三重苦に蝕まれており、機嫌がよろしいとは到底いえない状態だった。
 その微妙な気怠さ漂う雰囲気と、つい最近まで「天使」と呼ばれていたエステルの麗々しさとが並ぶと、本人たちがどう思っていようと、第三者からは非常に眼福な光景になる。
 実際は、汗臭いわ、くたびれ果てているわ、なんか愚痴しかいってない気がするわで、美しさとは程遠いのだが。
 美女二人が談笑する、むさくるしい軍艦の中とは思えない、花を背負ったようなうるわしい光景は、しばらく乗員たちの語り草となるのであった。
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