上 下
70 / 71
第五章 本当の農地復興

70. 本当の農地復興

しおりを挟む
 それから僕たちは破魔の馬鈴花の導きに従い邪神の木の伐採を続けていった。
 邪神の木の場所を特定するには破魔の馬鈴花が必要になるので正直ペースは速くない。
 2本目であるエルフ女王国の邪神の木の場所を特定できたのはドワーフ帝国の邪神の木を伐採した3か月後だ。
 それでも2輪目の破魔の馬鈴花を手に入れた僕たちは別々の場所で邪神の木を探すことが出来るようになったんだ。
 この調子で邪神の木を伐採するたびペースが上がりほとんどの国で邪神の木の伐採が完了、農地もだんだんと活力を取り戻し作物の収穫量も上がっていった。
 そうなると問題なのが……。

「人間族国家の邪神の木、ですよにゃ」

「うーん、正面から交渉して邪神の木を探させてもらうことは?」

「多分無理でしょうにゃ。人間族国家は短命種である自分たちこそもっとも神に愛された種族であり、長命種は神に見放された種族であり人間族より格下である、とする宗教がはびこっていますにゃ。正面から行っても交渉になりませんにゃ」

「でも、大地に活力が戻れば作物だって……」

「格下である長命種から奪い取れば、いえ、献上させればいいと考えるでしょうにゃ。おそらく、いまごろ活力の戻った土地を奪い取るために戦争の準備でもしてるはずですにゃ」

「いくらなんでもそこまで……」

「いえ、本当ですニャ」

「クーオ?」

「私が独自の情報網で調べた結果、人間族国家はどこも再び戦争の準備をしていますニャ。信頼できる情報源……といいますか、各地にいる妖精族から得た情報ですので待ちがいないのニャ」

 なんというか、呆れた。
 自分たちが豊かになるためにはただ奪い取ればいいだなんて。
 人間族も協力して邪神の木を伐採させてくれれば大地の活力が戻ってくるのに。

「まあ、仕方がない側面もあるのですにゃ。人間族は短命種、結果がすぐにほしいのですにゃ。なので、あるところから奪えばいいという短絡的な思考にも陥りがちなのですにゃ」

「そうは言っても……この情報って人間族国家の周辺国家には?」

「もう伝えてありますニャ。でも、伝えるまでもなくどの国家も知っていましたニャ。周辺国家の同盟国からも援軍が来ていて迎え撃つ準備は万端ですニャ」

「……それって、人間族国家にはまた勝ち目はないよね?」

「そもそも戦には食糧の供給が不可欠にゃ。食べなければ力が出ませんのにゃ」

「人間族国家では一部の地域でしかジャガイモによる農地復興をしなかったのニャ。食糧が足りるはずもありませんニャ」

 うーん、どうすればいいんだろう。
 でも、為政者じゃない僕たちが考えてもどうにもならないことだし、人間族国家の邪神の木は勝手に場所を特定して伐採してしまおう。
 そうしないと本当の農地復興にはならないからね。
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

魔王を倒したので砂漠でも緑化しようかと思う

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:398pt お気に入り:29

ある日、王子様を踏んでしまいました。ええ、両足で、です。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:1,381

マイペース、護衛と共に異世界へ行く

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:32

逆ざまぁされ要員な僕でもいつか平穏に暮らせますか?

BL / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:350

処理中です...