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第四章 『地中の果実』

59. ドワーフ帝国とエルフ女王国の境目にある領地の扱い

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 エルフ女王国と獣人帝国との交渉はつつがなく進んだ。
 両国家ともこれから雪が降る季節ということでジャガイモ栽培は来年からだ。
 代わりに各農村などへのジャガイモ配給を行うことになった。
 僕の『農業機器』の中に『輸送用トラック』と『輸送用コンテナ』が増えていたんだ。
 しかも輸送用コンテナは冷蔵機能もあり、何台でも呼び出せる優れもの。
 輸送用コンテナにジャガイモを詰めて各村に配り、冬を越すための食糧としてもらう。
 これも両国家の承認が得られた。
 ここまでの話はトントン拍子に進んだと言えるだろう。
 問題は次の議題で……。

「ガムダルフ殿には関係ないんだが、俺たちドワーフ帝国とエルフ女王国の間にある領地がどうもおかしなことになっているみたいでなぁ」

「私もヴォルカイン様から書簡をいただくまで忘れていました。お互い様ということで」

「なんだよ、なんの話だ?」

 ガムダルフ獣人帝国皇帝には関係のない話だからさっぱりわからないだろう。
 ふたりがかいつまんで説明すると、国境地帯にある辺境の領地がドワーフ帝国からエルフ女王国に返還されたはずなのにドワーフの領主がいまだに居座っているという話だ。
 調べてみると10年や20年ではなく300年以上放置されていたんだそうな。
 ガムダルフ皇帝は「気の長い話だな……」と呆れていたが、僕もそんな気がする。
 ただ、エルフは500年以上は生きると言われているし、ドワーフだって120年程度は生きる。
 そう考えると、エルフから見ると1世代、ドワーフから見ると3世代から4世代の話なのだ。
 うん、こんなところでも種族間のギャップが。

「それでどうするんだよ? 俺らんところは関係ないから手を貸さねぇぞ?」

「必要ない。この場での見届け人になってほしかったのだ」

「はい。誰かが見届けないとまたややこしくなりそうですので」

「ややこしく、ねぇ。で、どうするんだ?」

「問題となっている領地は今年中にドワーフ帝国が責任を持って接収する。支配している貴族は問題ないものは転封、問題のあるものは貴族位を剥奪する」

「こえぇな。抵抗されるんじゃないのか?」

「あの地方の貴族はドワーフ帝国の会合に出席した記録が100年以上残っておらぬし、税だって同じくらい国に納められていないことがわかっている。軍に貴族が滅ぼされても無理はなかろう」

 うわぁ、そこまでひどかったんだ。
 そうなると、僕の元家族も貴族位を剥奪されて税の横領分などを罰せられるんだろうな。
 果たして僕はどうなるんだろう?

「で、そんなことをしたら畑はまた荒れるんじゃないのか? そこはどうする?」

「まあ、人任せな話になるのだが……。バオアよ、お前の力で荒れた畑をもう一度耕してはもらえぬか?」

「わかりました。僕も元はその地方の貴族です。罪滅ぼしと思い仕事に従事いたします」

「そこまでかしこまらなくともよいのだがな……。バオアによる復興が終わり次第、エルフ女王国に土地を返還する。それで構わないだろうか?」

「構いません。元々住んでいる住人はどうするのです?」

「ドワーフ帝国領からエルフ女王国領になっても変わらず住み続けたいというものは受け入れてやってほしい。いかがかな?」

「よろしいでしょう。耕された土地とそこで暮らす民が一度に手に入るのですから否やはありません。よろしくお願いします」

 あの地方の返還についても話がまとまった。
 僕の仕事も増えたけど、中型トラクターなら1年かからず終わるだろう。
 両国間の橋渡し、責任重大だね。
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