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第四章 『地中の果実』

56. ドワーフ帝国のジャガイモ収穫

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 宰相様と一緒にジャガイモを植えてから二週間ほどが経過した。
 その間、僕も自分の畑を耕して麦やジャガイモを栽培することを忘れずに行っている。
 栽培実験をやっているのはまだ一カ所だけだけど、ジャガイモ自体はいろいろな街で売り歩いているからね。
 たくさん作っておかないと品不足になってしまう。
 ほかの種族の集落でも作ってもらっているけど、それでも品薄商品なんだから人気があるんじゃないかな?

 このように毎日農作業に精を出していると、慌てた様子でクーオがやってきた。
 一体なにがあったんだろうか?

「ニャ! バオア様、ホーフーン様、大変ニャ! ドワーフ帝国で植えたジャガイモが収穫時期を迎えたそうですニャ!」

「なんだって!?」

「ほう。それは意外ですにゃ」

「あれ、あまり驚いていないんだね、ホーフーン」

「ある程度は予想していましたからにゃ。それで、クーオ。吾輩たちはどうすればよいのにゃ?」

「ああ、そうでしたニャ! 私と一緒に来て宰相様たちとともに収穫に立ち会ってほしいのニャ!」

「わかった、すぐに支度をするよ!」

「そうするとしますかにゃ」

 僕は慌てて、ホーフーンは落ち着いた様子で自室に戻り、外行き用の服に着替える。
 着替えが終わったらクーオの犬車でドワーフ帝国に出発だ。

 試験栽培をしていた村にたどり着くと、既に宰相様たちがいらしていた。
 いけない、すぐにあいさつしないと。

「宰相様、遅れました」

「いや、急に呼び出したのはこちらだ。遠路はるばるご苦労。して、ジャガイモというのはこんなに早く生長するものなのか?」

「僕も村の外で育てるのは初めてのことで……」

「まあまあ予想通りですにゃ」

「ホーフーン?」

 僕が困惑している中、ホーフーンは至って冷静だ。
 なにか知っているのかも。

「ホーフーン殿、予想通りとは?」

「はいですにゃ。世界樹の枝の村で育てられたジャガイモは、ある種特別製のジャガイモですにゃ。それならば外の世界でも早く育っておかしくないですにゃ」

「なるほど。では、今回育ったジャガイモはそこまで早く育たないと?」

「吾輩の予想ではそうなりますにゃ。そこも要検証ですにゃ」

「それもそうか。掘り返すときの注意点は前に習った時の通りでよろしいのか?」

「はいですにゃ。地下にジャガイモが実っているので傷をつけないようにして掘り起こしてくださいにゃ」

「わかった。皆の者、ジャガイモを掘り返すのだ!」

 宰相様の号令で待ち構えていた農家のみんなが一斉にジャガイモを掘り返し始める。
 最初は恐る恐るだったけど、しっかりと土をどけていく。
 数分後、最初の雄叫びが上がった。

「やったぞ! ジャガイモが実っている!」

「こっちもだ! 最初に見たジャガイモよりも小ぶりだが、立派なジャガイモがたくさん根につながっている!」

「ああ! これなら食糧不足に困らず済むぞ!」

 そこからは農家総出でジャガイモを収穫していった。
 だけど、僕がジャガイモを植えていった面積が広かったせいか、一日ですべてのジャガイモを掘り起こすことは出来なかったようだ。
 それでも、掘り返されたジャガイモは僕らの横に積み上げられている。
 僕の背よりも高いんだから相当な量が収穫できた証だろう。

「うむ。試験栽培としては十分な成果だな」

「お褒めいただきありがとうございます、宰相様。このあとはどうするんですか?」

「しばらくはこのまま試験栽培を続けたい。収穫が終わったら、半分の土地を今回収穫できたジャガイモを植えて生育状況を調べ、残りの半分はお主らのジャガイモを新たに植えて更に生育期間が短くなるのか検証する。来年、全国の貴族に試験栽培をやらせるため、必要なデータだ」

「かしこまりました。それでは僕たちの村のジャガイモも新しく提供いたします」

「頼んだぞ」

 一回目の収穫は大成功で幕を閉じた。
 次からも同じように栽培出来るといいな。
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