農業機器無双! ~農業機器は世界を救う!~

あきさけ

文字の大きさ
上 下
56 / 71
第四章 『地中の果実』

56. ドワーフ帝国のジャガイモ収穫

しおりを挟む
 宰相様と一緒にジャガイモを植えてから二週間ほどが経過した。
 その間、僕も自分の畑を耕して麦やジャガイモを栽培することを忘れずに行っている。
 栽培実験をやっているのはまだ一カ所だけだけど、ジャガイモ自体はいろいろな街で売り歩いているからね。
 たくさん作っておかないと品不足になってしまう。
 ほかの種族の集落でも作ってもらっているけど、それでも品薄商品なんだから人気があるんじゃないかな?

 このように毎日農作業に精を出していると、慌てた様子でクーオがやってきた。
 一体なにがあったんだろうか?

「ニャ! バオア様、ホーフーン様、大変ニャ! ドワーフ帝国で植えたジャガイモが収穫時期を迎えたそうですニャ!」

「なんだって!?」

「ほう。それは意外ですにゃ」

「あれ、あまり驚いていないんだね、ホーフーン」

「ある程度は予想していましたからにゃ。それで、クーオ。吾輩たちはどうすればよいのにゃ?」

「ああ、そうでしたニャ! 私と一緒に来て宰相様たちとともに収穫に立ち会ってほしいのニャ!」

「わかった、すぐに支度をするよ!」

「そうするとしますかにゃ」

 僕は慌てて、ホーフーンは落ち着いた様子で自室に戻り、外行き用の服に着替える。
 着替えが終わったらクーオの犬車でドワーフ帝国に出発だ。

 試験栽培をしていた村にたどり着くと、既に宰相様たちがいらしていた。
 いけない、すぐにあいさつしないと。

「宰相様、遅れました」

「いや、急に呼び出したのはこちらだ。遠路はるばるご苦労。して、ジャガイモというのはこんなに早く生長するものなのか?」

「僕も村の外で育てるのは初めてのことで……」

「まあまあ予想通りですにゃ」

「ホーフーン?」

 僕が困惑している中、ホーフーンは至って冷静だ。
 なにか知っているのかも。

「ホーフーン殿、予想通りとは?」

「はいですにゃ。世界樹の枝の村で育てられたジャガイモは、ある種特別製のジャガイモですにゃ。それならば外の世界でも早く育っておかしくないですにゃ」

「なるほど。では、今回育ったジャガイモはそこまで早く育たないと?」

「吾輩の予想ではそうなりますにゃ。そこも要検証ですにゃ」

「それもそうか。掘り返すときの注意点は前に習った時の通りでよろしいのか?」

「はいですにゃ。地下にジャガイモが実っているので傷をつけないようにして掘り起こしてくださいにゃ」

「わかった。皆の者、ジャガイモを掘り返すのだ!」

 宰相様の号令で待ち構えていた農家のみんなが一斉にジャガイモを掘り返し始める。
 最初は恐る恐るだったけど、しっかりと土をどけていく。
 数分後、最初の雄叫びが上がった。

「やったぞ! ジャガイモが実っている!」

「こっちもだ! 最初に見たジャガイモよりも小ぶりだが、立派なジャガイモがたくさん根につながっている!」

「ああ! これなら食糧不足に困らず済むぞ!」

 そこからは農家総出でジャガイモを収穫していった。
 だけど、僕がジャガイモを植えていった面積が広かったせいか、一日ですべてのジャガイモを掘り起こすことは出来なかったようだ。
 それでも、掘り返されたジャガイモは僕らの横に積み上げられている。
 僕の背よりも高いんだから相当な量が収穫できた証だろう。

「うむ。試験栽培としては十分な成果だな」

「お褒めいただきありがとうございます、宰相様。このあとはどうするんですか?」

「しばらくはこのまま試験栽培を続けたい。収穫が終わったら、半分の土地を今回収穫できたジャガイモを植えて生育状況を調べ、残りの半分はお主らのジャガイモを新たに植えて更に生育期間が短くなるのか検証する。来年、全国の貴族に試験栽培をやらせるため、必要なデータだ」

「かしこまりました。それでは僕たちの村のジャガイモも新しく提供いたします」

「頼んだぞ」

 一回目の収穫は大成功で幕を閉じた。
 次からも同じように栽培出来るといいな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

えっ、じいちゃん昔勇者だったのっ!?〜祖父の遺品整理をしてたら異世界に飛ばされ、行方不明だった父に魔王の心臓を要求されたので逃げる事にした〜

楠ノ木雫
ファンタジー
 まだ16歳の奥村留衣は、ずっと一人で育ててくれていた祖父を亡くした。親戚も両親もいないため、一人で遺品整理をしていた時に偶然見つけた腕輪。ふとそれを嵌めてみたら、いきなり違う世界に飛ばされてしまった。  目の前に浮かんでいた、よくあるシステムウィンドウというものに書かれていたものは『勇者の孫』。そう、亡くなった祖父はこの世界の勇者だったのだ。  そして、行方不明だと言われていた両親に会う事に。だが、祖父が以前討伐した魔王の心臓を渡すよう要求されたのでドラゴンを召喚して逃げた!  追われつつも、故郷らしい異世界での楽しい(?)セカンドライフが今始まる!  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

キャンピングカーで異世界の旅

モルモット
ファンタジー
主人公と天女の二人がキャンピングカーで異世界を旅する物語。 紹介文 夢のキャンピングカーを手に入れた主人公でしたが 目が覚めると異世界に飛ばされていました。戻れるのでしょうか?そんなとき主人公の前に自分を天女だと名乗る使者が現れるのです。 彼女は内気な性格ですが実は神様から命を受けた刺客だったのです。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

END-GAME【日常生活編】

孤高
ファンタジー
この作品は本編の中に書かれていない日常を書いてみました。どうぞご覧ください 本編もよろしくです! 毎日朝7時 夜7時に投稿

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

異世界転生ファミリー

くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?! 辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。 アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。 アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。 長男のナイトはクールで賢い美少年。 ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。 何の不思議もない家族と思われたが…… 彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

処理中です...