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第四章 『地中の果実』
52. ドワーフ皇帝からの呼び出し
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その日はいつも通り畑仕事を終え、のんびりしている最中だった。
でもクーオによってもたらされた報せでそんな気分は一気にはじけ飛んだんだ。
「皇帝陛下って、本当にドワーフの皇帝陛下!?」
「そうらしいニャ! ドワーフの帝都に顔を出したら帝城に呼び出されて……都合のいい日でいいからジャガイモの生産者も交えて話がしてみたいそうニャ!」
「それってすごいことだよ! どうしよう、ホーフーン!」
「どうするこうするも乗り込むしかないですにゃ。それに今回は絶好の好機でもありますにゃ」
絶好の好機?
どういう意味だろう?
「吾輩たちのジャガイモをドワーフ領で育ててもらう機会になりますにゃ。上手く皇帝陛下を始め、国のお歴々を説得出来ればその可能性も増しますにゃ」
「なるほど……確かにいい機会かも」
「それからこの村のことを知ってもらう機会にもなりますにゃ。この村は様々な種族が協力し合い成果を出している村、世の中にはこういう村もあると知ってもらえるにゃ」
「えっと、それってどうやって知ってもらうの? 言葉だけじゃ説得力が薄いでしょ?」
「各村に頼んで伝統衣装での謁見服を仕立ててもらいますにゃ。それぞれの村で特色が出ますし、それで意図をくみ取ってくれるはずにゃ」
「そううまくいけばいいんだけど……クーオ、謁見はいつなの?」
「それが、私たちの都合に合わせてくれるそうニャ。農家では忙しいだろうということもあるようニャが、どうしても会いたいという意図が見え隠れしますニャ」
「わかったのにゃ。これから大至急、村会を開いて各村の衣装作りにどれくらいかかるか確認にゃ。それにあわせてクーオも日程を伝えてきてほしいにゃ」
「はいニャ。お任せあれニャ」
急ぎ開かれた村会ではドワーフ帝国の皇帝陛下と謁見出来ることと、それに伴う謁見服の用意を各村でお願いするように頼んだ。
どの村もいきなり皇帝と会うことになるとは思わず驚いていたが、村々の間で連絡を取り合い、謁見服を四週間で仕上げてくれることになった。
それに伴い決定された皇帝様との謁見希望日は一カ月後以降。
その希望も問題なく通り、謁見は一カ月半後となった。
約2年前には家を追い出された僕が皇帝陛下との謁見に臨むなんて信じられないけれど、これも村のために、そして貧困に喘ぐ世界中の村のために必要なことなんだ。
しっかりとこなさないと。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
長いようで短かった一カ月半もすぐに過ぎ去り、僕とホーフーン、クーオの三人で皇帝陛下と謁見を行う日がやってきた。
手土産はこの村で採れた小麦を使った小麦粉と水耕栽培基地で採れている各種野菜、それから話のメインになるであろうジャガイモだ。
ジャガイモを引き渡す際には、皮が変色していたり芽が出ていたりしている物は毒があるので絶対に食べないように注意もしておく。
そして控え室で待たされること数時間、いよいよ謁見の準備が整い謁見が行われる事となった。
「さて、いよいよ謁見ですにゃ。大丈夫ですかにゃ、ふたりとも」
「僕は心臓がバクバクいってるよ」
「私も国の支配者と会うのは初めてですニャ。大貴族と会うのは珍しくないのですが、王様や皇帝陛下とは縁がなかったですからニャ」
「まあ、力を抜くにゃ。吾輩がメインになって話を進めるので気を楽にするにゃ」
「ありがとう、ホーフーン」
「助かるニャ」
謁見の間に到着し、重そうな扉が開いたあと謁見の間へと入場する。
そこで跪いて皇帝陛下の入場を待った。
「待たせたな。面を上げろ」
「は、はい。あれ? これだけの人数ですか?」
「おう、これだけだ。可能な限り内密に行いたかったからな」
いらっしゃるのは玉座に座る皇帝陛下と立派な剣を持った騎士様、それから大臣風の恰好をした方がふたり。
その誰もがドワーフらしく筋肉で服が盛り上がっていた。
「俺が現ドワーフ皇帝ヴォルカインだ。さて、それじゃあ話を聞こうか」
でもクーオによってもたらされた報せでそんな気分は一気にはじけ飛んだんだ。
「皇帝陛下って、本当にドワーフの皇帝陛下!?」
「そうらしいニャ! ドワーフの帝都に顔を出したら帝城に呼び出されて……都合のいい日でいいからジャガイモの生産者も交えて話がしてみたいそうニャ!」
「それってすごいことだよ! どうしよう、ホーフーン!」
「どうするこうするも乗り込むしかないですにゃ。それに今回は絶好の好機でもありますにゃ」
絶好の好機?
どういう意味だろう?
「吾輩たちのジャガイモをドワーフ領で育ててもらう機会になりますにゃ。上手く皇帝陛下を始め、国のお歴々を説得出来ればその可能性も増しますにゃ」
「なるほど……確かにいい機会かも」
「それからこの村のことを知ってもらう機会にもなりますにゃ。この村は様々な種族が協力し合い成果を出している村、世の中にはこういう村もあると知ってもらえるにゃ」
「えっと、それってどうやって知ってもらうの? 言葉だけじゃ説得力が薄いでしょ?」
「各村に頼んで伝統衣装での謁見服を仕立ててもらいますにゃ。それぞれの村で特色が出ますし、それで意図をくみ取ってくれるはずにゃ」
「そううまくいけばいいんだけど……クーオ、謁見はいつなの?」
「それが、私たちの都合に合わせてくれるそうニャ。農家では忙しいだろうということもあるようニャが、どうしても会いたいという意図が見え隠れしますニャ」
「わかったのにゃ。これから大至急、村会を開いて各村の衣装作りにどれくらいかかるか確認にゃ。それにあわせてクーオも日程を伝えてきてほしいにゃ」
「はいニャ。お任せあれニャ」
急ぎ開かれた村会ではドワーフ帝国の皇帝陛下と謁見出来ることと、それに伴う謁見服の用意を各村でお願いするように頼んだ。
どの村もいきなり皇帝と会うことになるとは思わず驚いていたが、村々の間で連絡を取り合い、謁見服を四週間で仕上げてくれることになった。
それに伴い決定された皇帝様との謁見希望日は一カ月後以降。
その希望も問題なく通り、謁見は一カ月半後となった。
約2年前には家を追い出された僕が皇帝陛下との謁見に臨むなんて信じられないけれど、これも村のために、そして貧困に喘ぐ世界中の村のために必要なことなんだ。
しっかりとこなさないと。
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長いようで短かった一カ月半もすぐに過ぎ去り、僕とホーフーン、クーオの三人で皇帝陛下と謁見を行う日がやってきた。
手土産はこの村で採れた小麦を使った小麦粉と水耕栽培基地で採れている各種野菜、それから話のメインになるであろうジャガイモだ。
ジャガイモを引き渡す際には、皮が変色していたり芽が出ていたりしている物は毒があるので絶対に食べないように注意もしておく。
そして控え室で待たされること数時間、いよいよ謁見の準備が整い謁見が行われる事となった。
「さて、いよいよ謁見ですにゃ。大丈夫ですかにゃ、ふたりとも」
「僕は心臓がバクバクいってるよ」
「私も国の支配者と会うのは初めてですニャ。大貴族と会うのは珍しくないのですが、王様や皇帝陛下とは縁がなかったですからニャ」
「まあ、力を抜くにゃ。吾輩がメインになって話を進めるので気を楽にするにゃ」
「ありがとう、ホーフーン」
「助かるニャ」
謁見の間に到着し、重そうな扉が開いたあと謁見の間へと入場する。
そこで跪いて皇帝陛下の入場を待った。
「待たせたな。面を上げろ」
「は、はい。あれ? これだけの人数ですか?」
「おう、これだけだ。可能な限り内密に行いたかったからな」
いらっしゃるのは玉座に座る皇帝陛下と立派な剣を持った騎士様、それから大臣風の恰好をした方がふたり。
その誰もがドワーフらしく筋肉で服が盛り上がっていた。
「俺が現ドワーフ皇帝ヴォルカインだ。さて、それじゃあ話を聞こうか」
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