52 / 71
第四章 『地中の果実』
52. ドワーフ皇帝からの呼び出し
しおりを挟む
その日はいつも通り畑仕事を終え、のんびりしている最中だった。
でもクーオによってもたらされた報せでそんな気分は一気にはじけ飛んだんだ。
「皇帝陛下って、本当にドワーフの皇帝陛下!?」
「そうらしいニャ! ドワーフの帝都に顔を出したら帝城に呼び出されて……都合のいい日でいいからジャガイモの生産者も交えて話がしてみたいそうニャ!」
「それってすごいことだよ! どうしよう、ホーフーン!」
「どうするこうするも乗り込むしかないですにゃ。それに今回は絶好の好機でもありますにゃ」
絶好の好機?
どういう意味だろう?
「吾輩たちのジャガイモをドワーフ領で育ててもらう機会になりますにゃ。上手く皇帝陛下を始め、国のお歴々を説得出来ればその可能性も増しますにゃ」
「なるほど……確かにいい機会かも」
「それからこの村のことを知ってもらう機会にもなりますにゃ。この村は様々な種族が協力し合い成果を出している村、世の中にはこういう村もあると知ってもらえるにゃ」
「えっと、それってどうやって知ってもらうの? 言葉だけじゃ説得力が薄いでしょ?」
「各村に頼んで伝統衣装での謁見服を仕立ててもらいますにゃ。それぞれの村で特色が出ますし、それで意図をくみ取ってくれるはずにゃ」
「そううまくいけばいいんだけど……クーオ、謁見はいつなの?」
「それが、私たちの都合に合わせてくれるそうニャ。農家では忙しいだろうということもあるようニャが、どうしても会いたいという意図が見え隠れしますニャ」
「わかったのにゃ。これから大至急、村会を開いて各村の衣装作りにどれくらいかかるか確認にゃ。それにあわせてクーオも日程を伝えてきてほしいにゃ」
「はいニャ。お任せあれニャ」
急ぎ開かれた村会ではドワーフ帝国の皇帝陛下と謁見出来ることと、それに伴う謁見服の用意を各村でお願いするように頼んだ。
どの村もいきなり皇帝と会うことになるとは思わず驚いていたが、村々の間で連絡を取り合い、謁見服を四週間で仕上げてくれることになった。
それに伴い決定された皇帝様との謁見希望日は一カ月後以降。
その希望も問題なく通り、謁見は一カ月半後となった。
約2年前には家を追い出された僕が皇帝陛下との謁見に臨むなんて信じられないけれど、これも村のために、そして貧困に喘ぐ世界中の村のために必要なことなんだ。
しっかりとこなさないと。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
長いようで短かった一カ月半もすぐに過ぎ去り、僕とホーフーン、クーオの三人で皇帝陛下と謁見を行う日がやってきた。
手土産はこの村で採れた小麦を使った小麦粉と水耕栽培基地で採れている各種野菜、それから話のメインになるであろうジャガイモだ。
ジャガイモを引き渡す際には、皮が変色していたり芽が出ていたりしている物は毒があるので絶対に食べないように注意もしておく。
そして控え室で待たされること数時間、いよいよ謁見の準備が整い謁見が行われる事となった。
「さて、いよいよ謁見ですにゃ。大丈夫ですかにゃ、ふたりとも」
「僕は心臓がバクバクいってるよ」
「私も国の支配者と会うのは初めてですニャ。大貴族と会うのは珍しくないのですが、王様や皇帝陛下とは縁がなかったですからニャ」
「まあ、力を抜くにゃ。吾輩がメインになって話を進めるので気を楽にするにゃ」
「ありがとう、ホーフーン」
「助かるニャ」
謁見の間に到着し、重そうな扉が開いたあと謁見の間へと入場する。
そこで跪いて皇帝陛下の入場を待った。
「待たせたな。面を上げろ」
「は、はい。あれ? これだけの人数ですか?」
「おう、これだけだ。可能な限り内密に行いたかったからな」
いらっしゃるのは玉座に座る皇帝陛下と立派な剣を持った騎士様、それから大臣風の恰好をした方がふたり。
その誰もがドワーフらしく筋肉で服が盛り上がっていた。
「俺が現ドワーフ皇帝ヴォルカインだ。さて、それじゃあ話を聞こうか」
でもクーオによってもたらされた報せでそんな気分は一気にはじけ飛んだんだ。
「皇帝陛下って、本当にドワーフの皇帝陛下!?」
「そうらしいニャ! ドワーフの帝都に顔を出したら帝城に呼び出されて……都合のいい日でいいからジャガイモの生産者も交えて話がしてみたいそうニャ!」
「それってすごいことだよ! どうしよう、ホーフーン!」
「どうするこうするも乗り込むしかないですにゃ。それに今回は絶好の好機でもありますにゃ」
絶好の好機?
どういう意味だろう?
「吾輩たちのジャガイモをドワーフ領で育ててもらう機会になりますにゃ。上手く皇帝陛下を始め、国のお歴々を説得出来ればその可能性も増しますにゃ」
「なるほど……確かにいい機会かも」
「それからこの村のことを知ってもらう機会にもなりますにゃ。この村は様々な種族が協力し合い成果を出している村、世の中にはこういう村もあると知ってもらえるにゃ」
「えっと、それってどうやって知ってもらうの? 言葉だけじゃ説得力が薄いでしょ?」
「各村に頼んで伝統衣装での謁見服を仕立ててもらいますにゃ。それぞれの村で特色が出ますし、それで意図をくみ取ってくれるはずにゃ」
「そううまくいけばいいんだけど……クーオ、謁見はいつなの?」
「それが、私たちの都合に合わせてくれるそうニャ。農家では忙しいだろうということもあるようニャが、どうしても会いたいという意図が見え隠れしますニャ」
「わかったのにゃ。これから大至急、村会を開いて各村の衣装作りにどれくらいかかるか確認にゃ。それにあわせてクーオも日程を伝えてきてほしいにゃ」
「はいニャ。お任せあれニャ」
急ぎ開かれた村会ではドワーフ帝国の皇帝陛下と謁見出来ることと、それに伴う謁見服の用意を各村でお願いするように頼んだ。
どの村もいきなり皇帝と会うことになるとは思わず驚いていたが、村々の間で連絡を取り合い、謁見服を四週間で仕上げてくれることになった。
それに伴い決定された皇帝様との謁見希望日は一カ月後以降。
その希望も問題なく通り、謁見は一カ月半後となった。
約2年前には家を追い出された僕が皇帝陛下との謁見に臨むなんて信じられないけれど、これも村のために、そして貧困に喘ぐ世界中の村のために必要なことなんだ。
しっかりとこなさないと。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
長いようで短かった一カ月半もすぐに過ぎ去り、僕とホーフーン、クーオの三人で皇帝陛下と謁見を行う日がやってきた。
手土産はこの村で採れた小麦を使った小麦粉と水耕栽培基地で採れている各種野菜、それから話のメインになるであろうジャガイモだ。
ジャガイモを引き渡す際には、皮が変色していたり芽が出ていたりしている物は毒があるので絶対に食べないように注意もしておく。
そして控え室で待たされること数時間、いよいよ謁見の準備が整い謁見が行われる事となった。
「さて、いよいよ謁見ですにゃ。大丈夫ですかにゃ、ふたりとも」
「僕は心臓がバクバクいってるよ」
「私も国の支配者と会うのは初めてですニャ。大貴族と会うのは珍しくないのですが、王様や皇帝陛下とは縁がなかったですからニャ」
「まあ、力を抜くにゃ。吾輩がメインになって話を進めるので気を楽にするにゃ」
「ありがとう、ホーフーン」
「助かるニャ」
謁見の間に到着し、重そうな扉が開いたあと謁見の間へと入場する。
そこで跪いて皇帝陛下の入場を待った。
「待たせたな。面を上げろ」
「は、はい。あれ? これだけの人数ですか?」
「おう、これだけだ。可能な限り内密に行いたかったからな」
いらっしゃるのは玉座に座る皇帝陛下と立派な剣を持った騎士様、それから大臣風の恰好をした方がふたり。
その誰もがドワーフらしく筋肉で服が盛り上がっていた。
「俺が現ドワーフ皇帝ヴォルカインだ。さて、それじゃあ話を聞こうか」
0
お気に入りに追加
408
あなたにおすすめの小説
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
なぜ身分制度の恩恵を受けていて、平等こそ理想だと罵るのか?
紫月夜宵
ファンタジー
相変わらずn番煎じのファンタジーというか軽いざまぁ系。
悪役令嬢の逆ざまぁとか虐げられていた方が正当に自分を守って、相手をやり込める話好きなんですよね。
今回は悪役令嬢は出てきません。
ただ愚か者達が自分のしでかした事に対する罰を受けているだけです。
仕出かした内容はご想像にお任せします。
問題を起こした後からのものです。
基本的に軽いざまぁ?程度しかないです。
ざまぁ と言ってもお仕置き程度で、拷問だとか瀕死だとか人死にだとか物騒なものは出てきません。
平等とは本当に幸せなのか?
それが今回の命題ですかね。
生まれが高貴だったとしても、何の功績もなければただの子供ですよね。
生まれがラッキーだっただけの。
似たような話はいっぱいでしょうが、オマージュと思って下さい。
なんちゃってファンタジーです。
時折書きたくなる愚かな者のざまぁ系です。
設定ガバガバの状態なので、適当にフィルターかけて読んで頂けると有り難いです。
読んだ後のクレームは受け付けませんので、ご了承下さい。
上記の事が大丈夫でしたらどうぞ。
別のサイトにも投稿中。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
転生させて貰ったけど…これやりたかった事…だっけ?
N
ファンタジー
目が覚めたら…目の前には白い球が、、
生まれる世界が間違っていたって⁇
自分が好きだった漫画の中のような世界に転生出来るって⁈
嬉しいけど…これは一旦落ち着いてチートを勝ち取って最高に楽しい人生勝ち組にならねば!!
そう意気込んで転生したものの、気がついたら………
大切な人生の相棒との出会いや沢山の人との出会い!
そして転生した本当の理由はいつ分かるのか…!!
ーーーーーーーーーーーーーー
※誤字・脱字多いかもしれません💦
(教えて頂けたらめっちゃ助かります…)
※自分自身が句読点・改行多めが好きなのでそうしています、読みにくかったらすみません
[完結:1話 1分読書]幼馴染を勇者に寝取られた不遇職の躍進
無責任
ファンタジー
<毎日更新 1分読書> 愛する幼馴染を失った不遇職の少年の物語
ユキムラは神託により不遇職となってしまう。
愛するエリスは、聖女となり、勇者のもとに行く事に・・・。
引き裂かれた関係をもがき苦しむ少年、少女の物語である。
アルファポリス版は、各ページに人物紹介などはありません。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
この物語の世界は、15歳が成年となる世界観の為、現実の日本社会とは異なる部分もあります。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
魔力吸収体質が厄介すぎて追放されたけど、創造スキルに進化したので、もふもふライフを送ることにしました
うみ
ファンタジー
魔力吸収能力を持つリヒトは、魔力が枯渇して「魔法が使えなくなる」という理由で街はずれでひっそりと暮らしていた。
そんな折、どす黒い魔力である魔素溢れる魔境が拡大してきていたため、領主から魔境へ向かえと追い出されてしまう。
魔境の入り口に差し掛かった時、全ての魔素が主人公に向けて流れ込み、魔力吸収能力がオーバーフローし覚醒する。
その結果、リヒトは有り余る魔力を使って妄想を形にする力「創造スキル」を手に入れたのだった。
魔素の無くなった魔境は元の大自然に戻り、街に戻れない彼はここでノンビリ生きていく決意をする。
手に入れた力で高さ333メートルもある建物を作りご満悦の彼の元へ、邪神と名乗る白猫にのった小動物や、獣人の少女が訪れ、更には豊富な食糧を嗅ぎつけたゴブリンの大軍が迫って来て……。
いつしかリヒトは魔物たちから魔王と呼ばるようになる。それに伴い、333メートルの建物は魔王城として畏怖されるようになっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる