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第四章 『地中の果実』
49. 中型トラクター
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魔人族を向かえてからしばらくが経った。
その間にも、闇のヒト族と呼ばれる種族の人たちを受け入れ続けているが、やっぱりどこに行っても食料が不足気味らしい。
麦などの収穫量が落ちているばかりではなく、野山で採れる野草や山菜、果物の数も減っており、狩りをしても獲物が痩せ細っているそうだ。
ここまで来るとなんだか作為的な物を感じるけれど、いまはどうしようもない。
僕たちに出来ることは世界樹の森の畑で作物を作り続けることなんだから。
「これが中型トラクターですか。大きいですね」
「うん。ひとり乗りじゃなくなっているみたいだし、フレイとホーフーンも一緒に乗ってみる?」
「よろしいのですか?」
「構わないよ。乗ってみよう」
僕はフレイとホーフーンを連れて中型トラクターに飛び乗った。
いままでの小型トラクターはひとり乗りの席しかなかったけど、中型トラクターはフレイとホーフーンが一緒に乗ってももう少しだけ余裕のある作りになっている。
正確には、僕が前列の席でいろいろと操作をし、フレイとホーフーンは後列の席で見ているだけなんだけど。
新しくなったトラクターは大きくなっただけ出なくて設備も充実している。
後ろにつける耕運機や種まき機も中型になっていて大型化しており、いままでよりも広い範囲の畑を耕せそうだ。
これならもっと開墾してもいいかも。
「さて、中型トラクター始動だ!」
「はいですにゃ!」
「はい!」
僕が中型トラクターを動かし始めると、トラクターは大きなうなりを上げて進み始めた。
いまは耕運機を使って畑を耕しているはずなんだけど、前よりも進み方が速い。
本当に耕せているのかな?
「ホーフーン、後ろはどうなっている?」
「ばっちり耕せていますにゃ。いやはや、さすが中型トラクター、出力が段違いですにゃ」
「それならいいんだけど。このまま麦刈りが終わっている範囲はすべて耕しちゃうよ」
「はいですにゃ」
僕の畑も三日前に麦刈りを終えて次の耕作待ちだったんだ。
そんなところに中型トラクターを始めとする中型農業機器が現れていて、今日はその試運転も兼ねている。
いまのところ、なんの問題もないようで安心だね。
「バオア、どこまで耕すにゃ?」
「いけるところまでいこうかと思うんだけど……この調子だと、お昼過ぎにはいまある畑を耕し終わるね」
「そうですにゃあ。今回は試運転ですからいいとして、今後は耕作地のさらなる増加も考えなければいけませんにゃ」
「だよね。結構広いんだけどな」
「人力ではどうにも出来ない範囲でも農業機器ならなんとかなるにゃ。バオアを手放した家族の無能っぷりがよくわかりますにゃ」
「あはは……」
僕の家族が無能なのは今に始まったことではないのでどうしようもない。
家族が無能なのはどうでもいいんだけど、それに引きずり回される領民たちが心配だ。
手助けして上げられればいいんだけど、それも上手く出来そうにないからな……。
僕は畑を耕すことしかできない無力感を抱えながら、いまある畑すべてを耕し終えた。
やっぱりいまある畑の広さだと、半日程度で耕し終わってしまう。
畑も拡張しなくちゃね。
僕たちはこのまま家に帰り、自室に戻ると日記をつけ始める。
ホーフーンに言われてつけるようになった日記だけど、いまは習慣になっていた。
毎日どんなことをしたかを書き記しているだけだけど、見直してみると意外と面白い。
さて、今日は中型トラクターに乗ったときの感想を……。
「バオア、バオア! すぐに世界樹の枝まで来るにゃ!」
日記をつけようとしていたら窓の外からホーフーンの慌てた声が聞こえてきた。
一体どうしたんだろう?
僕は窓際によって、窓を開けてからホーフーンに尋ねてみる。
「どうしたのさ。大声なんて出しちゃって」
「世界樹の精霊様が吾輩たちに用事があるそうなのにゃ! 急ぐのにゃ!」
世界樹の精霊様が!?
それは急がないと!
その間にも、闇のヒト族と呼ばれる種族の人たちを受け入れ続けているが、やっぱりどこに行っても食料が不足気味らしい。
麦などの収穫量が落ちているばかりではなく、野山で採れる野草や山菜、果物の数も減っており、狩りをしても獲物が痩せ細っているそうだ。
ここまで来るとなんだか作為的な物を感じるけれど、いまはどうしようもない。
僕たちに出来ることは世界樹の森の畑で作物を作り続けることなんだから。
「これが中型トラクターですか。大きいですね」
「うん。ひとり乗りじゃなくなっているみたいだし、フレイとホーフーンも一緒に乗ってみる?」
「よろしいのですか?」
「構わないよ。乗ってみよう」
僕はフレイとホーフーンを連れて中型トラクターに飛び乗った。
いままでの小型トラクターはひとり乗りの席しかなかったけど、中型トラクターはフレイとホーフーンが一緒に乗ってももう少しだけ余裕のある作りになっている。
正確には、僕が前列の席でいろいろと操作をし、フレイとホーフーンは後列の席で見ているだけなんだけど。
新しくなったトラクターは大きくなっただけ出なくて設備も充実している。
後ろにつける耕運機や種まき機も中型になっていて大型化しており、いままでよりも広い範囲の畑を耕せそうだ。
これならもっと開墾してもいいかも。
「さて、中型トラクター始動だ!」
「はいですにゃ!」
「はい!」
僕が中型トラクターを動かし始めると、トラクターは大きなうなりを上げて進み始めた。
いまは耕運機を使って畑を耕しているはずなんだけど、前よりも進み方が速い。
本当に耕せているのかな?
「ホーフーン、後ろはどうなっている?」
「ばっちり耕せていますにゃ。いやはや、さすが中型トラクター、出力が段違いですにゃ」
「それならいいんだけど。このまま麦刈りが終わっている範囲はすべて耕しちゃうよ」
「はいですにゃ」
僕の畑も三日前に麦刈りを終えて次の耕作待ちだったんだ。
そんなところに中型トラクターを始めとする中型農業機器が現れていて、今日はその試運転も兼ねている。
いまのところ、なんの問題もないようで安心だね。
「バオア、どこまで耕すにゃ?」
「いけるところまでいこうかと思うんだけど……この調子だと、お昼過ぎにはいまある畑を耕し終わるね」
「そうですにゃあ。今回は試運転ですからいいとして、今後は耕作地のさらなる増加も考えなければいけませんにゃ」
「だよね。結構広いんだけどな」
「人力ではどうにも出来ない範囲でも農業機器ならなんとかなるにゃ。バオアを手放した家族の無能っぷりがよくわかりますにゃ」
「あはは……」
僕の家族が無能なのは今に始まったことではないのでどうしようもない。
家族が無能なのはどうでもいいんだけど、それに引きずり回される領民たちが心配だ。
手助けして上げられればいいんだけど、それも上手く出来そうにないからな……。
僕は畑を耕すことしかできない無力感を抱えながら、いまある畑すべてを耕し終えた。
やっぱりいまある畑の広さだと、半日程度で耕し終わってしまう。
畑も拡張しなくちゃね。
僕たちはこのまま家に帰り、自室に戻ると日記をつけ始める。
ホーフーンに言われてつけるようになった日記だけど、いまは習慣になっていた。
毎日どんなことをしたかを書き記しているだけだけど、見直してみると意外と面白い。
さて、今日は中型トラクターに乗ったときの感想を……。
「バオア、バオア! すぐに世界樹の枝まで来るにゃ!」
日記をつけようとしていたら窓の外からホーフーンの慌てた声が聞こえてきた。
一体どうしたんだろう?
僕は窓際によって、窓を開けてからホーフーンに尋ねてみる。
「どうしたのさ。大声なんて出しちゃって」
「世界樹の精霊様が吾輩たちに用事があるそうなのにゃ! 急ぐのにゃ!」
世界樹の精霊様が!?
それは急がないと!
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