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第三章 『世界樹の村』
45. 集会 1
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黒翼族が世界樹の森へやってきて少し経ち、今日は集会の日だ。
場所は世界樹の枝の広場の隣に作られた集会場。
一番わかりやすく公平な場所としてここが選ばれた。
僕やホーフーンの屋敷のそばっていうこともあるみたいなんだけど。
各種族の代表者がトラクターに乗り続々集まってくる中、ジャメルさんだけは馬に乗ってやってきた。
彼らはまだトラクターを持っていないし、移動手段として馬の方が乗り慣れているから当然かもしれない。
ちょっと目立っていたけどね。
なお、ジャメルさんの馬はフレイが預かっていた。
「時間ですにゃ。これから世界樹の集落の集会を始めますのにゃ!」
ホーフーンの宣言で集会が始まった。
集会に出席しているのは各集落から代表者数名と僕、ホーフーン、いるときはクーオだ。
クーオもこの村の小麦などを売り歩いてもらっているため、積極的に参加してもらっている。
彼女もよほどのことがなければ参加してくれるのでありがたい。
「まずは新しく増えた種族の紹介にゃ。黒翼族のジャメルたちの集落が増えましたにゃ。今回違う点は、いままでのように農作物を作っていた村ではなく、牧畜を行っていた村ということにゃ。勝手が違うと思うが仲良くやっていってほしいにゃ」
ホーフーンの説明のあとジャメルさんもあいさつを始める。
今日のジャメルさんは普段とは違い、特徴的な模様の入ったケープを身にまとっていた。
「ご紹介にあずかりました黒翼のジャメルと申します。先ほどの話通り、私どもの村は牧畜が主な産業の村でした。この村に来た以上、農業も初めて行きたいとは思いますが、何分勝手がわかりません。皆様を頼ることが多くなると思いますがよろしくお願いいたします」
ジャメルさんのあいさつが締めくられると歓迎の拍手が鳴り響いた。
これでジャメルさんたちも正式に世界樹の枝の村の一員というわけだ。
僕たちが出迎えた時点で村の一員だとほかの集落の人たちはいうけどね。
その後、各集落での作物の収穫具合を報告してもらう。
いまのところどの集落でも問題は起きていないらしい。
ただ、どの集落でも長く農業をやっていただけのことはあり、なにかのはずみで作物が出来にくくなることがあるのは重々承知。
今後も気を抜かずに備蓄と売りに出す分を分けるそうだ。
そんな中、注目を集めたのはやはりジャメルさんの報告だった。
「私どもの集落では、特に羊とヤギが元気になって参りました。このまま元気になっていけば、羊の毛も採取出来るようになるでしょう。また、ヤギの子供が生まれればヤギのミルクも手に入るようになります。それらの加工品も外に売れるようになるでしょう」
「ふむ、羊の毛か。どういった物に使うんだ?」
まず興味を示したのは犬族の集落の長。
彼らも昔は伝統的な織物技術を持っていたと聞いている。
「主に毛織物にしての販売となります。私が今着ているケープなどのように、独特の模様を織り込んだ布ですね」
「なるほど。その糸、俺たちにも分けてはもらえないか?」
「糸をですか? 織物ではなく?」
「出来れば糸がほしい。俺たちの集落でも昔は羊を飼っていて毛織物を作っていたんだ。飢饉が起こるようになって牧草も枯れてしまい羊は全部潰してしまったんだが、まだ昔の織機や毛織物の技術書は残っている。どうだろう、見返りとして食料を供給することで手を打ってはもらえないだろうか?」
「そういうことでしたら喜んで。羊毛が取れるようになりましたらお分けいたしましょう」
「お願いする。小麦は先払いで届けさせよう」
「ありがとうございます。糸が作れるようになりましたらぜひに」
ほかの獣人族の長たちも同じような申し出をした。
どうやら獣人族には独特の織物文化があるらしい。
染料は手に入る木の実や草などを使った物だけになるけど、それでも一風変わったものになるそう。
完成したらほかの集落にも分けてくれるそうだから楽しみだな。
場所は世界樹の枝の広場の隣に作られた集会場。
一番わかりやすく公平な場所としてここが選ばれた。
僕やホーフーンの屋敷のそばっていうこともあるみたいなんだけど。
各種族の代表者がトラクターに乗り続々集まってくる中、ジャメルさんだけは馬に乗ってやってきた。
彼らはまだトラクターを持っていないし、移動手段として馬の方が乗り慣れているから当然かもしれない。
ちょっと目立っていたけどね。
なお、ジャメルさんの馬はフレイが預かっていた。
「時間ですにゃ。これから世界樹の集落の集会を始めますのにゃ!」
ホーフーンの宣言で集会が始まった。
集会に出席しているのは各集落から代表者数名と僕、ホーフーン、いるときはクーオだ。
クーオもこの村の小麦などを売り歩いてもらっているため、積極的に参加してもらっている。
彼女もよほどのことがなければ参加してくれるのでありがたい。
「まずは新しく増えた種族の紹介にゃ。黒翼族のジャメルたちの集落が増えましたにゃ。今回違う点は、いままでのように農作物を作っていた村ではなく、牧畜を行っていた村ということにゃ。勝手が違うと思うが仲良くやっていってほしいにゃ」
ホーフーンの説明のあとジャメルさんもあいさつを始める。
今日のジャメルさんは普段とは違い、特徴的な模様の入ったケープを身にまとっていた。
「ご紹介にあずかりました黒翼のジャメルと申します。先ほどの話通り、私どもの村は牧畜が主な産業の村でした。この村に来た以上、農業も初めて行きたいとは思いますが、何分勝手がわかりません。皆様を頼ることが多くなると思いますがよろしくお願いいたします」
ジャメルさんのあいさつが締めくられると歓迎の拍手が鳴り響いた。
これでジャメルさんたちも正式に世界樹の枝の村の一員というわけだ。
僕たちが出迎えた時点で村の一員だとほかの集落の人たちはいうけどね。
その後、各集落での作物の収穫具合を報告してもらう。
いまのところどの集落でも問題は起きていないらしい。
ただ、どの集落でも長く農業をやっていただけのことはあり、なにかのはずみで作物が出来にくくなることがあるのは重々承知。
今後も気を抜かずに備蓄と売りに出す分を分けるそうだ。
そんな中、注目を集めたのはやはりジャメルさんの報告だった。
「私どもの集落では、特に羊とヤギが元気になって参りました。このまま元気になっていけば、羊の毛も採取出来るようになるでしょう。また、ヤギの子供が生まれればヤギのミルクも手に入るようになります。それらの加工品も外に売れるようになるでしょう」
「ふむ、羊の毛か。どういった物に使うんだ?」
まず興味を示したのは犬族の集落の長。
彼らも昔は伝統的な織物技術を持っていたと聞いている。
「主に毛織物にしての販売となります。私が今着ているケープなどのように、独特の模様を織り込んだ布ですね」
「なるほど。その糸、俺たちにも分けてはもらえないか?」
「糸をですか? 織物ではなく?」
「出来れば糸がほしい。俺たちの集落でも昔は羊を飼っていて毛織物を作っていたんだ。飢饉が起こるようになって牧草も枯れてしまい羊は全部潰してしまったんだが、まだ昔の織機や毛織物の技術書は残っている。どうだろう、見返りとして食料を供給することで手を打ってはもらえないだろうか?」
「そういうことでしたら喜んで。羊毛が取れるようになりましたらお分けいたしましょう」
「お願いする。小麦は先払いで届けさせよう」
「ありがとうございます。糸が作れるようになりましたらぜひに」
ほかの獣人族の長たちも同じような申し出をした。
どうやら獣人族には独特の織物文化があるらしい。
染料は手に入る木の実や草などを使った物だけになるけど、それでも一風変わったものになるそう。
完成したらほかの集落にも分けてくれるそうだから楽しみだな。
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