上 下
43 / 71
第三章 『世界樹の村』

43. バオアの馬

しおりを挟む
 僕はジャメルさんと一緒にガイアという馬のそばまでやってきた。
 ガイアは相変わらず僕から目を逸らそうとしない。
 一体僕のなにが気になっているんだろう?

「……珍しいですね、ガイアが見ず知らずの者をここまで近づけるなんて」

「そうなんですか?」

「はい。慣れた者以外が近づくと自分から離れていきます。こんなこといままでなかったのに」

「へぇ……」

 普段は関係者以外近づけないんだ。
 でも、どうして僕がそばに来ても逃げないんだろう?
 不思議に感じてガイアを見ていると、あちらから近づいてきた。
 そして僕の後襟を咥えると、突然僕を空へと放り上げた!

「うわぁ!?」

「バオア様!?」

 僕は空中で一回転してガイアの背中に落ちた。
 ガイアは僕が乗ったことを確認すると機嫌良くいななき、歩き始める。
 ……僕を背中に乗せたかっただけなのか。
 ずいぶん乱暴な乗せ方だったな。

「バオア様、お怪我はありませんか!?」

「平気です。ちょっと驚いたけど……」

「申し訳ありませんでした。普段はこんなことをしない馬なのですが……」

「いえ、お気になさらずに。僕も油断していましたから」

 ガイアは柵の周りを一周するとしゃがんで僕を降ろしてくれた。
 僕が降りたあとも僕に顔を寄せてきてなでろとせがんでくる。
 自己主張の激しい馬だなぁ。

「ジャメルさん、どうしましょうか?」

「ふむ……バオア様さえよろしければ、ガイアを引き取ってはもらえないでしょうか?」

「僕が?」

「ガイアもバオア様のことを相当気に入っている様子、この森は大変広いようですし足としてお使いになっては?」

 移動用か……。
 でも、移動にはトラクターもあるしあまり困ってはいないんだよね。

 そう考えて断ろうとすると、またガイアが後襟を咥えようとしてきた。
 また放り投げられるのは嫌なので横に回り込む。
 すると、ガイアがしゃがみ込んで首を回しこちらを見てきた。
 これって早く乗れって急かしてるんだよね。
 仕方がないので乗ると、今度は全速力で駆け出した!
 トラクターよりずっと速い!

 今回も柵の中を一周したガイアは満足げにジャメルさんのそばで僕を降ろす。
 うーん、本当にアピールの激しい馬だ。
 かなり賢いけどどうなっているんだろう?
 そこのところをジャメルさんに聞いてみると意外な言葉が返ってきた。

「ガイアは馬形魔物とのハーフです。そのため賢いのでしょう」

「なるほど……」

 これは断れそうにないかなぁ。
 断っても勝手についてきそうだし。
 世話の手順を覚えなくちゃいけないけど、もらうことにするか。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界で海賊始めました

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:401

おやすみご飯

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

女体化入浴剤

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:83

ようこそ、ミステリーツアーへ

児童書・童話 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

メシ炊き使用人女は、騎士に拾われ溺愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:475pt お気に入り:4,907

俺の宝物は大好きな娘のブラジャー

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

完結 裏切られて可哀そう?いいえ、違いますよ。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,627pt お気に入り:459

処理中です...