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第二章 世界樹の枝と外の状況

38. 移住状況

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 ダークエルフたちがこの森に移住してきて半月が過ぎた。
 移住の進捗度合いは極めて順調である。

 まず、世界樹の精霊様の道具がすごく便利なこと。
 木を切り倒すまでにかかる時間が数分で済むのだ。
 そのあとの枝打ちなどもすぐに終わり、綺麗な木材が手に入る。

 次に、僕の『農業機器』だ。
 僕も使っている『小型トラクター』や『小型草刈り機』などの他に、『小型トラック』、『切り株掘り出し機』、『小型クレーン車』などがあった。
『小型トラック』は輸送専用のトラクターのような車両、『切り株掘り出し機』は木を切り倒したあとの切り株を掘り起こし取り出す機械、『小型クレーン車』は物を釣り上げる車両だ。
 これらによって木を切り倒したあとの木材の運搬や切り株の除去、家を建てる際の木材の持ち上げがスムーズにいっているらしい。

 実際、この半月の間に集会所のような大きな建物が出来上がっていた。
 各個人の家はこれから建てるそうだ。
 建物の方は順調だね。

 農業の準備も着々と進んでいる。
 この村用に準備された『農業機器』は『小型草刈り機』が6台、『小型トラクター』とそれに接続する機器が2台ずつだ。
 純粋に僕とホーフーンの2倍程度の速さで耕作地を作り、広げることが出来ることになる。
 これはちょっとうらやましい。
 早く『中型トラクター』とかが出てこないかな。

「おや、バオア様。ようこそいらっしゃいました」

「お邪魔します、ターシャさん」

 僕はダークエルフたちの入植地を訪れた。
 目的は小麦粉を届けるためだ。

「しばらくの分の小麦粉を積んできました。どうぞ、持っていってください」

「いつもすみません。手の空いている者は小麦粉を運び出し貯蔵庫にしまえ!」

 ターシャさんの言葉で休憩していた村人たちが集まって来る。
 そして、トラクターの後ろにつなげた牽引車に乗せてある小麦粉を運び出してくれた。
 この村は人数が多いから結構小麦粉も使うんだよね。
 世界樹の森で果物なども集めているらしいけど、パンはやっぱり欠かせないらしい。

「いつも助かります。このお礼は自分たちで小麦が作れるようになったら必ず」

「いいんですよ。僕たちも小麦粉を売って歩いてもらっているのは、世界情勢をクーオに調べてもらうためなんですから」

 最近、小麦粉などを売りに出す対価は世界情勢を調べることに決めている。
 クーオも暗雲立ちこめつつある状況に嫌と言わずうなずいてくれた。
 クーオが各街で小麦粉や野菜を売り歩き、噂話として聞き集めてきたことをホーフーンと僕でまとめて地図を作りあげている。
 いまはまだ空白地が多いが、世界中どこでも不作が叫ばれているようだ。

 特に人間国家の状況がちょっと怪しい。
 全部で4カ国あるのだがどこも武具を買い集め始めたらしいのだ。
 近いうちに戦になるかもしれないとあり、人間族国家に隣接している国々は緊張感を増している。
 いまのところ世界樹の森に避難してきているのはダークエルフたちだけだが、今後はもっと増えるだろう。
 それに備え、僕たちも作物の増産をしなくちゃね。
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