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第二章 世界樹の枝と外の状況

34. 世界樹の判断

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 自信満々のホーフーンが向かった先、それは僕たちの屋敷のそばに作られた広場にある世界樹の苗木の元だった。
 世界樹の苗木と言っても、既に高さは数十メートルはある立派な世界樹の枝だ。
 ここでなにをするんだろう?

「世界樹の精霊様、おこしくださいにゃ」

「ホーフーン?」

「どうしても困ったときは世界樹頼みにゃ。ここは世界樹の森だからにゃ」

 いや、世界樹の森だからって世界樹に頼るのも……。
 なにかが違う、そう考えていたところ、世界樹の枝が輝き中から世界樹の精霊様が姿を現した。
 本当に世界樹の精霊様が来てくれたよ。

『どうしたのですか、猫の賢者。急に呼び出しなどとは』

「お呼び立てして申し訳ございませんのにゃ。実は、吾輩たちの作っている食料を欲しがる村がありますのにゃ」

『ふむ。それで?』

「どうやらその村では食料が底を突き、本当に食うに困っている様子。クーオ相手に山賊の真似事をしようとしていたらしいのですのにゃ」

『まあ、そこまで。外界のことは詳しく知りませんでしたが、そんなに食糧不足が深刻化していましたか』

「そのようでございますにゃ」

 ホーフーンは世界樹の精霊様に外界のことを報告してどうするつもりなんだろう?
 世界樹の精霊様って外界にも影響を及ぼせるんだろうか?

「それで世界樹の精霊様にご相談ですにゃ。もし差し支えなければ、外界の民の一部をこの世界樹の枝のある広場に招き入れてほしいのですにゃ」

「え!?」

『なるほど。私の元で保護するわけですね?』

「そうなりますにゃ。食料が底を突くほど貧しい地域、多少の土壌改善では豊かになりませんのにゃ。吾輩が手を貸してもどうしようもない事態、世界樹の精霊様のお力添えを願えればと」

『わかりました。そういうことでしたら悪人以外は認めましょう。ですが、そういった方々は世界中にいますよね? それはどう考えますか?』

「はいですにゃ。できる限りこの場に集めたいところですにゃ。条件は種族が違ってもいがみ合わないことにゃ」

『それでしたらいいでしょう。そちらの猫の商人は世界中を行き来出来るのでしたね。これをお持ちなさい』

 世界樹の精霊様が差し出してきたのはキラキラ輝く宝石のような種。
 これって?

『この広場へとつながる門を作る花の種です。地面に植えて水を与えればすぐに開花し時空の門を開きます。門を開いていられる時間は二時間のみ。時間が経てば門は消え、花は枯れて消え失せます』

「ニャ。そのような貴重品をこんなに……。必ずや使命を果たしますニャ!」

『そうしてください。それから、バオア。あなたは『農業機器』スキルを使い、新しく住人になる人々へ農業を教えていくのです。あなたの道具であれば、数十人が食べるだけの畑を耕すなど数日のことでしょう?』

「はい。人手さえあれば3日で出来ると思います」

『人手は新しく来た者たちを使いなさい。住む土地は与えますがそれ以外は自分たちで作っていってもらいます』

「それって家とかもですか?」

『そうなりますね。……ああ、あなたのスキルは農業に特化しているのであって木材の切り出しや加工には向いていないのでしたか』

「新しい機器が出てくれば可能でしょうけれど、今の段階では不可能です」

『では斧や木材加工に必要な品々を授けましょう。木材はこの近くにある木々を自由に切り倒して使ってもらって構いません』

「わかりました。ご配慮ありがとうございます」

『いえ。それでは、またいずれ』

 話が終わると世界樹の精霊様はまた光り輝き消え去っていった。
 消え去ったあとには、斧を初めとした木材の加工器具がたくさん並べられている。
 これを好きに使えということなんだろう。

「聞きましたかにゃ、クーオ。お前の役割は、世界各地で貧困に喘いでいる民をこの広場に招き入れることにゃ。あとのことは吾輩たちがするのにゃ。暴れようとすれば、世界樹の精霊様が追い出すでしょうからにゃ」

「わかりましたニャ。では、早速ひとつ目の村として先ほどのダークエルフの村を訪れますのニャ」

「頼んだのにゃ。1番手としてそのダークエルフの村を招き入れるのにゃ。引っ越しをするにも意見を統一するにも時間がかかるでしょうから、今日の分の食料として小麦粉や野菜を渡しても構いませんにゃ」

「わかりましたニャ」

「頼んだよ、クーオ」

「これは責任重大ですニャア。でも、やり遂げてみせますニャ!」

 気合いを入れたクーオは犬車へと乗り込み時空の彼方へ消えていった。
 移住の話がうまく進めばいいけど。
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