33 / 71
第二章 世界樹の枝と外の状況
33. 外部の状況
しおりを挟む
屋敷の前まで戻ってみると、やはりクーオが来ているようだった。
大きくて目立つ犬車はクーオの物で間違いない。
でも、普段は鐘を鳴らして呼び出すことはしないのに、今日はどうしたんだろう?
ともかく、会って話を聞かないと。
「クーオ、どうしたの急に」
「ニャ。数日ぶりですニャ、バオア様、ホーフーン様。ちょっと相談事があって参りましたニャ」
「クーオが相談事ですかにゃ。あまりよい話ではない気がしますにゃ」
「ニャハハ……その通りですニャ。ともかく、相談に乗ってくださいニャ」
屋敷の外で立ち話もなんなので屋敷に入り応接間で話を聞くことにする。
シャリナが煎れてくれたお茶を一口飲み、クーオは話し始めた。
「今日はバオア様とホーフーン様に小麦粉などの食料をある村に譲る許可をいただきに来たのニャ」
「食料を?」
「はいニャ。その村では食べ物が底を突き、一部の村人が山賊の真似事までして食料を手に入れようとしていましたニャ。その村にバオア様とホーフーン様の食料を分けてあげてもいいか聞きに来ましたニャ」
山賊行為をするほど食料に困るだなんて一大事じゃないか!
僕はすぐに許可を出そうとしたけど、ホーフーンがそれに待ったをかけてきた。
一体どうしたんだろう?
ホーフーンにとって、あの小麦粉や野菜はスキルの検証で生まれた副産物なのに。
「クーオ、今回その村を助けて今後はどうするつもりですのにゃ?」
「う、それは……痛い質問ですのニャ」
「吾輩にとってあの小麦粉や野菜はそこまで大事なものでもないのにゃ。渡したければ渡せばいいのにゃ。でも、今回助けてもそれは急場しのぎ、すぐにまた食料が必要になるのにゃ。その時、また食料を渡すのですかにゃ?」
「さすがにそこまでは面倒を見きれないのニャ。ですが、そう考えると今回小麦粉を渡しても一緒ニャ」
「そうなるのにゃ。困っている人を助けるのは美徳ですが、一回限りでは意味がないのにゃ。もっと先を見越して行動しなくちゃだめなのにゃ」
「先を見越して……どうするのニャ?」
「それをいまから考えるのにゃ」
やっぱりホーフーンにとっても小麦粉などを渡すこと自体はたいした問題じゃないらしい。
問題なのは今回助けたとしても次がないこと。
僕たちが毎回支援をするわけにもいかないし、支援をやめたらすぐに村が立ちゆかなくなる。
そこまで考えて結論を出さなくちゃいけない。
でも、どうやって解決すればいいんだろう?
「まず状況整理にゃ。クーオ、その村にはどれくらいの村人がいたのですかにゃ?」
「数えてはこなかったのですが、50人未満だと思いますニャ。かなり小規模な村でしたからニャ」
「ふむ。いままでその村はどうやって暮らしていたのですかにゃ?」
「普畑で麦を作ったり野生動物を狩猟していたりしていたそうですニャ。特に変わったことをしていた村でもありませんニャ。そういう意味では、なんの特色もないただの寒村ですのニャ」
「なるほど。では、その村に小麦粉を譲るとしてどの程度を見越していますかにゃ?」
「そこなんですよニャ。あまり多くの小麦粉を渡すわけにもいきませんのニャ。かといって、少ない量では数日分にしかならないのニャ。本当に困ったのニャ」
うーん、僕たちが作ることが出来る小麦の量はまだまだ増やせると思う。
だからと言ってひとつの村に食糧支援を続けることも出来ない。
どうしたものか。
「ねえ、クーオ。その村で起きていることって珍しいことなの?」
「さすがに食べるものがなにもなくなるというのは珍しいですニャ。でも、いまは世界的に見てどの地域も不作状態、裕福な暮らしをしているのは王侯貴族や富裕層だけで貧民や農民たちは毎日の食事にも苦しんでますのニャ」
「そっか。そうなると、その村を救って終わりってことにもならないよね」
「そうですニャ。世界中を行き来する私にとって、このレベルの話も探せば見つかる物ですのニャ。国や地域ではさすがに珍しくとも、世界中を股にかける私にとっては珍しくもない話でしょうからニャ」
「難しい話だね」
「難しい話ですニャ……」
さて、どうしよう。
僕たちの作る食料はやっぱり数が知れている。
そんなわずかな食料で世界を救うなんて不可能だ。
この問題を解決するにはどうすればいいんだろうか?
困ったなあ。
「バオアもクーオも難しそうな顔をしていますにゃぁ」
「難しそうな顔じゃなくて本当に難しいんだよ、ホーフーン」
「はいですニャ。ホーフーン様にはなにかいい知恵がおありですかニャ?」
「あると言えばある、ないと言えばないですにゃ。まあ、黙って吾輩に任せるのにゃ」
あると言えばあるって……本当に大丈夫なの?
信じていいんだよね、ホーフーン?
大きくて目立つ犬車はクーオの物で間違いない。
でも、普段は鐘を鳴らして呼び出すことはしないのに、今日はどうしたんだろう?
ともかく、会って話を聞かないと。
「クーオ、どうしたの急に」
「ニャ。数日ぶりですニャ、バオア様、ホーフーン様。ちょっと相談事があって参りましたニャ」
「クーオが相談事ですかにゃ。あまりよい話ではない気がしますにゃ」
「ニャハハ……その通りですニャ。ともかく、相談に乗ってくださいニャ」
屋敷の外で立ち話もなんなので屋敷に入り応接間で話を聞くことにする。
シャリナが煎れてくれたお茶を一口飲み、クーオは話し始めた。
「今日はバオア様とホーフーン様に小麦粉などの食料をある村に譲る許可をいただきに来たのニャ」
「食料を?」
「はいニャ。その村では食べ物が底を突き、一部の村人が山賊の真似事までして食料を手に入れようとしていましたニャ。その村にバオア様とホーフーン様の食料を分けてあげてもいいか聞きに来ましたニャ」
山賊行為をするほど食料に困るだなんて一大事じゃないか!
僕はすぐに許可を出そうとしたけど、ホーフーンがそれに待ったをかけてきた。
一体どうしたんだろう?
ホーフーンにとって、あの小麦粉や野菜はスキルの検証で生まれた副産物なのに。
「クーオ、今回その村を助けて今後はどうするつもりですのにゃ?」
「う、それは……痛い質問ですのニャ」
「吾輩にとってあの小麦粉や野菜はそこまで大事なものでもないのにゃ。渡したければ渡せばいいのにゃ。でも、今回助けてもそれは急場しのぎ、すぐにまた食料が必要になるのにゃ。その時、また食料を渡すのですかにゃ?」
「さすがにそこまでは面倒を見きれないのニャ。ですが、そう考えると今回小麦粉を渡しても一緒ニャ」
「そうなるのにゃ。困っている人を助けるのは美徳ですが、一回限りでは意味がないのにゃ。もっと先を見越して行動しなくちゃだめなのにゃ」
「先を見越して……どうするのニャ?」
「それをいまから考えるのにゃ」
やっぱりホーフーンにとっても小麦粉などを渡すこと自体はたいした問題じゃないらしい。
問題なのは今回助けたとしても次がないこと。
僕たちが毎回支援をするわけにもいかないし、支援をやめたらすぐに村が立ちゆかなくなる。
そこまで考えて結論を出さなくちゃいけない。
でも、どうやって解決すればいいんだろう?
「まず状況整理にゃ。クーオ、その村にはどれくらいの村人がいたのですかにゃ?」
「数えてはこなかったのですが、50人未満だと思いますニャ。かなり小規模な村でしたからニャ」
「ふむ。いままでその村はどうやって暮らしていたのですかにゃ?」
「普畑で麦を作ったり野生動物を狩猟していたりしていたそうですニャ。特に変わったことをしていた村でもありませんニャ。そういう意味では、なんの特色もないただの寒村ですのニャ」
「なるほど。では、その村に小麦粉を譲るとしてどの程度を見越していますかにゃ?」
「そこなんですよニャ。あまり多くの小麦粉を渡すわけにもいきませんのニャ。かといって、少ない量では数日分にしかならないのニャ。本当に困ったのニャ」
うーん、僕たちが作ることが出来る小麦の量はまだまだ増やせると思う。
だからと言ってひとつの村に食糧支援を続けることも出来ない。
どうしたものか。
「ねえ、クーオ。その村で起きていることって珍しいことなの?」
「さすがに食べるものがなにもなくなるというのは珍しいですニャ。でも、いまは世界的に見てどの地域も不作状態、裕福な暮らしをしているのは王侯貴族や富裕層だけで貧民や農民たちは毎日の食事にも苦しんでますのニャ」
「そっか。そうなると、その村を救って終わりってことにもならないよね」
「そうですニャ。世界中を行き来する私にとって、このレベルの話も探せば見つかる物ですのニャ。国や地域ではさすがに珍しくとも、世界中を股にかける私にとっては珍しくもない話でしょうからニャ」
「難しい話だね」
「難しい話ですニャ……」
さて、どうしよう。
僕たちの作る食料はやっぱり数が知れている。
そんなわずかな食料で世界を救うなんて不可能だ。
この問題を解決するにはどうすればいいんだろうか?
困ったなあ。
「バオアもクーオも難しそうな顔をしていますにゃぁ」
「難しそうな顔じゃなくて本当に難しいんだよ、ホーフーン」
「はいですニャ。ホーフーン様にはなにかいい知恵がおありですかニャ?」
「あると言えばある、ないと言えばないですにゃ。まあ、黙って吾輩に任せるのにゃ」
あると言えばあるって……本当に大丈夫なの?
信じていいんだよね、ホーフーン?
1
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説
やさしい魔法と君のための物語。
雨色銀水
ファンタジー
これは森の魔法使いと子供の出会いから始まる、出会いと別れと再会の長い物語――。
※第一部「君と過ごしたなもなき季節に」編あらすじ※
かつて罪を犯し、森に幽閉されていた魔法使いはある日、ひとりの子供を拾う。
ぼろぼろで小さな子供は、名前さえも持たず、ずっと長い間孤独に生きてきた。
孤独な魔法使いと幼い子供。二人は不器用ながらも少しずつ心の距離を縮めながら、絆を深めていく。
失ったものを埋めあうように、二人はいつしか家族のようなものになっていき――。
「ただ、抱きしめる。それだけのことができなかったんだ」
雪が溶けて、春が来たら。
また、出会えると信じている。
※第二部「あなたに贈るシフソフィラ」編あらすじ※
王国に仕える『魔法使い』は、ある日、宰相から一つの依頼を受ける。
魔法石の盗難事件――その事件の解決に向け、調査を始める魔法使いと騎士と弟子たち。
調査を続けていた魔法使いは、一つの結末にたどり着くのだが――。
「あなたが大好きですよ、誰よりもね」
結末の先に訪れる破滅と失われた絆。魔法使いはすべてを失い、物語はゼロに戻る。
※第三部「魔法使いの掟とソフィラの願い」編あらすじ※
魔法使いであった少年は罪を犯し、大切な人たちから離れて一つの村へとたどり着いていた。
そこで根を下ろし、時を過ごした少年は青年となり、ひとりの子供と出会う。
獣の耳としっぽを持つ、人ならざる姿の少女――幼い彼女を救うため、青年はかつての師と罪に向き合い、立ち向かっていく。
青年は自分の罪を乗り越え、先の未来をつかみ取れるのか――?
「生きる限り、忘れることなんかできない」
最後に訪れた再会は、奇跡のように涙を降らせる。
第四部「さよならを告げる風の彼方に」編
ヴィルヘルムと魔法使い、そしてかつての英雄『ギルベルト』に捧ぐ物語。
※他サイトにも同時投稿しています。
えっ、じいちゃん昔勇者だったのっ!?〜祖父の遺品整理をしてたら異世界に飛ばされ、行方不明だった父に魔王の心臓を要求されたので逃げる事にした〜
楠ノ木雫
ファンタジー
まだ16歳の奥村留衣は、ずっと一人で育ててくれていた祖父を亡くした。親戚も両親もいないため、一人で遺品整理をしていた時に偶然見つけた腕輪。ふとそれを嵌めてみたら、いきなり違う世界に飛ばされてしまった。
目の前に浮かんでいた、よくあるシステムウィンドウというものに書かれていたものは『勇者の孫』。そう、亡くなった祖父はこの世界の勇者だったのだ。
そして、行方不明だと言われていた両親に会う事に。だが、祖父が以前討伐した魔王の心臓を渡すよう要求されたのでドラゴンを召喚して逃げた!
追われつつも、故郷らしい異世界での楽しい(?)セカンドライフが今始まる!
※他の投稿サイトにも掲載しています。
キャンピングカーで異世界の旅
モルモット
ファンタジー
主人公と天女の二人がキャンピングカーで異世界を旅する物語。
紹介文
夢のキャンピングカーを手に入れた主人公でしたが 目が覚めると異世界に飛ばされていました。戻れるのでしょうか?そんなとき主人公の前に自分を天女だと名乗る使者が現れるのです。
彼女は内気な性格ですが実は神様から命を受けた刺客だったのです。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる