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第二章 世界樹の枝と外の状況

33. 外部の状況

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 屋敷の前まで戻ってみると、やはりクーオが来ているようだった。
 大きくて目立つ犬車はクーオの物で間違いない。
 でも、普段は鐘を鳴らして呼び出すことはしないのに、今日はどうしたんだろう?
 ともかく、会って話を聞かないと。

「クーオ、どうしたの急に」

「ニャ。数日ぶりですニャ、バオア様、ホーフーン様。ちょっと相談事があって参りましたニャ」

「クーオが相談事ですかにゃ。あまりよい話ではない気がしますにゃ」

「ニャハハ……その通りですニャ。ともかく、相談に乗ってくださいニャ」

 屋敷の外で立ち話もなんなので屋敷に入り応接間で話を聞くことにする。
 シャリナが煎れてくれたお茶を一口飲み、クーオは話し始めた。

「今日はバオア様とホーフーン様に小麦粉などの食料をある村に譲る許可をいただきに来たのニャ」

「食料を?」

「はいニャ。その村では食べ物が底を突き、一部の村人が山賊の真似事までして食料を手に入れようとしていましたニャ。その村にバオア様とホーフーン様の食料を分けてあげてもいいか聞きに来ましたニャ」

 山賊行為をするほど食料に困るだなんて一大事じゃないか!
 僕はすぐに許可を出そうとしたけど、ホーフーンがそれに待ったをかけてきた。
 一体どうしたんだろう?
 ホーフーンにとって、あの小麦粉や野菜はスキルの検証で生まれた副産物なのに。

「クーオ、今回その村を助けて今後はどうするつもりですのにゃ?」

「う、それは……痛い質問ですのニャ」

「吾輩にとってあの小麦粉や野菜はそこまで大事なものでもないのにゃ。渡したければ渡せばいいのにゃ。でも、今回助けてもそれは急場しのぎ、すぐにまた食料が必要になるのにゃ。その時、また食料を渡すのですかにゃ?」

「さすがにそこまでは面倒を見きれないのニャ。ですが、そう考えると今回小麦粉を渡しても一緒ニャ」

「そうなるのにゃ。困っている人を助けるのは美徳ですが、一回限りでは意味がないのにゃ。もっと先を見越して行動しなくちゃだめなのにゃ」

「先を見越して……どうするのニャ?」

「それをいまから考えるのにゃ」

 やっぱりホーフーンにとっても小麦粉などを渡すこと自体はたいした問題じゃないらしい。
 問題なのは今回助けたとしても次がないこと。
 僕たちが毎回支援をするわけにもいかないし、支援をやめたらすぐに村が立ちゆかなくなる。
 そこまで考えて結論を出さなくちゃいけない。
 でも、どうやって解決すればいいんだろう?

「まず状況整理にゃ。クーオ、その村にはどれくらいの村人がいたのですかにゃ?」

「数えてはこなかったのですが、50人未満だと思いますニャ。かなり小規模な村でしたからニャ」

「ふむ。いままでその村はどうやって暮らしていたのですかにゃ?」

「普畑で麦を作ったり野生動物を狩猟していたりしていたそうですニャ。特に変わったことをしていた村でもありませんニャ。そういう意味では、なんの特色もないただの寒村ですのニャ」

「なるほど。では、その村に小麦粉を譲るとしてどの程度を見越していますかにゃ?」

「そこなんですよニャ。あまり多くの小麦粉を渡すわけにもいきませんのニャ。かといって、少ない量では数日分にしかならないのニャ。本当に困ったのニャ」

 うーん、僕たちが作ることが出来る小麦の量はまだまだ増やせると思う。
 だからと言ってひとつの村に食糧支援を続けることも出来ない。
 どうしたものか。

「ねえ、クーオ。その村で起きていることって珍しいことなの?」

「さすがに食べるものがなにもなくなるというのは珍しいですニャ。でも、いまは世界的に見てどの地域も不作状態、裕福な暮らしをしているのは王侯貴族や富裕層だけで貧民や農民たちは毎日の食事にも苦しんでますのニャ」

「そっか。そうなると、その村を救って終わりってことにもならないよね」

「そうですニャ。世界中を行き来する私にとって、このレベルの話も探せば見つかる物ですのニャ。国や地域ではさすがに珍しくとも、世界中を股にかける私にとっては珍しくもない話でしょうからニャ」

「難しい話だね」

「難しい話ですニャ……」

 さて、どうしよう。
 僕たちの作る食料はやっぱり数が知れている。
 そんなわずかな食料で世界を救うなんて不可能だ。
 この問題を解決するにはどうすればいいんだろうか?
 困ったなあ。

「バオアもクーオも難しそうな顔をしていますにゃぁ」

「難しそうな顔じゃなくて本当に難しいんだよ、ホーフーン」

「はいですニャ。ホーフーン様にはなにかいい知恵がおありですかニャ?」

「あると言えばある、ないと言えばないですにゃ。まあ、黙って吾輩に任せるのにゃ」

 あると言えばあるって……本当に大丈夫なの?
 信じていいんだよね、ホーフーン?
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