3 / 71
第一章 僕たちの出会いとスキル〝農業機器〟
3. 『世界樹の森』の加護
しおりを挟む
食料を探し始めて30分ほど、今日一日食べる分には十分な量の果物が集まった。
集まった果物も色とりどり、多種多様で食欲をそそる。
でも、こんな簡単に採れてもいいんだろうか?
「さて、食料はもう十分でしょうにゃ。とりあえずご飯にしますにゃ。バオアは空腹で仕方がないでしょうからにゃ」
さっきお腹が大きく鳴ったし、それはばれてるよね。
どれくらいの間食べていないのかもわからないし、とにかく目の前に新鮮な果物が並んでいると急に空腹感が強くなってくる。
でも、本当にこれを食べても大丈夫なんだろうか?
毒とかはないよね?
「ひょっとして、その果物が食用に向くかどうかわからずためらっていますかにゃ?」
「そうだよ。いきなり見たこともない果物を食べるのは、お腹が空いていてもちょっと……」
「それなら心配無用ですにゃ。吾輩のスキル『解析』で毒もなく栄養価も高い食用に適した果物だと判別されていますにゃ」
「ホーフーンのスキル?」
「はいですにゃ。わかりやすく言えば、どんなものでも見抜くスキルにゃ。毒がないのは保証しますから食事にしましょうにゃ」
ホーフーンは持っていた果物を口に運んでかぶりついた。
すると、特に気分を害した様子もなく、むしろ美味しそうに果物を食べている。
本当に毒はないのかな?
僕も一口食べてみよう。
果物を一口頬張ると、甘い果汁が口の中いっぱいに広がった。
果物そのものもすごくみずみずしいし、甘くて美味しい。
「美味しい……」
「だから吾輩のスキルを信じればいいと言ったのにゃ」
「ごめん、ホーフーン」
「気にすることはないのにゃ。誰だって見たことのない食べ物には警戒するものにゃ」
僕はそういうものだと納得して残りの果物を食べた。
お腹がいっぱいになったところで手を止めたけど、集めた果物の半分程度を食べてしまったようだ。
相当お腹が空いていたんだな。
残った果物は革袋を持っているホーフーンが預かってくれるようだ。
「いやあ、いい食べっぷりでしたにゃ。よほどお腹が空いていたんですにゃ」
「僕もビックリした。こんなに食べられるなんて思わなかったよ」
「さて、食事も終わりましたし疲れを取るために一眠り……と言いたいところですが、さすがに森の真っ只中で眠るのはよくありませんにゃ。見たところ、防寒用のマントさえ持っていないようですからにゃ」
うん、ボロの服に着替えさせられた他は着の身着のまま投げ出されたからね。
物を持ち歩くための袋すらないんだから困りものだ。
「森の中を探せば仮宿に出来そうな居住地が見つかるかもしれませんにゃ。というか、『世界樹の森』から嫌われていなければ、確実にふさわしい場所へと案内してもらえるはずですのにゃ」
「ふさわしい場所って?」
「まあ、その人の特技が活かせそうな場所ですにゃ。どんな場所かは行ってみてのお楽しみになりますにゃ」
「曖昧だななぁ」
「仕方のないことですにゃ。吾輩は森の中で暮らせたので、特になにもない木のうろで生活しておりましたが、バオアは違いますにゃ」
「そうだね。さすがに木のうろで生活するのはちょっと」
「というわけで、新しい居住地が用意されていないか探検ですにゃ」
「わかった。案内してもらえるかな、ホーフーン」
「はいですにゃ」
ホーフーンは迷うことなく森の奥へと足を踏み入れていく。
僕もホーフーンに遅れないようについていった。
森の中は木々が生い茂り生命力を感じさせる。
森の外からはおどろおどろしい感じを受けたけど、森の中に入ってからはそんな気配を一切感じない。
むしろ歓迎されているようにすら感じる。
『闇の樹海』と言えば、木の一本すら切り出せない恐ろしい森だと聞いていたんだけど、本当にここは『世界樹の森』なんだろうか。
「む。着いたようですにゃ」
「そうなの?」
「森が開けてきましたにゃ。おそらく目的地に着いたはずですにゃ」
「そっか。せめて寝るのに困らない場所があればいいんだけど」
「大丈夫だと思いますのにゃ。さて、どんな場所が用意されているのでしょうかにゃ?」
ホーフーンと一緒に森を抜けると、そこは背の低い草が覆い茂った平原だった。
馬車が通れそうな道も整備されており、ある種、人の暮らす街の近郊にあるような草原にそっくりだ。
これは一体?
「ふむ。そう来ましたかにゃ」
「ホーフーン?」
「世界樹の森はバオアのスキルに相応しい場所を用意してくれたようですにゃ」
「僕のスキル?」
僕のスキルといえば『農業機器』だけど、ホーフーンはこれについても何か知っているのだろうか?
猫の賢者とは、そんな知識まで持っているのかな。
「まあ、今日のところはゆっくり休むとしましょうにゃ。あそこに休むのにはよさそうな小屋も用意されておりますにゃ」
「本当だ。これが世界樹の森」
「そうなりますにゃ。欲張らなければ暮らしていけるだけの環境を与えてもらえるのがこの森ですにゃ。ともかく、今日一日はゆっくり休むとしますにゃ」
「うん。そうさせてもらうよ」
ゆっくり休める場所が見つかったと思うと急に眠くなってきた。
いままでは緊張の糸が張り詰めていたから気にしなかったけど、非常に体が疲れていたみたいだ。
もう休むことしか考えられない。
早く、あそこの小屋に行って休もう。
ホーフーンの言っていたスキルについての話は明日だ。
ああ、ゆっくり休めるなんて素晴らしい。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/ホーフーン
さて、バオアは泥のように眠ってしまいましたにゃ。
よほど疲れているようですにゃ。
吾輩が近づいてもまったく起きる気配がないのですからにゃ。
「『解析』」
吾輩は至近距離でスキルを発動させたのにゃ。
この『解析』というスキル、どんなことでもわかる代わりに距離が近ければ近いほどわかることが多いという性質を持っていますのにゃ。
要するに離れた場所からスキルを使うとそれなりの情報しか得られませんのにゃ。
「……ふむ。やっぱり興味深いのですにゃ」
バオアのスキルを調べ終わると吾輩はゆっくりとバオアのそばから離れましたのにゃ。
急いで離れてバオアを起こしては悪いですからにゃあ。
「さて、明日からはスキルを実際に使っての作業。どこまで行けますかにゃ」
スキル『農業機器』のことを調べる限り、熟練度が上がることによって出来ることが増えるレベル制のスキルですにゃ。
低レベルのうちに出来ることで本当に『農業』が出来るのか、楽しみですにゃあ。
集まった果物も色とりどり、多種多様で食欲をそそる。
でも、こんな簡単に採れてもいいんだろうか?
「さて、食料はもう十分でしょうにゃ。とりあえずご飯にしますにゃ。バオアは空腹で仕方がないでしょうからにゃ」
さっきお腹が大きく鳴ったし、それはばれてるよね。
どれくらいの間食べていないのかもわからないし、とにかく目の前に新鮮な果物が並んでいると急に空腹感が強くなってくる。
でも、本当にこれを食べても大丈夫なんだろうか?
毒とかはないよね?
「ひょっとして、その果物が食用に向くかどうかわからずためらっていますかにゃ?」
「そうだよ。いきなり見たこともない果物を食べるのは、お腹が空いていてもちょっと……」
「それなら心配無用ですにゃ。吾輩のスキル『解析』で毒もなく栄養価も高い食用に適した果物だと判別されていますにゃ」
「ホーフーンのスキル?」
「はいですにゃ。わかりやすく言えば、どんなものでも見抜くスキルにゃ。毒がないのは保証しますから食事にしましょうにゃ」
ホーフーンは持っていた果物を口に運んでかぶりついた。
すると、特に気分を害した様子もなく、むしろ美味しそうに果物を食べている。
本当に毒はないのかな?
僕も一口食べてみよう。
果物を一口頬張ると、甘い果汁が口の中いっぱいに広がった。
果物そのものもすごくみずみずしいし、甘くて美味しい。
「美味しい……」
「だから吾輩のスキルを信じればいいと言ったのにゃ」
「ごめん、ホーフーン」
「気にすることはないのにゃ。誰だって見たことのない食べ物には警戒するものにゃ」
僕はそういうものだと納得して残りの果物を食べた。
お腹がいっぱいになったところで手を止めたけど、集めた果物の半分程度を食べてしまったようだ。
相当お腹が空いていたんだな。
残った果物は革袋を持っているホーフーンが預かってくれるようだ。
「いやあ、いい食べっぷりでしたにゃ。よほどお腹が空いていたんですにゃ」
「僕もビックリした。こんなに食べられるなんて思わなかったよ」
「さて、食事も終わりましたし疲れを取るために一眠り……と言いたいところですが、さすがに森の真っ只中で眠るのはよくありませんにゃ。見たところ、防寒用のマントさえ持っていないようですからにゃ」
うん、ボロの服に着替えさせられた他は着の身着のまま投げ出されたからね。
物を持ち歩くための袋すらないんだから困りものだ。
「森の中を探せば仮宿に出来そうな居住地が見つかるかもしれませんにゃ。というか、『世界樹の森』から嫌われていなければ、確実にふさわしい場所へと案内してもらえるはずですのにゃ」
「ふさわしい場所って?」
「まあ、その人の特技が活かせそうな場所ですにゃ。どんな場所かは行ってみてのお楽しみになりますにゃ」
「曖昧だななぁ」
「仕方のないことですにゃ。吾輩は森の中で暮らせたので、特になにもない木のうろで生活しておりましたが、バオアは違いますにゃ」
「そうだね。さすがに木のうろで生活するのはちょっと」
「というわけで、新しい居住地が用意されていないか探検ですにゃ」
「わかった。案内してもらえるかな、ホーフーン」
「はいですにゃ」
ホーフーンは迷うことなく森の奥へと足を踏み入れていく。
僕もホーフーンに遅れないようについていった。
森の中は木々が生い茂り生命力を感じさせる。
森の外からはおどろおどろしい感じを受けたけど、森の中に入ってからはそんな気配を一切感じない。
むしろ歓迎されているようにすら感じる。
『闇の樹海』と言えば、木の一本すら切り出せない恐ろしい森だと聞いていたんだけど、本当にここは『世界樹の森』なんだろうか。
「む。着いたようですにゃ」
「そうなの?」
「森が開けてきましたにゃ。おそらく目的地に着いたはずですにゃ」
「そっか。せめて寝るのに困らない場所があればいいんだけど」
「大丈夫だと思いますのにゃ。さて、どんな場所が用意されているのでしょうかにゃ?」
ホーフーンと一緒に森を抜けると、そこは背の低い草が覆い茂った平原だった。
馬車が通れそうな道も整備されており、ある種、人の暮らす街の近郊にあるような草原にそっくりだ。
これは一体?
「ふむ。そう来ましたかにゃ」
「ホーフーン?」
「世界樹の森はバオアのスキルに相応しい場所を用意してくれたようですにゃ」
「僕のスキル?」
僕のスキルといえば『農業機器』だけど、ホーフーンはこれについても何か知っているのだろうか?
猫の賢者とは、そんな知識まで持っているのかな。
「まあ、今日のところはゆっくり休むとしましょうにゃ。あそこに休むのにはよさそうな小屋も用意されておりますにゃ」
「本当だ。これが世界樹の森」
「そうなりますにゃ。欲張らなければ暮らしていけるだけの環境を与えてもらえるのがこの森ですにゃ。ともかく、今日一日はゆっくり休むとしますにゃ」
「うん。そうさせてもらうよ」
ゆっくり休める場所が見つかったと思うと急に眠くなってきた。
いままでは緊張の糸が張り詰めていたから気にしなかったけど、非常に体が疲れていたみたいだ。
もう休むことしか考えられない。
早く、あそこの小屋に行って休もう。
ホーフーンの言っていたスキルについての話は明日だ。
ああ、ゆっくり休めるなんて素晴らしい。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
_/_/_/_/_/ホーフーン
さて、バオアは泥のように眠ってしまいましたにゃ。
よほど疲れているようですにゃ。
吾輩が近づいてもまったく起きる気配がないのですからにゃ。
「『解析』」
吾輩は至近距離でスキルを発動させたのにゃ。
この『解析』というスキル、どんなことでもわかる代わりに距離が近ければ近いほどわかることが多いという性質を持っていますのにゃ。
要するに離れた場所からスキルを使うとそれなりの情報しか得られませんのにゃ。
「……ふむ。やっぱり興味深いのですにゃ」
バオアのスキルを調べ終わると吾輩はゆっくりとバオアのそばから離れましたのにゃ。
急いで離れてバオアを起こしては悪いですからにゃあ。
「さて、明日からはスキルを実際に使っての作業。どこまで行けますかにゃ」
スキル『農業機器』のことを調べる限り、熟練度が上がることによって出来ることが増えるレベル制のスキルですにゃ。
低レベルのうちに出来ることで本当に『農業』が出来るのか、楽しみですにゃあ。
0
お気に入りに追加
411
あなたにおすすめの小説
えっ、じいちゃん昔勇者だったのっ!?〜祖父の遺品整理をしてたら異世界に飛ばされ、行方不明だった父に魔王の心臓を要求されたので逃げる事にした〜
楠ノ木雫
ファンタジー
まだ16歳の奥村留衣は、ずっと一人で育ててくれていた祖父を亡くした。親戚も両親もいないため、一人で遺品整理をしていた時に偶然見つけた腕輪。ふとそれを嵌めてみたら、いきなり違う世界に飛ばされてしまった。
目の前に浮かんでいた、よくあるシステムウィンドウというものに書かれていたものは『勇者の孫』。そう、亡くなった祖父はこの世界の勇者だったのだ。
そして、行方不明だと言われていた両親に会う事に。だが、祖父が以前討伐した魔王の心臓を渡すよう要求されたのでドラゴンを召喚して逃げた!
追われつつも、故郷らしい異世界での楽しい(?)セカンドライフが今始まる!
※他の投稿サイトにも掲載しています。
キャンピングカーで異世界の旅
モルモット
ファンタジー
主人公と天女の二人がキャンピングカーで異世界を旅する物語。
紹介文
夢のキャンピングカーを手に入れた主人公でしたが 目が覚めると異世界に飛ばされていました。戻れるのでしょうか?そんなとき主人公の前に自分を天女だと名乗る使者が現れるのです。
彼女は内気な性格ですが実は神様から命を受けた刺客だったのです。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる