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第3部 アウラ領、開発中 第2章 ミラーシア湖観光と新しい街
52. ミラーシア湖観光とは
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なんでミラーシア湖を解放しないことで困るのかがピンとこない。
大体、ミラーシア湖って王族の保養地であって貴族の保養地ではないでしょう?
北と南で開放されていた場所が一部あったらしいけど、そこは私がミラーシア湖管理を引き継ぐことになった時点で封鎖されちゃったし、そこの話かな?
「あの、シャムネ伯爵夫人? 困るとはどういう意味ですか?」
「どうもこうもないわよ! あなたが来たおかげで私の実家がミラーシア湖を保養地として利用できなくなって困っているの! どう責任をとるつもり!?」
どう責任をとるつもりって……。
そもそも、シャムネ伯爵夫人の実家とは王族なのだろうか?
「シャムネ伯爵。伯爵夫人の実家は王族の誰かなのですか?」
「い、いえ、違います。遠方にある侯爵家です。ですが、毎年この時期になると、我が領地を経由してミラーシア湖で避暑をされており……」
「あなた! 黙っていなさい!」
「あ、ああ……」
なるほど、話は読めてきた。
一地方貴族でしかない侯爵家が自分の娘の伝手をたどり、王族の保有地であり保養地のミラーシア湖を無断利用していたんだ。
でも、今年はあたしがやってきて守りを固めちゃったからこっそりと利用するわけにもいかず、泣きついてきたと。
あたしの知ったことじゃないよね。
「伯爵夫人。お帰りください。そういう用件でしたらご期待には添えません」
「は? なんですって!?」
「もう一度言います。お帰りください。ミラーシア湖の管理と防衛はミラーシア湖の管理者との間で結んだ協定の上に基づくものです。私個人の理由だけで変えていいものではありません。それが、なんの交流もない貴族の夫人からとなればなおさらです」
「……もう一度言いなさい、成り上がり者」
「では、もう一度だけ。家にお帰りください、礼儀知らず。ミラーシア湖は解放しません」
「くっ! この成り上がりの余所者が!」
「知ったことではありませんよ。フェデラー、クスイ。お客様がお帰りです」
「はい」
「お見送りいたします」
「な、なにをするのですか!?」
「やめろ、ランザ。お邪魔しました、アウラ名誉伯爵」
フェデラーとクスイに連れられてシャムネ伯爵夫妻は部屋から出ていく。
夫人の方は抵抗していたけど伯爵はなだめながら出ていったね。
今回のお願い、相当無理な事を言っているとわかっていたのかな?
ともかく、厄介者も出ていったし、この部屋の片付けを使用人に任せてあたしは執務室へ戻る。
執務室に戻ったあと、ミラーシア湖の解放についての資料がないか探してみたけど……うーん、ないなぁ。
あれこれ資料を探しているとドアがノックされてフェデラーとクスイが入ってきた。
シャムネ伯爵夫妻は無事に追い返せたみたい。
「それで、お嬢様はなにをお探しなのでしょうか?」
「ミラーシア湖の解放についての資料を探しているの。クスイ、なにか知っている?」
「いえ、私もお嬢様付きのメイド長になるまでは城で務めておりましたので……」
「そっか。フェデラーは?」
「私は多少ですが知識がございます。ミラーシア湖の地図を広げてよろしいでしょうか?」
「うん。構わないわ」
「それでは失礼して。……観光地として開放されていた場所ですが、こことここになります」
フェデラーが指し示した場所は南側だとミラーシア湖から流れ出す川のすぐ側、北側はあたしの屋敷のある山の麓になっている。
どっちも切り開いた様子はなかったし、こんな場所を開放していたんだ。
「ここが開放していた場所。でも、ここじゃあ、解放できないよね」
「はい。北側はこの屋敷の山の麓であり立ち入りを制限せねばならない場所。南側も、アウラ様の屋敷を確認出来る場所となっております」
「ちなみに、王家のみんなの別荘って見えなかったの?」
「見えないように木陰で遮っていたようですな」
木で遮るか……。
お風呂からの景色が悪くなるから絶対にダメだよね。
なにかいい手段はないかな?
「いかがいたしましょう、お嬢様。正直に申しますが、あのような痴れ者ののたまう戯れ言に耳を傾ける必要などございませんが」
クスイは相変わらず厳しいね。
あたしも同意見だけどさ。
「フェデラーはどう思う?」
「私もクスイに賛成ですな。あのような者に付き合う理由はありません」
フェデラーも反対っと。
なかなか難しい問題だね。
「了解。ふたりの意見はわかったわ。この一件はあたしが預かる」
「お嬢様が?」
「水龍とか女王陛下とかの意見も聞いてみたいからね。名誉伯爵で納税の義務がないとはいえ、まったく納税しないのもなんだし、これを機会に街作りに着手しようと思ってさ」
「街作りですか。簡単ではございませんよ?」
「無理だって言われたら諦めるよ。第一の街は『農業と観光の街』と言ったところかな」
さて、実際のところはどうだったのか水龍や女王陛下、エリスに聞いてこなくっちゃ。
女王陛下には新しい街を作る際のアドバイスをくれる人も紹介してもらわないとね。
あたし、貴族らしくなってきた?
大体、ミラーシア湖って王族の保養地であって貴族の保養地ではないでしょう?
北と南で開放されていた場所が一部あったらしいけど、そこは私がミラーシア湖管理を引き継ぐことになった時点で封鎖されちゃったし、そこの話かな?
「あの、シャムネ伯爵夫人? 困るとはどういう意味ですか?」
「どうもこうもないわよ! あなたが来たおかげで私の実家がミラーシア湖を保養地として利用できなくなって困っているの! どう責任をとるつもり!?」
どう責任をとるつもりって……。
そもそも、シャムネ伯爵夫人の実家とは王族なのだろうか?
「シャムネ伯爵。伯爵夫人の実家は王族の誰かなのですか?」
「い、いえ、違います。遠方にある侯爵家です。ですが、毎年この時期になると、我が領地を経由してミラーシア湖で避暑をされており……」
「あなた! 黙っていなさい!」
「あ、ああ……」
なるほど、話は読めてきた。
一地方貴族でしかない侯爵家が自分の娘の伝手をたどり、王族の保有地であり保養地のミラーシア湖を無断利用していたんだ。
でも、今年はあたしがやってきて守りを固めちゃったからこっそりと利用するわけにもいかず、泣きついてきたと。
あたしの知ったことじゃないよね。
「伯爵夫人。お帰りください。そういう用件でしたらご期待には添えません」
「は? なんですって!?」
「もう一度言います。お帰りください。ミラーシア湖の管理と防衛はミラーシア湖の管理者との間で結んだ協定の上に基づくものです。私個人の理由だけで変えていいものではありません。それが、なんの交流もない貴族の夫人からとなればなおさらです」
「……もう一度言いなさい、成り上がり者」
「では、もう一度だけ。家にお帰りください、礼儀知らず。ミラーシア湖は解放しません」
「くっ! この成り上がりの余所者が!」
「知ったことではありませんよ。フェデラー、クスイ。お客様がお帰りです」
「はい」
「お見送りいたします」
「な、なにをするのですか!?」
「やめろ、ランザ。お邪魔しました、アウラ名誉伯爵」
フェデラーとクスイに連れられてシャムネ伯爵夫妻は部屋から出ていく。
夫人の方は抵抗していたけど伯爵はなだめながら出ていったね。
今回のお願い、相当無理な事を言っているとわかっていたのかな?
ともかく、厄介者も出ていったし、この部屋の片付けを使用人に任せてあたしは執務室へ戻る。
執務室に戻ったあと、ミラーシア湖の解放についての資料がないか探してみたけど……うーん、ないなぁ。
あれこれ資料を探しているとドアがノックされてフェデラーとクスイが入ってきた。
シャムネ伯爵夫妻は無事に追い返せたみたい。
「それで、お嬢様はなにをお探しなのでしょうか?」
「ミラーシア湖の解放についての資料を探しているの。クスイ、なにか知っている?」
「いえ、私もお嬢様付きのメイド長になるまでは城で務めておりましたので……」
「そっか。フェデラーは?」
「私は多少ですが知識がございます。ミラーシア湖の地図を広げてよろしいでしょうか?」
「うん。構わないわ」
「それでは失礼して。……観光地として開放されていた場所ですが、こことここになります」
フェデラーが指し示した場所は南側だとミラーシア湖から流れ出す川のすぐ側、北側はあたしの屋敷のある山の麓になっている。
どっちも切り開いた様子はなかったし、こんな場所を開放していたんだ。
「ここが開放していた場所。でも、ここじゃあ、解放できないよね」
「はい。北側はこの屋敷の山の麓であり立ち入りを制限せねばならない場所。南側も、アウラ様の屋敷を確認出来る場所となっております」
「ちなみに、王家のみんなの別荘って見えなかったの?」
「見えないように木陰で遮っていたようですな」
木で遮るか……。
お風呂からの景色が悪くなるから絶対にダメだよね。
なにかいい手段はないかな?
「いかがいたしましょう、お嬢様。正直に申しますが、あのような痴れ者ののたまう戯れ言に耳を傾ける必要などございませんが」
クスイは相変わらず厳しいね。
あたしも同意見だけどさ。
「フェデラーはどう思う?」
「私もクスイに賛成ですな。あのような者に付き合う理由はありません」
フェデラーも反対っと。
なかなか難しい問題だね。
「了解。ふたりの意見はわかったわ。この一件はあたしが預かる」
「お嬢様が?」
「水龍とか女王陛下とかの意見も聞いてみたいからね。名誉伯爵で納税の義務がないとはいえ、まったく納税しないのもなんだし、これを機会に街作りに着手しようと思ってさ」
「街作りですか。簡単ではございませんよ?」
「無理だって言われたら諦めるよ。第一の街は『農業と観光の街』と言ったところかな」
さて、実際のところはどうだったのか水龍や女王陛下、エリスに聞いてこなくっちゃ。
女王陛下には新しい街を作る際のアドバイスをくれる人も紹介してもらわないとね。
あたし、貴族らしくなってきた?
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