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第1部 鍛冶の炎、目覚める 第4章 第一王女 エリクシール = マナストリア
15. きな臭い話
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「はい。新しい剣、できたよ。無理をしない程度に使ってね」
「はい! ありがとうございます!」
ロマネさんと一緒にダークドラゴン狩りに行ってから3カ月、季節は冬のまっただ中。
でも、あたしはまだリードアローにいた。
正確にはリードアローから動けなくなっちゃったんだ。
なぜなら、あたしもロマネさんと一緒にダークドラゴンを退治したことを国軍は知っているから、あたしにもダークドラゴン素材をよこせと圧力をかけてくるようになった。
そのため、街から出してもらえなくなっちゃったんだよね。
無視して空を飛んで離脱することもできるけどさ。
あと、ロマネさんと狩りに行った帰りに見かけて倒してきたアイアンゴーレム。
その素材を使って新人冒険者たちにそれなりの値段で武器や盾を売っている。
こっちもなかなか盛況で、いまも引っ切りなしに注文が入っている状態なんだ。
さすがに新人には細かいイメージができないから、大まかな要望だけ聞き取ってそれを元にあたしが本格的な装備に仕立て上げる。
新人たちにはそれで十分みたい。
細かいバランス調整もできあがったあとにやってあげているし、問題はないと思いたいな。
前に鍛冶ギルドが難癖をつけてきたけど、その時あたしの作った鋼の盾を聖銀鉱の剣で切れない、どころか聖銀鉱の剣が折れるという派手な失態を見せてしまったため、あたしの装備が爆売れなの。
ちょっと頑丈にするだけのエンチャントしか施してなかったのにそれでも折れるだなんてあの剣を作った鍛冶師はいまでも食べて行けているんだろうか?
そんな感じであたしはリードアローに縛り付けられたまま。
官憲が出入りできない場所ということで、ルインハンターズギルドからもほとんど出歩いていない。
なにが楽しいのかって言われるかもしれないけれど、装備作りもそれなりに楽しくなって来たしいいんじゃないかな。
そこそこ楽しい毎日を過ごしている中、ある日朝風呂を楽しんでいたところ家のドアが叩かれお客さんが来た。
急いで体を拭き、服を着て応対に出ると、そこにいたのはロマネとリンガさん。
それから、ドワーフのおじさんと人間族のおじさん。
この組み合わせは?
「ロマネ、リンガさん。今日は一体どうしたんですか? それも見知らぬ人を連れてだなんて」
うん、ロマネとは何度も会ううちに仲良くなって敬称を付けなくてもいいことになったんだ。
ロマネの方がはるかに年上のはずなのにね。
「ああ、朝早くからすまないな。朝風呂の途中だったか」
「それはいいんだけど……誰?」
「このふたりはAランク冒険者のディガーとブルッグ。人間族の方がディガーでドワーフの方がブルッグだ」
「初めまして、アウラお嬢さん。Aランク冒険者、竜狩りのディガーだ」
「儂は大地のブルッグ。よろしくな」
「アウラです、よろしく。それで、一体何用でしょう?」
「アウラ、このふたりにも聖銀鉱と命晶核で装備を作ってやってはもらえないか? 冒険者ギルドマスターとリンガの推薦はもらっている」
このふたりの装備。
冒険者ギルドマスターって言うことは相当偉い人だよね。
それにルインハンターズギルドのギルドマスターのリンガさんにも推薦をもらっているのか。
それでリンガさんも来たのかな?
「どうだい、アウラ。作ってやってはもらえないかい?」
「リンガさん、急にどうしたんですか? いままでロマネの装備以外聖銀鉱の装備は作ることなんてなかったのに」
「ああ……実はね、ちょいと国がきな臭くなってきているんだよ」
「国がきな臭く?」
「あまりあんたに言うことじゃないけれど、戦争でもおっぱじめようとしている可能性がある」
戦争!?
リードアロー王国って平和な国だったのに!?
「リードアローも去年までは平和な国だった。だが、先代国王が亡くなられて現国王になってからはダメだ。あちこちの国との国交を乱すような関税の増減をしているし、一部の貴族領だけ税率を下げそのほかの貴族領では税率を上げたりもしている。内乱が始まるか、どこかの国に攻め込むか攻め込まれるか。とにかく戦争の気配が渦巻き始めているんだ」
なるほど。
そんなに不穏な空気がただよい始めていたのか。
こもりっきりだったから知らなかった。
「もちろんアウラの装備は人殺しのために使わせたりはしない。冒険者は国に従う理由がないからね。国から無関係な民を守るための盾として戦力を確保しておきたいのさ」
「事情はわかりました。でも、そんなに危険な状況なんですか?」
「危ないね。特に北西部で国境線を接している国、マナストリア聖華国との関係が非常にまずくなった。関税を一方的に引き上げたことに抗議して彼の国の第一王位後継者でもある第一王女殿下がこの国に来ているんだが、一切話を聞かず一方的に求婚を迫ったらしい」
うわぁ……いやな感じの王様。
そんなの相手なんてしたくないよ。
「もちろん、そんな話はすぐに御破綻。第一王女殿下は外交権をすべて任されていたらしく、国交断絶を宣言なさったそうだ」
「それってまずいんじゃ?」
「マナストリア聖華国にとってはそれほどでもない。人的交流がメインであってあちらが輸入する品や技術はほかの国々からでも代替が効くはずだからね。問題はリードアロー王国の方さ。マナストリア聖華国からの輸入がなくなると販売できなくなる薬や化粧品、魔導具などが出てくる。マナストリア聖華国独自の製品だからほかの国からも輸入ができないよ」
想像以上の大事だった。
現国王って無能?
「困り果てた現国王のケネル王はなにを思ったのか第一王女殿下の暗殺を決行、それも防がれたが、第一王女一行に死者が出たため事態はさらに悪化。暗殺者どもがリードアロー王国所属の暗部だったことも露見して民衆に発表された。王国側は火消しに奔走しているがどうなることか」
「……それって、とんでもない事態ですよね?」
「そういうことさ。だから火の手が上がる前に守りを固めておきたい。お願いできるね?」
「わかりました。ダークドラゴンの素材もありますし、豪華にいきましょう」
ダークドラゴンの話が出てきたところでおじさんふたりの顔が引きつったけれど、実際の装備を身につけてもらったら大はしゃぎで性能チェックをしていった。
本当は信頼できる冒険者にもっと装備を作ってほしいそうだけど、リードアローに残っている冒険者で問題なく装備を渡せるのはこのふたりだけらしい。
どこも人材不足は深刻っていうことか。
ロマネもマナストリア聖華国出身で第一王女殿下がお戻りになる際に護衛としてついていくらしいし、あたしも身の振り方を考えなくちゃ。
こんな国と一緒に沈むのはごめんだからね。
「はい! ありがとうございます!」
ロマネさんと一緒にダークドラゴン狩りに行ってから3カ月、季節は冬のまっただ中。
でも、あたしはまだリードアローにいた。
正確にはリードアローから動けなくなっちゃったんだ。
なぜなら、あたしもロマネさんと一緒にダークドラゴンを退治したことを国軍は知っているから、あたしにもダークドラゴン素材をよこせと圧力をかけてくるようになった。
そのため、街から出してもらえなくなっちゃったんだよね。
無視して空を飛んで離脱することもできるけどさ。
あと、ロマネさんと狩りに行った帰りに見かけて倒してきたアイアンゴーレム。
その素材を使って新人冒険者たちにそれなりの値段で武器や盾を売っている。
こっちもなかなか盛況で、いまも引っ切りなしに注文が入っている状態なんだ。
さすがに新人には細かいイメージができないから、大まかな要望だけ聞き取ってそれを元にあたしが本格的な装備に仕立て上げる。
新人たちにはそれで十分みたい。
細かいバランス調整もできあがったあとにやってあげているし、問題はないと思いたいな。
前に鍛冶ギルドが難癖をつけてきたけど、その時あたしの作った鋼の盾を聖銀鉱の剣で切れない、どころか聖銀鉱の剣が折れるという派手な失態を見せてしまったため、あたしの装備が爆売れなの。
ちょっと頑丈にするだけのエンチャントしか施してなかったのにそれでも折れるだなんてあの剣を作った鍛冶師はいまでも食べて行けているんだろうか?
そんな感じであたしはリードアローに縛り付けられたまま。
官憲が出入りできない場所ということで、ルインハンターズギルドからもほとんど出歩いていない。
なにが楽しいのかって言われるかもしれないけれど、装備作りもそれなりに楽しくなって来たしいいんじゃないかな。
そこそこ楽しい毎日を過ごしている中、ある日朝風呂を楽しんでいたところ家のドアが叩かれお客さんが来た。
急いで体を拭き、服を着て応対に出ると、そこにいたのはロマネとリンガさん。
それから、ドワーフのおじさんと人間族のおじさん。
この組み合わせは?
「ロマネ、リンガさん。今日は一体どうしたんですか? それも見知らぬ人を連れてだなんて」
うん、ロマネとは何度も会ううちに仲良くなって敬称を付けなくてもいいことになったんだ。
ロマネの方がはるかに年上のはずなのにね。
「ああ、朝早くからすまないな。朝風呂の途中だったか」
「それはいいんだけど……誰?」
「このふたりはAランク冒険者のディガーとブルッグ。人間族の方がディガーでドワーフの方がブルッグだ」
「初めまして、アウラお嬢さん。Aランク冒険者、竜狩りのディガーだ」
「儂は大地のブルッグ。よろしくな」
「アウラです、よろしく。それで、一体何用でしょう?」
「アウラ、このふたりにも聖銀鉱と命晶核で装備を作ってやってはもらえないか? 冒険者ギルドマスターとリンガの推薦はもらっている」
このふたりの装備。
冒険者ギルドマスターって言うことは相当偉い人だよね。
それにルインハンターズギルドのギルドマスターのリンガさんにも推薦をもらっているのか。
それでリンガさんも来たのかな?
「どうだい、アウラ。作ってやってはもらえないかい?」
「リンガさん、急にどうしたんですか? いままでロマネの装備以外聖銀鉱の装備は作ることなんてなかったのに」
「ああ……実はね、ちょいと国がきな臭くなってきているんだよ」
「国がきな臭く?」
「あまりあんたに言うことじゃないけれど、戦争でもおっぱじめようとしている可能性がある」
戦争!?
リードアロー王国って平和な国だったのに!?
「リードアローも去年までは平和な国だった。だが、先代国王が亡くなられて現国王になってからはダメだ。あちこちの国との国交を乱すような関税の増減をしているし、一部の貴族領だけ税率を下げそのほかの貴族領では税率を上げたりもしている。内乱が始まるか、どこかの国に攻め込むか攻め込まれるか。とにかく戦争の気配が渦巻き始めているんだ」
なるほど。
そんなに不穏な空気がただよい始めていたのか。
こもりっきりだったから知らなかった。
「もちろんアウラの装備は人殺しのために使わせたりはしない。冒険者は国に従う理由がないからね。国から無関係な民を守るための盾として戦力を確保しておきたいのさ」
「事情はわかりました。でも、そんなに危険な状況なんですか?」
「危ないね。特に北西部で国境線を接している国、マナストリア聖華国との関係が非常にまずくなった。関税を一方的に引き上げたことに抗議して彼の国の第一王位後継者でもある第一王女殿下がこの国に来ているんだが、一切話を聞かず一方的に求婚を迫ったらしい」
うわぁ……いやな感じの王様。
そんなの相手なんてしたくないよ。
「もちろん、そんな話はすぐに御破綻。第一王女殿下は外交権をすべて任されていたらしく、国交断絶を宣言なさったそうだ」
「それってまずいんじゃ?」
「マナストリア聖華国にとってはそれほどでもない。人的交流がメインであってあちらが輸入する品や技術はほかの国々からでも代替が効くはずだからね。問題はリードアロー王国の方さ。マナストリア聖華国からの輸入がなくなると販売できなくなる薬や化粧品、魔導具などが出てくる。マナストリア聖華国独自の製品だからほかの国からも輸入ができないよ」
想像以上の大事だった。
現国王って無能?
「困り果てた現国王のケネル王はなにを思ったのか第一王女殿下の暗殺を決行、それも防がれたが、第一王女一行に死者が出たため事態はさらに悪化。暗殺者どもがリードアロー王国所属の暗部だったことも露見して民衆に発表された。王国側は火消しに奔走しているがどうなることか」
「……それって、とんでもない事態ですよね?」
「そういうことさ。だから火の手が上がる前に守りを固めておきたい。お願いできるね?」
「わかりました。ダークドラゴンの素材もありますし、豪華にいきましょう」
ダークドラゴンの話が出てきたところでおじさんふたりの顔が引きつったけれど、実際の装備を身につけてもらったら大はしゃぎで性能チェックをしていった。
本当は信頼できる冒険者にもっと装備を作ってほしいそうだけど、リードアローに残っている冒険者で問題なく装備を渡せるのはこのふたりだけらしい。
どこも人材不足は深刻っていうことか。
ロマネもマナストリア聖華国出身で第一王女殿下がお戻りになる際に護衛としてついていくらしいし、あたしも身の振り方を考えなくちゃ。
こんな国と一緒に沈むのはごめんだからね。
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