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第1部 鍛冶の炎、目覚める 第3章 王都リードアローでの暮らし
10. 鍛冶魔法を使ってみよう
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鍛冶魔法を使って初めての鍛冶作業。
ヘファイストスいわく、まずはなにを作るのかイメージを浮かべる。
イメージ、自分が使うものとしてならメイスでいいかな。
剣とかを習うほど余力はないし。
形は……先端が16枚の板に分かれていてそれなりに重い物。
装飾とかはこらなくてもいいや。
あくまでお試しだからね。
『イメージはできたか?』
「うん、大丈夫。次は?」
『鍛冶魔法を発動し、必要な鉱石に魔力を通すのだ。そうすれば鉱石の特性などがすぐにわかる』
「……不安だけどやってみる」
ヘファイストスが言うんだし信じてみよう。
あたしは鍛冶魔法を発動させると聖銀鉱の山に魔力を通した。
すると聖銀鉱の性質が一気に頭の中へと流れ込んでくる。
聖銀鉱は一般的に柔らかめだとされているけれどそれは間違いで、柔らかくなるのは純度不足と圧縮率不足のため。
純度が十分で何度も鍛えて圧縮してやれば切れ味も頑強さも抜群な逸品ができあがるらしい。
また、これも一般的に使われているパターンなんだけど魔銀鉱と合金にされて使うのは決してやっちゃいけないことのようだ。
お互いの特性を打ち消しあい、性能が低下する上脆くなるみたい。
なんだかたくさんの情報がめまぐるしく流れ込んできてあふれそう。
さて、それじゃあメイスに必要な分の聖銀鉱を切り離して……。
『うん? 命晶核は使わないのか?』
「え? 命晶核って錬金術であとから混ぜるんでしょう?」
『鍛冶魔法なら作る時から一体化できるぞ』
「そうなんだ。そっちも試してみよう」
あたしは命晶核にも触れて魔力を流してみる。
すると命晶核の特性も伝わってきた。
錬金術で混ぜると思われているんだけどそれは間違いで、鍛冶でも混ぜられるらしい。
ただ、常に魔力をまとわせながら鍛えなくちゃいけないようだから難しそう。
鍛冶魔法なら何の問題もないけどね。
「さて、これで準備は整ったかな」
『あとは付与するエンチャントだな』
「エンチャントまで付与できるの!?」
『そこまでできて鍛冶魔法だ』
エンチャントもできるらしいから頭の中で思い浮かべてみると、恐ろしい数のエンチャントが脳裏に浮かび上がった。
一般的によく知られているエンチャントから名前さえ聞いたことがないエンチャントまで多種多様。
この中から選んで付与していけばいいのか。
ん?
エンチャントのところに数字があって消費容量ってなってる。
作る武器にもエンチャント容量って値が思い浮かんでいるし、この範囲でのみエンチャントが付与できるってことか。
うーん、悩ましい。
「……よし、決めた! 始めるよ!」
あたしは今度こそ鍛冶魔法でメイスを作り始める。
魔法が発動すると聖銀鉱と命晶核の一部が消え去り、あたしの前に光の玉ができあがった。
その玉はどんどん圧縮されていき、最終的に一本の無骨なメイスへと様変わりしたよ。
これで終わりかな?
『上出来だ。初めてにしてはなかなかだぞ』
「ありがとう。エンチャントとかもきちんとかかっているのかな?」
『私が確認する限りかかっているが、それでは安心できないだろう。なにかで試してみてはどうだ?』
「うん。あの、リンガさん。試し切り用の的とかありませんか?」
いままで作業を眺めていたリンガさんはちょっと唖然とした顔をしている。
目の前でいきなり武器ができたんだものね、無理もないか。
「え? あ、ああ。あるよ。ただ、そのメイスから伝わってくる気迫を考えると一発で破壊されそうだ。壊してもいい鎧を持ってくるから少し待っておくれ」
リンガさんは一度ギルドの建物へと戻り、少しして壊れかけの鎧を持って出てきた。
話を聞くと昔ルインハンターから押しつけられた単なる鉄の鎧らしい。
これはバラバラに壊してもいいそうなので早速的にしよう。
台座は適当に魔銀鉱で作った台座。
こっちもそれなりに強度があるし、壊れはしないはずだよね。
「じゃあ、始めるね」
「ああ、ガツンとやってくれ」
「たぁ!」
あたしのメイスが振り下ろされると、エンチャントの効果を発揮した証の青白い光をまといながら鎧を打ち据えた。
そして、鎧はメイスが当たったところから真っ二つにされて台座の下へと転がり落ちていったよ。
台座もかなりへこんでいるし、ちょっと強力すぎるかな?
『ふむ。想像通りの威力だな』
「いや、怖すぎるって、ヘファイストス」
エンチャントを選んだあたしも大概だけど、それで完成したメイスはもっとひどかった。
こんなメイス実戦で使ってもいいのかな?
「あ、アウラ。そのメイスにはどんなエンチャントを選んだんだい?」
恐る恐るという風にリンガさんが声をかけてきた。
エンチャントかぁ。
あまり話したくないなぁ。
「名前は教えませんが、効果だけなら。打撃力の強化と衝撃の強化。筋力の強化。浄化能力の強化。触れた相手を邪属性に変更する効果。触れた部分を脆くする効果を乗せました」
「邪属性の付与に浄化能力の強化って……触れる側から浄化するってことかい?」
「そうなりますね。常に悪霊退治と同じ効果を得られます」
「なんてバケモンを作り出してるんだ。他人に盗まれちゃダメだよ」
「あ、あたし以外じゃエンチャントが発動しないようにもしてあるんで」
「盗まれたときの対策も万全か。安心したよ」
本当は魔力を流すと手元に戻ってくるエンチャントもかけてあるんだけど、いまは内緒にしておこう。
こんなエンチャント聞いたことがなかったし、盗まれても武器を弾かれても安心だからね。
切り札としてとっておこう。
でも、鍛冶魔法って面白いかも!
ヘファイストスいわく、まずはなにを作るのかイメージを浮かべる。
イメージ、自分が使うものとしてならメイスでいいかな。
剣とかを習うほど余力はないし。
形は……先端が16枚の板に分かれていてそれなりに重い物。
装飾とかはこらなくてもいいや。
あくまでお試しだからね。
『イメージはできたか?』
「うん、大丈夫。次は?」
『鍛冶魔法を発動し、必要な鉱石に魔力を通すのだ。そうすれば鉱石の特性などがすぐにわかる』
「……不安だけどやってみる」
ヘファイストスが言うんだし信じてみよう。
あたしは鍛冶魔法を発動させると聖銀鉱の山に魔力を通した。
すると聖銀鉱の性質が一気に頭の中へと流れ込んでくる。
聖銀鉱は一般的に柔らかめだとされているけれどそれは間違いで、柔らかくなるのは純度不足と圧縮率不足のため。
純度が十分で何度も鍛えて圧縮してやれば切れ味も頑強さも抜群な逸品ができあがるらしい。
また、これも一般的に使われているパターンなんだけど魔銀鉱と合金にされて使うのは決してやっちゃいけないことのようだ。
お互いの特性を打ち消しあい、性能が低下する上脆くなるみたい。
なんだかたくさんの情報がめまぐるしく流れ込んできてあふれそう。
さて、それじゃあメイスに必要な分の聖銀鉱を切り離して……。
『うん? 命晶核は使わないのか?』
「え? 命晶核って錬金術であとから混ぜるんでしょう?」
『鍛冶魔法なら作る時から一体化できるぞ』
「そうなんだ。そっちも試してみよう」
あたしは命晶核にも触れて魔力を流してみる。
すると命晶核の特性も伝わってきた。
錬金術で混ぜると思われているんだけどそれは間違いで、鍛冶でも混ぜられるらしい。
ただ、常に魔力をまとわせながら鍛えなくちゃいけないようだから難しそう。
鍛冶魔法なら何の問題もないけどね。
「さて、これで準備は整ったかな」
『あとは付与するエンチャントだな』
「エンチャントまで付与できるの!?」
『そこまでできて鍛冶魔法だ』
エンチャントもできるらしいから頭の中で思い浮かべてみると、恐ろしい数のエンチャントが脳裏に浮かび上がった。
一般的によく知られているエンチャントから名前さえ聞いたことがないエンチャントまで多種多様。
この中から選んで付与していけばいいのか。
ん?
エンチャントのところに数字があって消費容量ってなってる。
作る武器にもエンチャント容量って値が思い浮かんでいるし、この範囲でのみエンチャントが付与できるってことか。
うーん、悩ましい。
「……よし、決めた! 始めるよ!」
あたしは今度こそ鍛冶魔法でメイスを作り始める。
魔法が発動すると聖銀鉱と命晶核の一部が消え去り、あたしの前に光の玉ができあがった。
その玉はどんどん圧縮されていき、最終的に一本の無骨なメイスへと様変わりしたよ。
これで終わりかな?
『上出来だ。初めてにしてはなかなかだぞ』
「ありがとう。エンチャントとかもきちんとかかっているのかな?」
『私が確認する限りかかっているが、それでは安心できないだろう。なにかで試してみてはどうだ?』
「うん。あの、リンガさん。試し切り用の的とかありませんか?」
いままで作業を眺めていたリンガさんはちょっと唖然とした顔をしている。
目の前でいきなり武器ができたんだものね、無理もないか。
「え? あ、ああ。あるよ。ただ、そのメイスから伝わってくる気迫を考えると一発で破壊されそうだ。壊してもいい鎧を持ってくるから少し待っておくれ」
リンガさんは一度ギルドの建物へと戻り、少しして壊れかけの鎧を持って出てきた。
話を聞くと昔ルインハンターから押しつけられた単なる鉄の鎧らしい。
これはバラバラに壊してもいいそうなので早速的にしよう。
台座は適当に魔銀鉱で作った台座。
こっちもそれなりに強度があるし、壊れはしないはずだよね。
「じゃあ、始めるね」
「ああ、ガツンとやってくれ」
「たぁ!」
あたしのメイスが振り下ろされると、エンチャントの効果を発揮した証の青白い光をまといながら鎧を打ち据えた。
そして、鎧はメイスが当たったところから真っ二つにされて台座の下へと転がり落ちていったよ。
台座もかなりへこんでいるし、ちょっと強力すぎるかな?
『ふむ。想像通りの威力だな』
「いや、怖すぎるって、ヘファイストス」
エンチャントを選んだあたしも大概だけど、それで完成したメイスはもっとひどかった。
こんなメイス実戦で使ってもいいのかな?
「あ、アウラ。そのメイスにはどんなエンチャントを選んだんだい?」
恐る恐るという風にリンガさんが声をかけてきた。
エンチャントかぁ。
あまり話したくないなぁ。
「名前は教えませんが、効果だけなら。打撃力の強化と衝撃の強化。筋力の強化。浄化能力の強化。触れた相手を邪属性に変更する効果。触れた部分を脆くする効果を乗せました」
「邪属性の付与に浄化能力の強化って……触れる側から浄化するってことかい?」
「そうなりますね。常に悪霊退治と同じ効果を得られます」
「なんてバケモンを作り出してるんだ。他人に盗まれちゃダメだよ」
「あ、あたし以外じゃエンチャントが発動しないようにもしてあるんで」
「盗まれたときの対策も万全か。安心したよ」
本当は魔力を流すと手元に戻ってくるエンチャントもかけてあるんだけど、いまは内緒にしておこう。
こんなエンチャント聞いたことがなかったし、盗まれても武器を弾かれても安心だからね。
切り札としてとっておこう。
でも、鍛冶魔法って面白いかも!
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