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第1部 鍛冶の炎、目覚める 第2章 王都へ向かう途中の騒動
7. 王都までの道中
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「やあぁ!」
「Buhi!?」
また1匹、オークの首が宙に舞った。
ヘファイストスからもらった装備の慣らしのため、王都に向かう道すがらモンスター退治をしているわけだけど、これが強いのなんの。
短剣はオークの防具をものともせずに切り刻める。
ロックオーガに一度だけ遭遇したこともあったけど、その時だって一切弾かれなかった。
切れ味よすぎ。
バックラーの障壁は張れば一切揺らぐことなく攻撃を受け止められる。
外からの攻撃は受け止めることができるのに中からは魔法攻撃できるとか、反則でしょこれ。
極めつけは鞭。
長さもさることながら、魔力刃の効果を発揮したり、とてつもないほどの高熱を発揮したりして敵を溶断することもできる。
ただ巻き付けるだけもできるし、巻き付けたあとに縮めて一気に移動することもできるからね。
どれもこれも反則だ。
「うーん。武器の性能がよすぎて困る」
『モンスターも弱くなったものだ。私の知る限り、その程度の装備ではモンスターと交戦するのは厳しかったものなのだが』
「ヘファイストスが知っているモンスターってどれだけ強いのよ……」
手首についている端末から聞こえてくるヘファイストスの声も慣れたものだ。
それにしても、ヘファイストス時代ってこれだけの装備で勝てないなんてよっぽど凶悪だったんだね。
「このオークも《解体》を使って素材にしてマジックバッグにしまわなくちゃ」
『いつも思うのだが、そのマジックバッグ。どの程度の容量があるのだ?』
「さあ? あたしにもわからないくらいいっぱい入る」
あたしが腰につけているマジックバッグはとにかく性能がいい。
あたし以外は中身を取り出せないし、中身に入れられる量も入れられなくなったことがないくらいたくさん入るんだ。
長期の発掘でたくさんの遺物を持ち帰ったときでも、入りきらなくなったことはないからよっぽどだよね。
『それはそれで心配なのだが……ともかく、入りきらなくなるよりは便利か』
「まあね。それにしても、素材、貯まってきたなぁ」
『私のレーダーが捕らえたモンスターを徹底的に倒して歩いているからだろう? 武器の性能チェックはもういいのではないか?』
「それもそうだね。これからは少し自重しよう」
『それがいい。のんびり行かなければ王都まで地上を選んでも、あと3日でたどり着くのだからな』
「はーい」
あたしは倒したオークを手早く片付け、ヘファイストスのコクピットへと戻った。
ヘファイストスのコクピットが澄んだ空気に包まれているのは、そういう機能があるかららしい。
危険地帯でもコクピットの中にいれば安全に活動できるようにするためらしいね。
そしてその日も暮れ、適当な場所をキャンプ地と定めて家を出す。
……うん、テントとかじゃなくて家なんだ。
ヘファイストスがその能力で作り出した家を、ヘファイストスがそのまま持ち運んでいるんだよね。
おかげでいろいろ快適に過ごせているけど、なんだかなぁって感じ。
はっきり言って、街の宿に泊まるよりはるかに快適だから街に泊まる理由がなくなっちゃうくらい快適。
これって、どうなんだろう。
きれい好きのあたしにとって毎日水浴びどころか、暖かいお風呂に入れる環境は決して捨てたいものだけど。
「明日の昼間に通り過ぎる街を越えたら、王都までは寄り道なしだね」
お風呂につかりながらヘファイストスが空中に出してくれた地図を見て結論づける。
街道沿いに進んでいるわけでもないから、迷わない限り街を通っていく必要もないんだ。
『そうなるな。その街には立ち寄るのか?』
「うーん。大量のオーク肉もあるし、売るために立ち寄ってもいいけど。いまのあたしって食料を買う必要もないし服も買わないし、装備を調整する必要すらないからお金を使わないんだよね」
あたしにはヘファイストスがいた遺跡から持ち出した大量の食料がある。
ひとりで消費するには100年以上かかるんじゃないかな。
あと武器はもちろん服も下着すらヘファイストス製になった。
肌触りの良さを考えるとヘファイストスに下着も作ってもらった方が良かったんだよ。
それに、今の時代では作られていない機能的な下着も作ってくれたしもう最高。
……というわけで、あたしには積極的にお金を稼ぐ理由がなくなってしまった。
『では素通りか?』
「その予定で行こう」
『わかった。それにしてもアウラは風呂好きだな。朝も毎日入っているだろう? それでルインハンターのような汚れる仕事をよくできていたものだ』
「我慢していただけだもの。できれば毎日体の汚れは流したい」
『そんなものか』
「そんなものよ」
そのあともヘファイストスとおしゃべりしながらお風呂に入り、翌朝もお風呂に入ってから身支度を調えて出発。
素通りする予定の街まで来たので街道からそれて街を迂回しようとしたんだけど、それを妨害するように街の防衛隊が行く手を塞いだ。
この街の防衛隊はエンシェントフレームをあまり持っていないみたいだけど、一体何用よ。
あたしが停止すると、外部スピーカーから防衛隊の声が聞こえてきた。
『止まってくれ、そのエンシェントフレームの旅人。君は正式なエンシェントフレーム持ちか?』
「そうよ。ルインハンターズギルドで登録も済ませてあるわ。行く手を塞がれる理由がないんだけど」
『いや、申し訳ないのだがひとつ依頼を頼まれてもらいたい。謝礼はたっぷりと支払う』
防衛隊からの依頼?
旅人の行く手を遮ってまで依頼をしたいだなんてよっぽど急ぎか緊急事態だよね。
話だけでも聞いてみますか。
通してくれそうにないし。
「Buhi!?」
また1匹、オークの首が宙に舞った。
ヘファイストスからもらった装備の慣らしのため、王都に向かう道すがらモンスター退治をしているわけだけど、これが強いのなんの。
短剣はオークの防具をものともせずに切り刻める。
ロックオーガに一度だけ遭遇したこともあったけど、その時だって一切弾かれなかった。
切れ味よすぎ。
バックラーの障壁は張れば一切揺らぐことなく攻撃を受け止められる。
外からの攻撃は受け止めることができるのに中からは魔法攻撃できるとか、反則でしょこれ。
極めつけは鞭。
長さもさることながら、魔力刃の効果を発揮したり、とてつもないほどの高熱を発揮したりして敵を溶断することもできる。
ただ巻き付けるだけもできるし、巻き付けたあとに縮めて一気に移動することもできるからね。
どれもこれも反則だ。
「うーん。武器の性能がよすぎて困る」
『モンスターも弱くなったものだ。私の知る限り、その程度の装備ではモンスターと交戦するのは厳しかったものなのだが』
「ヘファイストスが知っているモンスターってどれだけ強いのよ……」
手首についている端末から聞こえてくるヘファイストスの声も慣れたものだ。
それにしても、ヘファイストス時代ってこれだけの装備で勝てないなんてよっぽど凶悪だったんだね。
「このオークも《解体》を使って素材にしてマジックバッグにしまわなくちゃ」
『いつも思うのだが、そのマジックバッグ。どの程度の容量があるのだ?』
「さあ? あたしにもわからないくらいいっぱい入る」
あたしが腰につけているマジックバッグはとにかく性能がいい。
あたし以外は中身を取り出せないし、中身に入れられる量も入れられなくなったことがないくらいたくさん入るんだ。
長期の発掘でたくさんの遺物を持ち帰ったときでも、入りきらなくなったことはないからよっぽどだよね。
『それはそれで心配なのだが……ともかく、入りきらなくなるよりは便利か』
「まあね。それにしても、素材、貯まってきたなぁ」
『私のレーダーが捕らえたモンスターを徹底的に倒して歩いているからだろう? 武器の性能チェックはもういいのではないか?』
「それもそうだね。これからは少し自重しよう」
『それがいい。のんびり行かなければ王都まで地上を選んでも、あと3日でたどり着くのだからな』
「はーい」
あたしは倒したオークを手早く片付け、ヘファイストスのコクピットへと戻った。
ヘファイストスのコクピットが澄んだ空気に包まれているのは、そういう機能があるかららしい。
危険地帯でもコクピットの中にいれば安全に活動できるようにするためらしいね。
そしてその日も暮れ、適当な場所をキャンプ地と定めて家を出す。
……うん、テントとかじゃなくて家なんだ。
ヘファイストスがその能力で作り出した家を、ヘファイストスがそのまま持ち運んでいるんだよね。
おかげでいろいろ快適に過ごせているけど、なんだかなぁって感じ。
はっきり言って、街の宿に泊まるよりはるかに快適だから街に泊まる理由がなくなっちゃうくらい快適。
これって、どうなんだろう。
きれい好きのあたしにとって毎日水浴びどころか、暖かいお風呂に入れる環境は決して捨てたいものだけど。
「明日の昼間に通り過ぎる街を越えたら、王都までは寄り道なしだね」
お風呂につかりながらヘファイストスが空中に出してくれた地図を見て結論づける。
街道沿いに進んでいるわけでもないから、迷わない限り街を通っていく必要もないんだ。
『そうなるな。その街には立ち寄るのか?』
「うーん。大量のオーク肉もあるし、売るために立ち寄ってもいいけど。いまのあたしって食料を買う必要もないし服も買わないし、装備を調整する必要すらないからお金を使わないんだよね」
あたしにはヘファイストスがいた遺跡から持ち出した大量の食料がある。
ひとりで消費するには100年以上かかるんじゃないかな。
あと武器はもちろん服も下着すらヘファイストス製になった。
肌触りの良さを考えるとヘファイストスに下着も作ってもらった方が良かったんだよ。
それに、今の時代では作られていない機能的な下着も作ってくれたしもう最高。
……というわけで、あたしには積極的にお金を稼ぐ理由がなくなってしまった。
『では素通りか?』
「その予定で行こう」
『わかった。それにしてもアウラは風呂好きだな。朝も毎日入っているだろう? それでルインハンターのような汚れる仕事をよくできていたものだ』
「我慢していただけだもの。できれば毎日体の汚れは流したい」
『そんなものか』
「そんなものよ」
そのあともヘファイストスとおしゃべりしながらお風呂に入り、翌朝もお風呂に入ってから身支度を調えて出発。
素通りする予定の街まで来たので街道からそれて街を迂回しようとしたんだけど、それを妨害するように街の防衛隊が行く手を塞いだ。
この街の防衛隊はエンシェントフレームをあまり持っていないみたいだけど、一体何用よ。
あたしが停止すると、外部スピーカーから防衛隊の声が聞こえてきた。
『止まってくれ、そのエンシェントフレームの旅人。君は正式なエンシェントフレーム持ちか?』
「そうよ。ルインハンターズギルドで登録も済ませてあるわ。行く手を塞がれる理由がないんだけど」
『いや、申し訳ないのだがひとつ依頼を頼まれてもらいたい。謝礼はたっぷりと支払う』
防衛隊からの依頼?
旅人の行く手を遮ってまで依頼をしたいだなんてよっぽど急ぎか緊急事態だよね。
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