辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~

あきさけ

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第二部 医学の知識と若木の令嬢 第九章 フルートリオンの新しい生活

89. 若木の精霊と花の妖精たち

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 お母さんに古木の精霊さんが住んでいる森に連れて行ってもらってからしばらく経った。
 いまのフルートリオンは春から夏に変わる真最中。
 木々も草花も春のものから夏のものへと入れ替わっている時期だね。
 私の薬草園では関係ないけど。

「みんな、おはよう!」

「~♪」

「~♪ ~♪」

「……」

「あはは、ユーツリスは相変わらず無口だね。みんなのご飯の時間だからちょっと待っててね」

「……」

 私は古木の精霊さんの森から一緒に帰ってきた花の妖精たちに、栄養となる魔力をあげていった。
 お母さんの話だと、定期的に魔力をあげることで成長するらしいんだよね。
 成長しても見た目はあまり変わらず、その能力だけが成長するらしいんだけど。

「ふう。ご飯はこれくらいでいいかな? それじゃあ、今日も薬草を摘ませてもらうね」

「~~♪」

「~♪」

 花の妖精さんたちには魔力をあげる代わりに薬草の生長を手助けしてもらっている。
 これによって、いままでは根付かなかった薬草も育てられるようになったんだ。
 いままであった薬草も栽培間隔が短くなったものがあるし、とっても便利になったね。
 うん、花の妖精さんたちには感謝だよ!

「あ、この間買ってきた花。もう咲いてる!」

「~♪」

「そっか、頑張って育ててくれたんだ。ありがとね!」

「~~♪」

 この前、商隊で買ってきた花の種も結構咲いてきた。
 木の苗はまだまだ育てなくちゃいけないけど、そっちも元気に育っているね。
 ここまでは順調かな。

「ふむ。この花は食用に出来るのか。あまり薬効はないみたいだし、彩りを添えるだけかな」

「~……」

「そんなにしょげかえらないで。育てて街の食堂とかに必要かどうか聞いてみるから」

「~!」

「こっちの花は胃腸のお薬だね。ただ、結構強力みたいだし、使い方には注意が必要かも」

「~?」

「え? 効能を弱めることも出来るの? でもこのままでいいや。他の薬草でも代用できるし。協力してくれてありがとう」

「~♪」

 とまあ、このような調子で新しい草花の薬効も調べて回っている。
 中には毒草も混じっていたりするから要注意だけど、そういった物もローレンさんは調べたいみたいだから、サンプルとしてそのまま残しているよ。
 他の薬草になる草花とは別の場所に植え替えているけどね。

「ノヴァ様、遅くなりました」

「あ、アストリートさん、おはようございます」

 新しい草花について調べていたらアストリートさんがやってきた。
 アストリートさんも朝に薬草園へとやってくるんだよね。

「ユーツリスもお待たせしました。変わりはないですか?」

「……!」

 アストリートさんの問いかけに、ユーツリスが木の葉をならして答えている。
 ユーツリスの本体はアストリートさんのしている腕輪らしいけど、この庭に植えられている分体も結構大切な意味を持つらしい。
 アストリートさん曰く、この分体が成長しないとユーツリスも成長しないのだとか。
 ちょっと大変かも。

「いま魔力をあげますね。……ッ!」

「……!」

 ああっ!
 アストリートさんってば、また気合いを入れて魔力を引き出してる。
 そんなことしなくても、魔力を放出してあげればユーツリスが無理のない範囲で吸収してくれるのに。
 ユーツリスもビックリしちゃっているよ。

「アストリートさん、大丈夫ですか?」

「え? あ、はい。少しクラクラしますが……」

「魔力を放出しすぎです。毎日言っていますが、契約した精霊さんは魔力を押しつけなくても自分で吸収できます。そんな、無理をして絞り出さなくても大丈夫ですよ」

「そうなのですが、どうしても緊張してしまい」

 アストリートさんは毎日こんな感じ。
 倒れる前に私が声をかけて集中を途切れさせているけど、ひとりでやらせていたら倒れるまで魔力を放出するんじゃないかな?
 アストリートさんはそこまで魔力も多くないし、無理はしてほしくないんだけど。

「ユーツリス、何か変わった事はありますか?」

「……」

「なにも反応がありませんね」

「はい。今日も変わりありませんか」

「……」

 うーん。
 お母さんが樹木の精霊さんは草花の妖精さんや精霊さんよりも成長が遅いって言っていたから気にしなくてもいいと思うんだけどな。
 アストリートさんってば気が早すぎるよ。

「どうしましょう。もっと魔力をあげる回数を増やした方がいいのでしょうか?」

「……」

「反応しないってことは増やしてもあまり意味がないってことですよ、きっと」

「なるほど。気長に与え続けるしかないのですね」

「……!」

「あ、反応がありました。そういうことらしいです」

「わかりました。成長を楽しみにしていますね、ユーツリス」

「……! ……!!」

 ユーツリスも成長したときが楽しみみたい。
 ユーツリスは成長するとどんな感じになるのかな?
 植物の精霊さんって古木の精霊さんのところで見た精霊さんしか知らないから気になる。
 でも、いまは毎日魔力をあげることからスタートだよね。
 あまり急がずに進んでいきましょうね、アストリートさん。
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