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第一部 辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女 第九章 森と魔物の異変
48. 戦いの終わり
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「にゃうにゃにゃ!」
「UGAU!?」
シシがグレンデルという魔物を魔法で弾き飛ばして障壁をはってくれた。
これでこの中は安全になったね。
急いで手当てしないと!
「ええと、増血剤と再生薬を使って……これでよし!」
傷口はきれいに塞がった。
もう大丈夫だよね。
「スピカさん、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。なんとか、ね」
傷はきれいに塞がったのにスピカさんの声は弱々しい。
わたしに覆い被さったまま動けないでいるしどうかしたのかな?
どこか骨折したりしていても、再生薬で治療されているはずなんだけど。
「スピカさん、本当に大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ、よ。それよりも、ノヴァちゃん、こそ、無事なの、かい?」
「わたしはへっちゃらです。スピカさんにかばってもらいましたから」
「そう、か。よかった、よ……」
「スピカさん? スピカさん!?」
スピカさんが気を失ってしまった。
体を触るとすごく冷たくなっているし、どうしちゃったんだろう。
一体なにが起こっているの?
「ノヴァちゃん! スピカさんは?」
「傷は塞がりました。でも、気絶しちゃって、体も冷たくって」
「え? 息はあるけど弱々しい。ノヴァちゃん、なにかお薬は?」
「いいお薬が思い浮かびません。わたしの手持ちじゃどうにも」
「困ったわね。とにかく、ここにいても危ないから住人たちの輪の中に戻って。あとはわたしたちでなんとかしてみせるから」
「はい。お願いします」
わたしは小さな声で返事をして、街の人たちの協力を得てスピカさんをみんなの輪の中心部まで運んだ。
その間もスピカさんは目を覚まさず、手足は冷えたまま。
グレンデルだってまだ倒せていないみたいだし、グレムリンっていう魔物だって途切れていない。
わたし、どうしたら。
「どうしよう、このままじゃスピカさんも街のみんなも死んじゃう」
部屋を明るくしている魔法の灯火は消えていないけれど、あれだって私の魔力が尽きれば消えてしまう。
まだまだ魔力は残っているけど、それだって限界がある。
それに、グレムリンっていう魔物と戦っているみんなもグレンデルと戦っているアーテルさんだっていつかは疲れて負けちゃう。
早く魔物を追い払わなくちゃいけないのに、それが出来ないだなんて。
わたし、どうすればいいの。
「にゃう!」
「シシ?」
「にゃう! にゃにゃう!」
シシが自分のことを前脚で差しながらわたしのバッグをひっかいている。
一体どうしたんだろう?
「にゃ! にゃにゃにゃう!」
シシはずっと必死でなにかを訴えかけ続けている。
自分を指し示してバッグをひっかいて……錬金術じゃないだろうし、なにが……あ!
「お母さんからもらった笛!」
「にゃう!」
確か吹けばお母さんたちが来てくれるっていう笛!
お母さんたちにお願いするのは間違いかもしれないけれど、一度くらいなら助けてもらえるはず!
よし、吹いてみよう!
わたしはカバンの中から小さな笛を取りだして思いっきりそれを吹いた。
でも、音は一切出ることはなく、風が筒の中を吹き抜けただけだ。
だけど、お母さんたちは来てくれるはず!
わたしが笛を吹いて数秒後、壊された冒険者ギルドの出入り口から赤い火の玉が飛んできた。
それはグレンデルに当たり、そのままその体ごと飛んでいくと、火の玉が地面に落ちたところで中から白い獣が姿を現す。
その白い獣は前脚でグレンデルを押さえつけて放さず、周囲の状況をじっとうかがっている。
間違いない、お母さんだ!
「お母さん!」
わたしは嬉しさのあまりみんなの輪から飛び出した。
もちろん、シシも一緒だ。
『ノヴァ、それにシシも。どうやら大変なことになっているみたいね』
「うん。それでね」
『魔物を倒してほしいんでしょう? それくらいお安いご用よ』
「いいの?」
『かわいい娘のためだもの。そういうわけだから、あなたたちもこの街を襲っている魔物をすべて倒して来なさい』
外から猫の吠える音が聞こえた。
お兄さんやお姉さんも来ていたんだ!
これでフルートリオンの街は助かる!
『とりあえず、そこのあなた。獲物を奪ってしまった形になるけれど、この魔物は倒してしまっていいのかしら?』
「あ? ああ。よろしく頼む」
『わかったわ。残りの魔物も遠慮なく倒させてもらうわね』
お母さんがアーテルさんの確認を取ってからグレンデルを焼き尽くす。
それを見てパニックを起こしたらしいグレムリンたちもお母さんが一吠えして巻き起こした光の渦によって消え去っていった。
外も戦いの音は聞こえなくなり、エントランスホールは静寂に包まれる。
これって助かったんだよね?
『お母様。魔物どもの討伐、終わりました』
「あ、イチニィ」
『久しぶりだな、ノヴァ。大変な事になっていたようだが無事か?』
「あっ!? わたしは無事だけど、スピカさんが!」
『スピカ? 誰だ、それは』
「わたしがこの街でお世話になっているおばあちゃん。さっきわたしをかばって怪我をしてから意識がないの」
『ふむ、それは気がかりだな。お母様への報告が終わったら私も診てみよう』
「お願い、イチニィ!」
イチニィはお母さんのところに報告へ向かった。
その間にわたしは傷薬をたくさん取り出し、怪我をした人たちが持っていって治療できるようにしておく。
たくさん怪我人がいるから傷薬もたくさん用意しなくちゃね。
「ノヴァ、あれがお前の家族か?」
わたしのところにやってきたアーテルさんがわたしに聞いてくる。
わたしはそうだと答えるとアーテルさんは不思議そうな顔をしていた。
「聖獣様が家族ねぇ。シシもそうだが聖獣様が家族というのはどうにも現実味がないな」
「むぅ。信じてください!」
「わかってる。信じているさ。ただ、理解の範疇を超えているなと感じるだけで」
なんだかバカにされている気がする!
でも、ここで反論しても仕方がない。
アーテルさんも怪我の治療を始めたし、わたしはお母さんたちが来るのを待とう。
『お待たせ、ノヴァ。街の人たちは大丈夫?』
「あ、お母さん!」
お母さんがイチニィと一緒にやってきた。
話を聞くとお母さんもスピカさんの容態を診てくれるらしい。
これなら大丈夫だよね!
わたしはお母さんたちを案内し、街の人たちの中心でいまも気絶しているスピカさんの元まで案内した。
そしてお母さんたちはスピカさんの容態を確認してくれるけど、表情が暗い。
一体なにがあったのかな?
『ノヴァ、この人がスピカさんで間違いないのね?』
「うん、そうだよ。早く治療してあげて!」
『いや、治療をしたいのは山々だが……』
『ノヴァ、よくお聞きなさい。この方はもう寿命よ。間もなく事切れるわ』
え?
寿命?
さっきまであんなに元気だったのに?
「UGAU!?」
シシがグレンデルという魔物を魔法で弾き飛ばして障壁をはってくれた。
これでこの中は安全になったね。
急いで手当てしないと!
「ええと、増血剤と再生薬を使って……これでよし!」
傷口はきれいに塞がった。
もう大丈夫だよね。
「スピカさん、大丈夫ですか?」
「あ、ああ。なんとか、ね」
傷はきれいに塞がったのにスピカさんの声は弱々しい。
わたしに覆い被さったまま動けないでいるしどうかしたのかな?
どこか骨折したりしていても、再生薬で治療されているはずなんだけど。
「スピカさん、本当に大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ、よ。それよりも、ノヴァちゃん、こそ、無事なの、かい?」
「わたしはへっちゃらです。スピカさんにかばってもらいましたから」
「そう、か。よかった、よ……」
「スピカさん? スピカさん!?」
スピカさんが気を失ってしまった。
体を触るとすごく冷たくなっているし、どうしちゃったんだろう。
一体なにが起こっているの?
「ノヴァちゃん! スピカさんは?」
「傷は塞がりました。でも、気絶しちゃって、体も冷たくって」
「え? 息はあるけど弱々しい。ノヴァちゃん、なにかお薬は?」
「いいお薬が思い浮かびません。わたしの手持ちじゃどうにも」
「困ったわね。とにかく、ここにいても危ないから住人たちの輪の中に戻って。あとはわたしたちでなんとかしてみせるから」
「はい。お願いします」
わたしは小さな声で返事をして、街の人たちの協力を得てスピカさんをみんなの輪の中心部まで運んだ。
その間もスピカさんは目を覚まさず、手足は冷えたまま。
グレンデルだってまだ倒せていないみたいだし、グレムリンっていう魔物だって途切れていない。
わたし、どうしたら。
「どうしよう、このままじゃスピカさんも街のみんなも死んじゃう」
部屋を明るくしている魔法の灯火は消えていないけれど、あれだって私の魔力が尽きれば消えてしまう。
まだまだ魔力は残っているけど、それだって限界がある。
それに、グレムリンっていう魔物と戦っているみんなもグレンデルと戦っているアーテルさんだっていつかは疲れて負けちゃう。
早く魔物を追い払わなくちゃいけないのに、それが出来ないだなんて。
わたし、どうすればいいの。
「にゃう!」
「シシ?」
「にゃう! にゃにゃう!」
シシが自分のことを前脚で差しながらわたしのバッグをひっかいている。
一体どうしたんだろう?
「にゃ! にゃにゃにゃう!」
シシはずっと必死でなにかを訴えかけ続けている。
自分を指し示してバッグをひっかいて……錬金術じゃないだろうし、なにが……あ!
「お母さんからもらった笛!」
「にゃう!」
確か吹けばお母さんたちが来てくれるっていう笛!
お母さんたちにお願いするのは間違いかもしれないけれど、一度くらいなら助けてもらえるはず!
よし、吹いてみよう!
わたしはカバンの中から小さな笛を取りだして思いっきりそれを吹いた。
でも、音は一切出ることはなく、風が筒の中を吹き抜けただけだ。
だけど、お母さんたちは来てくれるはず!
わたしが笛を吹いて数秒後、壊された冒険者ギルドの出入り口から赤い火の玉が飛んできた。
それはグレンデルに当たり、そのままその体ごと飛んでいくと、火の玉が地面に落ちたところで中から白い獣が姿を現す。
その白い獣は前脚でグレンデルを押さえつけて放さず、周囲の状況をじっとうかがっている。
間違いない、お母さんだ!
「お母さん!」
わたしは嬉しさのあまりみんなの輪から飛び出した。
もちろん、シシも一緒だ。
『ノヴァ、それにシシも。どうやら大変なことになっているみたいね』
「うん。それでね」
『魔物を倒してほしいんでしょう? それくらいお安いご用よ』
「いいの?」
『かわいい娘のためだもの。そういうわけだから、あなたたちもこの街を襲っている魔物をすべて倒して来なさい』
外から猫の吠える音が聞こえた。
お兄さんやお姉さんも来ていたんだ!
これでフルートリオンの街は助かる!
『とりあえず、そこのあなた。獲物を奪ってしまった形になるけれど、この魔物は倒してしまっていいのかしら?』
「あ? ああ。よろしく頼む」
『わかったわ。残りの魔物も遠慮なく倒させてもらうわね』
お母さんがアーテルさんの確認を取ってからグレンデルを焼き尽くす。
それを見てパニックを起こしたらしいグレムリンたちもお母さんが一吠えして巻き起こした光の渦によって消え去っていった。
外も戦いの音は聞こえなくなり、エントランスホールは静寂に包まれる。
これって助かったんだよね?
『お母様。魔物どもの討伐、終わりました』
「あ、イチニィ」
『久しぶりだな、ノヴァ。大変な事になっていたようだが無事か?』
「あっ!? わたしは無事だけど、スピカさんが!」
『スピカ? 誰だ、それは』
「わたしがこの街でお世話になっているおばあちゃん。さっきわたしをかばって怪我をしてから意識がないの」
『ふむ、それは気がかりだな。お母様への報告が終わったら私も診てみよう』
「お願い、イチニィ!」
イチニィはお母さんのところに報告へ向かった。
その間にわたしは傷薬をたくさん取り出し、怪我をした人たちが持っていって治療できるようにしておく。
たくさん怪我人がいるから傷薬もたくさん用意しなくちゃね。
「ノヴァ、あれがお前の家族か?」
わたしのところにやってきたアーテルさんがわたしに聞いてくる。
わたしはそうだと答えるとアーテルさんは不思議そうな顔をしていた。
「聖獣様が家族ねぇ。シシもそうだが聖獣様が家族というのはどうにも現実味がないな」
「むぅ。信じてください!」
「わかってる。信じているさ。ただ、理解の範疇を超えているなと感じるだけで」
なんだかバカにされている気がする!
でも、ここで反論しても仕方がない。
アーテルさんも怪我の治療を始めたし、わたしはお母さんたちが来るのを待とう。
『お待たせ、ノヴァ。街の人たちは大丈夫?』
「あ、お母さん!」
お母さんがイチニィと一緒にやってきた。
話を聞くとお母さんもスピカさんの容態を診てくれるらしい。
これなら大丈夫だよね!
わたしはお母さんたちを案内し、街の人たちの中心でいまも気絶しているスピカさんの元まで案内した。
そしてお母さんたちはスピカさんの容態を確認してくれるけど、表情が暗い。
一体なにがあったのかな?
『ノヴァ、この人がスピカさんで間違いないのね?』
「うん、そうだよ。早く治療してあげて!」
『いや、治療をしたいのは山々だが……』
『ノヴァ、よくお聞きなさい。この方はもう寿命よ。間もなく事切れるわ』
え?
寿命?
さっきまであんなに元気だったのに?
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