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第一部 辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女 第七章 爆弾などは作りません
37. 頼まれても爆弾は作りたくありません
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わたしと冒険者さんたちの二泊三日に渡る採取旅も無事終える事が出来た。
指導役以外の冒険者さんたちは夜寝るときも寒さに凍えていて辛かったみたい。
わたしは元々寒さに強いし、毛布と天幕を持ち込んでいたから大丈夫だったけどね。
見習い冒険者さんでは天幕を持つのはきついそうだけど、冬の依頼を受けるときは必ず厚手の毛布を二枚用意しろって指導役の冒険者さんたちから注意されていたよ。
そして、素材採取から帰ってきたら早速草花たちを薬草園に植えてあげる。
今回の採取旅では、森の中にある湖とか普段は行かないような場所まで行ったから収穫がいっぱいあるんだ。
特に湖の中の小島は冬なのに春のように暖かくて変わった環境だった。
珍しい草花もいっぱい採取できたから、これを栽培できないか試してみよう。
そうして採取旅から一カ月ほど経過した頃、アーテルさんが雑貨店にやってきた。
冬になってからはアーテルさんも雑貨店にはあまり来なくなったけど、今日はなんの用だろう?
「ノヴァ、ちょっといいか?」
「はい、なんでしょう、アーテルさん」
「先月採取に行ったとき温暖石で爆弾が作れそうだって言ってたよな。あれって本当か?」
「本当ですけど……どうしましたか?」
「ちょっと入り用になったんだが、作れないか?」
爆弾が入り用?
アーテルさんが使うの?
もう少し聞いてみなくちゃ。
なんに使うかわからないのに作りたくないものね。
「アーテルさんが使うんですか? なにに使うんでしょう?」
「あー、使うのは俺じゃない。父さんの部下だ」
「アーテルさんのお父さん。ええと、ユーシュリア公爵……様?」
「そう、公爵様だ。目的は爆弾を使って鉱山内の岩を除去したいんだってさ」
「鉱山内の岩を除去?」
鉱山って確か鉄とか銅の金属を採る山だよね。
そこで岩を除去って何に使うんだろう。
「アーテルさん、もっと詳しく教えてください」
「わかった。ノヴァ、鉱山は知っているか?」
「金属類が採れる山の事ですよね。それくらいしか知りません」
「そうか。鉱山では一般的に穴を掘って鉱石を探していく。そこで金属の原石を取り出して鍛冶屋で加工するんだ」
なるほど、金属って加工が必要なんだ。
あれ?
そういう事は、錬金術なら加工もできちゃう?
金属ってそうやって作るんだ。
今度試してみようかな。
原石は……鍛冶屋に行けば少し売ってもらえるかも。
あまり金属は作るつもりがなかったけど、新しい事が出来るかもって思うとワクワクしちゃう。
「穴を掘って行くには当然、土や岩を取り除きながら進まなくちゃいけない。というか、土や岩の中に金属の原石が含まれているんだから当然なんだけどな」
そうなんだ。
ひょっとすると落ちている石ころでも金属が出来ちゃったりするのかな?
春になったら調べてみるのもいいかもね。
「で、岩の中にはもちろん硬いやつもあるんだが、これを取り除くのに錬金術の爆弾を使えないかって話になったらしいんだよ」
「そうなんですね。それで、公爵様はどうしたいんですか?」
「それがどうもはっきりしない。ノヴァが作れるなら試してもいい、だってさ」
ものすごく曖昧な言い方だなぁ。
でも、その方が今回は助かったかも。
「わかりました。それじゃあ、爆弾は作りません」
「作らないのか。作れないんじゃなく?」
「うーん、難しいところですね。特別高性能なものを作ろうとすると素材不足です。でも、普通のものなら作れるかもしれない、そんな感じ?」
「お前も曖昧だな。そんなに爆弾は作りたくないのか?」
「作りたくないです。わたしはお薬を作る錬金術士なんです。他人を傷つける事ができるものはなるべく作りたくありません」
「そうか。でも、それだけだと理由としては弱いな。ほかに理由はないか?」
ほかに理由?
ほか、ほか……あれ?
爆弾ってことは爆発するんだよね?
でも、穴の中で爆弾なんか使っちゃったら危ないんじゃないかな?
「あの、本当に鉱山の岩を取り除くのに爆弾を使うんですか?」
「どうにも父さんの部下はそうしたいようだ。この街に錬金術師がいる事は、父さんの領地内ならある程度広まっているだろうからな」
「でも、爆弾ってことは爆発しますよね? 穴が崩れたりしませんか?」
「あ……」
「多分、いまでも掘り進んでいるっていうことは何か補強をしているんだと思います。でも、爆弾を使っちゃったらそれごと吹き飛ばしませんか?」
「なるほどなぁ。そこまで考えつかなかった」
「あと」
「あと?」
「どの程度の威力の爆弾を使ったらどの程度の岩が砕けるのか、わたしにはわかりません」
「ああ、それもあるか。威力が強いだけじゃ周りを全部崩して終わりだもんな。わかった、いまの考えを伝えて断っておくよ。父さんもあまり乗り気じゃないみたいだし、文句は言われないだろう」
「はい。お願いしますね」
そのあと何週間かしてアーテルさんから返事が来たと教えてもらった。
爆弾を使った岩の爆破は取りやめになったみたい。
アーテルさんのお父さんに鉱山で爆弾を使おうって言った人も、爆弾の威力までは考えていなかったらしい。
岩と一緒に穴まで吹き飛ばす可能性は考えていなかったそうだ。
ほかの場所で魔法使いを使って鉱石を採っているところがあるからって真似したかったらしいね。
わたしなら火魔法で爆破じゃなくて土魔法で砕くんだけど、そうやってるんじゃないかな?
指導役以外の冒険者さんたちは夜寝るときも寒さに凍えていて辛かったみたい。
わたしは元々寒さに強いし、毛布と天幕を持ち込んでいたから大丈夫だったけどね。
見習い冒険者さんでは天幕を持つのはきついそうだけど、冬の依頼を受けるときは必ず厚手の毛布を二枚用意しろって指導役の冒険者さんたちから注意されていたよ。
そして、素材採取から帰ってきたら早速草花たちを薬草園に植えてあげる。
今回の採取旅では、森の中にある湖とか普段は行かないような場所まで行ったから収穫がいっぱいあるんだ。
特に湖の中の小島は冬なのに春のように暖かくて変わった環境だった。
珍しい草花もいっぱい採取できたから、これを栽培できないか試してみよう。
そうして採取旅から一カ月ほど経過した頃、アーテルさんが雑貨店にやってきた。
冬になってからはアーテルさんも雑貨店にはあまり来なくなったけど、今日はなんの用だろう?
「ノヴァ、ちょっといいか?」
「はい、なんでしょう、アーテルさん」
「先月採取に行ったとき温暖石で爆弾が作れそうだって言ってたよな。あれって本当か?」
「本当ですけど……どうしましたか?」
「ちょっと入り用になったんだが、作れないか?」
爆弾が入り用?
アーテルさんが使うの?
もう少し聞いてみなくちゃ。
なんに使うかわからないのに作りたくないものね。
「アーテルさんが使うんですか? なにに使うんでしょう?」
「あー、使うのは俺じゃない。父さんの部下だ」
「アーテルさんのお父さん。ええと、ユーシュリア公爵……様?」
「そう、公爵様だ。目的は爆弾を使って鉱山内の岩を除去したいんだってさ」
「鉱山内の岩を除去?」
鉱山って確か鉄とか銅の金属を採る山だよね。
そこで岩を除去って何に使うんだろう。
「アーテルさん、もっと詳しく教えてください」
「わかった。ノヴァ、鉱山は知っているか?」
「金属類が採れる山の事ですよね。それくらいしか知りません」
「そうか。鉱山では一般的に穴を掘って鉱石を探していく。そこで金属の原石を取り出して鍛冶屋で加工するんだ」
なるほど、金属って加工が必要なんだ。
あれ?
そういう事は、錬金術なら加工もできちゃう?
金属ってそうやって作るんだ。
今度試してみようかな。
原石は……鍛冶屋に行けば少し売ってもらえるかも。
あまり金属は作るつもりがなかったけど、新しい事が出来るかもって思うとワクワクしちゃう。
「穴を掘って行くには当然、土や岩を取り除きながら進まなくちゃいけない。というか、土や岩の中に金属の原石が含まれているんだから当然なんだけどな」
そうなんだ。
ひょっとすると落ちている石ころでも金属が出来ちゃったりするのかな?
春になったら調べてみるのもいいかもね。
「で、岩の中にはもちろん硬いやつもあるんだが、これを取り除くのに錬金術の爆弾を使えないかって話になったらしいんだよ」
「そうなんですね。それで、公爵様はどうしたいんですか?」
「それがどうもはっきりしない。ノヴァが作れるなら試してもいい、だってさ」
ものすごく曖昧な言い方だなぁ。
でも、その方が今回は助かったかも。
「わかりました。それじゃあ、爆弾は作りません」
「作らないのか。作れないんじゃなく?」
「うーん、難しいところですね。特別高性能なものを作ろうとすると素材不足です。でも、普通のものなら作れるかもしれない、そんな感じ?」
「お前も曖昧だな。そんなに爆弾は作りたくないのか?」
「作りたくないです。わたしはお薬を作る錬金術士なんです。他人を傷つける事ができるものはなるべく作りたくありません」
「そうか。でも、それだけだと理由としては弱いな。ほかに理由はないか?」
ほかに理由?
ほか、ほか……あれ?
爆弾ってことは爆発するんだよね?
でも、穴の中で爆弾なんか使っちゃったら危ないんじゃないかな?
「あの、本当に鉱山の岩を取り除くのに爆弾を使うんですか?」
「どうにも父さんの部下はそうしたいようだ。この街に錬金術師がいる事は、父さんの領地内ならある程度広まっているだろうからな」
「でも、爆弾ってことは爆発しますよね? 穴が崩れたりしませんか?」
「あ……」
「多分、いまでも掘り進んでいるっていうことは何か補強をしているんだと思います。でも、爆弾を使っちゃったらそれごと吹き飛ばしませんか?」
「なるほどなぁ。そこまで考えつかなかった」
「あと」
「あと?」
「どの程度の威力の爆弾を使ったらどの程度の岩が砕けるのか、わたしにはわかりません」
「ああ、それもあるか。威力が強いだけじゃ周りを全部崩して終わりだもんな。わかった、いまの考えを伝えて断っておくよ。父さんもあまり乗り気じゃないみたいだし、文句は言われないだろう」
「はい。お願いしますね」
そのあと何週間かしてアーテルさんから返事が来たと教えてもらった。
爆弾を使った岩の爆破は取りやめになったみたい。
アーテルさんのお父さんに鉱山で爆弾を使おうって言った人も、爆弾の威力までは考えていなかったらしい。
岩と一緒に穴まで吹き飛ばす可能性は考えていなかったそうだ。
ほかの場所で魔法使いを使って鉱石を採っているところがあるからって真似したかったらしいね。
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