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第2部 街を駆け巡る〝ペットテイマー〟 第4章 〝ペットテイマー〟旅の休み
56. ウサギ探し
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領主邸でリオ様にペットたちを見せた翌日は、〝シラタマの丘〟でウサギを探してみることになった。
ただ、まだオーク軍の残党がいるかもしれないっていうことで、騎士の人も大勢いるんだよね。
大丈夫かなぁ。
「ねえ、シラタマ。仲間だけど出てきてくれると思う」
『わからないの。ウサギって臆病だから、人がたくさんいると、怖がって巣穴から出てこない可能性があるの。でも、オークから守ってくれるいい人たちだとわかれば出てくるかもしれないし、運なの』
「運ですか……残念です」
リオ様は落ち込んじゃったけど、こればかりはなぁ。
そもそもウサギがどの程度残っているかもわからないし。
「私たちも呼びかけてみましょうか、シズクお姉ちゃん?」
「んー、それは最後にしよう。〝ペットテイマー〟といっても人がいることがわかれば警戒されるかも」
「そうですか。ペットを育てるのも増やすのも難しいです」
「今の時代、小動物たちには会いにくいみたいだしね。あ、〝シラタマの丘〟についたみたい」
まずは騎士たちが安全確認ということで、丘の中央部を避けて周囲の監視に向かった。
その装備も鋼よりきらめいていて、ミスリル合金かな?
その場に残って周囲を警戒するグループと、森の中に分け入って探索するグループに分かれるみたい。
あの重たそうな金属鎧で森の中を歩くって大変そう。
そして、一時間ほどすると探索に出ていた人たちも帰ってきた。
そのあと、ひとりの騎士が小走りにこの馬車へと近づいてきて礼をとりながら、奥方様に報告をしてくれたよ。
「周囲の確認終わりました。オークどもの存在は確認できません」
「ご苦労。今後も警戒は怠らないように」
「はっ!」
それだけ告げると騎士の人はまた小走りで帰って行っちゃった。
うん、私には騎士なんて無理だね。
気ままな冒険者で〝ウルフ狩りのステップワンダー〟がちょうどいいよ。
「それでは参りましょうか、3人とも。うまくウサギたちが見つかってくれるといいのですが……」
「申し訳ありません。こればかりは保証が……」
「いえ、構いません。無理を承知でお願いしたのはこちらですから」
ともかく、私とミーベルン、ギスヒーナ様、リオ様は馬車から降りシラタマの丘へ。
試しに《気配判別》をしてみると……結構いるんだけど、かなり警戒されちゃっているみたい。
シラタマの説得で出てきてくれるかな?
「シラタマ、早速だけど、お願い」
『わかったの』
「くー! (みんな! お腹の空いている子はいないの!? おいしいご飯をあげるの!!)」
「いや、シラタマ、いきなり餌で釣らないでよ」
『でも、これが一番わかりやすいの。ほら』
ウサギたちが巣穴の中から顔を覗かせてくれた。
《気配判別》の色も中立になっているし、よっぽどお腹が空いているのかな?
『シズク、ミーベルン。《ペット用ご飯作り》なの!』
「う、うん、わかった」
「はい! 頑張ります」
顔を覗かせているウサギたちを観察しながら、《ペット用ご飯作り》でそれぞれにあったご飯を作ってあげる。
すると、匂いに引きつけられたのか、1匹、また1匹と巣穴の中から顔を出して取ってき始めた。
このままじゃ、ご飯を巡って争奪戦になりそう!?
「みんな、落ち着いてね! みんなのご飯を作るだけの野菜の葉っぱやお野菜はいっぱい用意してあるから!」
「ケンカしちゃだめだよ。みんな仲良く食べてね?」
「ぷー! (はーい!)」
私たちのもとに集まってきたウサギたちは餌をおいしそうに食べていくと、ある程度食べたところで交代、次の子たちが食べ始める。
それを何度も繰り返し、ウサギたちの食事が終わったのは2時間後だった。
『大丈夫なの、みんな。まだお腹は空いてないの?』
「くー(もうちょっと空いているけど、これだけ食べられれば幸せー)」
「ぷー(最近は怖い人やモンスターのせいで食事が満足にできなかったから幸せー)」
「そうだったんだ。ごめんね、気付いてあげられなくて」
「すー? (なんでお姉さんが謝るの?)」
「私、時々、この丘を見回りにきていたんだよ。でも、ウサギさんたちがこんなに棲んでいるだなんて思わなかったから」
「ぷー(そういえば見たことあるー。でっかい犬に乗ってたー)」
「すー(怖いから近づけなかったのー)」
やっぱり。
キントキだって私が乗るサイズになっていたら怖いよね。
「くー? (お姉さんたちのご用事ってご飯だけ?)」
「ああ、えっとね。あっちにいる女の子と一緒に遊んでほしいの。大丈夫?」
「ぷー! (いいよ! 悪い人間じゃなさそうだし!)」
「くー! (みんな! 突撃―!)」
突撃ってちょっと!?
止める間もなく、ウサギたちはリオ様を取り囲んでプークー鳴きだした。
それを見たリオ様も最初は恐る恐るだったものの、最初の1匹をなでると、ウサギたちの方からじゃれつき始めてもみくちゃにされていた。
そのあともしばらくはウサギたちとリオ様の遊びは続き、リオ様も草まみれになりながら、ウサギたちとのひとときを楽しんでいたね。
ああ、でもそろそろ帰る時間になっちゃうのかな?
「リオ、残念だけど、そろそろ帰る時間よ」
「ええ、お母様、もう帰る時間ですか?」
「あなたがウサギたちと遊びたいのはわかるけれど、他にもすることはあるでしょう?」
「うう……残念です」
「くー(リオちゃん、帰っちゃうんだ)」
「ぷー(残念だなぁ。もっと遊びたかったのに)」
あ、これならいけるかも。
「ねえ、ウサギたち。誰かリオちゃんと一緒にリオちゃんのお家に帰って一緒に暮らしてあげる子はいない?」
「くー? (リオちゃんのお家?)」
「ぷー? (それって僕たちでも棲めるの?)」
「どうなんでしょう、ギスヒーナ様」
「そうね、数匹くらいなら大丈夫よ。ああ、でも、飼育はどうしようかしら」
飼育、飼育かぁ。
私の《ペット用ご飯作り》と《ペット言語理解》を渡せればいいんだけれど。
『ふむ。飼育について困っているようじゃな』
「ミネル」
『シズク。いまのお前なら《ペット用ご飯作り》と《ペット言語理解》を渡すことができるぞ』
「あれ? もう少し強くならなくやいけないんじゃ?」
『センディアで特殊変異個体と戦ったおかげじゃろう。お主の魔力が上がっておる。試しにリオへと渡してみるといい』
「わかった。リオ様。私のスキルを一部、与えます。拒まなければリオ様のものになるので受け取ってください」
「は、はい!」
私は《ペット用ご飯作り》と《ペット言語理解》をイメージしながら魔力を圧縮していった。
するとできたのは、赤と青の魔力の塊。
これをリオ様に渡せばいいのかな?
「リオ様、これをどうぞ」
「わかりました。……あれ? ウサギたちの声が普通に人の声として聞こえます」
『やったあ! リオの声も普通に聞こえるようになった!』
『これで一緒に行っても大丈夫だね!』
「ええと、お母様」
「わかりました。3匹までなら連れ帰ることを許しましょう。ただ、ウサギは10年も生きられないそうです。あなたよりも早くお別れすることの覚悟は決めて飼い始めなさい」
「10年……わかりました。その間にたくさんの思い出を作ります!」
『10年、10年かぁ。じゃあ、若い子優先だね!』
『リオちゃんと少しでも一緒に長くいられるようにね!』
「ありがとうございます。ウサギさんたち」
ウサギたちの間で話し合いをした結果、ライオンヘッド、ヒマラヤン、ダッチという種類のウサギ3匹が選ばれたみたい。
どっちも生後半年程度で、まだまだ長生きできるからって。
あと、この騒ぎの中でミーベルンも契約したウサギがいたみたい。
イングリッシュスポットの〝ハンテン〟だって。
ウサギたちにも平和な限り、時々餌の供給を約束しようとしたら、〝普段は自分たちで探すからいい〟って突っぱねられちゃった。
余計なお節介だったかな。
とにかく、ミーベルンとリオ様は新しく増えたペットを上機嫌で抱えて夢の中へ。
ふたりとも《ペット言語理解》を持っているからしつけには困らないでしょう。
早く懐いてくれるといいね。
ただ、まだオーク軍の残党がいるかもしれないっていうことで、騎士の人も大勢いるんだよね。
大丈夫かなぁ。
「ねえ、シラタマ。仲間だけど出てきてくれると思う」
『わからないの。ウサギって臆病だから、人がたくさんいると、怖がって巣穴から出てこない可能性があるの。でも、オークから守ってくれるいい人たちだとわかれば出てくるかもしれないし、運なの』
「運ですか……残念です」
リオ様は落ち込んじゃったけど、こればかりはなぁ。
そもそもウサギがどの程度残っているかもわからないし。
「私たちも呼びかけてみましょうか、シズクお姉ちゃん?」
「んー、それは最後にしよう。〝ペットテイマー〟といっても人がいることがわかれば警戒されるかも」
「そうですか。ペットを育てるのも増やすのも難しいです」
「今の時代、小動物たちには会いにくいみたいだしね。あ、〝シラタマの丘〟についたみたい」
まずは騎士たちが安全確認ということで、丘の中央部を避けて周囲の監視に向かった。
その装備も鋼よりきらめいていて、ミスリル合金かな?
その場に残って周囲を警戒するグループと、森の中に分け入って探索するグループに分かれるみたい。
あの重たそうな金属鎧で森の中を歩くって大変そう。
そして、一時間ほどすると探索に出ていた人たちも帰ってきた。
そのあと、ひとりの騎士が小走りにこの馬車へと近づいてきて礼をとりながら、奥方様に報告をしてくれたよ。
「周囲の確認終わりました。オークどもの存在は確認できません」
「ご苦労。今後も警戒は怠らないように」
「はっ!」
それだけ告げると騎士の人はまた小走りで帰って行っちゃった。
うん、私には騎士なんて無理だね。
気ままな冒険者で〝ウルフ狩りのステップワンダー〟がちょうどいいよ。
「それでは参りましょうか、3人とも。うまくウサギたちが見つかってくれるといいのですが……」
「申し訳ありません。こればかりは保証が……」
「いえ、構いません。無理を承知でお願いしたのはこちらですから」
ともかく、私とミーベルン、ギスヒーナ様、リオ様は馬車から降りシラタマの丘へ。
試しに《気配判別》をしてみると……結構いるんだけど、かなり警戒されちゃっているみたい。
シラタマの説得で出てきてくれるかな?
「シラタマ、早速だけど、お願い」
『わかったの』
「くー! (みんな! お腹の空いている子はいないの!? おいしいご飯をあげるの!!)」
「いや、シラタマ、いきなり餌で釣らないでよ」
『でも、これが一番わかりやすいの。ほら』
ウサギたちが巣穴の中から顔を覗かせてくれた。
《気配判別》の色も中立になっているし、よっぽどお腹が空いているのかな?
『シズク、ミーベルン。《ペット用ご飯作り》なの!』
「う、うん、わかった」
「はい! 頑張ります」
顔を覗かせているウサギたちを観察しながら、《ペット用ご飯作り》でそれぞれにあったご飯を作ってあげる。
すると、匂いに引きつけられたのか、1匹、また1匹と巣穴の中から顔を出して取ってき始めた。
このままじゃ、ご飯を巡って争奪戦になりそう!?
「みんな、落ち着いてね! みんなのご飯を作るだけの野菜の葉っぱやお野菜はいっぱい用意してあるから!」
「ケンカしちゃだめだよ。みんな仲良く食べてね?」
「ぷー! (はーい!)」
私たちのもとに集まってきたウサギたちは餌をおいしそうに食べていくと、ある程度食べたところで交代、次の子たちが食べ始める。
それを何度も繰り返し、ウサギたちの食事が終わったのは2時間後だった。
『大丈夫なの、みんな。まだお腹は空いてないの?』
「くー(もうちょっと空いているけど、これだけ食べられれば幸せー)」
「ぷー(最近は怖い人やモンスターのせいで食事が満足にできなかったから幸せー)」
「そうだったんだ。ごめんね、気付いてあげられなくて」
「すー? (なんでお姉さんが謝るの?)」
「私、時々、この丘を見回りにきていたんだよ。でも、ウサギさんたちがこんなに棲んでいるだなんて思わなかったから」
「ぷー(そういえば見たことあるー。でっかい犬に乗ってたー)」
「すー(怖いから近づけなかったのー)」
やっぱり。
キントキだって私が乗るサイズになっていたら怖いよね。
「くー? (お姉さんたちのご用事ってご飯だけ?)」
「ああ、えっとね。あっちにいる女の子と一緒に遊んでほしいの。大丈夫?」
「ぷー! (いいよ! 悪い人間じゃなさそうだし!)」
「くー! (みんな! 突撃―!)」
突撃ってちょっと!?
止める間もなく、ウサギたちはリオ様を取り囲んでプークー鳴きだした。
それを見たリオ様も最初は恐る恐るだったものの、最初の1匹をなでると、ウサギたちの方からじゃれつき始めてもみくちゃにされていた。
そのあともしばらくはウサギたちとリオ様の遊びは続き、リオ様も草まみれになりながら、ウサギたちとのひとときを楽しんでいたね。
ああ、でもそろそろ帰る時間になっちゃうのかな?
「リオ、残念だけど、そろそろ帰る時間よ」
「ええ、お母様、もう帰る時間ですか?」
「あなたがウサギたちと遊びたいのはわかるけれど、他にもすることはあるでしょう?」
「うう……残念です」
「くー(リオちゃん、帰っちゃうんだ)」
「ぷー(残念だなぁ。もっと遊びたかったのに)」
あ、これならいけるかも。
「ねえ、ウサギたち。誰かリオちゃんと一緒にリオちゃんのお家に帰って一緒に暮らしてあげる子はいない?」
「くー? (リオちゃんのお家?)」
「ぷー? (それって僕たちでも棲めるの?)」
「どうなんでしょう、ギスヒーナ様」
「そうね、数匹くらいなら大丈夫よ。ああ、でも、飼育はどうしようかしら」
飼育、飼育かぁ。
私の《ペット用ご飯作り》と《ペット言語理解》を渡せればいいんだけれど。
『ふむ。飼育について困っているようじゃな』
「ミネル」
『シズク。いまのお前なら《ペット用ご飯作り》と《ペット言語理解》を渡すことができるぞ』
「あれ? もう少し強くならなくやいけないんじゃ?」
『センディアで特殊変異個体と戦ったおかげじゃろう。お主の魔力が上がっておる。試しにリオへと渡してみるといい』
「わかった。リオ様。私のスキルを一部、与えます。拒まなければリオ様のものになるので受け取ってください」
「は、はい!」
私は《ペット用ご飯作り》と《ペット言語理解》をイメージしながら魔力を圧縮していった。
するとできたのは、赤と青の魔力の塊。
これをリオ様に渡せばいいのかな?
「リオ様、これをどうぞ」
「わかりました。……あれ? ウサギたちの声が普通に人の声として聞こえます」
『やったあ! リオの声も普通に聞こえるようになった!』
『これで一緒に行っても大丈夫だね!』
「ええと、お母様」
「わかりました。3匹までなら連れ帰ることを許しましょう。ただ、ウサギは10年も生きられないそうです。あなたよりも早くお別れすることの覚悟は決めて飼い始めなさい」
「10年……わかりました。その間にたくさんの思い出を作ります!」
『10年、10年かぁ。じゃあ、若い子優先だね!』
『リオちゃんと少しでも一緒に長くいられるようにね!』
「ありがとうございます。ウサギさんたち」
ウサギたちの間で話し合いをした結果、ライオンヘッド、ヒマラヤン、ダッチという種類のウサギ3匹が選ばれたみたい。
どっちも生後半年程度で、まだまだ長生きできるからって。
あと、この騒ぎの中でミーベルンも契約したウサギがいたみたい。
イングリッシュスポットの〝ハンテン〟だって。
ウサギたちにも平和な限り、時々餌の供給を約束しようとしたら、〝普段は自分たちで探すからいい〟って突っぱねられちゃった。
余計なお節介だったかな。
とにかく、ミーベルンとリオ様は新しく増えたペットを上機嫌で抱えて夢の中へ。
ふたりとも《ペット言語理解》を持っているからしつけには困らないでしょう。
早く懐いてくれるといいね。
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