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第2部 街を駆け巡る〝ペットテイマー〟 第1章 〝ペットテイマー〟センディアの街に向かう
40. 大人って汚い
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他の街から冒険者を集めてくるかぁ。
想像以上に大切なお仕事だね!
「わかりました。それを別の街に行って依頼として発注してもらえばいいんですね?」
「まあ、そうなる。だが、どちらの街も〝冒険者ギルドからの救援依頼〟は突っぱねるだろうよ」
「え?」
「考えてもみろ。お前だったらどうする? 金に釣られて他の街へ渡るか?」
「私はアイリーンの街が好きだから渡りません」
「そういう冒険者だってそれなりにいる。それ以上に問題なのは各街のギルドマスターだ」
「ギルドマスター……」
「必ず今回の援助要請を依頼として出す見返りとしてアイリーンの冒険者ギルドに多額の金銭を要求してくるはずだぜ。それこそセンディアのギルドマスターなんかは、ミスリル貨数百枚とかそう言う金額のな」
ミスリル貨数百枚!?
私もこの間、戦功第二位の報奨金としてミスリル貨30枚をもらったけど……それなんて目じゃないよ!?
「それって、支払えるんですか!?」
「支払えるはずもない。無理をすれば支払えるが、そうなるとアイリーンの冒険者ギルドが機能しなくなる。それをわかっていてあいつらは金を巻き上げようとしてくるんだよ」
「そんなの酷い!」
「まあ、それが大人の世界ってやつだ。シズクはそんな汚い世界に染まるなよ」
「はい!」
私は絶対そんな汚い真似なんてしてたまるものか!
私は〝ウルフ狩りのステップワンダー〟、みんなのために働いていくんだ!
汚いお金なんて欲しくない!
「それで、お主をもっと汚い大人の世界に引きずり込んでしまうのだが……許してもらえるか?」
「え? ケウナコウ様、どういう意味でしょう?」
「サンドロックの依頼は必ず断られる。その上で私からの直接依頼として特使のお前に各街の冒険者ギルドへと依頼を出してきてもらいたいのだ」
「それって……できるのですか?」
「反則技だが可能だ。別の街とは言え領主のサインと封蝋、家紋の入った道具持ちと特使のマントを着ている者が発行主ならば、冒険者ギルドに依頼を断る権利はない。アイリーンの冒険者ギルドも同様の方法で依頼を出されるだろうが、依頼を受けるかどうかは冒険者の自由。そこまでは束縛できないからな」
「わかりました。それで、その依頼の内容とは?」
「それはな……」
ケウナコウ様から聞いた依頼内容。
それは……なんというか、本当に大人の世界ってずるい。
「本来であれば他の街からの依頼を他の冒険者ギルドが受領し、その依頼を受ける冒険者たちがいればその街の冒険者ギルドにも手数料が入るのだ。だが、領主からの依頼ではその手数料も入らん。命をかけてもらう冒険者にはまことに申し訳ないが、恨むなら所属先のギルドを恨んでもらいたいものだ」
「わかりました。各街の冒険者ギルドでは返答を何日くらい待てばいいですか?」
「1週間で構わねぇ。宿も冒険者ギルドで手配しておくからそこに泊まって回答を待っていてくれ。まあ、1週間無駄に街中で過ごすだけだろうがな」
「他の街でもウルフ狩りをしていたいです」
「他の街じゃウルフの販売経路がないだろう? ギルドに持ち込んだところで二束三文で買い叩かれて終わりだ」
「……まことに残念です」
はあ、本当に時間を潰しているだけで終わりそう。
なにをして過ごしていようかな。
「その代わりいい情報を教えてやるよ。最初に言ってもらう街、センディアへ行く途中にはキラーブルとその上位個体、フォーホーンブルが棲み着いてやがる。こいつらの皮はお前のレザーアーマー素材としても優秀だし、新しいマジックバッグを作ってもらうにもいいんじゃねえのか?」
あ、メイナお姉ちゃんからもらったウエストポーチもキラーブルの革でできていたって言ってた!
狩ることができたらお土産に持ち帰ろう!
「それからその次に向かってもらうドラマリーンだが、近くの山にキラーヴァイパーが棲み着いている。中にはヴェノムヴァイパーもいて少々危険だが、そいつの皮も持ち帰れば猛毒浄化効果のあるレザーアーマーを作れるぜ? どっちもオークジェネラルに比べればはるかにザコだ。新しいレザーアーマーを作るためにもアダムとメイナの土産にも最適じゃないのか?」
「そうですね! 私はそちら方面で頑張らせてもらいます!」
「特使のマントは傷つけるなよ。これで問題ないか、ケウナコウ」
「ああ、問題ない。各街へ向かうための支度金として金貨10枚ずつも渡しておこう。地理的に言えば、センディアとドラマリーンに行くときに、アイリーンに戻ることになる。金は冒険者ギルドに預けておくのでそのときに受け取っていってくれ」
「そんな、お金はたくさんいただいているのに……」
「冒険者は稼げなくなったときに備えて早いうちからたくさん稼いでおくものだ。よく覚えておけ。では、私はこれにて失礼するよ」
ケウナコウ様が立ち去り、私とサンドロックさんが部屋に残された。
私、こんな厚遇を受けていいのかなぁ?
「お前のことだ、ただのステップワンダーがこんないい思いをしていいのかどうか悩んでるんだろ?」
「え? はい、私はまだ21……ああ、年が明けてもうすぐ夏ですから夏の終わりには22歳になるばかりの若僧ステップワンダーです」
「そんなこと気にするな。ケウナコウだって、お前がこの街に来てからやってきたことはすべて調べ上げているはずだ。その上でお前を特使に任命したんだよ。それだけ街からも領主からも信頼されているってことだ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「わかったら、旅支度に入れ。悪いが明後日には出発だ。……そういえばステップワンダーの22歳って人間換算だと何歳くらいなんだ?」
「13歳から14歳くらいですよ?」
「……人間換算だと思いっきり未成年じゃねぇか」
「でも、冒険者への道は閉ざさないでくださいね。たくさんの仲間が手っ取り早い稼ぎ口として目指しているものなので」
「わーってるよ。それじゃ、俺の話もここまでだ。最初から断られることがわかっている無理難題を押しつける旅路、気が進まないだろうがよろしく頼む」
「……まあ、ちょっと気乗りがしませんが、新しい防具のためだと思っていってきます」
「それくらいがちょうどいい。油断して怪我をするなよ?」
「はい。メイナお姉ちゃんには二度と心配させたくありませんから」
こうして他の街への旅路が決まった。
メイナお姉ちゃん、心配しないかなぁ。
想像以上に大切なお仕事だね!
「わかりました。それを別の街に行って依頼として発注してもらえばいいんですね?」
「まあ、そうなる。だが、どちらの街も〝冒険者ギルドからの救援依頼〟は突っぱねるだろうよ」
「え?」
「考えてもみろ。お前だったらどうする? 金に釣られて他の街へ渡るか?」
「私はアイリーンの街が好きだから渡りません」
「そういう冒険者だってそれなりにいる。それ以上に問題なのは各街のギルドマスターだ」
「ギルドマスター……」
「必ず今回の援助要請を依頼として出す見返りとしてアイリーンの冒険者ギルドに多額の金銭を要求してくるはずだぜ。それこそセンディアのギルドマスターなんかは、ミスリル貨数百枚とかそう言う金額のな」
ミスリル貨数百枚!?
私もこの間、戦功第二位の報奨金としてミスリル貨30枚をもらったけど……それなんて目じゃないよ!?
「それって、支払えるんですか!?」
「支払えるはずもない。無理をすれば支払えるが、そうなるとアイリーンの冒険者ギルドが機能しなくなる。それをわかっていてあいつらは金を巻き上げようとしてくるんだよ」
「そんなの酷い!」
「まあ、それが大人の世界ってやつだ。シズクはそんな汚い世界に染まるなよ」
「はい!」
私は絶対そんな汚い真似なんてしてたまるものか!
私は〝ウルフ狩りのステップワンダー〟、みんなのために働いていくんだ!
汚いお金なんて欲しくない!
「それで、お主をもっと汚い大人の世界に引きずり込んでしまうのだが……許してもらえるか?」
「え? ケウナコウ様、どういう意味でしょう?」
「サンドロックの依頼は必ず断られる。その上で私からの直接依頼として特使のお前に各街の冒険者ギルドへと依頼を出してきてもらいたいのだ」
「それって……できるのですか?」
「反則技だが可能だ。別の街とは言え領主のサインと封蝋、家紋の入った道具持ちと特使のマントを着ている者が発行主ならば、冒険者ギルドに依頼を断る権利はない。アイリーンの冒険者ギルドも同様の方法で依頼を出されるだろうが、依頼を受けるかどうかは冒険者の自由。そこまでは束縛できないからな」
「わかりました。それで、その依頼の内容とは?」
「それはな……」
ケウナコウ様から聞いた依頼内容。
それは……なんというか、本当に大人の世界ってずるい。
「本来であれば他の街からの依頼を他の冒険者ギルドが受領し、その依頼を受ける冒険者たちがいればその街の冒険者ギルドにも手数料が入るのだ。だが、領主からの依頼ではその手数料も入らん。命をかけてもらう冒険者にはまことに申し訳ないが、恨むなら所属先のギルドを恨んでもらいたいものだ」
「わかりました。各街の冒険者ギルドでは返答を何日くらい待てばいいですか?」
「1週間で構わねぇ。宿も冒険者ギルドで手配しておくからそこに泊まって回答を待っていてくれ。まあ、1週間無駄に街中で過ごすだけだろうがな」
「他の街でもウルフ狩りをしていたいです」
「他の街じゃウルフの販売経路がないだろう? ギルドに持ち込んだところで二束三文で買い叩かれて終わりだ」
「……まことに残念です」
はあ、本当に時間を潰しているだけで終わりそう。
なにをして過ごしていようかな。
「その代わりいい情報を教えてやるよ。最初に言ってもらう街、センディアへ行く途中にはキラーブルとその上位個体、フォーホーンブルが棲み着いてやがる。こいつらの皮はお前のレザーアーマー素材としても優秀だし、新しいマジックバッグを作ってもらうにもいいんじゃねえのか?」
あ、メイナお姉ちゃんからもらったウエストポーチもキラーブルの革でできていたって言ってた!
狩ることができたらお土産に持ち帰ろう!
「それからその次に向かってもらうドラマリーンだが、近くの山にキラーヴァイパーが棲み着いている。中にはヴェノムヴァイパーもいて少々危険だが、そいつの皮も持ち帰れば猛毒浄化効果のあるレザーアーマーを作れるぜ? どっちもオークジェネラルに比べればはるかにザコだ。新しいレザーアーマーを作るためにもアダムとメイナの土産にも最適じゃないのか?」
「そうですね! 私はそちら方面で頑張らせてもらいます!」
「特使のマントは傷つけるなよ。これで問題ないか、ケウナコウ」
「ああ、問題ない。各街へ向かうための支度金として金貨10枚ずつも渡しておこう。地理的に言えば、センディアとドラマリーンに行くときに、アイリーンに戻ることになる。金は冒険者ギルドに預けておくのでそのときに受け取っていってくれ」
「そんな、お金はたくさんいただいているのに……」
「冒険者は稼げなくなったときに備えて早いうちからたくさん稼いでおくものだ。よく覚えておけ。では、私はこれにて失礼するよ」
ケウナコウ様が立ち去り、私とサンドロックさんが部屋に残された。
私、こんな厚遇を受けていいのかなぁ?
「お前のことだ、ただのステップワンダーがこんないい思いをしていいのかどうか悩んでるんだろ?」
「え? はい、私はまだ21……ああ、年が明けてもうすぐ夏ですから夏の終わりには22歳になるばかりの若僧ステップワンダーです」
「そんなこと気にするな。ケウナコウだって、お前がこの街に来てからやってきたことはすべて調べ上げているはずだ。その上でお前を特使に任命したんだよ。それだけ街からも領主からも信頼されているってことだ」
「そうなんですね。ありがとうございます」
「わかったら、旅支度に入れ。悪いが明後日には出発だ。……そういえばステップワンダーの22歳って人間換算だと何歳くらいなんだ?」
「13歳から14歳くらいですよ?」
「……人間換算だと思いっきり未成年じゃねぇか」
「でも、冒険者への道は閉ざさないでくださいね。たくさんの仲間が手っ取り早い稼ぎ口として目指しているものなので」
「わーってるよ。それじゃ、俺の話もここまでだ。最初から断られることがわかっている無理難題を押しつける旅路、気が進まないだろうがよろしく頼む」
「……まあ、ちょっと気乗りがしませんが、新しい防具のためだと思っていってきます」
「それくらいがちょうどいい。油断して怪我をするなよ?」
「はい。メイナお姉ちゃんには二度と心配させたくありませんから」
こうして他の街への旅路が決まった。
メイナお姉ちゃん、心配しないかなぁ。
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