ペットとともに大地を駆けるステップワンダー ~ 私はモンスターテイマーじゃありません! ペットテイマーです!~

あきさけ

文字の大きさ
上 下
39 / 100
第2部 街を駆け巡る〝ペットテイマー〟 第1章 〝ペットテイマー〟センディアの街に向かう

39. 〝ペットテイマー〟他の街へとお仕事へ

しおりを挟む
 私が仕事に復帰して1週間ほど経った頃、サンドロックさんに呼び出された。
 そういえば、サンドロックさんにも訓練をつけてもらってないなぁ。
 いまは忙しいから無理だろうけど、手が空いたらまたつけてもらえないかなぁ。

 受付で到着したことを伝え、職員さんとともにギルドマスタールームへ。
 許可が出たのでギルドマスタールームに入るとサンドロックさんだけではなく、領主のケウナコウ様までいた!?
 急いで礼をとらないと!!

「ケウナコウ様、本日は……」

「よいよい、今日は私がお主に依頼を持ち込んだのだ。それに公の場では礼節を保ってもらわねばならぬが、普段はもっと気さくに接してくれて構わぬぞ」

 ケウナコウ様の色も青。
 いまの発言も本心からなんだ。

「では失礼して。本日はどのような依頼でしょうか?」

「まあ、お前も座れ。少し長い話になるかもしれねぇ」

「はい、失礼いたします」

 私はサンドロックさんの目の前に座らせてもらった。
 やっぱりギルドマスターのソファーだけあって座り心地が全然違う。
 体が沈んでいくよ。

「さて、今日の依頼だな。私が身分証として渡したナイフは肌身離さず持っているか?」

「はい、ケウナコウ様。なくすことが恐ろしいので、普段はストレージにしまってありますが」

「その慎重さがあれば結構。あの分からず屋に対しても《ストレージ》を持っている冒険者を特使として派遣できるだけの力が、我が町はまだ保有しているという証になるからな」

「《ストレージ》を使える冒険者、でございますか?」

「《ストレージ》を使える者は基本的に大富豪や貴族の専属となることが多い。それも冒険者などではなく、上級使用人としてな」

 うわ、普段から何気なく使っていた《ストレージ》ってそんなすごいスキルだったんだ。

「いまの話を聞いてどこかの貴族に雇われたくなったか?」

「い、いえ。私に貴族の使用人など務まりません。それ以上に、私のストレージはキントキから借りているものです。キントキがいなくなったら使えなくなるもの、お貴族様の前でキントキが無礼を働けばキントキ程度すぐに殺されてしまいます。そんな目に私の大切な家族ペットをさらしたくはありません」

「……その話を聞いてさらに親近感が湧いたな。今回の騒動が落ち着いたら我が家にも遊びに来てはもらえないだろうか? 我が家には今年6歳になったばかりの娘がいる。お主の家族ペットをみてどういう反応をするのか見てみたい」

「どういう反応をするのか、でございますか?」

「ああ。ただのオモチャとして扱おうとするならば厳しくしつけ直す。対等な生き物としてともに遊ぼうとするなら情操教育の一環として貴族が買うような〝ペット〟ではなくお主が飼っているような〝ペット〟を育てさせるのもよいかもしれぬ」

『ほほう、それは悪くない』

『そうだね。ただ、小動物たちがそんな簡単に見つかるかな?』

『街の中では難しいわさ。シラタマ、仲間のウサギとコンタクトを取れないかわさ?』

『話してみるだけなら可能なの。ただ、懐いてくれて一緒に街まで来てくれる子がいるかは別なの』

「うーん、やっぱりペットを増やすのって難しいよね……って、あれ? おふたりともどうなさいましたか?」

 なんだかよくわからないけれど、ふたりの動きが止まっている。
 一体どうしたんだろう?

「お、おい。いま、お前のペットたちの声が聞こえたんだが?」

「あ、ああ。私にもペットたちが普通に喋っているように聞こえた」

「ミネル?」

『お前のスキルも進化しているのじゃよ。お前が悪意なく接している相手には我々の言葉も直接通じるようになっている。もっと強くなれば……《ペット言語理解》と《ペット用ご飯作り》のふたつくらいは他人に渡せるようになるかもな』

「それ、私が使えないようになるの?」

『いや、お主のスキルを分離させて他人に渡すといったイメージになる。もちろん、相手が受け入れる意思を持って受け入れればの話じゃが』

「《ペット用ご飯作り》と《ペット言語理解》だけでもすごいことになるよ?」

『《ペット用ご飯作り》は劣化版になる。お主のように無制限にいくらでも強くはならぬよ。最終的な防護役を務められる程度にはなれるがな』

「それでも十分すごいって……」

 ミネル、こんな場面でそんな重要なことをあっさりばらさないで……。

「いや、驚いた。〝ペットテイマー〟のスキルが一部だけでも手に入るとは」

「このことは他言無用だな。お前が狙われる原因になっちまう」

「そうしてください……」

 うーん、私、ただの〝ウルフ狩りのステップワンダー〟でいいんだけどなぁ。
 オーク戦で活躍しちゃったし、それも難しいのかな?

「さて、思いもがけない事実が判明して話が逸れてしまったが本題に戻ろう。冒険者シズク、お主には私の代理、特使としてふたつの街に行ってもらいたい」

「私が特使……ですか?」

「ああ、特使だ。依頼内容はこう。〝オークの砦を攻めるに当たっての冒険者募集〟だ」

「オークの砦攻めの冒険者。サンドロックさん、アイリーンの街だけでは足りないんですか?」

「悔しいがまったく足りない。オーク軍との戦争で、ギルドとして把握しているDランクとCランクの戦死者は300名を超えている。シズクが退却時に回復魔法をかけて回り、逃げ帰ることができた冒険者が多くてもこの有様だ。Bランク冒険者に被害が出ていないのは幸いだが、とてもじゃないが砦攻めには人数が足りない。他の街から希望者を募るしかないな」

「希望者……そんな簡単に集まってくれるでしょうか?」

「もちろん報酬ははずむ。今回の砦攻めに参加してくれた冒険者には金貨10枚を一律支給する。活躍度合いによっては増額だ」

 冒険者ってお金で動く人種だからなぁ。
 それだけの好条件を出してもらえれば動くかも。

「それ以外にも鋼製の武器を支給することを約束しておく。もちろん、上位オークから奪い取った魔法金属が混じった高級品じゃないがな」

「普通の鋼もかなりの量を集めましたからね」

「ああ、それだけ敵の守りも厚いってことだ。普通の鉄の剣じゃ対応できねえよ」

 そうだよね、武器もしっかりしたものを支給しないと戦えないよね。
 他の街から増援に来てもらうんだもの、サポートはきっちりしなくちゃ。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない

君山洋太朗
ファンタジー
異世界のヨーロッパ風国家「グランゼリア王国」を舞台にした合理主義冒険ファンタジー。 主人公レオン・クラウゼンは、冷静な判断と効率重視の性格を持つ冒険者。彼の能力「価値転換(バリュー・シフト)」は物や素材の価値を再構築するもので、戦闘向きではないが経済的な可能性を秘めている。パーティーから追放されたレオンは、自身の能力を活かし「FIRE(経済的自立と早期退職)」を目指す人生設計を実行に移す。 彼が一人で挑むのは、廃鉱での素材収集、不動産投資、商業ネットワークの構築といった経済活動。次々と成功を収める一方で、魔獣の襲撃や元パーティーとの因縁など、様々な試練が彼を待ち受けることになる。 「戦わずして生き抜く」レオンが描く、冒険者とは一線を画す合理主義の物語。追放を前向きに捉え、自らの手で自由を掴む彼の成長と活躍をお楽しみに! この作品は「カクヨム」様にも掲載しています。

コーデリア魔法研究所

tiroro
ファンタジー
孤児院を出て、一人暮らしを始めた15歳の少女ミア。 新たな生活に胸を躍らせる中、偶然出会った魔導士に助けられ、なりゆきで魔法研究所で働くことになる。 未知の世界で魔法と向き合いながら、自分の力で未来を切り拓こうと決意するミアの物語が、ここから始まる。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

ギルドを追放された俺、傭兵ギルドのエリートに拾われる〜元ギルドは崩壊したらしい〜

ネリムZ
ファンタジー
 唐突にギルドマスターから宣言される言葉。 「今すぐにこのギルドから去れ。俺の前に二度と顔を出さないように国も出て行け」  理解出来ない言葉だったが有無を言わせぬマスターに従った。  様々な気力を失って森の中を彷徨うと、賞金首にカツアゲされてしまった。  そこに助けようとする傭兵ギルドのA級、自称エリートのフィリア。  モヤモヤとした気持ちに駆られ、賞金首を気絶させる。  行く場所が無い事を素直に伝えるとフィリアは自分のギルドに招待してくれた。  俺は仕事が必要だったのでありがたく、その提案を受けた。  そして後に知る、元所属ギルドが⋯⋯。  新たな目標、新たな仲間と環境。  信念を持って行動する、一人の男の物語。

『悪役』のイメージが違うことで起きた悲しい事故

ラララキヲ
ファンタジー
 ある男爵が手を出していたメイドが密かに娘を産んでいた。それを知った男爵は平民として生きていた娘を探し出して養子とした。  娘の名前はルーニー。  とても可愛い外見をしていた。  彼女は人を惹き付ける特別な外見をしていたが、特別なのはそれだけではなかった。  彼女は前世の記憶を持っていたのだ。  そして彼女はこの世界が前世で遊んだ乙女ゲームが舞台なのだと気付く。  格好良い攻略対象たちに意地悪な悪役令嬢。  しかしその悪役令嬢がどうもおかしい。何もしてこないどころか性格さえも設定と違うようだ。  乙女ゲームのヒロインであるルーニーは腹を立てた。  “悪役令嬢が悪役をちゃんとしないからゲームのストーリーが進まないじゃない!”と。  怒ったルーニーは悪役令嬢を責める。  そして物語は動き出した…………── ※!!※細かい描写などはありませんが女性が酷い目に遭った展開となるので嫌な方はお気をつけ下さい。 ※!!※『子供が絵本のシンデレラ読んでと頼んだらヤバイ方のシンデレラを読まれた』みたいな話です。 ◇テンプレ乙女ゲームの世界。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇なろうにも上げる予定です。

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

うどん五段
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

処理中です...