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第1部 〝ペットテイマー〟ここに誕生 第6章 アイリーンの街の危機
30. オークの偵察兵
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私は街へと戻ると冒険者ギルドへ直行、リンネさんとたまたま受付にいたサンドロックさんを捕まえてオークのことを相談してみた。
ふたりはとても渋い顔になったけど、そんなにまずいことなのかな?
「リンネ、裏に回ってシズクの戦利品を検分だ」
「はい。シズクちゃん、一緒に来て」
「わかりました」
私はサンドロックさんとリンネさんのふたりと一緒にギルド裏手の誰もいない部屋へ案内され、そこで《ストレージ》から今日の戦利品、つまりオークとその装備一式を取り出すように言われた。
なので、それらを全部取り出したんだけど……ふたりの顔つきはますます険しいものになっていっちゃたよ。
これ、そんなにまずいものなんだろうか?
「シズク、こいつらと戦ったのはどの辺りだ?」
「ええと……〝ウルフの林〟を街から3分の2ほど進んだあたりです。そんなにまずい相手なんですか、このオーク?」
「皮を見ただけでわかっちまう。こいつは〝オークスカウト〟だ」
「〝オークスカウト〟?」
「わかりやすく言うとオーク軍の偵察兵のことです。その性質は極めて強靱な皮で肉体が守られていること。シズクちゃん、よく倒せましたね?」
「ペットたちのスキルを全力で使ったからです。その、ダガーは折れる寸前ですが」
「そうか。魔鋼のダガーじゃ無理もないな。普通なら魔鋼製品程度で傷つけられる相手じゃないからよ」
「……そんなに強いんですか? 偵察兵なのに?」
「ああ。偵察兵だからこそ生存能力が高い。少しでも分が悪くなったら逃げだそうとするからな。こいつらと戦っていたときどうだった?」
「そういえば、私たちが戦っていた方のオークの腕を切り飛ばしたとき、2匹とも逃げだそうとしました。ペットたちが逃走を阻止してくれましたが」
「それは幸運だったな。こいつらは足も速いんだ。しかし、オークスカウトまで出てくるとは、オークどもも本気で攻めてくるつもりかもな」
「え?」
「どちらにしても、シズクには報酬を渡さなきゃいけねぇな。適切な査定は明日までに終わらせるから少し待て。その代わり、こいつを持っていきな」
「え? え?」
サンドロックさんが投げてよこしたのは、オークが持っていたうちの短い剣の1本。
あのオーク、大きな剣と短い剣の2本を両方とも持っていたんだよね。
「そいつを持ってアダムのところに行け。それで、そいつを圧縮してもらい新しいダガーを作ってもらいな。そうすれば、オークスカウトの皮だって簡単に切れるほど切れ味がよくて頑丈なダガーができるからよ」
「え、でも、いいんですか? そんな上等な武器になる素材をもらっちゃって」
「いいから持っていけ。今後もばったりオークと遭遇する可能性を考えると、お前は強力な武器を持っていても損がねぇ。本当ならばったり遭遇、なんて目にあってほしくないが、スカウトまで出張ってきている以上、いついきなり遭遇するかわからないからな」
「わ、わかりました。オークと戦うのは怖いですが、受け取っておきます」
「その程度の臆病さがお前にはちょうどいい。ともかく、新しい武器の手配を急いでもらえ。それから、そいつで新しい武器ができるまではお前、街から外出禁止だ。ろくな武器もなしにばったりオークと遭遇なんてされたらたまったものじゃないからな」
「それもわかりました。それじゃあ、アダムさんのところに行ってきます」
……今回戦ったオークってそんなに危険な相手だったんだ。
勝てたからよかったけど、慎重に行かないとだめだね。
********************
「サンドロックギルドマスター、この皮と残りの武器や防具はどうするんですか?」
「……シズクのあとでいいからアダムに頼むしかねぇだろ、リンネ。この街で魔法金属入り、それもミスリルじゃなくガルヴォルン入りの魔鋼を鍛えられる鍛冶師なんてあいつしかいねぇぞ? オークスカウトの皮をなめして革防具を作れるのもあいつだけだ」
「申し訳ありませんがアダムさんにはフル稼働してもらわなくちゃいけませんね」
「そのためにもシズクにあの剣を持たせた。あいつならすぐにあの剣の意味に気がつくだろうよ」
********************
「ごめんくださーい」
よくわからないけど、私の武器がないのも困るのは事実なのでアダムさんのお店を訪ねてみた。
今日はいるかな?
「おや、シズクちゃん。今日は早い時間に戻ってきているね」
「ちょっと訳ありで。アダムさんはいますか?」
「ああ、いるよ。休憩中だらすぐに呼んできてやる。ちょっと待ってな」
奥さんが奥に消えていくとすぐにアダムさんがやってきてくれた。
ああ、まずはアダムさんに謝らないと。
「よう、シズクの嬢ちゃん。今日はどうした?」
「ごめんなさい、アダムさん。安く売ってもらった魔鋼のダガー、折れる寸前までいきました」
「なに? 魔鋼のダガーが折れる寸前だと? 一体なにと戦った?」
「サンドロックさんが言うにはオークスカウトだって」
「オークスカウトだと!? どこで戦った!?」
「ええと、〝ウルフの林〟です」
「……今日の依頼は?」
「サンドロックさんから預かってきた剣があるんです。それで、私の新しい武器を作ってほしくって」
「預かってきた剣。見せてみろ」
「はい、これです」
私はサンドロックさんから預かってきた剣をアダムさんに渡した。
アダムさんはその剣を鞘から抜き、少しだけ確認すると天を仰いでつぶやいたよ。
「……オークども、ブラックスミスだけじゃなくてアルケミストもいるじゃねぇか」
「アダムさん?」
「こいつでシズクの嬢ちゃん用のダガーを作るんだったな。切れ味はいいがかなり肉厚、長め、重めになるが構わないか? バランスはきちんと調整してやる」
「は、はい。お任せします」
「よし。今日の用事は?」
「タウルさんのお店とドネスさんのお店に行って今日の獲物を売ってくるだけですが……」
「わかった、それが終わったらすぐに戻ってこい。シズクの嬢ちゃんの手の型を取る。店は閉店にしておくが、気にせず正面から入ってきな」
「ええっと、そんなに急ぐんですか?」
「急ぐ。製作には明日いっぱいまでかかる。明後日の朝、取りに来い。俺はそのあとも忙しくなるはずだからな」
「わかりました、すぐに行って戻ってきますね」
「頼んだ。俺は準備をして待ってる」
なんだろう、ものすごく大事になってきているような。
とにかく、早くお肉と毛皮を売ってアダムさんのお店に戻ってこないと。
ふたりはとても渋い顔になったけど、そんなにまずいことなのかな?
「リンネ、裏に回ってシズクの戦利品を検分だ」
「はい。シズクちゃん、一緒に来て」
「わかりました」
私はサンドロックさんとリンネさんのふたりと一緒にギルド裏手の誰もいない部屋へ案内され、そこで《ストレージ》から今日の戦利品、つまりオークとその装備一式を取り出すように言われた。
なので、それらを全部取り出したんだけど……ふたりの顔つきはますます険しいものになっていっちゃたよ。
これ、そんなにまずいものなんだろうか?
「シズク、こいつらと戦ったのはどの辺りだ?」
「ええと……〝ウルフの林〟を街から3分の2ほど進んだあたりです。そんなにまずい相手なんですか、このオーク?」
「皮を見ただけでわかっちまう。こいつは〝オークスカウト〟だ」
「〝オークスカウト〟?」
「わかりやすく言うとオーク軍の偵察兵のことです。その性質は極めて強靱な皮で肉体が守られていること。シズクちゃん、よく倒せましたね?」
「ペットたちのスキルを全力で使ったからです。その、ダガーは折れる寸前ですが」
「そうか。魔鋼のダガーじゃ無理もないな。普通なら魔鋼製品程度で傷つけられる相手じゃないからよ」
「……そんなに強いんですか? 偵察兵なのに?」
「ああ。偵察兵だからこそ生存能力が高い。少しでも分が悪くなったら逃げだそうとするからな。こいつらと戦っていたときどうだった?」
「そういえば、私たちが戦っていた方のオークの腕を切り飛ばしたとき、2匹とも逃げだそうとしました。ペットたちが逃走を阻止してくれましたが」
「それは幸運だったな。こいつらは足も速いんだ。しかし、オークスカウトまで出てくるとは、オークどもも本気で攻めてくるつもりかもな」
「え?」
「どちらにしても、シズクには報酬を渡さなきゃいけねぇな。適切な査定は明日までに終わらせるから少し待て。その代わり、こいつを持っていきな」
「え? え?」
サンドロックさんが投げてよこしたのは、オークが持っていたうちの短い剣の1本。
あのオーク、大きな剣と短い剣の2本を両方とも持っていたんだよね。
「そいつを持ってアダムのところに行け。それで、そいつを圧縮してもらい新しいダガーを作ってもらいな。そうすれば、オークスカウトの皮だって簡単に切れるほど切れ味がよくて頑丈なダガーができるからよ」
「え、でも、いいんですか? そんな上等な武器になる素材をもらっちゃって」
「いいから持っていけ。今後もばったりオークと遭遇する可能性を考えると、お前は強力な武器を持っていても損がねぇ。本当ならばったり遭遇、なんて目にあってほしくないが、スカウトまで出張ってきている以上、いついきなり遭遇するかわからないからな」
「わ、わかりました。オークと戦うのは怖いですが、受け取っておきます」
「その程度の臆病さがお前にはちょうどいい。ともかく、新しい武器の手配を急いでもらえ。それから、そいつで新しい武器ができるまではお前、街から外出禁止だ。ろくな武器もなしにばったりオークと遭遇なんてされたらたまったものじゃないからな」
「それもわかりました。それじゃあ、アダムさんのところに行ってきます」
……今回戦ったオークってそんなに危険な相手だったんだ。
勝てたからよかったけど、慎重に行かないとだめだね。
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「サンドロックギルドマスター、この皮と残りの武器や防具はどうするんですか?」
「……シズクのあとでいいからアダムに頼むしかねぇだろ、リンネ。この街で魔法金属入り、それもミスリルじゃなくガルヴォルン入りの魔鋼を鍛えられる鍛冶師なんてあいつしかいねぇぞ? オークスカウトの皮をなめして革防具を作れるのもあいつだけだ」
「申し訳ありませんがアダムさんにはフル稼働してもらわなくちゃいけませんね」
「そのためにもシズクにあの剣を持たせた。あいつならすぐにあの剣の意味に気がつくだろうよ」
********************
「ごめんくださーい」
よくわからないけど、私の武器がないのも困るのは事実なのでアダムさんのお店を訪ねてみた。
今日はいるかな?
「おや、シズクちゃん。今日は早い時間に戻ってきているね」
「ちょっと訳ありで。アダムさんはいますか?」
「ああ、いるよ。休憩中だらすぐに呼んできてやる。ちょっと待ってな」
奥さんが奥に消えていくとすぐにアダムさんがやってきてくれた。
ああ、まずはアダムさんに謝らないと。
「よう、シズクの嬢ちゃん。今日はどうした?」
「ごめんなさい、アダムさん。安く売ってもらった魔鋼のダガー、折れる寸前までいきました」
「なに? 魔鋼のダガーが折れる寸前だと? 一体なにと戦った?」
「サンドロックさんが言うにはオークスカウトだって」
「オークスカウトだと!? どこで戦った!?」
「ええと、〝ウルフの林〟です」
「……今日の依頼は?」
「サンドロックさんから預かってきた剣があるんです。それで、私の新しい武器を作ってほしくって」
「預かってきた剣。見せてみろ」
「はい、これです」
私はサンドロックさんから預かってきた剣をアダムさんに渡した。
アダムさんはその剣を鞘から抜き、少しだけ確認すると天を仰いでつぶやいたよ。
「……オークども、ブラックスミスだけじゃなくてアルケミストもいるじゃねぇか」
「アダムさん?」
「こいつでシズクの嬢ちゃん用のダガーを作るんだったな。切れ味はいいがかなり肉厚、長め、重めになるが構わないか? バランスはきちんと調整してやる」
「は、はい。お任せします」
「よし。今日の用事は?」
「タウルさんのお店とドネスさんのお店に行って今日の獲物を売ってくるだけですが……」
「わかった、それが終わったらすぐに戻ってこい。シズクの嬢ちゃんの手の型を取る。店は閉店にしておくが、気にせず正面から入ってきな」
「ええっと、そんなに急ぐんですか?」
「急ぐ。製作には明日いっぱいまでかかる。明後日の朝、取りに来い。俺はそのあとも忙しくなるはずだからな」
「わかりました、すぐに行って戻ってきますね」
「頼んだ。俺は準備をして待ってる」
なんだろう、ものすごく大事になってきているような。
とにかく、早くお肉と毛皮を売ってアダムさんのお店に戻ってこないと。
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