ペットとともに大地を駆けるステップワンダー ~ 私はモンスターテイマーじゃありません! ペットテイマーです!~

あきさけ

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第1部 〝ペットテイマー〟ここに誕生 第6章 アイリーンの街の危機

26. オーク、強襲

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 私はキントキに乗ったまま街門までやってきた。
 普段は街門側でキントキから降りる私のことを知っている衛兵さんたちはすごく驚いているね。
 すぐに衛兵長さんがやってきたけど、緊急事態なんだよ!

「シズク、緊急事態か?」

「はい! 〝シラタマの丘〟に大量のウルフがいました!」

「数は?」

「数え切れないくらいです!」

「わかった。入街税などは免除する。すぐに冒険者ギルドに向かえ。ただ、街の中をキントキで走るな。驚かせる前に、人をはねる」

「あ、わかりました!」

 そうだよね。
 キントキのスピードじゃ、驚かれるよりも先に人にぶつかっちゃうよね!
 私はキントキから降りて《高速移動》を使い、一気に冒険者ギルドまで駆け込んだ。
 突然飛び込んできた私にみんながこっちを向いているけれど、それどころじゃない!

「シズクちゃん、どうしました?」

「ああ、リンネさん、丁度よかった。〝シラタマの丘〟に大量のウルフがいました。数え切れないくらいたくさん」

「……討伐証明の魔石は?」

「普段の魔石と分けて持ってきてあります」

「急いで鑑定します。こちらへ」

 シズクさんと一緒に魔石を鑑定するための部屋へと急いだ。
 そこで魔石の取得場所と数の確認をしてもらったけれど、数は200を超えていたみたい。
 全員でお肉と考えず、一気に倒したからこその結果だけど、そんなにいたんだ……。

「リンネ、こいつはまずいぞ。すぐにギルドマスターに報告して判断を仰がねえと」

「わかりました。シズクちゃんは待機していて。悪いけれど、一番速く移動できる手段がキントキなの。場合によっては、誰かを連れて一緒に〝ウルフのコロニー〟まで行ってもらうわ」

〝ウルフのコロニー〟というのは〝シラタマの丘〟と接した森のこと。
 ウルフが大量に生息していて一大拠点となっているからそう呼ばれているんだ。
 ちなみに、こちらも季節に一度、大討伐が実施されて間引いているらしい。
 私はギルド命令で不参加なんだけど!

 ともかく、魔石の報奨金はその場で支払われたけれど、私は1階の受付前で結果待ち。
 さほど待たずにリンネさんがデイビッド教官を連れて降りてきた。
 デイビッド教官の装備はいつもの装備じゃなくて、もっと豪華なものになっているよ?
 一体どうするんだろう?

「シズク、久しぶりだな」

「お久しぶりです、デイビッド教官。今日は?」

「シズクさん。デイビッドさんとともに〝ウルフのコロニー〟まで行ってください。目的はコロニーで異変がないかの調査。異変があった場合、排除できれば好ましいですが、難しい場合は情報を持ち帰ることを優先にお願いします」

「それで、デイビッド教官も一緒に。あれ、でもデイビッド教官の鎧って……」

「俺の鎧は特殊な魔法処理を施してある。真冬に使っても凍りつくことはない」

 そうなんだ。
 なら安心かな。

「申し訳ありませんが、急いでください。あまりにも状況が読めません」

「わかりました、行ってきます」

「リンネも明日の朝に冒険者を集めることができるよう準備をしておいてくれ。空振りだったらいいが、俺も嫌な予感がしてならない」

「はい。どうか、ご武運を」

 私とデイビッド教官は再び街へと飛び出した。
 私は《高速移動》を使っているけれど、デイビッド教官はそれにすらついてくることができている。
 本当に上位冒険者ってすごい!

「来たか、シズク。それにデイビッドまで」

「衛兵長さん!」

「衛兵長、すまないが」

「非常用の通行路を使って構わん。シズクの慌てぶりといい、お前まで出てきたことといい、どう考えても非常事態だからな」

「助かる」

「ありがとうございます!」

「なにもないことを祈るが……無理なようだったら、すぐに帰ってこい」

 衛兵長さんのご厚意で普段は使わせてもらえない非常用通行路を使わせてもらい、街の外へとやってきた。
 そこから先はキントキに大きくなってもらい、私とデイビッド教官のふたりが乗り、全速力で〝シラタマの丘〟を目指してもらう。
 ただ、〝シラタマの丘〟を目前にして、私の《夜目》に引っかかる生物がいた。

「キントキ、止まって」

『どうしたの?』

「おっきい……なんだろう? 太った人間のような生物が歩き回っている」

「それは確かか? シズク?」

「はい。《夜目》のおかげでバッチリ見えます」

「顔は見えるか?」

「顔……あ、振り向きました! 豚の顔!」

「な!? オークがこんな街の側まで!?」

「あれがオークなんですか?」

「ああ、お前の目に映っている生物の特徴が間違っていないならオークだ。しかし困ったな。このような場所にオークがいたとなれば、可能なだけでも間引いて帰らねば……」

「ミネル、私の《魔の鉤爪》ってこの距離で届く?」

『もう少し近づかねば無理じゃ。《隠密行動》と合わせて使い、距離を詰めよ』

「デイビッド教官、私の《魔の鉤爪》であの1匹は退治してきます」

「……それが一番か。しくじったら俺が倒す。無理をせずに逃げてこい」

「申し訳ありませんが、よろしくお願いします。他の子たちもここで待っててね」

『うん。気をつけてね』

『仕方がないわさ』

『怪我しちゃだめだよ?』

「わかってるよ。じゃあ、行ってきます」

 私は《隠密行動》をフル活用してジリジリ間合いを詰めていく。
 オークがどの程度暗いところでも目が見えるのかにもよるけれど、見つかったら《高速移動》で逃げ出さなきゃ。
 資料室で読んだ情報だと、見た目のわりに足が速いらしいからね。
 
 10分ほどかけて《魔の鉤爪》が届く範囲内までやってきた。さて、それじゃあ、頭をグシャって……え?

「Buooo!」

 一撃で潰せなかった!?
 まだ気がつかれていないし、二撃目!

「Bu……」

 よし、今度こそ頭を潰せた。
 でも、嫌な気配がたくさん近づいてきている!
 すぐに逃げないと!

 私は《隠密行動》と《高速移動》を全力で使って森から遠ざかり、キントキのもとまで帰ってきた。
 そこから後ろを振り返ると……オークが5匹くらい、松明を掲げてあたりを見回していたよ。

「危なかったな、シズク」

『本当に。まさか、《魔の鉤爪》に耐えられるだなんて』

『わちも驚いたわさ』

『あたちもビックリしたの』

『儂も驚いた。オークとやら、油断できぬな』

「ペットたちがなにを言っているかはわからないが、概ねオークが油断できないと言っているのだろう。だが、シズクが倒したやつ以外にも5匹出てきたか。そうなると、森の中にはもっと潜んでいるだろうな」

「どうしますか、デイビッド教官?」

「本来であれば、数を減らしたいところだ。しかし、あの森の奥に何匹のオークが潜んでいるかもわからないのでは危険すぎる。悔しいが一時撤退、明日の朝あらためて強襲を仕掛ける。お前は参加するなよ? 必殺であるはずの《魔の鉤爪》さえ耐えられたんだ。足手まといとは言わないが、能力を隠さずに戦ってもかなり厳しい戦いになる」

「……わかりました」

「悔しいだろうが、堪えろ。俺も昔はそういう時期があった。今回は上位冒険者だけの方が安心できる。それだけの大事になってしまっているんだ。皆が無事に帰ってくることを祈っていてくれ」

「はい。そうします」

 悔しい。
 本当に悔しいけれど、私にはこれ以上できることがない。
 せめて、この情報をデイビッド教官と一緒に持ち帰るのが精一杯だ。
 あとは、明日怪我をして帰ってきた先輩冒険者の方々がいたら《回復魔法》をかけてあげることくらい。
 もっと力をつけたいけれど、多分、ゴブリンを相手にするとかでも意味はない。
 もっともっとペットの力を借りてスキルをうまく扱いこなせるようになるんだ。
 ……明日からはそっちの訓練にも意識を向けよう。
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