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悔しい ラウラSide

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時は昨晩までさかのぼる。

シャーリーが倒れた瞬間だった。

後ろに居た長身の男性がシャーリーをお姫様抱っこしたのだ。

ラウラはその人物を見て驚いた。

「ロ……ロビン王太子殿下」

艶のある黒髪に、黒曜石のような瞳。
整った顔立ちに服の上からでも分かる屈強な体つき。

どこを取ってもジェイクよりも上の人物だった。

ロビンが叫ぶ。

「この者を居室まで運ぶ!誰か道案内してくれ!」

すると慌てた様子でロイ子爵が出ていく。

「それは私めが」

「頼む」

会場の視線はラウラからシャーリーに完全に移った。

そして、ロビン王太子殿下が会場を後にすると会場はまたもざわつく。

「ロビン王太子殿下が」
「シャーリー子爵令嬢何かに」
「羨ましい」
「私もお姫様抱っこされた~い」
「ちょっと何なのあの子」

悲喜こもごもと言った感じである。

これでは主役はシャーリーに渡ったと言っても過言ではない。

「ちょっとちょっと皆様!今夜は私とジェイク子爵令息の婚約発表ですよ!」

ラウラが叫ぶ。

しかし、会場の注目はラウラではなく、シャーリーとロビンだった。

会場はざわついている。

「ロビン王太子殿下は女好き」
「きっと今日だけの事よ」
「ロビン王太子殿下が本気になる訳がないわ」
「そうよ」
「そうよ」

会場の反応を受けてラウラが顔を真っ赤にして怒る。

「何だって言うの?!お姉様がロビン王太子殿下とだなんて」

これに頭を抱えたのがジェイクだった。

「ラウラ、お腹の子に障るから怒りをどうか静めて」

そう言うとジェイクはラウラのお腹に手を当てた。
ラウラはジェイクの手を払いのけた。

バチンッ!

「ちょっと辞めて」

「え……」

青天の霹靂へきれきの如く、ジェイクが固まる。

「私、ちょっと行ってくる」

のしのしとラウラが壇上を降りて行く。

「待って」

その言葉を聞きもせず、ラウラはシャーリーの居室へと向かった。

何なの?!一体!お姉様の分際で!

ラウラは怒りで胸が一杯になっていた。

有り得ないわ。ロビン王太子殿下がお姉様を抱えて居室にまで行くなんて。

のしのしとラウラが廊下を歩いていく。

ラウラは途中でロイ子爵に会った。

そう言えば、お父様はロビン王太子殿下の道案内をしていたはず、1人で戻ってくるという事は。

不思議な目をしてロイ子爵を見ているとロイ子爵が言う。


「シャーリーはロビン王太子殿下と2人きりにしておいた」


「何ですって?!」

それを聞いてちゃ黙ってられない。
一夜限りでも万が一という事がある。
現にジェイクとの子も一夜限りという約束の元で出来た子だった。

走ってシャーリーの居室へと向かう。

とうとうシャーリーの部屋までたどり着いた。
ノックをする。

コンコンッ

「お姉様、私よ。ラウラよ。どうか開けて下さいまし」

シーンとしている。

こうしちゃいられない。
シャーリーが起きていようがいまいが、おっぱじまるものがおっぱじまれば、ラウラの思惑とは外れたものになってしまう。

ドンドン!

「お姉様!開けてください!」

扉はシーンとしている。

最早居るのか居ないのかすら分からない。

ドアをガチャガチャと捻ってみる。

開かない。

つまりは2人は中に居るのだ。

ドンドン!

「お姉様開けてください!」

シーン。

すると後ろから声を掛けてくる人が居た。

「ラウラ!」

ジェイクだ。

「どうしたんだい?急に居なくなって」

ラウラは怒りの表情で振り返る。

「邪魔しないでくれる!!」

そして、ジェイクの胸を押した。

「ぐっ!」

「お姉様とロビン王太子殿下が中に居るの。
万が一の事があったら」

「万が一ってなんだよ……僕は君の体を心配して……」

「私は大丈夫よ」

「さっき吐いてたじゃないか」

「一回吐くくらいどうって事はないわ」

「さっきまでの弱々しいラウラはどこにいったんだ」

「さぁね。知らないわ。そんな事よりもこのドア蹴破れないかしら」

「はぁ?!」

「出来ないのならいいわ。どっか行って!早く!」

「どうしたんだい?ラウラ、いつものラウラらしくないじゃないか。
あのか弱くて守ってあげたくなるラウラはどこにいったんだ」

「これが本当の私よ!役に立たないならどっか行ってって言ってるでしょ!」

「ラウラ……」

「早くパーティー会場に戻って!」

「わか……分かったよ」

ジェイクはパーティー会場へと戻った。

この後、2時間半以上ラウラはこの場所に居座ったのだった。





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