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新来光明

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新来光明の本部は車で1時間ほどの場所にあった。

母に子供達のお守りを頼んだので洋介君と俺の2人で来た。

新来光明の本部は神殿といっても良いほどとても綺麗で広そうだった。

呼び鈴を鳴らす。

「ピンポーン」

すると神殿の門が開き、奥からスーツを着た女性が現れた。

「ご予約はお取りでしょうか?」

女性が言った。
俺は言う。

「いえ、予約はしていません。此処に来ている神崎実咲という人物に用があって来ました。
子供達が実咲の帰りを待ってるんです」

なるべく情に訴えかけるようにして言った。

すると洋介君も言う。

「実咲っ!実咲に一目会わせてください。夫なんです。
何一つ知らないで突然居なくなったんです」

それを聞いたスーツの女は無表情で言う。

「そうですか。ではただいま、神崎実咲に聞いて参りますね」

そして扉が閉じられた。

ーー数分後。

全身を白い服に包まれた実咲が現れた。

「実咲!」

洋介君が実咲のそばに行こうとする。
しかし、スーツの女がそれを制した。
そして、実咲がようやく口を開いた。

「洋介、これから私生まれ変わるの」

それを聞いた洋介君は信じられないといった顔をして言った。

「何を言ってるんだ実咲!」

「今まで私が不幸だったのは高校の頃の悪行のせいだったの」

「不幸……?何言って」

「子供達の事、全部私が悪いの」

「子供達の事……」

途端に洋介君の顔が曇った。

「子供達がああなったのは全部私のせいなの」

「何を言ってるんだ。実咲のせいじゃないだろう」

「いえ、違うの。角山貴理子さんの呪いが私にかかってるの」

「呪い?そんなものある訳無いだろう」

「私の子供達が不幸になったのはそのせいなの」

「不幸なんかじゃないだろ!おかしいぞ!実咲!」

「……やっぱり分かり合えなかった」

すると2人の間に立っていたスーツの女が言う。

「これで話すことは終わりですね」

そう言うと実咲を神殿の奥に連れていった。

「待って!待ってくれ実咲!」

しかし、実咲は振り返らず神殿の奥に入って行ってしまった。
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